書籍紹介
死に戻り王女のやり直し溺愛婚~君を愛せないと言った軍人公爵様がとろ甘に迫ってきます~
死に戻り王女のやり直し溺愛婚~君を愛せないと言った軍人公爵様がとろ甘に迫ってきます~
ISBN:978-4-596-54031-7
ページ数:306
発売日:2024年4月3日
定価:750円+税
  • あらすじ

    「冷淡軍人夫×引きこもり妻」が「愛情過多夫×愛され妻」に!?
    人生逆転! 夫婦やり直します!

    冷えきった関係のまま夫は戦死、フレドリカも命を失った…はずが目覚めたら一年前に巻き戻っていた!? 夫婦としてやり直し、未来の死を回避しようと決意。頑なだった心を開けば、妻の変貌を喜んだユリウスに溺愛される蜜月で。初めて共にしたベッドで心身ともに愛に溺れさせられてしまう。だが、死ぬ原因となった戦のため彼は前線へ赴くことに!?

  • キャラクター紹介
    • フレドリカ
      亡国の王女。幼少時に嫁がされたユリウスに思慕を抱くも素直になれないまま!?

    • ユリウス
      有能な軍人公爵。急に逃げなくなった妻に戸惑いつつ、ここぞとばかりに溺愛する。

  • 試し読み

     ふいにユリウスが意を決したように顔を上げる。
    「今夜――――寝室に行ってもよいか?」
     低い声でそう言われても、フレドリカは初め言葉の意味が頭によく入ってこなかった。しばらくして、やっとユリウスの意図に気が付く。
     夫婦関係を持ちたい、という意味だ。
    「え――――」
     これまで、一度もユリウスとベッドを共にしたことはない。もちろん肉体関係などなく、フレドリカは結婚しても、未だ処女のままであった。
     脈動がにわかに速まり、全身が熱くなる。
    「そ、それは……」
     声が震えた。
     ふいにユリウスが右手を伸ばしてきて、ナプキンの上に置かれたフレドリカの右手を握ってきた。彼の手は驚くほど熱かった。重ねた手を通して、彼の熱が自分の体内へ浸透してくるような気がした。うつむいて身体を硬くする。
    「妻として、私のことをもっと知りたいのだろう?」
     熱っぽい語り口に、フレドリカの身体の奥のどこかが甘く痺れた。彼の視線を痛いほど感じ、おずおずと顔を上げると、まっすぐ見つめてくるユリウスと目が合う。深い闇色の瞳に吸い込まれそうだ。
    「フレドリカ、いいかい?」
     少し掠れた声で名前を呼ばれ、息が詰まりそうになる。
     ユリウスとの夫婦関係をやり直すと決意したのだ。これは避けて通れないことだ。そう自分に言い聞かす。
     だが、唇が震えて声が出ない。小さくコクリとうなずいた。
     ユリウスが小さく息を吐く。彼の手がゆっくりと離れた。
     ユリウスは席を立つと、フレドリカの背後に回り椅子をそっと引いた。フレドリカは機械的に立ち上がる。
     背後からユリウスが耳元でささやいてきた。
    「では、後で――――」
     彼の息遣いと深い声が、耳孔の奥まで沁みてくるようだ。
     ユリウスが立ち去っても、フレドリカはしばらくその場から動けなかった。
     侍女の迎えが来て、自室に戻り沐浴を済ませ部屋着に着替えるまで、フレドリカは呆然としたままだった。ガウンを羽織って、居間のソファの上にぼんやりと座っていた。
     やっと我に返ったのは、ボリスが部屋に現れて、侍女たちにそれとなく退出を促した時だった。おそらく彼は、ユリウスから今晩のことを指示されたのだろう。
    「奥方様、そこにおられては湯冷めしてしまいますよ。そろそろ、寝室へお引き取りくださいませ」
     ボリスに声をかけられ、フレドリカは弾かれたように立ち上がった。
     ボリスは居間の燭台の火を消して回ると、ひとつだけ火の点いた燭台を持ち、フレドリカに手を差し出した。
    「さあ、どうぞ」
     ボリスに手を引かれ、寝室まで導かれる。ボリスが扉を開いて、一歩後ろに下がる。フレドリカは恐る恐る寝室に足を踏み入れる。寝室の中は、いつもより暗くしてあった。ベッドの脇の小卓の上のオイルランプの灯りのみだ。
     自分の寝室に入るのに、こんなにも緊張したことはなかった。背後で扉が閉まりそうになり、慌てて声をかけた。
    「ボ、ボリス――――わ、私……」
     縋るような目でボリスを振り返ると、彼は察したようで、目を細めて励ますようにうなずいた。
    「心配なさいますな。ご主人様にすべてお任せなさい。きっとうまくゆきますとも」
     ボリスはユリウスが生まれる前からこの屋敷で働いている。フレドリカは、これまでボリスの人となりを知ろうとはしなかった。以前は、ろくに口もきかないでいた。それなのに、嫌な顔ひとつせず仕えてくれる彼が、今はとても頼りになる。
     ボリスはフレドリカよりずっと、ユリウスのことを理解しているに違いない。
     かすかにうなずき返し、ベッドに歩み寄る。扉が静かに閉まる。
     そっとベッドの端に腰を下ろしたが、心臓が口から飛び出しそうなほどドキドキして、居ても立ってもいられない。
     立ち上がってベッドの前を行ったり来たりした。
     これまで男女の営みに関してまったくの無関心だった。ベッドで夫婦が生まれたままの姿になり抱き合い、自分の身の内に夫の子種を受け入れるくらいまではうっすらとわかっていたが、それ以上のことは想像もつかない。
     痛いのか苦しいのか長い行為なのか短いのかすら、知らない。
     ただ、ユリウスの大きな肉体を考えると、本能的に怖い、と思う。
     どのくらいうろうろしていたかわからないが、ふいにドアノブを回す音がした。ユリウスが訪れたのだ。
    「っ――――」
     咄嗟に、ドレープカーテンの後ろに隠れてしまった。
     静かに扉が開き、足音を忍ばせてユリウスが入ってくる気配がした。
     フレドリカは息を詰めてじっと身を硬くする。
     ユリウスはフレドリカの姿が見当たらないことに気が付いたようだ。
    「フレドリカ? どこにいる?」
     彼が気遣わしげに呼ぶ。寝室の中を探し回る気配がした。
     フレドリカはカーテンをぎゅっと掴んで、目を瞑る。あれほど、新たな人生で夫婦関係をやり直すのだと決意したのに、大事な場面で逃げ出してしまうとは、なんと情けないことだろう。
     でも怖い。
     足が小刻みに震えた。
     と、カーテンがゆっくりと引かれていく。見つかってしまったのだ。
     身を硬くした。
     カーテンがすっかり引かれてしまう。事実上の初夜なのに大人げないことをして、ユリウスの気を悪くさせたかもしれない。
    「見つけた」
     ユリウスが吐息で笑った。
    「かくれんぼかな?」
     怒っていないようなので、少しホッとして目を開いた。
     ゆったりとした寝巻き姿のユリウスが見下ろしている。湯上がりなのか、シャボンのいい香りがしている。食事の時はきちんと撫で付けていた前髪が額に垂れかかり、少し若やいで見えた。唇が柔らかく笑みの形を描いていた。
    「私が怖いか?」
     率直に聞かれ、コクリとうなずく。
    「そうか。二人でこうするのは、初めてだものね」
     彼の大きな手が伸びてきて、フレドリカの洗い髪をゆっくりと梳いた。子どもをあやすような仕草に、気持ちが少し落ち着いてくる。
    「怖くしない。フレドリカ。約束する。私は今夜、あなたとほんとうの夫婦になりたい」
     彼の声は真摯で誠意が感じられた。
     考えたら、今日出迎えてから食事を共にするまで、ユリウスは終始穏やかで優しかった。以前は、厳格で冷たくてフレドリカにまったく興味がない人だと思い込んでいたのに。
    「こっちにおいで」
     右手を取られ、素直にベッドまで導かれた。
     二人でベッドに並んで腰掛けた。
     ユリウスの右手が背中に回り、フレドリカの肩を抱き寄せる。身体が寄り添う。薄い寝巻き越しに、男の引き締まった肉体を感じ、フレドリカの心臓は忙しなく脈打つ。その鼓動がユリウスに伝わったのだろう。
    「ドキドキしている?」
    「は、はい……」
    「実は、私もなのだ」
    「え?」
     ユリウスの手が肩から背中をゆっくりと撫でた。それから、フレドリカの左手を取り、自分の胸の心臓のあたりに触れさせた。どくんどくんと少し速く力強い鼓動を感じた。
    「こうしてあなたと触れ合うのは初めてで、私もとても緊張している」
     彼の誠実な態度と言葉に、フレドリカの気持ちは徐々にほぐれていく。
     ユリウスが身を屈め、顔を寄せてきた。
     彼の美麗な顔がすぐ目の前に迫る。驚いて目を見開くと、鼻先が触れそうな距離でユリウスが小声でささやく。
    「目を閉じて」
     言われるままに目を閉じると、なにか柔らかなものが唇に触れてきた。
    「ん……」
     初めて唇に口づけされた。その擽ったいような甘やかな感触に、背中がゾクゾク震えた。
     ユリウスは撫でるような口づけを繰り返した。どう反応していいのかわからず、息を詰めてじっとする。そのうち息苦しくなってしまい、かすかに唇を緩めて息を吐いた。
     すると、なにか湿ったものがぬるりと唇をなぞった。
    「あ」
     舐められた? と悟った直後、するりとユリウスの舌が唇を割って忍び込んできた。
    「んんっ?」
     思いもかけない行為に身を硬くした刹那、素早く舌を搦め捕られ、ちゅうっと強く吸い上げられていた。その瞬間、うなじのあたりにびりっと未知の痺れが走り、意識が飛びそうになった。
    「んぅううっ」
     思わず顔を振りほどこうとすると、フレドリカの頭を覆ってしまいそうなほど大きなユリウスの手が後頭部を抱え込み固定してしまう。そのまま彼の舌は、フレドリカの口腔をくまなく舐め回しては、舌を吸い上げてきた。
    「は……ふぁ」
     口づけとは、こんなにも激しいものなのか。
    「……んっ、ふ、んぅ……んんぅん」
     くちゅくちゅと舌が擦れ合う淫らな音が耳の奥で響き、そのたびに不可思議な愉悦が背筋を走り抜けていく。抵抗する術を知らないフレドリカは、ただただユリウスの情熱的な舌の動きに蹂躙されてしまう。
     息苦しく、頭の中がぼんやり霞んで、強張っていた四肢からみるみる力が抜けていく。
     くたくたと崩れそうになる身体を、ユリウスの左手が素早く背中に回って支える。そしてぐっと引き寄せられ、ぴったりと胸と胸が合わさった。両手で押し戻そうとしたが、すっかり力が抜けてしまい、びくともしなかった。
     その間も、ユリウスは顔の角度を変えては、さらに深くフレドリカの口の中に入ろうとしてくる。熱くぶ厚い男の舌が、歯列から口蓋喉奥までくまなく舐め回してくる。そんな行為が心地よいと感じる自分に、怯えてしまう。怖いのに拒めない。
    「……は、はぁ……んやぁ、やぁ、んんっ」
     あまりに濃厚な口づけに、フレドリカはただただ翻弄されるがままだった。そのうち抵抗する気も失せ、彼の舌がもたらす甘美な愉悦を甘受するだけになってしまう。
     嚥下し損ねた唾液が口の端から溢れると、ユリウスはそれを美味そうに啜った。そして、お返しとばかりに彼の唾液が喉奥に注がれる。もはやなす術もなく、フレドリカは白い喉を上下させて、それを吞み下してしまう。
     気が遠くなるほど長い長い口づけがようやく終わり、ユリウスがゆっくりと唇を離した頃には、フレドリカはぐったりと彼の腕に身を任せて喘いでいた。
    「……は、はぁ、は、はぁ……ぁ」
     忙しない呼吸を繰り返していると、ユリウスは火照ったフレドリカの額や頬に口づけの雨を降らせ、目尻に溜まった涙を舐め取る。そして、するりとフレドリカのガウンを肩から滑り落とした。あやすように、薄い寝巻き越しに華奢な肩や背中を撫でる。
     ユリウスが首筋に顔を寄せ、硬い鼻先でなぞり上げ、耳元でささやく。
    「フレドリカ、なんて初心で可愛い――――」
     艶めいた低い声を聞いただけで、身体の芯にじわりと淫らな火が点るような気がした。
     ユリウスの手が、寝巻きの前合わせのリボンをゆっくりと解いていく。
     はらりと前が開き、まろやかな乳房から薄い茂みに覆われた太腿の間まで、露わになった。
    「あ、いや……」
     素肌を異性に晒したことなどない。思わず両手で乳房や陰部を覆い隠そうとすると、ユリウスが穏やかに、
    「全部、見せなさい」
     と命じる。おずおずと両手を下ろす。
     ユリウスが寝巻きを素早く剥いでしまう。一糸纏わぬ姿にされ、恥ずかしさに頭がクラクラした。目をぎゅっと閉じて羞恥に耐える。 
     男の視線が肌に突き刺さるように感じられた。
    「美しい――――すっかり大人になって」
     ユリウスがため息混じりにつぶやいた。
     彼は身体をずらし、背後から両手ですっぽりとフレドリカの身体を包み込んだ。壊れ物を扱うように囲い込まれたが、それには逃さないという断固とした意思も感じる。
     ユリウスの両手が前に回り、フレドリカの乳房を包み込んだ。
    「あっ……」
     素肌に触れられて、びくりと身が竦む。
     男らしく筋張った大きな手が、ゆっくりと乳房を揉みしだいた。この先、何をされるのか想像もつかない。
    「あ、ああ……」
     緊張に身を強張らせてしまう。
     すると、節高な男の指がざらりと乳首を撫でた。
    「んっっ?」
     擽ったいような甘い痺れが、臍の奥へ走った。
     ユリウスは柔らかな乳房を揉み込みながら、人差し指で、探り当てた慎ましい乳嘴を円を描くようにクリクリと抉った。そのたびに、ひりつくような刺激が下肢に下りていく。そして、どういう仕組みなのか乳首がみるみる硬く尖って勃ち上がっていくのだ。さらに刺激に敏感に反応してしまう。
    「あ、あ、あ」
     むず痒いような甘い疼きは、今ははっきりと太腿の奥のあられもない部分をざわつかせているとわかった。
    「感じてきた?」
     ユリウスは背後からフレドリカの首筋に顔を埋め、ねろりと肌を舐め上げる。その濡れた感触に、腰がびくりと浮く。

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