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試し読み
「どうだ? 大人の男は――怖くなったか?」
その声にすら甘く感じ入ってしまう。
もう、深い口づけは怖くない。弱々しく首を振る。
「そうか――ではもう少し、君に男の欲望の恐ろしさを教えるかな」
何をすると言うのだろう。
言葉の意味がわからず困惑していると、再び唇が重なった。
「ん――」
濡れた男の舌が喉の奥まで侵入してきて、息ができずに肌が粟立つ。
「あ、は……」
後頭部を抱えていたバルタザール手が、ゆっくりと首筋を伝って下がってきた。肩を撫で回し、そろりと胸を掴む。
「えっ……ぁ」
小ぶりの乳房がすっぽりとバルタザールの大きな手に収まり、彼はそのままやわやわと揉みしだいてきた。
「あ、や……」
薄い服地の上から慎ましい乳首を探られ、指先できゅっと抓られた。
「つ――っ」
じんと鋭い痛みが走り、すぐにじわりと熱い痒みに変わった。そしてどういうわけか、乳首がつんと尖ってきて、さらに敏感になる。そこをバルタザールの指先が、抉るみたいにいじりまわす。
「ふ、あ、や、め……」
乳首に芯が通るみたいに凝ってきて、そこを触れられると擽ったいような気持ちいいような疼きが生まれ、身体の奥が熱くなってくる。
「ん、あ、だめ……やめ……」
未知の感覚に恐怖を感じ、ポーレットはバルタザールの髪を強く握って引き離そうとした。
けれど非力なポーレットでは、大柄なバルタザールの身体はびくともしない。
半身を起こした体位で、そのまま後ろに逃げようとしたが枕とベッドボードに背中が当たり、それ以上進めなくなってしまう。
拒絶の声を口づけで塞ぎ、バルタザールは左右の乳嘴を交互にいじってくる。
強く摘まみ上げたり、触れるか触れないかの柔らかな力で撫で回したり――そうされると、乳首から甘い痺れが下腹部に走って、恥ずかしい部分がきゅんと妄りがましく締まるのわかった。
「怖いか? それとも、心地よいか?」
バルタザールの声が一段と低くなる。
「え? あ、わ、わかりません……へんな気持ちになって……あ、も、もうやめて……」
熱でも出たみたいに、頭が朦朧としてくる。
「へんな気持ちか――では、こうすると、どうかな?」
バルタザールが薄く笑った気がした。
刹那、彼は薄い服地ごと尖り切った乳首にちゅうっと吸い付いたのだ。
「きゃぅ、あ、やだ……っ」
むず痒い疼きが瞬時に下腹部を襲い、びくんと腰が浮いた。
そのまま前歯でやんわりと乳首を齧られ、膣の奥が戦慄き、爪先がぴんと伸びた。
指でいじられるより、何倍もいやらしくて熱く感じてしまう。
そして、恥ずかしい箇所もひくひく蠢き、なにかがとろりと溶け出すような気がした。
唾液で濡れた布地越しに、赤く色づいた乳首がくっきり卑猥に浮かび上がり、恥ずかくして思わずぎゅっと目を瞑ると、余計に身体の神経が鋭くなる。
「だめ、やめて、そんなこと、しないで……陛下……っ」
自分の身体になにが起こり、どういう変化が訪れているのかわからず、うろたえて必死でバルタザールの頭を押しのけようとするが、かしりと強く鋭敏な乳首の先を噛まれ、ぞわっと身体中に鳥肌が立った。
「ひあ、あ、やあっ……ぁあっ」
背中を仰け反らして、恥ずかしい鼻声を漏らしてしまう。そんなはしたない声が自分からでているなんて、耳を疑ってしまう。
「――可愛らしい声で鳴くね、もっと囀ってごらん」
バルタザールの声はなんだか嬉しそうだ。
やにわに彼は、寝巻きの合わせ紐をするりと解いた。
真っ白い乳房が露になってしまう。
「あっ、だめ、やめてください……やあっ」
異性に素肌を晒したことなどないポーレットは、羞恥に全身の血がかあっと燃え上がるような気がした。なのに、尖った乳首はさらにツンと硬く尖り切ってしまう。
「そら、こうやって直に舐めて上げよう」
バルタザールはわざとらしく舌を大きく突き出して、片方の乳首を口唇に咥え込み、円を描くみたいにねっとりと舐めまわしながら、もう片方の乳首を指で捏ね回してきた。
「あああっ、あ、やだあ……っ」
甘い痺れと切羽詰まるような痺れが子宮の奥まで走り、ポーレットは悩ましい喘ぎ声を止めることができない。
気持ちいいのに辛い、解放してほしい。
恥ずかしい箇所の疼きに耐えかねて、太腿を擦り合わせてやり過ごそうとするが、かあっと火がついたままのそこはいっこうに鎮まらない。
それどころか、乳首を甘く噛まれるたびに、膣壁がきゅんきゅん締まり、子宮の奥につーんとした妄りがましい快感が走ってしまう。
なんだろう。こんな箇所がこんなにも蠢き、切羽詰まった疼きをはらむなんて、さっきまで全然知らなかったのに――。
「――お願いです、陛下……もう、だめ、つらい……我慢できないの……」
息も絶え絶えに懇願すると、バルタザールは唾液で濡れた乳首から顔を上げる。恥ずかしいので顔を背けてしまう。
「どこが、辛いのかな?」
そんなはしたないこと、口にできるはずもない。ポーレットはイヤイヤと首を振るばかりだ。
すると、バルタザールの片手が毛布に潜り込み、怪我をしていない方の足に触れた。
「あっ」
寝巻きの裾を捲られ、鳥肌が立った足を、バルタザールの大きな手がゆっくり撫で上げてくる。 -
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