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あらすじ
あなたがオメガでなくとも、私はあなたを選んだ
虐げられたオメガの令嬢が、皇妃に選ばれて!?皇帝ヴィクトルの花嫁選びの日、妹の侍女として同行したオメガのエディット。想定外の発情が、まさか皇帝の発情を誘発してしまった!? 強引に部屋に連れ去られはしたなく乱れさせられて。苛烈で甘いひと時ののちヴィクトルは、エディットをつがいとすると宣言。彼は「あなたしかいない」と言うけれど、オメガの皇妃など前代未聞と猛反発が起こり!?
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キャラクター紹介
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エディット
伯爵家長女。オメガのせいで虐げられる日々。ヴィクトルは実は初恋の相手で…。 -

ヴィクトル
クザヴィエ帝国の若き皇帝。アルファ至上主義の改革を目指すのには理由があり!?
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試し読み
(まさか、こんな時に発情期がくるなんて……!)
エディットは激しく動揺していた。
出来損ないのオメガの自分には、生涯発情期が訪れることはないだろうと思い込んでいたのだ。そのため、オメガなら常備している、発情を抑える薬も携帯していなかった。
あっという間に体温が上昇し、呼吸が乱れた。下腹部の奥のどこかが灼けるように熱くなり、どくどくと脈打つのがわかった。身体中の感覚が異様に敏感になり、そよぐ夜風にすら肌がひりひりと震える。太腿の狭間に未知の疼きが走り、媚壁がわななく。白い肌にじっとりと汗が噴き出してきた。
そして、甘ったるく濃厚な香りが全身から漂い始めたのが、自分でもはっきりとわかった。
エディットは足元がふらつき、噴水の縁に手をかけて身体を支えた。
「君、どうしたんだ? 具合が悪そうだ」
エディットの異変に気づいたヴィクトルが、歩み寄ってくる。
エディットはハッとして大声を出してしまった。
「私に近づかないでください!」
ヴィクトルが目を見開いて立ち止まった。
アルファであるヴィクトルが発情した自分に近づいたら、たちまち劣情をもよおしてしまうかもしれない。
ヴィクトルにとって、皇妃を選ぶ大事な「月夜の儀式」を台無しにしかねない。ヴィクトルのために、彼にふさわしい令嬢を選んで欲しい。
エディットはふらふらと立ち上がり、後退りしながら声を張った。
「私に触れてはなりません、陛下、お願いです!」
ヴィクトルは美麗な眉を顰める。
「だが、君はもしかして――――」
エディットはそれ以上聞く耳を持たず、くるりと踵を返した。
スカートを絡げ、必死で皇城に向けて走った。
(ヴィクトル陛下からできるだけ離れなければ││どこかに隠れなければ……)
「待って――――」
背後からヴィクトルが声をかけてきたが、エディットは夢中で中庭を駆け抜け、回廊が目に入るとそこから闇雲に足を進めた。
月が雲に隠れ、回廊がすうっと暗闇に吞まれる。
息が上がり、もう一歩も走れなかった。
エディットは回廊の円柱にもたれ、ぜいぜいと息を切らした。
身体が火照ってどうしようもない。
昂る熱い滾りが、股間の恥ずかしい箇所に集まってくる。胎内が苦しいほど疼き、媚肉がむず痒い飢えに苛まれて、居ても立ってもいられない。
オメガの発情が、こんなにも激烈なものだとは想像もしていなかった。
「ああ……どうしよう……」
股間がはしたなく濡れていくのがわかる。そこを掻き毟りたい衝動に駆られ、エディットはへなへなとその場に頽れた。
「助けて……苦しい……誰か……」
両手で身体を抱きしめてがたがた震えていると、
「もし、お嬢さん、どうしたのですか? そんな暗がりで――――」
と、若い男の声がした。
その声の響きにすら感じ入ってしまい、エディットはびくんと身を竦ませた。おずおずと顔を上げると、回廊の先に一人の青年貴族が気遣わしげな顔で立っていた。
上等な身なりからして、今夜の祝賀の席に招かれた貴族の一人だろうか。エディットは青年貴族の額にある花びら形の印を見て、全身から血の気が引いた。アルファの男性だ。
エディットはぶるぶると首を振って、悲鳴のような声で答えた。
「なんでもありません! ちょっと休んでいるだけです。ほっておいてください!」
「しかし、顔が真っ赤ですよ――――」
青年貴族が近寄ってきて、エディットの肩に手をかけようとした。
その時、月が雲から顔を覗かせ、回廊に月光が差し込んだ。エディットの真っ赤な髪が、煌々と照らし出される。
青年貴族がハッと息を吞む。
「あなたは、オメガ――――」
瞬間、青年貴族の表情がみるみる凶暴なものに変化した。彼の目に妖しい欲望の火が点る。
「オメガだ、オメガの女だ」
青年貴族は、やにわにエディットの腕を掴んだ。ものすごい力に、激痛が走った。
「あっ……」
あっという間に青年貴族に抱きすくめられてしまった。
彼は童貞のアルファ男性だったのだ。
「ああ美しい――――この甘い香り、堪らない」
青年貴族は酩酊した声を出し、エディットの髪に顔を埋める。
「欲しい――――今すぐ、欲しい」
青年貴族は体重をかけて、そのままエディットを床に押し倒した。
「やめてっ、やめてください!」
エディットは悲痛な声を上げ、必死で抵抗しようとした。
だが発情した青年貴族は、もはや理性を失っていた。彼は目を血走らせ、はあはあと息を荒くした。乱暴にエディットのスカートを捲り上げる。
「いやあっ」
エディットは両脚をばたばたさせたが、青年貴族の手がねっとりと太腿を這い回ると、みるみる全身から力が抜けていく。
青年貴族の指が軽く内腿に触れただけで、肌が総毛立った。体内からなにかとろりとしたものが溢れてくるのがわかる。
「さあ、ひとつになろう」
青年貴族はエディットに馬乗りになり、もどかしげにトラウザーズの前立てを緩める。
「ひっ……」
エディットはこのまま犯される、と絶望感に目を閉じた。
直後、青年貴族の背後にぬっとヴィクトルが現れたのが目に入った。
ヴィクトルは青年貴族の襟首を掴むと、力任せにエディットから引き剥がした。青年貴族が真後ろに吹っ飛んだ。
「ぐわっ」
青年貴族は円柱に頭を打ちつけ、どさりと床に倒れ込んだ。
「おいで」
ヴィクトルに素早く横抱きにされた。
「あっ……いけません。私はこの通り、オメガなのです。しかも発情期に入ってしまったのです。どうか、捨て置いてくださいっ」
エディットは必死に身を捩った。ヴィクトルもそこの青年貴族のように激しい劣情をもよおしてしまう、と怯えた。
「大丈夫だ。私はそうそう発情しない」
ヴィクトルが落ち着いた低い声でささやいた。
響きのいいコントラバスの声の響きに、エディットの背中がぞくぞく震える。
「なんだ? なんの騒ぎだ?」
回廊の向こうから近衛兵たちの声が聞こえてきた。
「こっちだ」
ヴィクトルは回廊を反対方向へ急いだ。彼はエディットを抱きかかえたまま、風のように回廊を走り抜ける。右に左にと何度か折れた先に、重厚な両開きの扉が見えてきた。
そこでは槍を構えた近衛兵たちが厳重に警護していた。彼らは突然姿を現した皇帝に少しうろたえる。
「陛下、今は『月夜の儀式』の最中ではありませんか?」
「他言無用。扉を開け」
ヴィクトルは有無を言わさぬ口調で命令した。
「はっ」
近衛兵たちは粛々とヴィクトルの命令に従う。重々しく扉が開いた。
ヴィクトルはエディットを抱いたまま、するりと内側に身を滑り込ませた。そして威厳のある声で告げる。
「誰も入れるな」
「承知しました」
背後で素早く扉が閉まる。
そこは豪奢な部屋であった。
クリスタルのシャンデリアが明るく室内を照らし、丸天井には紺色と白の釉薬タイルが張られ、床には紺色と白を基調とした豪奢な絨毯が敷き詰められてある。壁一面には皇帝家の紋章であるドラゴンが浮き彫りにされてあった。そこに歴代の皇帝の肖像を織り込んだタペストリーが幾つも飾られてある。黒檀の家具には、すべて精緻な金細工が施されてある。
紺色と白は皇帝家のモチーフカラーであり、他の貴族が使うことは許されない。
では、ここは皇帝の部屋なのだ。
ヴィクトルは革張りの大きなソファの上に、エディットをそっと下ろした。
「ここには私以外誰も入れない。安心しなさい」
ヴィクトルは安心させるようにそう言うと、銀のワゴンの上にのったクリスタルの水差しを手に取り、金のカップに水を注いだ。
彼はそのカップを持ってエディットに歩み寄り、身を屈めて差し出した。
「気分はどうだ?」
「あ……ありが、とう……ございます……」
カップを受け取ろうとした手がカタカタ震えて止められない。
あわやというところを救われてホッとしたせいか、さらに欲望が昂ってしまっていた。
服の内側で、乳首が痛みを覚えるほど硬く凝ってしまい、刺激を求めてジンジン疼く。媚肉は燃え上がるように熱く火照り、そこにも刺激が欲しい。突き上げる衝動をやり過ごそうと、もじもじと太腿を擦り合わせたが、軽い性的快感が生まれてきて、よけいにせつなくなってしまう。
もはや、理性ではこの激烈な欲情を抑えることはできそうになかった。
思わず、両手で自分の乳房を掴んで揉みしだきそうになった。
「ああいやっ……見ないで、こんな私……」
恋する相手の目の前で、はしたなく欲情している自分が惨めで仕方ない。エディットは涙目で訴える。
「陛下、どうか、私を助けてください……このままでは、おかしくなってしまう……」
「っ――――」
ヴィクトルの白皙の顔が紅潮してきた。
(ああいけない……陛下の劣情を刺激してしまう……!)
取り返しのつかない事態になる前に、ヴィクトルから距離を置かねば、と頭の中では思っているのに、汗ばんだ両手はヴィクトルの上着に縋りついてしまう。
「どうにかしてください……苦しい……辛いの……」
「オメガの発情とは、かくも激しいものなのか」
ヴィクトルは少し掠れた声でつぶやき、エディットの顔に手を伸ばしてきた。
彼の長く節くれた指先が頬を撫でる。ひんやりした指の感触に、びくりと腰が跳ねた。ヴィクトルが乱れた赤い髪をそっと掻き上げた。耳朶に触れる指の動きに、背中がざわざわと慄いた。
「あ、ああ……」
身体中の神経が、ヴィクトルの指の動きに集中している。
「なんとかしてあげよう」
ヴィクトルが密やかな声で耳元でささやいた。
彼はエディットの隣に腰を下ろした。そのまま、両手でエディットの顔を包み込んだ。そして、そっと仰向かせる。
エメラルド色の瞳と視線が絡んだ。まるで新緑の深い森のような神秘的な瞳に、魂まで吸い込まれそうな気がした。
ヴィクトルの端整な顔が迫ってきた。彼の少し乱れた息遣いが頬を擽り、それだけで身体の芯がきゅーんと甘くれた。ヴィクトルが身に纏う若草のような爽やかなオーデコロンの香りが、エディットの鼻腔を心地よく満たす。
柔らかなヴィクトルの唇が額に押しつけられた。そのまま、鼻先、鼻梁、両頬と、口づけが優しい雨のように落とされる。その心地よい感触に、エディットは思わず目を閉じた。
最後に唇が重なる。
「ん……」
生まれて初めての口づけに、強い酒でも飲んだみたいに頭の中がくらくらする。わずかに唇が離れ、ヴィクトルがはあっと深いため息をついた。
「あなたの唇は、なんて柔らかくて甘いのだろう」
再び唇が塞がれる。
「……んぅ……っ」
始めのうちは小鳥の啄みのようだった軽い口づけが、次第に熱を帯びてくる。その口づけの刺激だけで、エディットの全身から力が抜けていく。ヴィクトルは顔の角度を変えては、繰り返しエディットの唇を味わった。ふいに唇を舐められ、濡れた男の舌先がエディットの唇の合わせ目をぬるりとなぞった。悩ましい感触に、思わず声が漏れた。
「あ、ふぁ……」
開いた唇からするりとヴィクトルの舌が侵入してきた。そんな口づけがあるとも知らなかったエディットは激しく動揺する。顔を振り解こうともがいたが、ヴィクトルの右手が素早く後頭部を抱え込んで、動かぬようにしてしまった。ぬるつく熱い舌の感触があまりに心地よくて、すぐに深い口づけに耽溺してしまう。
「んんんっぅ」
ヴィクトルの舌は、エディットの口腔をゆっくりとまさぐった。唇の裏側から歯列、口蓋、舌の裏側まで丹念に舐められた。彼の舌がひらめくたびに、背中がぞくぞく震えた。
「は、はふ……」
最後に舌を搦め捕られ、きつく吸い上げられた。
その瞬間、痺れる愉悦がうなじのあたりから背中に走り抜け、頭が真っ白になる。ヴィクトルは強弱をつけて、繰り返し舌を吸う。
強い快美感に、子宮の奥方がつーんと甘く痺れ、媚襞が小刻みに収縮する。
「ふぁ、あ、ん、ゃ……や……ぁ」
くちゅくちゅと音を立てて舌が擦れ合い、溢れる唾液を啜り上げられる。猥りがましい口づけが与えてくる未知の悦びに、発情した肉体はみるみる高揚していく。
きゅうきゅうと淫襞が収斂を繰り返し、下肢が蕩けそうに感じ入ってしまう。身体の奥から熱い喜悦の波が押し寄せ、意識が攫われそうになった。
ヴィクトルが舌の付け根を甘噛みしてきた直後、なにもかもわからなくなった。
「んんーっ、んんんんぅっ」
エディットはくぐもった喘ぎ声を上げ、身を強張らせた。直後、ぐったりと力が抜けた。
「はあっ――――」
ヴィクトルがようやく顔を離した。彼の唇がちゅっと音を立てて離れると、二人の唇の間に唾液が銀色の糸を引いた。
「は、はぁ……はあぁ」
自分の身になにが起こったかも理解できないまま、エディットは濡れた眼差しでぼんやりとヴィクトルを見上げた。彼の目も熱っぽく潤んでいる。
「すごい。口づけだけで達してしまったか」
ヴィクトルが感に堪えないような声を漏らす。
「あ、ああ……熱いの、身体が、すごく熱い……」
深い口づけで与えられた性的快楽は、エディットの情欲をさらに燃え上がらせて、もう制御することはできなかった。
自分のあらぬ箇所が灼けつくように疼き、なにかで満たして欲しくてせつなく蠢動する。
「まだおさまらぬか。辛いのはどこだ?」
ヴィクトルの掠れた声は、エディットの欲望をますます煽る。
もはや恥も外聞もなかった。この滾る情欲をどうにかしてもらわねば、ほんとうにおかしくなってしまいそうだ。エディットはせわしない呼吸を繰り返し、身悶えながら訴える。
「あ、あそこが……辛いの……どこもかしこも……」
訴えながら、エディットは自分のスカートを捲り上げた。そこにこもっていた発情した甘酸っぱい香りが、ふわりと部屋に漂う。
エディットは膝を立てると、両脚を開く。こんなはしたない行為をするなんて、自分でも信じられない。だが、オメガの発情の衝動はかくも激しいものだったのだ。
隘路からなにかが溢れ、下着がじっとりと濡れているのがわかった。もどかしげに下着を引き下ろし、濡れた瞳で懇願する。
「お願い、どうにか、してください……」
「――――わかった」
ヴィクトルがエディットを抱き寄せる。彼の呼吸も乱れている。
「触れるぞ」
掠れた声でそうささやきながら、ヴィクトルの右手がエディットの下肢に伸ばされた。
大きな手がさわさわと太腿を撫でる。
「あん……」 -
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