書籍紹介
俺の女になるんだろ~若頭に囲われたら、いきなり結婚宣言されました~
俺の女になるんだろ~若頭に囲われたら、いきなり結婚宣言されました~
ISBN:978-4-596-53731-7
ページ数:290
発売日:2024年2月2日
定価:740円+税
  • あらすじ

    助けたカタギの女が可愛すぎた!?
    若頭は溺愛を我慢できない

    「ヤクザの女になるなら助けてやる」婚約させられたDV男から逃げた瑞緒は、助けてくれた久我に一目惚れ。彼の女になることに。だけど愛撫で蕩かすくせに最後まではシてくれないのはどうして…? 久我は悩む瑞緒を甘やかし、どんどん好きにさせられて。そんなとき組長に二人の関係を問われた久我は、「結婚するのはこいつだけだ」と言い出し!?

  • キャラクター紹介
    • 桐生瑞緒(きりゅう たまお)
      ある事情で久我組に身を寄せる。若衆に姐さん扱いされ久我にも溺愛されるが!?

    • 久我宗輔(くが そうすけ)
      久我組の若頭。保護するつもりで連れ帰った瑞緒が好みのタイプのど真ん中で!?

  • 試し読み

     慰めてもらえるなんて考えていなかったけれど、容赦なく断じられて瑞緒は唇を噛んだ。大前に応じたときから、自分でも薄々感じていたのだ。こんなのおかしい、できるわけがない、と。それでも現実から目を逸らして今日まできてしまった。
    「……無知で世間知らずだったと、今は思います」
    「いや、責めてるわけじゃ……悪い、どうもずけずけものを言う性分らしくて」
     ふいに鋭さが消え、戸惑っているように聞こえる声に、瑞緒は顔を上げた。久我は気まずそうな横顔で、火がついていない煙草を指先で弄んでいる。それから思い出したように、テーブルに封筒を置いた。
    「できるだけ奴に見つからなそうな場所へ逃げろ。親戚や会社関係はだめだ。知りあいのひとりやふたりいるだろう? これは当座の資金に使え」
     封筒はかなり厚さがあり、瑞緒は慌てて両手を振った。
    「受け取れません! さっきだって――あ、あのお金は必ずなんとかしますから――」
    「こっちが勝手にしたことだから、いいって言っただろう。とにかくどこかへ――」
    「行くところなんてありません!」
     瑞緒がそう言うと、久我は眉根を寄せた。
    「は? 若い女が、転がり込めるとこのひとつもないってのか? 大学時代のツレとか」
    「仲がよかった子は、就職で遠方に引っ越してしまいました。それにバッグごとスマホも置いてきてしまったから、連絡先がわかりません……」
     俯いた瑞緒の耳に、久我の深いため息が聞こえた。
    「てことは、家の鍵もないんだな」
     そうだ。自宅にも帰れない。それに、大前の目があるかもしれないと思うと怖くて、とても足を向ける気になれなかった。
    「あの……図々しいお願いなのは承知ですが、少しの間ここに置いてもらえないでしょうか……?」
     恐る恐る口にしたけれど、言葉になって出たとたん、それがいちばんいい、いや、それが望みだと思った。ここが――久我のそばがいちばん安心できる気がする。ほんの数時間前に会ったばかりの人なのに、しかもヤクザだというのに、どうしてなのだろう。
     守ってくれたから……?
     そんなことを考えていた瑞緒の前で、久我は眉間に深々としわを刻んだ。
    「……堅気の女がヤクザに関わるんじゃねえよ。いいから、これ持ってさっさと出ていけ」
     テーブルの上で押しやられた封筒を、瑞緒は両手で押し返した。
    「助けてくれたじゃないですか。もう関わったってことでしょう?」
     思わず言い返すと、久我は驚いたように目を開いた。瑞緒自身、ヤクザだという相手にこんなふうに言い返せるのが不思議だったけれど、必死なのだ。ここを離れてはいけない、ここにいたい。
     どうすればいいの? どう言えば、久我さんを納得させられる?
    「ヤクザの女になるなら、助けてくれるって言いましたよね?」
     するりと口から滑り出た言葉に、久我は虚を突かれたようだった。これだ。このまま押し通すしかない。
     瑞緒はソファを離れて、久我の前に立ちはだかった。相変わらず眉間にしわを寄せたまま、久我は瑞緒を見上げた。どこか困惑しているようにも見える。
    「……あなたの女にしてください」
     世の中、うまくいくことばかりではないと、両親の死からこの数か月で知った。店と従業員は無事だったけれど、瑞緒は大前との婚約を余儀なくされた。そこから逃げ出せたと思ったのもつかの間、今また独り放り出されそうになっている。
     波風が立つのは同じなら、誰かに指示されて流されるより、自分で決めて進んでいきたい。
     大前から逃れるために、瑞緒は久我のものになる。嫌だとは思わない。出会ったばかりの相手にそう思えるのは自分でも不思議だけれど、久我が現れたあの瞬間、瑞緒は本当に救われた気がしたのだ。
     危機を救いに駆けつけた騎士みたいだったな……。
     ふと甘い空想が頭をよぎったが、冷えた声音が瑞緒を現実に呼び戻した。
    「ばか言ってんじゃねえ。落ち着いて考えろ」
     すっくと立ち上がった久我に、上から睨みつけられる。しかし瑞緒は引かなかった。
    「考えて決めたんです」
     思わず睨み返してしまったかもしれない。久我の表情に険が走ったから。
    「ああそうかよ!」
     ふいに痛いほど手首を掴まれ、瑞緒は引きずられた。リビングを出て廊下を進み、最奥のドアの中へ連れ込まれる。どうにか自分で歩いていたものの、久我の歩幅は大きく、歩みも速くて、周りを見る余裕もない。
    「あっ……!」
     突き飛ばされた身体を受け止めたのはキングサイズのベッドだった。両手を伸ばしても端まで届かないほど広いベッドに呆然としていると、背中に遠慮のない重みが加わった。
    「……う……」
    「俺の女になるんだろ?」
     耳元で響いた低い声に、瑞緒の背中がさあっと粟立った。なんて硬い身体なのだろう。
     肉体に潜む圧倒的なパワーが感じられて、瑞緒は慄いた。そもそも異性とこんなふうに密着したのは初めてなのだ。
     大学までエレベーター式の女子校だった瑞緒は、これまで男女交際をしたことがない。派手に遊んでいるグループはいくらでもあったが、懇意にしていた友人たちが真面目に学生生活を送るタイプだったのと、チアリーディングの部活に明け暮れていて、異性と交流するよりもそちらのほうが楽しく、清く正しい日々を過ごしていた。
     久我の手が瑞緒の身体とシーツの間に差し入れられて、スウェットの裾から潜り込んできた。反射的に身体をシーツに押しつけて阻止しようとするけれど、忍び笑いに項を擽られる。
    「嫌ならそう言え」
    「……いっ……嫌じゃありません……」
     小さなため息がつかれたような気がしたが、這い上がった手に胸を掴まれて、それどころではなくなった。
    「あっ……」
    「なんだ、重装備だな」
     ウェディングドレス用のインナーはボーンの入ったビスチェで、たしかにしっかりと上半身を包んでくれているけれど、背中は大きく開いているしストラップもないから、簡単にずれてしまう。実際、呆気なくブラカップを下げられて、乳房を直に手で包まれた。ひやりとする体温と、硬い手のひらの感触に、瑞緒は唇を噛みしめた。
     横たわって背後から抱き寄せられているが拘束されているわけではない。本気になれば決して逃げられなくはないだろう。しかしヤクザの女になれなければ、ここから追い出されてしまう。
     やわやわと乳房を揉んでいた指が乳頭に押し当てられて、捏ねるように撫で回される。それが次第に硬く尖っていくのを感じて、自分の意思に反した反応に瑞緒は混乱した。心臓は大きく速く打ち鳴らされていて、それが久我に伝わってしまうのではないかと気が気ではない。
     久我は片手でビスチェのホックを外そうとしたようだが、ずらりと並んだそれが面倒になったのか、手を下に伸ばした。スウェットパンツのウエストから潜り込まれて、瑞緒はとっさに身を捩る。
     胸を触られるだけでパニックなのに、これ以上されたらどうすればいいのか。いや、自分がどんな反応をするかわからない。しかし、拒絶したら追い出されてしまう――頭の中でそんな葛藤を繰り広げながら、けっきょく身を固くしていたのだが――。
    「やっ……」
     躊躇のない指がショーツの中まで入ってきて、瑞緒は声を上げた。
    「最近は素人もこれか? まさか天然ってことはないよな?」
     一瞬止まった指にするりと無毛の恥丘を撫でられ、瑞緒ははっとして息を呑む。頬がカアっと熱くなるのを感じた。
     美容サロンにはさまざまな施術があるが、いちばん利用者が多いのは脱毛だ。瑞緒もチアリーディングのコスチュームをまとう都合上、仲間と申し合わせて腋下の脱毛は十代のころに済ませた。
     利用したのはもちろん実家のサロンで、仲よくしていたスタッフにVIOも強く勧められたのだ。
    『これからもっと流行るよ。アメリカなんて当たり前だしね。水着着たりしても全然気にならないし、絶対いいって』
     そのときはそういうものかと思ったし、言われて施術に踏みきったチアのメンバーもいたので、瑞緒もやってしまった。誰に見せるわけでもない、なんて思ってもいたのだ。
     それがまさか、こんなことになるなんて……。
     羞恥と後悔に襲われていた瑞緒は、ふいにスリットに分け入った指に身体を揺らした。
    「あ、あっ……」
     指はラインをなぞるように行き来して、瑞緒の息を乱す。遠慮のない動き以上に瑞緒を混乱させたのは、その動きを妨げないほど潤んでいた己の身体だった。
     嘘……濡れてる……? そんな……。
     本意ではない行為なのに、どうしてこんなことになっているのだろうと、自分の身体に裏切られた気分だ。
     蜜をまとった指に先端の花蕾を撫で擦られ、その刺激に瑞緒は何度もびくついた。久我の愛撫に応えてしまっているようで、恥ずかしくてたまらない。しかし堪えようとすればするほど、敏感に反応してしまう。
     項を舐められて、吐息を感じ、ふっと力が抜けた。同時に久我の指がさらに奥へと滑って、中に押し入ってくる。

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