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試し読み
背中のボタンが外されて、そのまま下着まで肩から引き下ろされる。なんて手際がいいのだろうと、あきれてしまう余裕もなかった。
「はっ……んっ……んぅ……んっ……」
胸の谷間にキスされる。そのまま上目遣いに見上げられて、エヴェリーナは真っ赤になった。彼の手が背中を撫で、そうして思わせぶりに片方の乳房に唇が寄せられる。触れるか触れないかの微妙なところで止められて、もどかしくて身体が揺れた。
触れられてもいないのに、胸の頂が硬くなり始めている。それに気づいたヴィルヘルムは、そこにふっと息を吹きかけてきた。
「んぁっ!」
こらえようとしていたはずの声は、あまりにも簡単にこぼれてしまった。今度は舌の先でつつかれ転がされ、唾液で濡らされてからまた息を吹きかけられる。
「んっ……ふっ……んぅ……ふっ……」
こんなところで声を上げてはいけないのに。手の甲を口に押し当てて、なんとか上がる嬌声を殺そうとする。
「……やだ、そんなの……そこ、触っちゃ、だめです……!」
「触ってない。見てるだけ」
「やっ、違うっ……!」
たしかに一度唾液で濡らした後は、彼は直接触れているわけではない。ただ、目の前に差し出されたそれに息を吹きかけ、刺激しているだけで。
見られているだけなのに、どんどん身体が熱くなっていく。自分の身体はいつの間にこんなにもどん欲になってしまったのだろう。
その淫らさを申し訳ないと思う反面、身体の奥からはじりじりとした愉悦が込み上げてくる。胸の頂が、触れられてもいないのにまた硬度を増した。視線だけで、こんなにも感じるなんて想像したこともなかった。
「何が違うんだろう──エヴェリーナ、ほら……また、硬くなったみたいだ」
「意地が……悪い、です……」
羞恥のあまり、目にじわりと涙が浮かんだ。こんな風に意地悪なことを言うヴィルヘルムなんて知らない。
引き下げられた衣服をもとの位置に戻そうとしたら、そうさせないと言わんばかりに彼の手に乳房が包み込まれた。
「──どきどきしてる。感じてくれた?」
「……知りません」
ぷいと顔を背けたことで目の前に差し出された耳に、ヴィルヘルムの唇が寄る。
「俺は、うれしいんだ。エヴェリーナが素直な顔を見せてくれるようになったから」
「ひゃっ……あっ、あんっ」
そんなことをささやきながら、耳朶に歯を立ててくるのだからたちが悪い。けれど、言われて初めて気が付いた。 -
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