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あらすじ
君のような女性は初めてだ
政略結婚で嫁いだ陛下は、遠い昔の憧れの人で!?大国アロンドラの新王ヘンドリックに嫁ぐことになったセレスティア。ヘンドリックは良王ながらも少し気難しいのだが、似た気質の兄を持つセレスティアは動じず彼を癒やせるよう心を尽くしていく。「君のような女性は初めてだ」口は重いものの時に甘く身体と心を重ねてくる彼に、想いはますます募るばかり。だがヘンドリックが外地で突然刺され――!?
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キャラクター紹介
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セレスティア
サンモニカ王国の王女。ヘンドリックに嫁ぐことに。 -
ヘンドリック
アロンドラ王国の若き王。
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試し読み
「あまり意識しないでくれ。――こんな場所で、触れたくなる」
そんな囁きとともに顎を持ち上げられて、もう一度ぎこちないキスをされる。
セレスティアは目を丸くしたが、すぐにヘンドリックの首へと腕を回した。
濡れるのも厭わずにぎゅっと抱きついたら、ため息交じりに背中をさすられる。
「濡れてしまうだろう、セレスティア」
「濡れても、構いません。それより、さっきの台詞……私に触れたいと、思ってくださっているのね」
ヘンドリックは偏屈そうに口角を歪めつつも、否定せずに「ああ」と短く答えた。
「だったら、どうして今まで触れてくださらなかったの?」
「初夜は、君に負担をかけただろう。だから、二度目は時間を置いたほうがいいかと」
「それだけですか?」
「忙しかったのも、ある。あとは、まぁ……さっき言ったように、君との接し方が分からずにいたから」
パッチリと目を開けて耳を傾けていたら、ヘンドリックが仏頂面になった。
「もしかして、そのことでも勘違いをさせていたのか」
「どうしてなんだろう、とは思っていました」
「自分でも言葉足らずな自覚がある。特に、君に対しては……」
そこで言葉を切り、彼は改まったように咳払いをする。
「とにかく、どれも私の問題で、君のせいじゃない」
――やっぱり、ヘンドリック様ってお兄様に似ているのね。
ここまでのやり取りを踏まえて、セレスティアはそう思った。
戸惑った末にそっけなくなってしまうところや、素直じゃなくて不器用なところも、自分に非があると分かったらすぐに認めてくれるのも兄とよく似ている。
どうやら、セレスティアの態度を嫌がっているわけでもなさそうだ。
――それなら私も臆さず、思いきって行動するだけだわ。
セレスティアは両手でヘンドリックの頬を挟んだ。身を乗り出して、自分からキスをしてみる。
「!」
「言葉足らずでもいいです。不安になったら、私もちゃんと訊くようにしますから、あなたのことを少しずつ教えてください」
彼は、ずっと忘れられなかった男性だ。
素直じゃなくても、言葉足らずでも構わない。
分かりづらい気遣いや、そっけない態度に隠れている優しさはとっくの昔に知っている。
「それに、ヘンドリック様にも私のことを知ってもらいたいです」
「君のこと?」
「はい。と言っても趣味とか好きな食べ物とか、そういうことだけではなくて、性格とかどういう考え方を持っているのか、とか……言葉で説明できないことも、あなたには知ってほしいなって思うんです」
「…………」
「そして、いつか――」
セレスティアは胸いっぱいに息を吸いこんだ。
硬直するヘンドリックの背に腕を回して、か細い声で訴える。
「あなたにも、私を受け入れてほしいです」
「……もう受け入れているだろう」
「政略的な結婚相手としてではなく、ただのセレスティアとして、ですよ」
今度こそヘンドリックが絶句した。
切れ長の青い瞳も、真ん丸に見開かれている。
きっと考えたこともなかったのだろうなと思い、不意にセレスティアは泣きたくなったが涙を呑みこんだ。
ヘンドリックの顔を引き寄せて、また自分から唇を押し当てる。
――私は他の誰でもなく、あなたがいい。
そんな想いをこめてたどたどしいキスをしていたら、ヘンドリックが呻いた。
「待て、セレスティア……それ以上は……」
セレスティアは制止も聞かずに唇を重ね続けた。
ネグリジェはすっかりお湯に濡れて、用途を成していない。胸の膨らみや腰のくびれまで露わになっていたけれど、無意識に身体を押しつける。
すると、固まっていたヘンドリックがいきなり抱きしめてきた。
「んっ、う……」
「……はっ……」
肩で息をしたヘンドリックの腕に抱きこまれて、キスが濃密なものに変貌した。顎を固定された状態で口の中に舌がねじこまれる。
「むっ、ん……あっ……」
初夜を思い出させる淫蕩なキスに、セレスティアは頬を染めながら身震いした。
白い湯気が漂う浴場にクチュクチュと唾液の混じる音が響く。
「んん、ん……ヘンドリック様……」
口づけに没頭する彼の熱気にあてられて、セレスティアの身体も急激に火照っていく。
四肢の力が抜けた途端、腕を掴まれてヘンドリックの膝に乗せられた。
向かい合う体勢で座らされて背中をぐっと抱き寄せられる。
「……はぁ……はぁ、っ……」
息も絶え絶えになった頃、ようやくキスが終わる。
逞しい肩に凭れかかって呼吸を整えていると、彼にきつく抱擁された。消え入りそうな声で耳に囁かれる。
「――私にそんなことを言うのは、君くらいだ」
「え?」
大きな手のひらが頬に添えられて、セレスティアは上を向かされた。
すぐそこにあるヘンドリックの顔はほんのり赤いが、相変わらずの顰め面だ。
「こんな気難しい男に、受け入れてほしい、なんて」
指の腹でそっと頬を撫でられた。
セレスティアが微笑み、ヘンドリックの手のひらに自ら頬をすり寄せたら、彼の表情が憂いを帯びたものに変わる。
「やっぱり、君のような女性は初めてだ」
「珍獣とは言わないでくださいね」
「……言うものか」
ヘンドリックの声が小さくなっていく。
「それに、私だって…………君となら……うまくやれると、思って……」
耳を澄ませても、彼の言葉は最後まで聞き取れなかった。
ヘンドリックが長々と息を吐き出し、セレスティアの頭を抱き寄せる。柔らかな栗色の髪を撫でながらぶっきらぼうに言い直した。
「君のことをもっと知れるように、私も努力する」
「ええ」
彼に抱きついて頬ずりしていたら、また顎を持ち上げられた。ヘンドリックの顔がゆっくりと近づいてくる。
キスをされるのだと分かり、セレスティアも目を閉じた。
後頭部にそっと手を添えられて唇の表面がちゅっと触れ合う。
軽いキスをしながら口を開けたら、ヘンドリックの舌がぬるりと忍びこんできた。
「っ、ふ……」
「……は……だめだ」
たっぷりと舌を絡める口づけをしてから、彼が顔を離す。
「これ以上は、止まらなくなる」
久しぶりだから、とヘンドリックが目を逸らそうとしたが、セレスティアはさせまいと彼の頬を掴んだ。
「私たちは夫婦になったんですよ。こういうことをして、相手を知るのも……大事なことだと、思います」
最後のほうは声が震えてしまったけれど、きっぱりと言いきる。
夫婦ならば、きっと肌を重ねるひとときも絆を深める手段の一つだ。
「だから、やめないでください」
「まったく……君が相手だと、自分が腰抜けになったように感じるな」
はぁと熱い吐息をついたヘンドリックが唇に齧りついてきた。
セレスティアを腕の中に閉じこめて、顔の角度を変えながら口内を犯していく。
「ん、ん、っ……ヘンドリック、様……」
ヘンドリックの手が背中を滑り落ちていった。
濡れたネグリジェ越しに臀部をぎゅっと掴まれて、やわやわと揉まれる。
「っ、あ……」
淫らな手つきに身悶えていたら、ぐっと腰を押しつけられた。
硬い棒みたいなものが腹部に当たったので、セレスティアは目線を落とす。
肌にぴったりとくっついたタオル越しに、逸物が大きくなっているのが分かった。
彼女の視線に気づいたヘンドリックが口の端を歪める。
「君とあんなキスをしたら、反応もする」
セレスティアの紅潮した頬に口づけて、彼の手がネグリジェの裾に入ってきた。
「直に触れたい」
「……脱ぎます、ので……ちょっと待って……」
自分で脱ごうとしたら、ヘンドリックに遮られた。湯を吸って重くなったネグリジェをたくし上げられる。
彼はやや強引にネグリジェを脱がせると、露わになった乳房に吸いついてきた。
「はっ、う……」
先端を舌でチロチロと舐められたので背中を仰け反らせたら、足の間に硬いものを押し当てられた。
濡れたタオル越しにこすりつけられて四肢が震える。
セレスティアは思わず腰を浮かしそうになったが、臀部を掴まれて引き下ろされた。敏感な割れ目に、硬いものがぐりぐりと当たる。
「あぁっ、あ……」
蜜口だけじゃなく、その上にある突起にまで微細な刺激が与えられた。
ヘンドリックが肩で息をしながら、セレスティアのたおやかな首に吸いつく。
強く吸いついて痕を残し、掴んだ彼女の臀部を軽く揺すった。
「……う、ぁ……あ、っ……」
硬いもので気持ちのいいところをこすられて、甘い感覚が全身を駆け抜ける。身悶えた拍子に、たわわな乳房が揺れた。
すかさずヘンドリックが口に含み、ぷくりと尖った頂を舌で転がす。
軽く折り曲げた足がお湯を叩き、パシャンと跳ねた。
セレスティアは快楽のうねりに任せて、ヘンドリックが乳房から口を離した隙に、彼の頭を抱き寄せる。
「ヘンドリック様……は、むっ……」
「っ……う……」
テクニックも何もない稚拙な口づけを仕かけると、威嚇するように唸ったヘンドリックもキスを深めた。
無遠慮に舌が挿しこまれて口内をかき回していく。
淫靡なキスをしていたら、腕をぐいと引かれて体勢を変えられた。
膝の上で横向きに座らされて、ヘンドリックの手がセレスティアの足の間へ伸びる。
長い指で無防備な下半身を撫で回し、愛液を滴らせる秘裂をなぞり上げた。
「っ、ん……あぁ、あ……」
太い指がずぶずぶと挿入され、内側を入念に慣らされた。
お湯の音ではない湿った音が反響する。
セレスティアはあえかな嬌声を零し、また彼の唇にちゅうっと吸いついた。
しとどに濡れた蜜口はヘンドリックの指を二本も飲みこんで、とろみのある愛液が伝い落ちていく。
だが、今日は慣らされるだけでは終わらなかった。
彼の指が充血した秘玉をかすめて、目の前がチカチカするような快楽に襲われる。
「あっ……!」
「ここは刺激が強そうだから、前回はあまり触らないようにしたんだが」
今日は試してみよう。
ヘンドリックが掠れた声で囁き、いたいけな花芽を指先で弄ってきた。
「は、あっ……ヘンドリック様……」
くりくりと刺激を受けて、電撃みたいな快感が走り抜ける。
同時に秘裂へ挿入された指も動かされるから、たちまち全身が蕩けていく。
「あ……ち、力が……入ら、ない……」
顔を上げたら、近いところに彼の顔がある。
普段は鋭いヘンドリックの目にほのかな熱が宿り、顔も火照っていた。何かを堪えるように眉はひそめられている。
臀部に当たる逸物の硬さも増して、セレスティアが身じろぎすると臀部にこすれた。
――私を求めてくれているのね。
顔を近づけると、ヘンドリックが唇に齧りついてきた。
初めての夜と比べたら、今日の彼はたくさんキスをしてくれる。
前回は一定のペースで進められた愛撫も、より甘やかで、濃厚だ。
セレスティアは淫らな指遣いに酔わされた。湯に浸っている爪先が小刻みに震える。
「は、ぁ、ああ……は、っ……」
秘玉を弄られるたびに、小波のごとく快楽が押し寄せてくる。
やがて、ひときわ大きな官能の波に攫われた。
「あぁあ……っ」
セレスティアは為す術もなく波に身を委ね、四肢をビクンッと強張らせた。全身の血液がどくどくと脈打っている。
首を捩らせて脱力したら、ヘンドリックが彼女を持ち上げる。
再び向かい合う体勢に戻して邪魔そうに腰のタオルを取り去った。
隆々と反り返った昂ぶりが現れて、跨ったセレスティアの足の間へ添えられる。
「ん……ヘンドリック様……?」
つるりと滑らかな先端が、蕩けた割れ目にこすりつけられた。
ハッと息を呑むセレスティアを、ヘンドリックが情欲を灯した眼差しで射貫く。
いつも素直じゃない言葉を紡ぐ彼の口が動いた。
「君が、欲しい」 -
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