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あらすじ
俺しか知らない君を見せてくれ
世話好きクール弁護士×家事下手女子の甘あま居候同居♥「今日からここに住みなさい」火事でアパートを失った私を、憧れの上司で弁護士の智琉さんが居候させてくれることに。冷静沈着&ややSな彼が甘やかしスパダリに豹変!? お風呂でのぼせた全裸の私を介抱して、口移しで水を飲ませてくれて。ドキドキしすぎて体の奥まで熱くなっちゃう。だけど以前彼と一緒に住んでいたという美人が訪ねてきて!?
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キャラクター紹介
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藤沢杏梨(ふじさわ あんり)
智琉専属の有能なパラリーガル。家事が大の苦手なのをバレたくないけど!? -
久我智琉(くが さとる)
個人事務所を構える、クールなやり手弁護士。家事万能の世話好き。
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試し読み
「いやじゃない、ですけど……、今、好きだって言ったばかりなのに、これは順序というか経過的にはいいんでしょうかっ」
……我ながら、なにを言っているんだと思う……。
十代のころに読んだ少女漫画は、好きだと告白してからキスやそれ以上に至るまでそれなりの期間があった。少女漫画と現実を同じに思っているわけではないが、実際に体験したことがないので比べるものがない。
類は友を呼ぶという言葉そのままに、学生時代に仲の良かった子たちは恋より勉強というタイプで、実体験の話というものを聞いたことがないのだ。
「なるほど」
ボタンを外したブラウスから手を離し、智琉は身体を起こす。ベッドに膝立ちになり腕を組んで、いつも事務所で見る久我智琉弁護士の顔をした。
「つまり君は、告白をしてから男女の関係に向かうステップを気にしていると、そういうわけだな? 見つめ合い、手を繋ぎ、抱擁できるようになってからお互いじれったく想いながら日々を過ごしやっと唇を重ねるに至る。そういった幼稚園児のような交際を経験したいと……」
「十代! 先生、せめて青春真っ盛りの十代にしてくださいっ」
「ずいぶんと幅広いが認めよう。しかし、そうなるとこの先の行為はかなりお預けになるし、君が『心地いい』と表現してごまかした気持ちのいい行為も、段階を踏むまでできない。それでもいいか」
「……せんせい……被告になった気分です……」
追い詰めかたが鬼畜だ。こちらの意見を認めてホッとさせておきながら、言いにくい事実とごまかしまで見破り、選択を迫る。
「意地悪ですね……」
智琉から視線をそらし、ついポツリと呟いてしまった。ボタンを外したまま放置されたブラウスの前をいきなり広げられ、驚きのあまり視線が戻る。
「無自覚に煽るから困る。君の答えを聞く前だが、俺としてはお預けはごめんだ。そんな顔で『意地悪ですね』とか言われてお預けされた日には、君を鬼畜としか思えなくなる」
(鬼畜は先生でしょぉっ!)
とは思っても言葉にはならない。智琉が初めて見る表情をしている。どこか焦りの見える、余裕のない顔……。
杏梨を求めてこんな顔を見せてくれているのなら、とんでもなく嬉しい。
「わたしも……お預けはいやです。せっかく、先生が……こんなに、わたしのことで感情を動かしてくれているのに」
唇に智琉の人差し指があてられる。言葉を止めると、大好きな顔がスッと近づいた。
「気持ちよくなるまで、キスするか。それ以上のこともするけど、いいな」
智琉を見つめたまま首を上下に振る。指が離れたので、杏梨は素直にまぶたを閉じた。
「それとひとつお願いだ。唇が離れたら……先生ではなく、名前で呼んでくれ」
唇が重なる。顔を動かしながら吸いついてくるキスは、先程までとはまったく違う激しさがあった。
激しいけれど苦しいわけではない。彼が顔の角度を変えるたびに唇が開き、呼吸のタイミングを教えてくれているよう。
すべて初めてで戸惑うだろう杏梨を、彼は上手く導いてくれている。戸惑わないよう。……後悔しないよう。
(先生の唇、気持ちいい……)
擦り合わされる唇の感触に酔いながら、ひとつの迷いが杏梨の中で蠢く。彼は唇が離れたら名前で呼んでくれと言っていた。
これは大変なことだ。
名前で……つまり、「先生」禁止ということ。
名前で呼べと言われたからには「久我さん」と苗字でお茶を濁すわけにもいかない。
――――智琉さん。
(えっ、えっ、恥ずかしいんですけどっ!)
羞恥がぶわっと湧き上がった瞬間、舌をさらわれジュルッと吸い上げられる。驚いて大きく目を見開いてしまった。
「なに考えてるんだ?」
ひたいをポンッと叩かれる。考えごとをしているといつも智琉に見破られて、どうしてわかるんだろうと気まずくなっていたものだが、常日ごろ見つめていてくれたからだと考えると悪い気はしない。
杏梨は正直に答える。
「あの……なんて呼ぼうかって……」
「名前で呼べと言った」
「そうなんですけど……」
「唇が離れたら呼んでくれと言ってあったな。じゃあ、頼む。俺は引き続き脱がせているから」
「えっ、あ」
名前呼びのことで考えこんでいるあいだに、キスをしながら着々と服を脱がされていたらしい。ブラウスを脱がされ、ブラジャーを外される寸前だった。
「く……久我、さんっ」
「アウト」
スルッとブラジャーを取られる。とっさに胸を隠そうと動いた腕の両手首を掴まれ、ひとつにまとめて頭の上で押さえられた。
「隠すのも、アウトだ」
「ひぇ……」
まぶたをゆるめて、𠮟る口調が怖い。恐怖で怖いのではなく、艶っぽすぎて怖い。これは無理だ。せり上がってくるムズムズしたものに負けて、上半身をうねらせてしまった。
薄暗いとはいえ顔が見えているのだから身体も見える。なにも纏(まと)わない上半身を見られているのだと思うと、なぜか下半身がむず痒くなる。
「やはり全部脱がせてからのほうがいいか」
なにかを決めたらしく、智琉の空いているほうの手がパンツのウエスト部分にかかる。杏梨は慌てて言葉を吐き出した。
「智琉さんっ」
智琉の手がピクッとして止まる。手首を押さえていた手も離れてホッとしたのも束の間、容易くショーツごとパンツを脚から抜かれてしまった。
口は大きく開くが言葉が出てこない。なにを発したらいいか悩ましい。「きゃあ」と悲鳴をあげてはいやがっているようだし、「いきなりなにをするんですか」では無理やりこういうことになっているかのようだ。
杏梨はせめてもの思いで両腕を身体の前でクロスさせて胸を隠し、身体をひねって智琉の視界から下半身を逃がす。
「いきなり全部は……」
「もう少しゆっくり脱がせようかとも思ったんだが、杏梨に名前を呼ばれたら昂ぶってどうしようもなくなった」
身をよじる杏梨を見ながら、智琉はシャツを脱ぎ捨てる。薄闇に浮かぶ半裸体が見てはいけないもののようで、さりげなく視線をそらす。
それでも、見たい、と欲望が視線を戻そうとする。すると、肩を掴まれ身体を戻された。
「俺は杏梨を見たいんだが。見せてくれないのか?」
「見たい……ですか?」
「杏梨だから、見たい。俺しか知らない杏梨を見せてくれ」
胸の奥に、深く深く矢がつき刺さった気がした。こんなことを言われて、なんの抵抗ができよう。
クロスさせていた腕をゆっくりと外し、下半身を戻す。智琉と視線を合わせると彼は嬉しそうに微笑んでくれた。
「俺しか知らない杏梨を見られて、嬉しい」
きゅんとするとはこういうことかとわかるくらい、胸の奥であたたかな感情が飛び跳ねる。嬉しそうな微笑みが素敵すぎて、その表情をどうにかして保存しておけないかと考えてしまう。
「俺しか知らない杏梨を見るのは二度目だ。五年前、雨の中で泣いていた杏梨も、俺しか知らない」
唇が重なる。今度は考えごとはしないで智琉の唇にだけ集中した。
柔らかな感触。怜悧な見た目からは肌さえも冷たそうなイメージなのに、智琉の唇はとてもふくよかであたたかい。口腔内に舌が滑りこみ、歯列をたどって歯茎を撫で、頬の内側から下顎へ、恥ずかしいくらいに杏梨を感じようとする。
「ハァ……ぁ」
唇から漏れる吐息に色がつく。自分ではただ息をしているだけなのに、甘えるようなトーンが混じった。
舌先で口蓋を擦られるとゾクゾクする。思わず肩を寄せて智琉の上腕を両手で掴んだ。手のひらに伝わるのは彼の肌の感触、筋肉の硬さ。それを感じるだけで体温が上がっていく。
「ぁあ……ンッ、ん」
手のひらが気持ちいい。もっとこの肌の感触を楽しみたくて、杏梨は腕を掴んだまま前後左右に撫でた。
「杏梨の手つき、なんだか卑猥だな」
「卑わっ……」
出された言葉にたじろぐ。そんなつもりではなかった。どこにそんな要素があったのだろうか。
「腕……さわると気持ちよくて、つい……」
「そうか。それなら俺も、気持ちのいいものをさわろう」
胸のふくらみを両手で覆われ、撫でるように動かされる。もったいぶった手のひらが胸の頂に触れて、そのたびにおかしな刺激が走った。
「さ……智琉さ……」
「わかってる」
大きな手の指がふくらみに喰いこんでいく。強弱をつけて揉み動かされているうちに、だんだんと胸全体が熱くなってきた。
「あ、ぁ……」
熱が広がって、トロトロと流れ落ちていくよう。腰の奥にそれが溜まり、もどかしさが募っていく。
「智琉さ……」
「さわっているとすごく気持ちいい。杏梨も気持ちよさそうだから、もっとさわってやる」
「わたしは……ひゃっ」
片方を揉みしだきながら、もう片方の頂に智琉の舌が絡みついた。先端を避けながら舌をぐるぐると回し、チュッと吸い上げる。その刺激をどう表現したらいいのかわからない。
ゾクゾクするのに……もどかしい熱が流れてくる。
「ハァ……ぁ、あっ、ぅん」
片手の甲を口元にあて、首を左右に振る。智琉は舌を休めることなくその動作を繰り返し、ふくらみを堪能していた手の指で先端をつまんだ。
くりくりと揉みたてられ、伝わる刺激のままにもどかしさがあえぎになってこぼれていく。
「あっ、ぁ……や、そこぉ……くすぐった……ぃ」
「くすぐったい? 本当に?」
「わからな……ぁぁっ……」
確かにくすぐったい。柔らかなふくらみを揉み動かされて、舌でなぞられて軽く吸われて。広がる刺激、流れ落ちる熱。もどかしさ……。
どう表現したらいいのかわからない。自分のことなのに情けないけれど、学生時代にどんなに勉強したって、こんな刺激的なものをどう表せばいいか不明だ。
「気持ちいいんだろう、杏梨」
「きもち……いい?」
「ほら、ここが気持ちいいって言ってる」
くにゅっとつままれたのは、両方の胸の先端だ。小さな突起が智琉の親指と人差し指にくにくにと揉み潰されている。
「や……ぁンッ……それ……」
「いつもはもっと小さくておとなしいだろう。それがこんなに大きくなっている。見てみなさい」
ここでの命令形はズルい。智琉にそんな言いかたをされたら、パラリーガルの習性としてボスに従い、見る以外に選択肢がない。
素直に視線を落とすと、智琉の指につままれたふたつの突起が見える。膨らんで色濃く染まったそれは、入浴時に鏡で見るものとはまったく違っていた。
「女性も気持ちよくなるとココが勃つ。大きくなって、硬くなる」
「その言いかた……ぁっぁ、やっ……」
物申したいところだが、先端から流れてくる刺激がそれをさせてくれない。じりじりとした疼きはどこかむず痒くて、くすぐったさではなく違う感覚になってきている。
硬くなった突起を頂に押しこめては引っ張り出し、指の腹で擦り回す。
「やっ……あぁぁん、胸、むねぇ……」
「素直に感じられてイイ子だ」 -
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