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試し読み
「ああ、せっかくのドレスが皺になってしまいます……」
「かまわない」
トリスタンはベッドのマットレスを軋ませながら、ベッドに上がってきた。
そしてイングリッドの両脇に手をついて、見下ろすような形になる。逆光でトリスタンの青い目ばかりが光って見えるようで、獰猛なネコ科の猛獣を思わせた。
「あ……あ」
緊張が高まり、心許なくてなにか言わないと気が遠くなりそう。
大人の行為。なにをどうされるか想像もつかない。
でも、裸になるのだとはなんとなく知っている。そこでやっと思い至る。
「あの……湯浴みしないと……わたし、汗をかいて……」
「かまわない」
トリスタンの手が伸びてきて、イングリッドの髪のティアラを外し、ピンを一本一本抜いていく。綺麗に結い上げた髪が、ほろほろと崩れていく。
「美しい髪だね――柔らかくてさらさらで」
髪を解いてしまうと、トリスタンの指先がドレスの胴衣のリボンをしゅるしゅると外していく。
「あ……や……」
胴衣が前開きに開き、コルセットに包まれた胸が露になる。そのコルセットに指がかかったかと思うと、ぐっと下に引き下ろされてしまった。
「きゃっ」
ふるんとまろやかな乳房がまろび出てしまう。怯えてさっと鳥肌が立った。
「ああいや、だめ、見ないで……っ」
異性に裸体など晒したことのないイングリッドは、羞恥のあまり思わず両手で顔を覆ってしまった。
「いや、いや、恥ずかしい……」
トリスタンが薄く笑ったような気がした。
「初心なイングリッド、これからもっと恥ずかしい行為をするのに?」
その通りで、全身にどっと冷や汗が吹き出した。
呼吸に合わせてかすかに揺れる乳房に、男の視線が突き刺さる。
「美しいね――真っ白で透き通って、乳首が薔薇の蕾みたいに赤い」
トリスタンが感嘆したような声を出すが、自分の乳房の描写など聞かされて、ますます恥ずかしさと緊張感が高まってしまう。そのせいだろうか、なぜか乳首がきゅうっと硬く凝るような気がした。
そっと男の温かく大きな両手が乳房を包み込んできて、びくっと身体が竦んだ。
「怖がらないで、優しくする、気持ちよくしてあげるから」
彼の手にすっぽり収まった乳房が、やわやわとゆっくり揉みしだかれた。
気持ちよく? そんなことがあるのだろうか。
でも、優しく左右の乳房を揉まれていると、なんだか不思議な安心感がある。
「見事な肌だね。シルクみたいに手に吸いついてくる。なんて触り心地がいいのだろうね」
そんなふうに褒められて喜んでいいものかわからなくて、そっと両手を顔から外してトリスタンを見上げる。
端整な顔が少しせつなげに見下ろしてきて、心臓が口から飛び出しそうなほど跳ね上がった。
と、ふいに凝った小さな乳嘴を長い指先がきゅっと摘み上げてきた。
「っ、ああっ?」
擽ったいような痺れるような感覚がそこから下肢に走り、イングリッドはびくんと腰を浮かせてしまう。
トリスタンはそのまま指の間でこりこりと乳首を転がしてくる。
「あ、あぁ? や、だめ……」
不可思議な刺激が次々襲ってきて、身体の芯がじんわりと熱くなってきた。
「感じるかい? 敏感だね、もっといじってあげようね」
トリスタンは乳嘴の周りを撫で回したり、そっと抓ったり、押し込んだり、多彩な動きで刺激してくる。
「ん、あ、やあ……あぁ、あ」
今の今まで、こんな小さな部分がこんなにも甘い刺激を生むものだとは、知りもしなかった。
はしたない鼻声が漏れてしまうのが止められなくて、恥ずかしいのにもっといじって欲しいような淫らな気持ちが膨れ上がってくる。
なにか耐えきれないような疼きが全身に拡がって、臍の奥の辺りがきゅうっと締まるようなずきずき脈打つような気がして、落ち着かなげに腰がもじついた。
「悦くなってきた?」
トリスタンの声がやけに悩ましく聞こえる。
「わ、わかりません……」
初めての性的な興奮を感じ、イングリッドは戸惑うばかりだ。
「そうかな。もっと感じさせてあげようか」
トリスタンはそうつぶやくと、まろやかな乳房を両手で寄せ上げるようにして、そこにゆっくり顔を埋めてきた。
「あっ? ああっ?」
ちゅっちゅっと、左右の乳首に口づけされ、びりっと鋭い喜悦が走った。
その熱い刺激は身体の芯を直撃し、むずがゆい疼きがどんどん大きくなってくる。
トリスタンはそのままツンと尖った乳首を口腔に含み、もう片方の乳首を指で転がしながら舌を絡ませてきた。
「……ぁ、あ、だめ、そこ、舐めないで……あ、はぁ」
濡れた舌で乳首の周囲を舐め回されたり、ちゅうっと強く吸い上げられたりすると、指でいじられるよりずっと強い刺激が全身を駆け巡り、イングリッドは恥ずかしい声を止めることができない。
はしたない声を出したくなくて、口元を手で覆って耐えていたが、トリスタンがひりつく乳嘴に歯を軽く立ててくると、甘い痺れが腰に走り、思わず仰け反って嬌声を上げてしまう。
「はあっ、あ、いやぁっ」
下腹部の奥の疼きはジンジンとますます強くなり、居ても立ってもいられない気持ちになる。そして自分のあらぬ部分が、きゅうっと締まりせつなくて仕方ない。
モジモジと内腿を擦り合わせ、やるせない欲求をやり過ごそうとしていると、わずかに顔を上げたトリスタンが色っぽい目で見上げてくる。
「濡れてきたかい?」
「ぬ、濡れて……?」
イングリッドは戸惑いながら尋ねる。
「ここが――」
トリスタンは片手でスカートとペチコートを腰の上までたくし上げ、そろりと膝から太腿に向けて手を滑らせてきた。
「あっ」
男らしい大きな骨ばった手の感触に、ぞわっと鳥肌が立つ。トリスタンの手が下腹部に迫ってきたのを感じ、本能的に両足を閉じ合わせてしまう。だが、男の手はやすやすと股間に潜り込み、ドロワーズの裂け目から指が忍び込んできた。
「やあ、やっ……っ」
さわさわと和毛を指が撫でる感触に、逃げ腰になる。けれど、トリスタンが体重をかけるようにさらに覆いかぶさってきたので、身動きが取れない。
そのまま長い指が茂みの奥の割れ目に触れてきた。
「ひっ……ぅ」
ぬるりと指先が滑るような感触があり、その瞬間ぞくぞくした淫らな快感が走った。
「ほら、すっかり濡れている」
トリスタンの節くれだった指が閉じ合わされた花弁を上下に撫でると、そこからとろとろと蕩けるような心地よさが生まれ、腰がねだるみたいにくねってしまう。
「あ、ぁ……だめ、あ、いやぁ……」
捩れていた花弁が次第にほころび、指の動きがどんどん滑らかになっていくのがわかる。そして、蜜口の浅瀬に侵入した指が、くちゅくちゅと粘ついた音を立ててそこを搔き回す。
「んんぅ、あ、はぁ、あ、だめ、あ、しないで、そんなに……」
恥ずかしいのに未知の甘い心地よさに、両足から力が抜けてしまう。それとは逆に、感じ入るたびに媚肉の入り口がきゅんと締まり、男の指を喰む。
「熱いね――狭いけれど、花弁が誘うみたいに私の指を締めつけてくるよ」
トリスタンは、交互に乳首を口に含みながら、さらに指を二本に増やして陰唇を撫で回してきた。じゅくりと新たな甘露が溢れてくるのが、自分でもわかった。
「ああいや……恥ずかしい……んんっ、もう、しないで……ぁあ」
初心なイングリッドはこれ以上の快感に耐えきれず、頰を真っ赤に染めて首をいやいやと振る。
「そんなことが言えないようにしてあげよう。もっとして欲しいと、君からおねだりするように――」
トリスタンの人差し指が愛蜜をたっぷり掬い上げ、割れ目の少し上に佇む小さな突起にそっと触れてきた。
「あっ⁉ ああぁっ」
刹那、雷にでも打たれたような鋭い官能の衝撃に、イングリッドは全身を硬直させた。
自分の身体の中に、そんな淫らな器官があるなんて知らなかった。
触れるか触れないかの力で、ぬるぬるとそこを撫で回されると、腰が抜けそうなほどの喜悦が次々脳芯を直撃してくる。
「ああ、あ、やめ……そこ、あぁ、だめっ、やめてぇ……っ」
あまりに強い刺激に頭がクラクラして、イングリッドはもはや嬌声を抑えるどころではなかった。
耐えられないくらい激しい快感なのに、腰はもっとして欲しいと言わんばかりに大きくうねってしまう。
「この小さな蕾が、君の一番感じやすい部分だよ――ああ、どんどん溢れてきた」
トリスタンはひりつく乳首を嚙みながら、陰核の包皮を捲り上げてむき出しにした花芽を執拗にクリクリと撫で続ける。
「んんっ、あ、やめて……おかしく、なっちゃう……っ」
どうしようもない愉悦に、目尻から生理的な涙が溢れる。子宮の奥がきゅうっと収斂して、隘路の奥をなにかで満たして欲しくて仕方なくなる。
「いいんだよ、可愛いイングリッド――好きなだけ感じて、好きなだけおかしくなるといい」
トリスタンの指の動きが変化する。
ぴくぴく震える秘玉を指の腹で軽く押さえ、そのまま小刻みに揺さぶってきたのだ。
「はぁあっ、あ、あぁ、だめ、あぁ、もう、もう、しないで……っ、あ、ぁあ」
頭の中が快感で真っ白に染まり、激しい尿意にも似た感覚がお尻の辺りから迫り上がってきた。蜜壺がひくひく戦慄き、熱い愛蜜が後から後から溢れてきて止まらない。
これ以上はほんとうにおかしくなる。
イングリッドはふるふると頭を振って、耐えきれない快感を訴える。
「お、願い……おじさま、もう、だめなの、お願い、やめて、やめて……っ」
「やめないよ――もうだめだと思うなら、達ってしまいなさい」
「んんっ、い、いく……?」
「そうだよ、気持ちよさの極限だ。そこに達していいのだよ」
トリスタンは指を親指に替えて陰核を揺さぶったり摘み上げたりしながら、さらに指を二本ひくつく媚肉のあわいに押し込んできた。
「ひいっ……っ」
狭い膣腔に異物が侵入する感覚に、ぶるりと身震いする。
「狭いね――でも十分濡れてひくひくしている」
「あ、あぁ、指、だめ、挿入れないでぇ、あ、あぁぁ」
自分でも触れたことのない内壁を擦るようにしながら、節くれだった指がゆっくりと侵入してくる。飢えていた隘路が、嬉しげにその指を締めつけてしまう。満たされた充足感に、下肢が糖蜜みたいにどろどろに溶けてしまいそうだ。
膣襞を押し広げるように挿入された指が、ゆっくり引き抜かれ、再び押し入ってくる。
疼ききった媚肉を擦られると、せつなくて重苦しいほどの快感がどんどん身体の内部で膨れ上がってきて、今にもぱちんと弾けそうだ。
「ふあ、は、んん、あぁ……やぁ、だめ、やぁああっ」
これ以上されたら、自分が自分でなくなりそうで、イングリッドはトリスタンの身体の下で身をくねらせ、いやいやと首を振り立てた。
「君の中、私の指をきゅうきゅう締めつけている――いいんだよ、イングリッド、さあ」
その「さあ」という艶めいた低い声に、うなじの辺りで理性の最後の箍が外れる音がしたような気がする。
一気に熱い快感が押し寄せ、思考を押し流した。
「ああぁ、あ、いやあぁ、おじさま……あ、だめもう、あ、だめ……っ」
鋭敏な肉粒と飢えた内壁を同時に攻められ、イングリッドはなにもかも忘れて絶頂の大波に身を任せた。
「いく……あぁ、達っちゃ……あぁ、ああぁあぁあっ」
全身が硬直し、爪先がぎゅうっと丸められる。
イングリッドはひくっと動きを止め、生まれて初めて絶頂を極めた。
「……はぁ、は……ぁ、はぁあ……」
詰めていた息を吐き出すと、全身がぐったりと弛緩し、どっと汗が吹き出した。
「……あぁ……ぁ」
信じられない愉悦の余韻はなかなか去らず、イングリッドは虚ろな目でぼんやりとベッドの天蓋を見上げていた。
ふいにぬるりとトリスタンの指が隘路から抜き取られ、その喪失感にすら甘く感じて媚肉が戦慄く。
「ぁ……」
上半身を起こしたトリスタンが、優しくイングリッドの汗ばんだ額に貼りついた後れ毛を搔き上げた。
「どう? 初めて達した気持ちは――」
イングリッドはまだまともにしゃべることもできず、荒い呼吸を繰り返すばかりだ。
「素直で可愛い身体だ――とても魅力的だよ」 -
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