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あらすじ
契約の裏に隠された旦那さまの熱い劣情
「逃げるんじゃない──俺の指に集中して」この結婚は契約なのに、彼の愛撫に感じてしまうなんて……! 婚約者を妹に奪われ、肩身の狭い思いをしていた伯爵令嬢のケイトは侯爵家のサディアスとの醜聞に巻き込まれる。落ち込むケイトに、彼はお互いの利を得る契約結婚を持ちかけてきた。甘く優しく啼かされた初夜……形だけの夫と過ごす蜜月は!?
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試し読み
「やぁっ……ん、ぁ、あ、あぁぁっ」
どうして、彼の手に触れられるだけでこんなに身体がぐずぐずに蕩けていくのだろう。
もう片方の乳房にも彼の手が伸びてきた。片方を舌で転がされ、もう片方を指先で捻られる。熱い粘膜の触れる感覚と、乾いた指の触れる感覚は、違う快感を身体に送り込んできて、身体の中で二倍にも三倍にも膨れあがっていく。
下腹部が熱い。脚の間がずきずきとする。その疼きをどうにかしたくて、腰が勝手にくねった。
唇からひっきりなしに上がる淫らな声は、自分のものではないみたいだ。蕩けた意識の奥底で、ケイトは彼にすがりつく。
「──あっ、ん、う……んっ、ん、んんんっ」
手で口を覆ってみるけれど、それも無駄な抵抗だ。硬くなった敏感な芽に、濡れた舌がぬるりと這う。右に左に弾かれたら、その度に身体をびくびくとさせてしまう。
前を全開に開かれた寝間着の袖から手首が引き抜かれた。身体の下で皺になるのも気にせずに、彼はさらにあちこちにキスを落としてくる。
──どうしてこんなに優しくするの。
不意に聞こえてきた心の声を耳から閉め出そうとする。
──さっき、サディアス様がくださった夢に浸ればいいじゃない。今夜だけは……。
胸の奥の方がちりちりとする。
「──ケイト。こんな時にずいぶん余裕なんだな」
「あぁっ」
他のことに気を取られていたら、脚の間に手が滑り込んできた。下着までどろりと濡れた感覚を知られ、肌が粟立つ。
「濡れているな──俺の手に触れられるのが嫌なんじゃないかと心配になっていたところだった。この分なら──」
その場所が反応していることを知らされて、かっと頬が焼けるような気がした。ケイトは唇を噛んだ。シーツを掴む手に力がこもる。
「ひっ……ぅん……あっ、あっ!」
下着越しに、柔らかな花弁の間をゆっくりと指が往復する。下半身から送り込まれてくるじわじわとした感覚に、ケイトは喘いだ。
「……あっ、あっ」
ぬめる蜜をまぶすように指が往復したら、下肢の奥がますます熱くなってくる。声を上げまいと唇を結んでいたはずなのに、簡単に解けて甘ったれた声が上がった。
身体ががたがたと揺れて、与えられた快感を必死にやり過ごそうとする。自分の身体がこんなにも淫らな反応を示すなんて考えたこともなかった。
足の指が丸まったり弛緩したりを繰り返し、上がる嬌声が部屋の空気を震わせる。
──どうしよう、このままではみっともないところを見せてしまう。
頭の片隅でそんなことを考えた。
「──ケイト。逃げるんじゃない──俺の指に集中して」
「あぁぁっ!」
ケイトの思考がそれかけたことを察知したのか、彼の手が下着の中に潜り込んできた。薄布越しに濡れた箇所を往復していた指が、ケイト自身さえも意識したことのなかった淫芽を擦り上げた。
とたん、すさまじい愉悦が背筋を駆け上り、頭のてっぺんで散る。目の前が一気に真っ白になって高い声を上げてしまった。
「やっ、あっ、いやっ、お願いっ」
上半身をくねらせて懇願するけれど、彼は手を止めたりしなかった。その場所がそんなにも敏感だなんて知らなかった。
淫芽を指先で揺らされる度に、嬌声を上げてしまう。逃れようとしても逃れられない。彼の身体にしっかりと抱え込まれている。
「あーっ……あっ、あぁんっ」
ますます首を激しく振りながら、ケイトは泣き声を上げた。自分の身体がどうなっているのかもわからない。
ただ、彼に翻弄されて、首だけが激しく左右に揺れる。身体はじっとりと汗ばんで、ケイトの身体はますます熱くなっていく。
「んっ……ぁっ、あ、あぁんっ」
ケイトは身体を揺らした。頭の中が真っ白だ。何も考えられない。
さらにどんどん頭の中が真っ白になっていく。身体がふわふわと浮き上がっていきそうで、シーツの上で何度も身体を弓なりにした。
彼の指が速度を増していく。喘ぎ、身悶え、もっと先の方にある快感を求める。自分が欲しているのが快感であることをようやく理解した。
いつの間にか指の動きに合わせるように腰が揺れていた。より深い快感を得られるように、奥へ彼の指を導く。
「あぁっ……ん、あぁっ」
身体がびくびくとする。身体の中を走り抜けていく悦楽に浸ることしか考えられない。
身体を揺らし、声をあげ、ケイトは彼の指に翻弄される。
「やぁっ……あ、あ、あぁぁっ」
快感の受け入れ方を身体がようやく覚え始めた。抵抗はどんどん弱くなっていって、唇からはひっきりなしに甘えた声が上がる。
いつの間にか両脚は足の指の先までピンと伸びていた。内腿がぶるぶると震え始めて、下腹部にたまった愉悦が、一つところを目指して流れ始める。
何度も何度も背中を弓なりにして、その先の快感を目指そうとする。
「あっ……ぅ……あ、あぁぁんっ!」
半開きの唇から声を上げて、ケイトはとうとう頂上にたどり着いた。身体全体がぐっと押し上げられたような気がして、頭の中が真っ白になる。
快感の頂点にたどり着き、ケイトはそのまま手足の力を抜いた。ゆっくりとシーツに身体が沈みこんでいく。
手足がくたりとシーツの上に投げ出され、整わない息に合わせて、肩が上下する。
彼の腕の中に抱え込まれていたことに気がついて、ケイトはゆっくりと目を開いたけれど、またすぐに閉じてしまった。
自分が今どんな反応をしていたのか──考えただけで頭の中が真っ白になってしまう。
両手を上げて顔を覆ったら、サディアスが小さく笑った。乱れた髪を彼の手が撫でつけてくれる。
何度も何度も彼の手が髪を往復する。彼の手が髪に触れる快感は、今与えられたものと違って、柔らかな快感だった。
「……サディアス様……私……」
自分がとても変ではないのかと思ったけれど、他になんと言ったらいいのかわからなかった。身体に力が入らなくて、そのまま彼の手に身を任せてしまう。
ゆっくりと顔を覆っていた手を離し、サディアスの身体に巻きつけた。少しだけ、自分の方からも彼の身体に身を寄せる。
「変……じゃなかった……ですか……?」
あの反応が正常なのかどうなのかわからなかった。彼の胸に顔を伏せてしまっているから、今の表情はわからないはずだ。
「変? 誰が──?」
「だって、あの」
他に何も言うことができずに、ケイトは目を伏せる。喉の奥で笑った彼は、指先で花弁をかき分けた。
「あっ……」
濡れそぼった花弁の間を指が往復する。滑らかな場所は、まだ蜜を溢れさせていた。ケイトが身を捩れば、花弁の間に指がぐっと沈みこんでくる。
「なっ……何をっ」
思わずケイトは声を上げた。だが、彼は気にした様子もなくますます指を進めてくる。体内に他人の肉体を受け入れて、涙がじわりと浮かんだ。
媚壁がぎゅっとうねって侵入者を締め付ける。
「やっ……だめっ……だめっ……」
中で指を揺らされて、ケイトは混乱した。先ほどまでの感覚とはまた違う。身体の奥をかき回されているような、不快感と快感が紙一重のところを行き来する。
あせって、彼の胸に両腕を突っぱねて彼の身体を押しやろうとした。
「──ケイト。君の身体を慣らしているだけだ。そんなに抵抗されたら、痛い思いをさせることになってしまう」
彼の身体を押しやろうとしていた手を、ケイトは慌ててシーツの上に戻した。ぎゅっとシーツを握り締めて、彼の身体を押しやるまいと努力する。
「ごめんなさい……」
力なくケイトは首を左右に振った。額に彼の唇が押し当てられる。それと同時に身体の奥がぎゅっと締め付けるのがわかった。
「謝らなくていい。俺のすることに集中して」 -
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