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試し読み
こう言おうと思ったら、その前にまた唇を塞がれてしまった。
「ん……っ」
さっきのキスは荒々しくて性急なキスだった。でも、今度のキスはそれとは違う。
唇を何度も食まれ、滑り込んできた舌はねっとりと私のそれに絡みつき、誘い出されると、お互いの唾液を絡ませ合いながら激しいキスに変化する。だけど、触れ方は優しくて、私を気遣ってくれていることが感じ取れた。
そんな優しさがまた私をキュンとさせることに、この人は気付いているのだろうか。
——好き。この人が大好き。
激しくも優しいキスに翻弄され、思考が徐々にぼやける。
腰に添えられた布谷さんの手にも力が入り、彼の体重が私に少しずつのしかかる。でもそれがまた嬉しくて、私も彼の背中に腕を回し必死にしがみついた。
先に唇を離したのは、布谷さんの方だった。
「悪い、つい……大丈夫か」
さっきもキスのあと謝ってたことを思い出し、思わず笑ってしまった。
「さっきから布谷さん謝ってばっかり」
「……やり過ぎて嫌われたくないんで」
「嫌わないです。だからもっとやってください」
話の流れでつい正直な気持ちを打ち明けたら、布谷さんが驚いたように目を丸くする。
「すごいこと言ってるっていう自覚ある?」
「え? そうですか? でも、本当に私、布谷さんになら何されてもいいって思ってるんで……」
とくに気にもせずポロリと本音を漏らした途端、なぜか布谷さんが黙ったまま私の体を優しく抱きしめた。
「風花」
「は、はい」
「君を抱きたい」
ぎゅっと抱きしめられ、耳のすぐ横で低い声が囁く。その内容に、一旦は静まり返った心臓がまた激しく踊り出す。
——それは、つまり……
さすがに私だって、この状況が意味していることが何なのかぐらい見当は付く。
処女なのでそういう行為に対しての恐怖心が無いといえば嘘になる。でも、相手が布谷さんならなんだっていい。彼が私の初めての相手になるのなら、これ以上の喜びはないと、今は自信を持ってそう断言できる。
「はい……」
考えたのはほんの一瞬。すぐに返事をし彼の背にそっと腕を回すと、布谷さんの腕がさらに力強く私を抱きしめた。
寝室に移動し並んでベッドに座ると、すぐに布谷さんが優しく私を抱きしめてくる。
照明は、敢えて点けないでとお願いしたら、その通りにしてくれた。
「……大丈夫? 本当にいいの」
気遣ってくれることが心底嬉しくて、逆にそんなに気にしないでと言いたくなった。
「いいです。でも私、初めてなので……」
ここまで言ったところで、布谷さんの体がビクッと震えた。
「……初めて?」
「はい」
間髪容れず頷くと、布谷さんがまた目を丸くする。
「本当に?」
「……本当です」
すぐに信じてもらえず困惑していると、なぜか布谷さんに頭をなでられる。
「わかった。優しくするから」
「はい……」
その言葉に安心して、私はゆっくりとベッドに押し倒された。
セーターを脱ぎ、Tシャツにチノパンという格好になった布谷さんは、また私の唇に優しいキスをくれる。その唇が耳に移動し、耳朶を食み首筋を吸われると、こそばゆくて体を左右に揺らさずにはいられなかった。
「んっ……」
ちゅ、ちゅっ、というリップ音がする度に、恥ずかしさと嬉しさと緊張で、体が縮こまっていく。
首筋から鎖骨に唇が移動し、布谷さんの大きな手が私のシャツの上から胸の膨らみを包む。それを遠慮がちにゆっくり揉まれると、これまでに感じた事のない不思議な感覚がこみ上げてくる。
——胸を揉まれるのって、なんかくすぐったい。
だけどこんな風に余裕でいられたのはここまで。
布谷さんが私のシャツとキャミソールを一緒に脱がせ、ブラジャーを露出させ、ブラからこぼれた乳房に吸いついた。
「あっ」
素肌に触れる唇の感触にドキドキしていると、彼の手が背中にまわり、あっという間にブラジャーのホックが外された。
パチン、という音と共に一気に心許なくなった胸元からブラが外されると、これから起こることを想像し、心臓がひときわ大きな音を立て始めた。
「あ、あんまり見ないでください」
はっきりいってこの状況でそれは無理だと頭では分かっているのに、あまりにも布谷さんが私の胸元をじっと見るので、つい口走ってしまった。
「いや、それは無理。すごく綺麗だから」
壊れやすいものに触れるように、布谷さんの手がふわりと乳房を包み、ゆっくりと揉む。彼の手の中で乳房が形を変えて行くのを、息を潜めて見守っていると、彼の顔が乳房に近づき、自己主張し始めて起ち上がる先端にそっと舌を這わせた。
「……っ、あ」
舐められるとピリついた快感が背中から腰の辺りを走り、ゾクッと震えた。
「……嫌だったら言って?」
布谷さんが乳輪から乳首へと何度も舌を這わせる最中、上目遣いで私を窺う。その動作がすごく色っぽく見えてしまい、顔に熱が集まってくる。
「いやじゃ、ないです……」
これに安心したのかどうかはわからないが、布谷さんは乳首を口に含み、口の中で舌を巧みに操り転がすように舐めたり、唇で食んでみたりして弄ぶ。
絶えず刺激を与えられると、お腹の奥の方がだんだんムズムズしてきて、じっとしていることが不可能になってきた。
「んッ……」
体を左右に捩って快感を逃がそうと試みる。でも、もう片方の乳首も二本の指で擦り合わせるようにされ、与えられる刺激が大きすぎてそれだけでは追いつかない。
——まだ胸を触られているだけなのに……私、もうどうしたらいいのか……
頭で考えている間にもだんだんと息が上がり、心臓の音がこれまで経験したことがない程に大きくなる。それに伴い、足の付け根のあたりがだんだん湿気を帯びてくるのが自分でもわかった。
「……っ、布谷さん、私……」
されるがままになりながら自分の変化に戸惑っていると、布谷さんの手が私のスカートのウエストから差し込まれる。
「え……あっ」
驚いて思わず体を起こしそうになるけど、布谷さんが覆い被さっているので、顔を少し持ち上げることしかできず。
その間にも彼の手は迷うこと無く、私の下腹部からショーツへと滑り、クロッチの真ん中を優しく指で擦った。
「や、そこはっ」
私がこういう反応をするのを、布谷さんは分かっていたように、片方の口角を少しだけ上げた。
「……もう濡れてきてる。下、脱がせてもいい?」
「い……いいですけど……」
恥ずかしいけど、ここまできたらもうどうにでもなれ。
そんな心境で頷くと、布谷さんはスカートのホックを丁寧に外し、ショーツと一緒に私の足から取り去った。
全裸になり、ベッドの上で恥ずかしさで死にそうになる。でも、布谷さんはそれに構わず、私の足の間に体を割り込ませると、そっと付け根に触れてくる。指が触れた途端、またビクッと大きく体が揺れてしまった。
「やっ……!」
私の反応に慌てて手を引っ込めた布谷さんは、少し困っているように見えた。
「と、言われても……濡らさないと君が辛いから。痛くしないから、力抜いて?」
「……は、い……」
彼の言葉を信じ、再びベッドにパタリと倒れ込む。恥ずかしくて両手で顔を覆いながら息を潜めていると、布谷さんの指が繁みをなぞり、蜜口の中にするっと入っていった。
「んっ!」
「ああ、すげえ濡れて……」
それを確かめるように、彼の指が私の浅いところを何度も行き来する。やがて私の耳にもくちゅ、という水気を帯びた音が届くようになり、恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだった。
「ほら、すごい。こんなに濡れて……そんなに感じてくれてたんだ?」
「ん、んっ……」
どう返事を返したらいいのか分からず、ふるふると首を振る。
「溢れて止まらない。じゃあ……こうしようか」
何をするの? と思っていたら、布谷さんがいきなり私の股間に顔を埋め、蜜口の辺りを舌を使い、直に舐め始めた。
その行為に驚き、慌てて上体を起こす。
「や、だめ、そんなことっ……!!」
お風呂だってまだ入っていないのにと、股間の辺りにある彼の頭を押して、そこから逃れようとする。だけど、彼はまったくそこから退く気配はない。
「いいから、君は黙って感じてて」
「んっ……!!」
股間に顔を埋めたまま喋られると、それだけで吐息が当たってまた下腹部がきゅっとなってしまう。それに私がもの申したところで、布谷さんに止めるという意思はまったく無いらしい。
現に彼は動きを止めることなく、私の蜜口から少し上の襞を捲って、その中に舌を差し込んでくる。
「……あっ」
自分でも見たことが無いような場所を好きな人に見られて、あろうことか舐められているなんて、恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだ。
「……っ、風花のここ、すごく綺麗だよ」
吐息混じりの囁きが聞こえたすぐあと、襞を広げられその中にある蕾を舌で嬲られる。それは、乳首への愛撫よりもダイレクトに私の子宮を疼かせた。
「んッ……!! や、そこはッ……あっ……あんっ!」
嬲られる度に腰が揺れ、自分のものではないみたいな嬌声が口から漏れる。
こんな声を出すのは恥ずかしいと頭ではわかっているのに、今は自分でコントロールができない。そのことに困惑していると、愛撫をやめた布谷さんが顔を上げた。
「……溢れてきてるよ。ほら」
彼が蜜口に差し込んだ指を抜き、私に手のひらを見せてくる。その指はカーテンの隙間からこぼれる月明かりでてらてらと光っていて、私の羞恥を大きく煽った。
「いやっ、そんなの見せないで……っ」
「どうして? 俺の愛撫でこんなになってくれるなんて、たまらない」
そう言って再び股間に顔を埋めた布谷さんは、蕾を口に含みじゅるっと音を立てて強く吸い上げた。
「ああッ……!! そ、そこだめえっ!」
下腹部に感じる強い刺激に、さっきよりも大きく腰が跳ねてしまう。
これだけでもじっとしていられないくらい、腰のあたりがもどかしい。でも布谷さんはそこへの愛撫だけではなく、蜜口に二本の指を差し込み膣壁を擦りながら、何度も指を出し入れする。
二つの場所を同時に刺激され、私の中に生まれた快感が高まってくる。このままだと風船が割れるように弾けてしまいそうな、そんな感覚に陥った。
初めての変化に戸惑っている最中も、快感は波のように押し寄せてくる。
シーツを掴み、左右に体を捩ったり、仰け反ったりしても、彼はそこへ刺激を与え続けた。その結果、私の呼吸は激しく乱れ、ハアハアと肩で息をするほどに。
「……反応が可愛い」
クスクス笑いながら布谷さんが顔を上げたのは、それからしばらくして。その頃の私はというと、喘ぎすぎてベッドと同化するくらいにぐったりしていた。
「……っ、だって、布谷さんがそこばっかり……っ」
「ごめんな。でも、風花が可愛すぎるのがいけない」
肩で息をしながら反論すると、むしろそれが嬉しいみたいにニヤリとした布谷さんが、着ていたTシャツを脱ぎ、床に向かって放り投げた。
露わになった布谷さんの上半身に、私は小さく喉を鳴らす。
私からは彼の横顔しか見えないが、この角度から見ると彼の体がかなり引き締まっていることがよくわかる。厚い胸板に、少しも出ていないお腹は割れているようにも見える。
——すごい。かっこいい……
ぽーっとなって見とれている私には気付かず、布谷さんはベッドの端に腰掛けると、穿いていたチノパンを脱ぎ捨てボクサーショーツ一枚になる。
ベッド脇にある木製チェストの引き出しから小さなパッケージを取り出した布谷さんは、それを手にベッドに戻ってきた。
「挿れるよ」
私が彼の目を見ながらこくんと頷くと、彼は唯一身につけていたショーツを脱ぎ捨て、そそり立った屹立にパッケージから取り出した避妊具を被せていった。
その光景をじっと見つめていた私は、これからあれが自分の中に入ることを想像し、いろんな意味でドキドキしていた。
——すごい、あんな大きいものが入るの……?
もしかしたら入らないかもしれない。それか入ったとしても、痛すぎて動けなくなってしまうかも……と、とめどなく不安が湧いて出てくる。
避妊具をつけ終わった布谷さんは私の顔を見るなり、この不安でいっぱいの心情を察知したようだった。
「怖い?」
不安ではあるけど、不思議と怖くはない。
「……ううん」
「風花」
布谷さんは私の腕を掴み体を起こすと、自分に引き寄せぎゅっと抱きしめてくれた。
「優しくするから。でも、痛かったら無理せずすぐ言うこと。いいね?」 -
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