書籍紹介
婚約解消のち逆転蜜愛~侯爵閣下のかわいい恋人~
婚約解消のち逆転蜜愛~侯爵閣下のかわいい恋人~
ISBN:978-4-596-41681-0
ページ:322
発売日:2021年4月2日
定価:本体660円+税
  • あらすじ

    有能な筆頭侍女は美貌の侯爵にデートに誘われて!?

    相手の浮気で婚約が解消になり、周囲にとやかく言われるのを嫌って他国に出たブランカ。知己である王女の侍女となった彼女は、とある夜会で侯爵ディートフリートに〝婚姻を前提としない恋人〟にならないかと誘われた。「清廉潔白で淑女の鑑のような君が乱れる姿はたまらないな」戸惑いつつも、手慣れていて大人な彼との恋に溺れてしまいそうで…!?

  • キャラクター紹介
    • ブランカ
      王太子妃の筆頭侍女。元豪商の子爵令嬢。

    • ディートフリート
      侯爵位を持つ、王太子補佐官。

  • 試し読み

    そうして出来上がった『マダム・カサブランカ』の薄紫色のドレスは、まるで初めからブランカのために誂えられたようにフィットした。ディートフリートの家の侍女頭が、準備を手伝ってくれたおかげで、深層の令嬢と言われても納得できる出来栄えである。
    緩やかでありながら、複雑に結われた髪には、黒瑪瑙で作られた小花の髪飾りが飾られた。耳飾り、首飾りと合わせて同じ意匠のそれらは、全てディートフリートからの贈り物である。商売人の娘としては、その価値を考えただけでも身が竦む。
    もちろん、ブランカとてそれ以上に高価な宝飾品を持っていないわけではないが、身内から贈られたものと、たとえ恋人とはいえ他人から贈られたものでは、その心持ちも異なってくるというものである。
    ドレスも宝飾品も、身内以外から贈られたのは初めてのことだ。
    麗しさを全開にしたディートフリートが、恋人としてエスコートをしてくれるだけでも烏滸がましいのに、そんな二人を物珍し気に見つめる視線がそこかしこに感じられて、ブランカは居たたまれない気持ちにさせられる。そしてそんな顔触れも、メルダースの高位貴族が大半を占めるのだから尚更だ。
    「あら、ディート! 貴方が顔を出すだなんて、珍しいこともあるのねぇ」
    乳白色のドレスを着た上品なご婦人が、ディートフリートの姿に目を留めて、にこやかに声をかける。その隣には、立派な口ひげを蓄えた紳士の姿があった。紛れもなく、この夜会の主催者である、公爵夫妻だ。
    「ご招待いただき、ありがとうございます。僕だってたまには夜会くらいでますよ」
    しれっと嘯いたディートフリートに、公爵夫人が呆れたように嘆息する。
    「よく言うわ。仕事が忙しいからと何だかんだ理由をつけて、普段は全然出てこないくせに。いったいどういう風の吹き回しなのかしら」
    「今日は僕の恋人を紹介させていただきたくて」
    そんな公爵夫人の嫌みを気にすることなく、ディートフリートが、ブランカを前に少しだけ押し出した。二人の視線が、ブランカへと向けられる。
    「……恋人? 貴方から恋人を紹介されるのなんて、初めてだわ」
    驚きの表情を浮かべた公爵夫人に、ディートフリートが苦笑を漏らす。
    「お二人に紹介できるような相手など、そうそういませんからね。今回は、特別です」
    紹介できない相手ならば、過去に多くいたとも取られかねない言葉であるが、その反面、こうして紹介されたブランカは、正式に恋人としての地位が確立されたことになる。その場所が、血縁の開いた夜会であるならば、なおさらである。
    「特別ね……そう、まぁ、いいわ。それで、どちらのお嬢さんかしら? 随分とお若いようだけれど……」
    多少の呆れを滲ませながらも、公爵夫人がブランカに視線を向けた。ディートフリートが、そんな彼女に苦笑する。
    「彼女はブランカ・ヘイノヴァー。皇太子妃殿下の筆頭侍女をしているのです」
    ディートフリートの紹介を受けて、ブランカは膝を折って礼を取った。相手は公爵家、礼を失する態度は許されるものではない。
    「ブランカと申します。お会いできて光栄です」
    にこりと柔らかく微笑んで見せれば、満足げに公爵夫人が頷いた。どうやら、及第点はもらえたようである。
    「ヘイノヴァー家というと……ヘイノヴァー商会のご親戚かな?」
    ヘイノヴァーの名に興味を引かれたのか、公爵がそう問いかけた。
    「メルダース支店の支店長は叔父にあたります。父は、ヘイノヴァー商会の会頭を務めております」
    「あぁ、ヘイノヴァー子爵のお嬢さんか!」
    公爵が、ブランカの答えに相好を崩す。
    「……父をご存じで?」
    急に親密さが増した公爵に、戸惑いつつもそう問いかけた。
    「あぁ、何度か狩りをご一緒したことがあるよ。直接アベスカの良い猟銃を、手配してもらったことがあってね」
    大陸北方の大国であるアベスカは、狩猟が盛んな国である。それゆえに、どんどん新しいものが開発されるため、狩猟愛好家の中にはアベスカの猟銃を求めるものも多い。
    「公爵閣下は、狩猟がご趣味でいらっしゃるのですか?」
    「あぁ、領地に広大な森があってね。幼いころからの習慣のようなものだけれど」
    水を得た魚のように生き生きとした公爵に、夫人とディートフリートが顔を見合わせた。
    「最近では、アベスカの猟銃が、メルダースでも主流になりつつありますものね。最近開発されたと噂の小銃はご覧になりました? なんでも軽量化に成功したとのことで」
    「それはいいね! ぜひ見てみたい」
    目の色を変えた公爵に、夫人が苦笑する。
    「ごめんなさいね。この人、本当に新しい猟銃に目がなくて……」
    「いいえ。そういう殿方は多くいらっしゃいますもの。半年ほど、アベスカ王国に滞在していた時期があるのですが、あちらは本当に狩猟に熱心で……」
    慣れているから大丈夫だと、暗に告げれば、更に公爵が話に食いついた。
    「なんだって! 君、アベスカ王国にいたのか!!」
    「はい。今後の勉強のためにと、女学院卒業後に各国を回っておりました。その一環で、アベスカ王国にも滞在を。あちらの狩猟にも参加させていただきましたわ」
    とはいえ、さすがに女性には猟銃は持たせられないと、馬で同行を許されただけではある。しかし、身近で彼らの狩猟を見学できたことは、とてもいい経験になったと思っている。こうして、ちょっとした会話に、加わることもできるのだ。知っていることと、全く知らないことは大きく違う。
    「なんて羨ましい……ッ。今度ぜひディートと遊びに来なさい。アベスカ王国の狩猟の話がしたい」
    目の色を変えた公爵に、曖昧に微笑みつつも、ちらりとディートフリートに視線を向けて明言を避ける。そんなブランカの視線の意味を正しくつかみ取ったディートフリートが、苦笑交じりに首肯した。
    「はいはい、わかりましたよ、叔父上。彼女と共に伺いますから、今日のところはこれで勘弁してください。貴方方に挨拶がしたくて、待っている人たちが、まだたくさんいますから」
    苦笑交じりの公爵夫人に、半ば引きずられるようにして去っていく公爵を見送って、ブランカは、ディートフリートと目を合わせて笑いあった。
    「公爵閣下は、ずいぶんと見た目と印象が違う方なのですね」
    「あの容姿から気難しいと思われがちですが、実はそうでもないのです。叔母がしっかりしている分、手綱を握られているようですね」
    「うふふ。でも、素敵なご夫婦でしたね」
    殺伐とした夫婦関係が多いと言われる高位貴族の中で、あれほど仲睦まじいというのも珍しい。とても良いものを見たとブランカが微笑めば、ディートフリートが眩しそうにブランカを見つめた。
    「ディートフリート様?」
    どうかしたのかと問いかけようとすれば、何でもないと彼が頭を振る。
    「せっかく夜会に来たのだから、踊りましょうか」
    大きな手が目の前に差し出されて、ブランカは無意識のうちにその手を取った。彼と恋人関係になってからというもの、この手の動作に慣れてきている自分が少しだけ怖い。
    手を引かれてダンスの輪に加われば、ふわりふわりとドレスの裾が舞い上がる。漆黒のレースに、同色の輝石ビーズが縫い付けられているためか、スカート部分が舞い上がるたびに光を反射してキラキラと輝いた。
    ブランカの右手と繋いだ彼の大きな左手に、ぎゅっと力を籠められる。どうしたのかとディートフリートの顔を見上げると、彼の灰褐色の瞳が真っすぐにブランカを見下ろしていた。
    「ねぇ、ブランカ。今夜はこのまま帰さないって言ったらどうします?」
    温度の低い灰褐色の瞳に僅かに灯る情欲の色に、ブランカの背がぞわりと粟立った。繋がる手に急に熱さを感じて、口の中が急に乾く。
    それでも不快に感じないのはなぜなのか……。
    言われている言葉の意味が分からない程、子供ではない。経験こそないが、それがどういう類のものであるかは知っている。それでもどこか気恥ずかしくて、顔を伏せて小さく頷くと、頭上でディートフリートが小さく笑った。
    それから、どのようにしてディートフリートの屋敷に戻ってきたのか記憶がない。気が付けば彼の寝室であろう部屋の寝台の上で、ドレスを脱がされて深い口づけを受けていた。
    髪はいつの間にか解かれて、髪飾りも耳飾りも、そして首飾りも、全て床に放り投げられた。大きな手が髪に差し込まれ、強い力で引き寄せられる。
    いつにない性急な口づけ。
    呼吸をも呑み込むほどのそれに、ブランカは体を震わせた。大きな舌が、ブランカの口内を縦横無尽に這い回るかと思えば、舌を絡めとられて強く吸われた。まるで蹂躙されているような口づけ。
    「は……っ、は……んっ……むぅ……ん……」
    呑み込めなかった唾液が、口の端から零れていく。
    何度も何度も角度を変えては舌を吸われ、執拗に唾液を流し込まれる。正しく彼に求められているというのが実感できる行為に、ブランカの下腹部がきゅうっと引き攣れた。
    そんなことを繰り返されていれば、弱々しかった抵抗でさえも力が入らなくなる。いつの間にか完全に力が抜けてくたりと体を凭れかけたブランカに、ディートフリートが僅かに舌なめずりしたような気がした。
    彼の長い指が、コルセットの紐を解いていく。ブランカはそれを彼の胸に凭れかかりながら、どこか他人事のように見つめていた。
    しゅるりと音がして、ブランカからコルセットが抜き取られると、ふるりと小ぶりな双丘が姿を現した。ブランカを寝台に横たえたディートフリートが、その柔らかさを確かめるように、そっと触れる。
    「ひゃ……っ」
    うっかり漏れ出た声に、ディートフリートが小さく笑うと、ブランカを宥めるように額に唇を落とした。
    まだ熟れ切っていない硬さのあるその膨らみが、ディートフリートの手によって形を変える。彼に触れられているという事実に、顔どころか素肌をピンク色に染めたブランカが、ふるりと体を震わせた。それに釣られるように、その双丘もまたふるりと揺れる。
    ディートフリートの二本の指が、膨らみの先端を挟んで、絶妙な力加減で連続的に揉みこむ。たまに先端を掠めるその刺激が、もどかしいような気持ちにさせて、ただそのもどかしさが表現できなくて、ブランカはモジモジしながらも体の熱を逃がすように、悩まし気な吐息を漏らす。
    「ブランカ、気持ちいいですか?」
    「きもちいい……? わからない……っ」
    まだ未成熟な体は、その刺激を快感にうまく変換できないでいるのか、なんとも言えない表情でブランカが答えた。
    しかし、そんな表情でさえも年若い令嬢を手籠めにしているような背徳感からか、ディートフリートにぞくぞくとしたものを感じさせた。悪いことをしているわけではないのに、なぜか悪いことをしているような気分になる。
    自分にそんな性癖があったのかと内心愕然としながらも、この年若く可愛らしい令嬢を手に入れられた幸運に、ディートフリートは密かに感謝した。
    今まで彼が相手をしてきたのは、全て熟れ切って成熟した大人の女性ばかり。そういうタイプに食傷気味になっていたというのもあるが、何も知らない少女を、いちから自分好みに育てることに、喜びを見出した瞬間でもあった。
    少し強めにその膨らみを握れば、ぷくりと先端が指の間から主張する。そこをぱくりと口に含んでちゅうっと吸ってやれば、ブランカが背をしならせて声を上げた。
    「ひゃぁ〜〜〜っ!」
    さも吸ってくれとばかりに突き出されたそれを、ちゅうちゅうと吸い上げ舌で転がしてやれば、ブランカが身もだえるように体をくねらせた。
    「やぁ……それっ……だめぇ……」
    「何が駄目なのです?」
    ぺろりと先端を舐めて問いかければ、涙目になったブランカが嫌々と首を振る。未成熟な体には刺激が強かったのだろう。
    「すっちゃ……やです……」
    「どうして? 気持ちよくないですか?」
    「わからないけれど……びりびりするんです……」
    素直な感想に、ディートフリートは無意識のうちに口の端を上げた。
    「びりびりか……いずれそれが気持ちよく感じるようになるでしょう。まずは受け入れなさい」
    傲慢とも言える言葉に悲壮な表情で首を振れば、それを黙殺するように反対側の先端も同様に吸っては舐めてと繰り返される。
    「やぁ……っ! ディート……フリー……トさまぁッ」
    嫌だと暴れるブランカを押さえつけて、ディートフリートが執拗にそこを舐る。ぬるりとした舌に何度も絡めとられ、舌と上顎の間で擦られる。
    「普段清廉潔白で、淑女の鏡のようなブランカの乱れる姿は……たまらないな」
    ぽつりと漏れ出た本音は、既にいっぱいいっぱいなブランカの耳には届いていない。
    「やだぁ……やめて、ください……」
    ブランカは、体を捩ってディートフリートの手から逃げ出そうとするものの、逞しい男性の力に適うはずもない。
    「……怖いですか?」
    動きを止めてそうディートフリートが問いかける。瞳に生理的な涙を浮かべたブランカが、ふるふると首を横に振った。
    「では、なぜ?」
    「……はずかしい」
    「恥ずかしい? たかが胸を弄られたくらいで?」
    これからもっと凄いことをすると言外に告げたディートフリートを、ブランカは涙の滲む赤銅色の瞳でキッと睨みつけた。
    「貴方のかつての遊び慣れた恋人たちと、一緒にしないでくださいっ!!」
    ブランカの痛烈な一言に、ディートフリートは目を見張る。彼としては比較したつもりも、同列に考えたつもりもないが、そう取られても仕方のない発言であった。
    ディートフリートは、ブランカの膨らみから手を離すと、そっと覆いかぶさるように彼女を抱きしめた。
    「……すみません。そんなつもりじゃなかったのです」
    「じゃあ、どういうつもりですか」
    じとりと睨みつけたブランカに、ディートフリートが苦笑を漏らす。
    「随分と自分が汚れた大人に成り下がっていたと、実感させられますね……」
    「……優しく、してください」
    ブランカが恥ずかし気に瞳を伏せる。こういうことを自ら口にするのは、初めてである。恥ずかしさに、顔が熱くなる。
    「えぇ、もちろんです可愛い人」
    ふっと吐息で笑ったディートフリートが、ちゅっとブランカの額に唇を落とした。

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