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あらすじ
君の推し活のすべてを俺に捧げてくれ
いきなり推しの嫁になりました!!!!「鞠花の実家を援助する。だから結婚しよう」幼馴染で“推し”である副社長の琢磨と結婚!? 取引めいたプロポーズにもかかわらず、初夜から抱き潰されて幸せホルモンで溺れそう。彼が悦ぶならエッチな推し活も最高! だけど結婚の公表を前に不安が募る。だって元キッズタレントで今でも大人気の琢磨の相手が、地味子の自分だなんて大騒動になりそうで!?
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キャラクター紹介
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小井出鞠花(こいで まりか)
琢磨の一番のファンを自負。今はいち社員として琢磨を遠くから推してるだけで!? -
霧ケ谷琢磨(きりがや たくま)
元・人気キッズタレントで、現在は大企業の副社長。社内でもファンクラブが。
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試し読み
琢磨の片手が腰にかかり座らされそうになったが、なにを思ったのかすぐに離れた。
「すまない。俺のせいだな。だが、そんなに怖がらないでくれ、鞠花と密着している以上、この反応は仕方がないことだし、悪いが俺はもっと鞠花とくっつきたい」
「反応……」
反応と言われて思いつくのはひとつしかない。身体の泡を流しているときに感じた、琢磨のご神体だ。
膝に座れないのは、純粋に推しの膝だと思うと恐れ多いからなのだが、琢磨は自分の分身がエレクト状態だから鞠花が恥ずかしがって座れないと思っているらしい。
(そんな心配は無用ですよ。むしろ両手を合わせて参拝したいくらいなのに!)
琢磨が謝る必要などない。むしろ謝らせてはいけない。
――――我が推しには一点の汚点もないのだ!!!!!
そう思うと動揺もスンっと冷めていく。鞠花は素直に琢磨の膝に座り、上半身をくっつけた。
「すみません。琢磨さんのせいなんかじゃないです。むしろ、わたしなんかと一緒に入浴して、その……ナニが、そのような状態になってしまっているなんて、申し訳ないというか、ありがたいというか。それに、わたしも琢磨さんとくっつきたいです」
「鞠花……」
琢磨の両腕が背中に回り抱き寄せられる。腰は彼の膝に落ち着くが、お尻をそのままのせていると考えると申し訳ないというか緊張するというか。
それにやっぱりこうして密着すると腹部に硬いものが触れるので、まったく気にならないといえば噓になる。
(ええーと、見たこともさわったこともないからよくわかんないけど、こんな……おっきいものなんでしょうか。勃ってるから大きく感じるだけかな。でも、これ……これが入るんでしょ? 無理じゃない?????)
決して口には出せない思考がぐるぐる回る。きっと無理に違いない、しかし無理ならどうしたらいい、琢磨を落胆させてしまうのではないか。
(否!!!!!)
その瞬間、すべての迷いが吹き飛ぶ。
(推しのすべてを受け止められない者に、推す資格なし!)
抱きつく腕に力をこめる。腰を進め、さらにくっついた。
「琢磨さんが、くっつきたいと思ってくれるなら、ガンガンくっついてくださいっ。琢磨さんが嬉しいなら、わたしも嬉しいんです」
「鞠花っ」
抱きしめる腕の力が強くなる。首筋のところですりすりと顔を動かされ、大きな手のひらが背中をさまよう。
正直、密着しすぎて、さわられすぎて、琢磨の肌が気持ちよすぎて……。
(ヤバい……昇天する)
くっついてくださいと自分で言っておきながらなんだが、推しの摂取過多は命にかかわる。
こんなことで、生きて新婚初夜など迎えられるのだろうか。はなはだ不安だ。
そんな矢先、不意に唇が重なった。
深く口づけられ舌を搦め捕られる。強く吸いつかれて息は止まるが、苦しいとか恥ずかしいとか考えている余裕はない。
「ン……んぅ」
背中を撫でていた手が腰を撫で、お尻の丸みを掴んでは放す。強く掴まれているはずなのに力の入れ具合が絶妙で、痛いどころか心地よく感じてしまった。
お尻を強く掴まれて心地がいいなんて、そんないやらしいこと口が裂けても言えない。そう感じた矢先、続いて胸のふくらみを大きく鷲掴みにされた。
指の力が強くなったり弱まったり。揉んでいるというより弾力を確かめているような、お尻を掴まれたときと同じような強さなのに、なぜかそこから広がるむず痒さが全然違う。
(どうしよ……我慢できないぃぃ……)
どっちもどっちではあるが、胸のほうが断然ムズムズする。
「……琢磨、さん……ハァ……」
彼が顔の向きを変えるわずかな隙をついて顎を引き、唇を離す。キスで抑えられていた呼吸が楽になり息があがる。
「なに……?」
聞いてくる琢磨の息も乱れている。苦しげな囁きが驚くほど艶っぽくて、あたたかなお湯に身を浸しているはずなのに腰のラインがぞくぞくする。
「くすぐったい……我慢……むり……ハァ、ぁっ」
落ち着かない呼吸を伴っていては一番伝えたいことを口にするのがやっとだ。
鞠花としてはさわるのをやめてくれたらくすぐったさが収まるという考えだったが、琢磨の考えは違ったらしい。鞠花を抱きながら勢いよく立ち上がったのだ。
「同感だ、鞠花! 俺も我慢は無理だ!」
勇ましい水音を立ててバスタブから出た琢磨は、鞠花を姫抱きにしたままバスルームを出てドレッシングルームを素通りし、さっさとリビングへ入る。
さきほど、入浴後にはバスローブを着て出るべきかバスタオル一枚で出ていくべきか、迷ったのはなんだったのか。
向かう先はひとつ、ベッドルームである。予想どおりすぐにベッドに押し倒された。
「琢磨さんっ、あのっ、からだ、身体っ、拭いてない」
覆いかぶさってきた彼が首筋に唇を這わせるのを感じながら、慌てる理由を口にする。
バスルームから出る際にタオルを持ってきたのならともかく、持ってきていないうえに身体も拭かないで、全身濡れたままベッドに倒れこんでしまったのだ。
髪も濡れているし、このままでは枕からシーツまで濡らしてしまう。しかし琢磨は自信ありげに笑った。
「そんな心配をするな。このくらい、俺の情熱で蒸発する」
(いやっ、熱血スポコンアニメの主人公じゃないんだから! 蒸発しませんって!)
鞠花の心配なぞどこ吹く風で慌ただしく全身をまさぐる琢磨に、心の中でツッコんでみる。
それでもすぐに「そんな琢磨さんも素敵」という境地に入ってしまうので、推しへの愛は偉大だ。
「鞠花の肌も熱くなっているし、ふたりの情熱であっという間だ」
「そうですねっ」
冷静に考えれば……そんなわけはない。肌が熱いのも、湯上がりだからという理由が大半を占める。
だが琢磨が言った言葉なので、これでいいのだ。
ひとまず身体を拭かずにベッドインしてしまった問題は忘れることにする。それを意識の外にすると、彼にされていることが急激に気になってきた。
首筋にあった唇は浮き出た鎖骨をなぞり、両手は胸のふくらみを大きく寄せ上げている。鷲掴みにされたときとは違い、手のひら全体が動き〝揉まれている〟という実感があった。
異性に胸を揉まれるなんて考えただけでも恥ずかしいのに、それをしているのが琢磨なのだと考えると異常な興奮が湧き上がってくる。
推し以前に初恋の人なのだとしても、こんな状況許されてもいいのだろうか。一応入浴もしたし洗ったし、身体は浄化されているとは思うが、ずっとずっと推しとして崇め奉ってきた彼と性的な接触をするなんて。
そしてまた、困ったことに……。
(なんだかなぁ~、もぉぉぉ、なんか……気持ちいい……)
こともあろうに胸を揉まれて感じてしまっている。じわじわとあたたかいものが胸のあたりを覆って、じれったい感覚がゆっくりと腰の奥に落ちていく。
(なにこれ……ほんと、なにこれっ!)
正直にいえば気持ちがいいし、このまま身をゆだねていれば知らなかった快楽が待っているのではという期待がある。
初体験というものは、ベタベタ身体をさわられた不快感と痛いばかりでいいものではなかった、という体験談もあるようだが、鞠花の相手は琢磨だ。
長年の推しにさわられて不快感などあるはずもない。
(でも、このまま気持ちよくなっていいの!? 失礼じゃない? 推しから快感をもらうなんて、それは正しいの!? 姿を拝んで幸せになってるのとは違うんだよ!?)
ぐるぐると迷いを放出しているあいだにも、琢磨の行為は続いていく。胸の頂を探られ、その先端を指でつままれる。三本の指でつまみ上げられ、回すようにくりくりとしごかれて、感じたことのない大きなむず痒さに襲われた。
「んっ、ぁ、やっ……くすぐった、ぃ……ハァ、ンッ」
身悶えずにはいられない。肩を寄せて顎を引き、その刺激から逃げようとするが横たわった状態ではそれも叶わず、自分でも驚くような切ない声が出ただけだった。
「鞠花はさっき、風呂で『くすぐったい』と言っただろう? 今も同じことを言った。本当に、くすぐったいだけ?」
「だって、くすぐった、ぃ……ぁんっ」
「くすぐったいときに、出す声じゃない」
つままれていた片方の頂に琢磨が舌を這わせる。じっとりと舐め上げ、頂にある突起の周囲でぐるぐると回し。
「あっ……は、ぁぁ」
指でつままれているのとは違う刺激。優しく撫でつけられる感触がこんなにも官能に刺激を与えてくる。
くすぐったい。くすぐったいのだ。しかしそこから、徐々に違う想いが生まれてくる。柔らかく胸のふくらみを揉まれていたときのように……。
(気持ちいい……)
上半身は黙っていられなくてイヤイヤと左右に揺れる。それなのに体内は広がっていく心地よさに侵食されている。そこから弾き出される、どっちつかずの声。
「あっ、ぁン、ダメェ……ぁあんっ」
「そんなにイイ声が出ているのに? ダメ?」
「だって……熱い、からぁ、あぁっンッ」
「熱いの? どこが?」
尋ねているのに、答えを待っている様子はない。おまけにその声は楽しそうで、鞠花が困っているのを楽しんでいる雰囲気さえある。
おそらく琢磨は、鞠花がじれったそうに動く理由も、どこが熱いのかも、わかっている。
「ああ、そうか、ここだ」
いきなり胸の突起を唇でチュウっと吸われる。甘い電流がお腹の奥に走って、思わず腰が反った。
「ああっ!」
すぼめた唇で繰り返し吸われていると、そこに溜まっていた熱を吸い取られていくような心地よさに見舞われる。しかも吸われている刺激で快感は生まれていくので熱が冷めることはない。
「そこ……ぁっ、吸われたら……ぁぁあんっ……ハァ」
――――気持ちイイ……。
片方の胸はずっと彼の手で揉みこまれている。頂を指で挟み、刺激を与えながら。
反対側は舌の洗礼を受けたものの、ときおり頂を舐め上げるほかはずっと突起の周囲を円を描くようになぞっていただけ。
それはそれでムズムズとした刺激があるのだが、当の突起が熱く火照って疼いていたのだ。
反対側の突起が指でつままれて刺激をもらっているせいか、こちら側も刺激を欲しがっているのを感じていた。いよいよ我慢ができなくなったら、この疼きを抑えるために自分でひねり上げてしまうのではないだろうか。
その疼きも今、琢磨にいなされてしまった。まるで、鞠花がなにをしてほしがっているかわかっているかのように……。
「琢、磨さん……ぅン」
切ない声が止まらないまま視線を下げる。胸の先端に吸いつく琢磨と視線が絡み、ドキンと鼓動が跳ね上がった。
琢磨が視線をくれながらゆっくりと唇を離していくと、透明な線が糸を引き、落ちる。さっきまで唇にもてあそばれていたそこは、しっとりと輝いていた。
とてもいやらしいことをされた気がして、羞恥心のゲージが一気に上がる。腰の奥がぐっと重くなって下半身に切なさを感じ、内腿を締めて揺すった。
「こっち、切なくなった?」
琢磨の手がヒップラインから太腿を撫で、脚の付け根に到達する。脚を閉じていたのでなんの警戒もしていなかったところへ、彼の手はスルッと太腿の隙間にもぐりこんだ。
「あっ……」
脚を閉じていたのに、どうして。
そんな疑問はすぐになくなる。内腿がぬるぬるとしていて、彼の手を助けているのだ。
誰にも探られたことのない場所に琢磨の指を感じる。閉じ合わさった秘所の唇をなぞって、合わせ目から潜りこんでくる。それも、つるっと、たやすく。
「鞠花……すごく濡れているけど、なにが気持ちよかった? キス? それとも胸を吸われたとき?」
「あ、それ、は……」
どっちと答えたらいいだろう。両方なのだが、選択肢がない。そもそも「両方です」なんて言ってしまうのも恥ずかしい気がする。
「正直に教えてくれる? 駄目? 鞠花」
「はいっ、両方ですぅっ」
琢磨の甘いお願いボイスが発せられ、恥ずかしさが場外ホームラン並みに吹っ飛んでいく。
元気よく答えた次の瞬間、恥ずかしい場所で琢磨の指が動きだした。
「あっ……! ふぅ、ぁっ……ん、んンッ!」
少しはゆるんだものの、脚を大きく広げているわけではない。きわめて窮屈な場所で自在に指が動くのは、鞠花が意識できないうちに溜まっていた潤沢な愛液のおかげだ。
「あっ、はぁ、ああっ、はっ……ぅん……!」
指が動くごとに身体がびくびくと跳ねる。まるでそこでおかしな電気が弾けているみたいだ。弾けたあとは甘ったるいものが広がって、もどかしさが溜まっていく。
おまけに、ずっと揉まれていたほうの胸のふくらみに琢磨の唇が移動してきたせいで、ただでさえ指で尖り勃たされていた突起が、今度は舐め回されている。
そのせいで、よけいに……気持ちがいい。
こんなに反応してしまうなんて思わなかった。そもそも、キスをされたり胸をさわられたり、あまつさえ自分でもさわったことがないような場所で指を動かされるなんて、考えたことはない。
「はぁ、あっ、琢磨、さん……そんなにしちゃ……いやぁ、ああンッ……」
感じすぎだ。おまけにいやらしい声がたくさん出てしまって、琢磨に呆れられてしまうではないか。
処女のくせに、初めてさわられてこんなに感じるなんて。いやらしい女だなと嗤われてしまう。
(呆れるをとおりこして、嫌われたらどうしよう……)
自分の濫りがわしさを考えると悲しくなってくる。それでも琢磨の愛撫は続き、そのせいで気持ちよさは続くしもどかしさも溜まり続ける。
鞠花はどうしたらいいかわからなくて、泣きたい。……が、そんな余裕はないと官能に殴られるので意識は快感に釘づけだ。
「こんなに感じてくれるなんて。嬉しいよ、鞠花」
「嬉しい……?」
「とても嬉しい。俺がすることで鞠花がこんなに感じてくれている。内腿に漏れてくるくらい愛液でべっちゃべちゃになって、こっちの辛抱がブチ切れそうなくらいかわいい声でエロくあえいで、この日をどれほど夢みたことか……。嬉しくて嬉しくて、スカイツリーのてっぺんで仁王立ちになって高笑いしたいくらいだ」
(素晴らしいです! 漢らしい無茶な野望ですね、琢磨さん!)
無茶というより不可能な野望ではあるが、推しの言葉を否定するという言葉は鞠花の辞書にはないのだ。
「嬉しい、ほんっとうに、嬉しいっ」
嬉しさで興奮状態なのだろう。琢磨は強く突起を吸い上げ、指を蜜液の中で放埓に躍らせる。そのせいで伝わる快感も大きくなった。
「ああっ、あっ! 琢磨、さっ……そんなに、やぁぁん!」
思わず琢磨の頭に手を回し、もう片方の手で秘部をもてあそぶ手の腕を掴む。とっさにやったことなので自分でも行動の理由がはっきりとはしないが、鞠花としては彼の激しさを止めるつもりで手を出したのだとは思う。
が、これでは普通に受け入れているだけ……ではないだろうか。
「君がこんなに感じてくれて、嬉しいよ」
繰り返される、嬉しいの言葉。
彼は、新婚初夜というムードに合わせて言っているのではない。本気で言っているのだ。「嬉しい」と。
(嬉しい? それって、琢磨さんが喜んでくれているってことだよね)
鞠花は気づく。まるで頭の中の靄がぱあっと晴れたかのように鮮明に。
(琢磨さんを喜ばせてあげられるなんて、それ、最高の〝推し活〟じゃない!?)
琢磨は鞠花が感じていたことを喜んでくれた。それなら、気持ちいいという感情を隠してはいけないのではないか。
もっとガンガン表現して、琢磨のおかげで気持ちよくなっているのだとわかってもらえれば、彼はもっともっと喜んでくれる。
鞠花は琢磨という唯一無二の推しを、喜ばせてあげることができるのだ。
(なんて素晴らしい〝推し活〟なんだろう!!!!!) -
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