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あらすじ
愛している。この世界の誰よりも君を
田舎育ちの伯爵令嬢が王弟殿下の最愛の花嫁に!?花好きの伯爵令嬢ディートリントは仮面舞踏会で、素性を知らぬまま王弟殿下クラウスと次の逢瀬を約束するが、すれ違いで再会は三年後となった。速攻で結婚を申し込まれ、始まった新婚生活。「飾らない、そのままの君が好きだよ」彼から甘く触れられて蕩かされ、幸せを感じるディートリント。だが人気の彼を射止めたことで令嬢達の嫉妬の的になり!?
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キャラクター紹介
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ディートリント
根は引っ込み思案で人見知りな伯爵令嬢。田舎育ちのためお転婆な一面も。 -
クラウス
王弟。穏やかで温厚な反面、敵には容赦しない冷酷な一面を持つ。
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試し読み
「こちらは、心を落ち着け、お体を開きやすくするものでございます」
つまりは、恙なく初夜を迎えるためのもの。改めてそう言われてしまえば、ディートリントの頬に朱が走る。
貴族の婚姻とは、子を為すためにある。これが、相手が王族であれば、それはなおさらだ。これから行われることは、つまりそういうこと。緊張のあまり、カップを手に取ろうとして、カチャリと不快な音を立てた。
「あ……」
僅かにソーサーに零れたそれに、ディートリントは声を漏らした。
「大丈夫でございますよ。みな様、初めはそのように緊張されるものです」
年かさの侍女が、安心させるようにディートリントの手を握った。
「クラウス殿下は、お優しい方です。決して奥様にご無体なことはなさいません」
「……」
クラウスが、無体を働くなど考えたこともない。彼は、始終ディートリントに優しかった。こくりとディートリントが頷けば、年かさの侍女が、にこりと優し気な笑みを浮かべる。
「初めは、どうしても痛みを伴うものです。ですから、少しでもそれを取り除くために、こちらをお召し上がりください」
握った手を開かせて、年かさの侍女がディートリントにカップを握らせる。仄かに温かい温度に、少しだけ緊張した心が和らぐ。
「王家の薬剤師が調合した薬草茶でございますよ。王家に嫁がれたお方は、必ず召し上がるものです」
彼女に勧められるがままに、カップに口をつける。ふわりと香る薬草の匂いに、親しみを覚えるから不思議だ。
「……おいしい」
「それはようございました。飲みやすい様にと、長年改良されていると聞きますので、お口にあったのであればなによりですわ」
熱い飲み物を飲んだわけでもないのに、不思議と体がぽかぽかとしてくる。二杯目を飲み干したところで、ちりんと小さな鈴の音が聞こえてきた。
「あちらも準備が整ったようですわね」
年かさの侍女に手を取られて、夫婦の寝室の扉をくぐる。薄暗い室内に、クラウスがグラスを傾けているのが見えた。
「殿下、奥様の準備が整いましてございます」
侍女が、クラウスに向かって深々と頭を下げる。
「そうか、ご苦労だったな。ディートリント、こちらにおいで」
侍女が下がったのを見届けて、ディートリントはクラウスに呼ばれるがままに傍まで寄った。彼の前に立てば、そのままそっと彼の隣に導かれる。
「そなたも飲むか?」
グラスを掲げられて、ディートリントは首を振った。そんな彼女を、くつくつとクラウスが笑う。
「そんなに緊張しなくても、いきなり襲い掛かったりはしない」
「おそいか……ッ!?」
ぎょっと身を引いたディートリントを、すかさずクラウスが抱き上げて己の膝の上に乗せた。
「ひとまず、この部屋でのそなたの指定席はここだな」
冗談交じりにそう言ったクラウスに、ディートリントが思わず身を竦める。
「……酔っていらっしゃるのですか?」
クラウスの口から、仄かに酒精が香る。じとりとクラウスを見上げれば、彼が声を上げて笑った。
「まさか! これくらいで酔っ払ったりはしないよ」
「そうですか?」
ディートリントは、疑わし気にクラウスを見上げた。灰褐色の瞳が細くなって、そのまま唇を塞がれる。
ちゅっとリップ音を響かせて、クラウスの顔が離れた。クラウスに、口づけをされたのだと気が付いて、ディートリントはその瞳をまん丸に見開いた。そんなディートリントの姿に、クラウスが瞳を細める。
「それにしても、感慨深い」
するりとクラウスの大きな手が、ディートリントの頬を撫でる。武人としても名をはせる男の人の手だ。
意味が分からずに首を傾げたディートリントに、何でもないとクラウスが苦笑した。
「……あぁ、薔薇の香りだね」
ディートリントの髪に顔を寄せたクラウスが、すんっと鼻を鳴らした。ひと房掬い上げた髪にも、クラウスが唇を落とす。
「ディートリント」
真剣な表情で名を呼ばれて、うっとりとクラウスを眺めていたディートリントは、夢見心地のまま彼に視線を向けた。
「ディートリント、わたしの妻」
妻―――という単語に、ディートリントの心臓が跳ねる。
「死がふたりを分かつまで、いや、死してなおそなたは永遠にわたしの妻だということを忘れてはいけないよ」
それは、まるで呪文のようにディートリントの心に刻みつけられる。
「……クラウス様」
「今夜が、その始まりの時なのだから」
クラウスの灰褐色の瞳に魅入られるように、ディートリントがこくりと頷けば、満足げに彼が微笑んだ。
クラウスの長い指が、器用にディートリントのガウンの結び目を解く。拘束を失った柔らかな布地は、その役目を終えてするりと彼女の肩を滑り落ちる。
残されたのは、繊細なレースが美しい夜着。
「……美しいな」
クラウスの指が、壊れ物に触れるように優しく肩のラインをなぞる。くすぐったさに、ディートリントは、僅かに体を捩った。
薄いレースの夜着は、初夜のためのもの。新妻を清らかで美しく、そして艶めかしく見せるものだ。
レースの間からは、白い肌も胸の先端の色づきさえ透けて見える。
「……寝台に行こう、ディートリント」
腕を回されて、そのまま横抱きにされる。慌ててクラウスの首に手を回せば、彼が正解だと言うように微笑んだ。
ゆったりとしたスピードで寝台へと到達したクラウスは、そっとディートリントを横たえた。柔らかな敷布に、ディートリントの体が沈み込む。
白い敷布の上に、キラキラと輝く白金の髪が散らばる。そんな彼女の姿を、クラウスが熱い視線で見下ろした。
いつもは冷たく見える灰褐色の瞳に、ギラギラとした熱が籠る。
クラウスが、己のガウンを脱ぎ去れば、そこには均整の取れた美しい肉体が現れた。戦うものが持つ肉体だ。
国王の代理は、お飾りの存在ではない。日々騎士たちに交じって体を鍛え、剣を取るのがクラウスの日常の一部でもあるのだ。
ぎしりと音をたてて、クラウスがディートリントの横に手をついた。それは、ディートリントに覆いかぶさる形となり、見下ろされるだけでドキドキと鼓動が大きくなる。
目を閉じれば、優しい口づけが下りてきた。初めは触れるだけの優しいもの。啄んでは離れ、離れては戻ってくる。触れる唇は、とても柔らかいのだと、ディートリントは妙な感想を持つ。
クラウスが、彼女の夜着のリボンをそっと解いた。繊細なレースで作られたそれは、ただの布切れと化して、するりとディートリントの体を滑り落ちた。
ディートリントの体を遮るものは何もない。その美しさを惜しげもなくクラウスの眼前にさらけ出した。
真っ白な肌。細い腰。緩やかなくびれ。そして、豊かな膨らみ。つんと上を向いた胸の先端は、綺麗な赤。クラウスは、ひとつひとつ確かめるように、掌で撫でていく。初めてでもなるべく快感を拾えるようにと、丁寧に刺激する。
体の割には豊かな膨らみを、むにっと軽い力で揉んでやれば、ディートリントが声を漏らした。
「……んぁッ」
喘ぎとも言えない小さな声だが、それだけでクラウスの心臓が跳ねる。
驚かさないように、怖がらせないように、様子を見ながら肌の感触を確かめる。
「っぁ、……ッ」
つんっと立ち上がった赤い先端を口に含めば、ディートリントがさらに声を漏らした。
「どうだい? 少しは感じる?」
先端を口に含んだまま、上目遣いで問い変えたクラウスに、顔を真っ赤に染め、ぎゅっと目を瞑ったディートリントが、いやいやと首を振る。
その間にも、クラウスはちろちろと舌で先端を擽った。
「……ッ、わかり、ません」
小さく息を呑む姿と、掠れるような小さな声。それだけで悪戯心が擽られる。
「ふむ。そうか。では、これはどう?」
そう言うと、クラウスはおもむろにディートリントの耳朶を口に含んだ。
「ひゃっ」
ぴちゃりくちゃりとわざと音をたてて、耳の中に舌を入れる。耳朶を甘噛みし、耳殻をゆっくりと舐め上げれば、小さくディートリントが鳴いた。
その間にも、掌は腰のラインをたどる。大腿を撫で上げれば、びくりと体を震わせてディートリントが、体を硬くする。
「大丈夫だ。酷いことは何もしない」
ぎゅっと目を閉じて、未知の感覚を耐えようとするディートリントを可愛らしく思いながらも、秘められた場所へと手を伸ばした。
「あ……んッ」
そっと秘裂に触れれば、わずかにしっとりとした潤いを感じる。
「少し……濡れてきているかな……」
王家特製の初夜の床のための薬草茶は、軽い媚薬のようなものだ。乙女の体温を上げ、興奮を促し、感覚を敏感にする。その効果が少しずつ出てきているのか、ディートリントは悩まし気な息を吐き出した。
蜜口の浅い部分に差し入れた指は、しっとりとした襞に包まれる。しかし、とてもではないが、このままではクラウスの雄を受け入れることはできそうもない。
指を出したり入れたりを繰り返すものの、体は依然と硬いままだ。
「ふむ。ここだけでは、感じぬのだな」
乙女の体は、快感を上手く拾えないらしいと言っていたのは、一体誰であったのか。未成熟な体では、刺激を上手く変換できないのだと。
「あ……クラウス、さま……ッ」
ディートリントが、悩まし気な声音でクラウスを呼ぶ。
「大丈夫だ、ここにいる」
伸び上がって口づければ、ディートリントが不安げな顔を緩めて僅かに微笑んだ。
「女性は、こちらの方が気持ちよくなれるらしい」
そう言うと、クラウスは、漏れ出る蜜を敏感な蕾に塗り付けた。
「……ッ」
ビリリと走る刺激に、ディートリントの眉間にしわが寄った。
気持ちいいという感覚よりも、それは痛みであった。繊細である場所ゆえに、刺激に慣れていない者にとっては、痛いのだ。
「……そうか、これだと痛みがあるのか」
そうぽつりと漏らすと、クラウスが体を離す。体温が離れていくことに不安になってその姿を追えば、クラウスが、大丈夫だと淡く微笑む。
「痛くても、だいじょうぶです」
初めては誰でも痛いものだと、皆が言う。であるのならば、これは必ず通る道なのだ。そんな思いで口にすれば、クラウスが苦笑を漏らす。
「それでも、なるべく痛みは与えたくない。痛くないことに越したことはないだろう?」
「それは……」
もちろんと言いかけたところへ、クラウスがディートリントの足を、大きく割り開いた。これにぎょっとしたのは、ディートリントである。そんなディートリントの動揺を知ってか知らずか、クラウスはためらうことなくその場所に口をつけた。
「……ッ!!」
舌先で蜜口や敏感な蕾を愛撫する。指ではないもっと柔らかい器官である舌は、ディートリントに痛みを与えることはない。
「ひゃぁぁぁぁッ」
しかし、痛みはなくともその光景は強烈だ。王弟であるクラウスが、ディートリントのあらぬ場所に顔を埋めているのだ。パニックにならない方がおかしいだろう。
「だめ……ッ、そんなところ……ッ!!」
嫌だ駄目だと身を捩るディートリントを押さえつけて、クラウスは敏感な蕾を舐め、唇で扱き、蜜口に舌を差し入れて溢れた蜜を啜る。
しかし、彼女の体はそんな気持ちとは裏腹に、従順に快楽を拾って十分に蜜をこぼし始めた。
いつの間にか入るようになった指が、蜜路を何度も往復する。そのたびに、ちゅぷっと音をさせるので、そんな音すらディートリントの羞恥を煽った。
大きく隘路の中を指でかき回されれば、たまらず声が漏れ出る。
「あぁん……ん……ッ」
「あぁ、ここがいいのか」
ディートリントのいい場所に気が付いたのか、クラウスがその場所を執拗に攻める。それと同時に敏感な蕾を唇で覆われ、舌先でつつかれて、丁寧に舌で扱かれれば、ディートリントの体は、あっさりと白旗を上げた。
ぞわぞわと足先から何かが這い上がって来る感触と共に、呼吸が荒くなる。
「あ……あ、……や……だ、め……ッ、こわぃ……」
いやいやと首を横に振って刺激を少しでも逃そうとする姿が可愛らしい。それでも、クラウスに容赦するつもりなど到底なく、さらに執拗に追い上げた。
「大丈夫だ。怖くないから、このままイってしまえ」
いつの間にか二本に増やされた指で中をかき混ぜられ、敏感な蕾を柔らかい舌で愛撫されて、ディートリントの視界は真っ白な世界に放り出された。
「や……ぁ、あ……あ……っくぅ……ッ!」
ピンと伸ばされたつま先とびくびくと痙攣するように震える体に、ディートリントが達したのだと知る。
どっと溢れ出た愛液を纏わせて、クラウスは己の高ぶりを蜜口へと押し当てた。
この婚姻は、二人の結合でもって完成する。
「すまないな、ディートリント」
「あ……ったぁ!」 -
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