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「まぁ、仲が良いのはいいことだ。長年皇太子の婚約者の席が空席であったことも、気になっておったことだしな。長年の懸念が払拭されたわ」
「仕方ないでしょう。これと心に決めた女性が現れなかったのですから」
「でも、お主がシャルロット嬢を貴人の塔に連れ込んだと聞いた時には、肝を冷やしたぞ」
「連れ込んだなんて人聞きの悪い。あれは保護ですよ。今までは彼女のご両親の教育の賜物か、達の悪い連中に目を付けられることもなかったようですが……人は窮地に立たされると何をしでかすかわかりませんからね」
「あらやだ。一番達の悪い男に目を付けられちゃっていますけれどね」
ほほほと皇后が楽しげな笑い声を上げた。
「誰が達の悪い男ですか。こんなにシャルロットのことを慈しんでいるのに……。それに、母上も本望でしょう? どこぞの高慢な令嬢を連れてこられるよりも、ご友人の可愛らしい娘を連れて来た方が」
「そんな失礼な物言いをするのではありませんよ。でも、確かにシャルロットさんを見初めただなんて上出来ですわね」
「でしょう?」
「えぇ、もちろん。可愛らしく、控えめで、それでいて貴方と対等に政治や歴史の話ができるのでしょう?」
「それだけではありませんよ。シャルロットのチェスの腕前は、中々のものです」
「まぁ、戦略上手でもあるのね! 是非今度手合わせいたしましょう!」
喜びの声を上げた皇后に、皇帝が苦笑を漏らす。
「そなたもチェス好きだからな。いい相手ができてよかった。しかし、それにしても女性でチェスを嗜むとは、流石は跡取り公女というところか」
「父がシャルロットに教えたのですよ。歴史を含めた読書も、チェスもね」
「あぁ、先代大公のチェスの腕前は見事だと言われていたからな。彼の方直々の指導であれば納得もいく。とはいえ、シャルロット嬢にも才能があったのだろうな」
とんでもないと、頭を振ったシャルロットに皇帝はにこやかに笑った。
「本当に昔のそなたによく似ておる。かつてはそなたが女性であれば伴侶に迎えたのにと思ったこともあったが、息子がその娘を伴侶に選ぶとは何とも感慨深いものだな」
「冗談はよしてくださいよ。貴方の伴侶は皇后陛下ぐらいしか務まりませんよ」
顔を顰めた大公に、皇帝が呵呵と笑い声を上げた。私的な晩餐会が終われば、場所を移してディディエとシャルロットの婚約に関する取り決めがなされた。
正式な婚姻は三年後とされ、初めの二年は国に戻り、次期大公としての教育を受けることとなる。残りの一年は帝国に居を移し、結婚式の準備と皇太子妃教育を受けるのである。
シャルロットの身分は、大公の継嗣のままであり、婚姻後ディディエとの間に子が生まれた場合、そのうちの一人をメルシエ大公国の継嗣とすることになる。
無事に調印を終えて、話を詰めるという両親を残して、シャルロットはディディエに手を引かれて部屋を出た。
ディディエに連れて行かれた先は、淡い色合いで統一された可愛らしく上品な部屋であった。
乳白色の家具類はどれもこれもが素晴らしく、凝った意匠が施されている。可愛らしいローテーブルに、上品な柄の長椅子。暖炉のマントルピースの上には、これまた白い花が飾られていた。
「ここは、これからシャルロットの部屋になる」
「え?」
驚きにその蜂蜜色の瞳を見開けば、ディディエが小さく笑った。
「ひとまずシャルロットのイメージで揃えさせたけれど、気に入らないものや欲しい物があれば好きに変えていい。もう寮の部屋は引き払ってしまうのだから、新しい部屋が必要だろう?」
「えぇ!?」
確かにディディエの言う通り、フィリルエンドを卒業すれば寮の部屋は退寮になる。卒業式を終えた今、最低限の荷物を残して全て国に持って帰ってもらったのも事実である。現に今は、王宮の客室を借りている状態であり、今夜もその客室に泊まる予定であった。
「何をそんなに驚くことがある? 君は僕の婚約者になったのだから、王宮に部屋が与えられることは何も不思議なことじゃない」
「そうかもしれませんが……」
それであっても、これは過分なのではないだろうかと言いよどんだシャルロットの手を引いて、ディディエが続き部屋の扉を開ける。
窓の無い小さな部屋。室内の家具といえば、寝台が一つだけ。寝台に設えられたリネンは、乳白色の柔らかな色合いであった。
「ここがシャルロットの寝室。とは言っても、きっとこちらはあまり使わないかな?」
どういう意味かと首を傾げたシャルロットを、ディディエは次の部屋へと促した。
その隣の部屋は、シャルロットの寝室に比べてずっと大きな部屋であった。小さいながらも窓があり、その窓からは柔らかな光が差し込む。
部屋の中央には、天蓋つきの大きな寝台が一つ鎮座する。
「ここが僕たちの寝室。あちらの寝室をシャルロットが使うことはあまりないと言ったのは、こちらがあるからね」
ディディエの言葉に瞠目して見上げたシャルロットの頬に、ディディエが唇を寄せる。
「せっかく王宮に滞在しているならば、婚約者と共に眠りたいと思うのは我侭かな?」
顔を真っ赤に染めて、ぶんぶんと頭を振ったシャルロットに、ディディエが小さく笑った。
「あちらの扉が僕の私室に繋がっている。そこの扉は、浴室。どちらも鍵はかけていないから自由に入って大丈夫だよ」
「あ……う……はぃ……」
何とか頷いたシャルロットに、ディディエが甘く笑う。
「でも今日は、せっかくだから一緒に入ろうか?」
「ひぇっ」
驚きの声を上げたシャルロットに小さく笑って、ディディエがシャルロットのドレスに手を伸ばす。するりと解かれた編み上げのリボン。
あっという間にドレスを脱がされ、コルセットを外される。ガーターを外されて、絹の靴下を脱がされれば、下着姿のシャルロットに、ディディエはうっそりと笑った。
「すごくいい眺めだ……」
ちゅっと音を立てて、ディディエがシャルロットの肌を吸う。
「やぁッ、わたしばかりこんな姿で……」
恥ずかしいと身を捩ったシャルロットを抱き上げると、ちゅっと唇を重ねた。
「お姫様は恥ずかしがりやだな」
そのまま浴室へ続く扉を潜り、シャルロットの下着を取り払うと、泡の浮かぶ浴槽へとシャルロットを沈めた。
温めの湯が心地よい。また、浮かぶ泡が素肌を隠してくれて、幾分かシャルロットの羞恥心が緩和される。
少し間をおいて、衣服を脱ぎ捨てたディディが、シャルロットを抱え込むように浴槽に浸かった。彼の長い腕が、シャルロットの腹部に巻き付いて、ディディエの胸にシャルロットの背が触れる。
ちゅっと首筋に落とされた唇に、ぴくりとシャルロットは体を震わせた。
「僕のものだ」
ぎゅっと巻きつけられた腕に力がこもる。
「僕のものだ」
まるで自分に実感させるように二度呟かれた言葉に、シャルロットは後ろを振り向いた。そこには柳眉を僅かに下げて、不安げな表情を浮かべたディディエの姿に、シャルロットは目を見開いた。
それと同時に、彼もまた不安だったのだと、すとんと何かが心の中に落ちる。すっと腕を伸ばして、ディディエの首に腕を巻きつける。視線が合った瞬間に、どちらともなく唇を合わせた。
ちゅっちゅっと濡れた音が浴室に響く。舌を合わせて、擦りあって、柔らかな場所で深く繋がりあう。
ディディエの唇がシャルロットの首筋を辿り、赤い所有の印を残していく。鎖骨に、肩に、両の膨らみに、赤い花が散る。
膨らみの中央の蕾をじゅっと吸われて、シャルロットは甘い声を上げた。
片方の腕でシャルロットの背を支えたまま、空いた手で反対の膨らみを捏ねられる。柔らかなそれは、彼の大きな掌によって簡単に形を変えた。
ディディエの唇は膨らみに添えられたまま、舐めたり軽く歯を当ててみたりと、シャルロットの体を震えさせる。
「こちら側も舐めてあげようね。僕のものだと印も残しておかないと……」
「ひゃぁっ」
反対側の蕾に今度は吸い付かれて、シャルロットは甲高い声を上げた。
空いた手はそっとシャルロットの秘められた場所を撫でる。長い指が入口を解し、つぷりと中に指を付き立てた。
「あ……っ」
長い指が一箇所を掠めた瞬間に、びくりとシャルロットが背を反らせる。
「ここがいい場所だったね」
シャルロットを宥めるように、頬に唇を何度も落とす。その間も指は内部を自由に泳ぎまわる。
「あ……あ……や……んっ」
執拗にいい場所を攻められて、シャルロットは中からどっと蜜を零した。
「ぎゅってなったけど……軽く達したかな?」
柔らかくなった内部に、ディディエはうっそりと笑みを漏らした。
「ごめんね。本当はもっと時間を掛けて解してあげたいけれど……僕のほうが限界みたいだ……」
彼の硬くなった雄芯がシャルロットの秘められた場所に宛がわれる。その硬さにびくりと体を一瞬震わせれば、宥めるようにちゅっと軽くディディエが唇を吸った。
くぷりと入り込んだ雄芯が内壁を擦る。その刺激に背を反らせば、ぐっと引き寄せられて更に雄芯が奥へと入り込む。
「あぁ……ッ」
「く……ッ」
浴室内に、シャルロットの甲高い嬌声と、ディディエの息を詰める声が響き渡る。シャルロットの隘路は、ディディエの雄芯を柔らかく包み込み、ぎゅっと締め付ける。
「……はっ、堪らんな。気を抜くとうっかりもっていかれそうだ」
自嘲気味に呟いたディディエが、更にぐるりとシャルロットの内部を抉った。
「やぁ……ッ、ディ、ディエさまぁ……ッ」
ちゃぷちゃぷと水面が揺れる。
下から突き上げられて、シャルロットのささやかな胸の膨らみも揺れた。繋がった場所から徐々に広がる疼きを何とかしたくて、ぎゅっとディディエの首に巻き付いて彼の頭を抱え込む。
「あ……ん……ッ……あ……」
浴槽内という制約のためか、上手く動けないことに焦れたディディエが、小さく舌打ちする。
「シャルロット、すまない。後でよくしてやるから。ひとまずは、これでイケ」
「ひゃぁ……ッ、ダメ……ッ、やぁぁ……ッ」
ぐっと剛直を突きつけられて、秘められた場所の花芽に刺激を与えられれば、その両方の刺激にシャルロットは一気に上り詰めた。
びくびくと震える内部がディディエの雄芯から子種を搾り取ろうと締め上げる。それに抗うことなく、ディディエは最奥に己の欲望を吐き出した。
ぐったりとディディエに凭れかかったシャルロットから雄芯を引き抜いて、体についた泡を洗い流すと、ディディエはそのままシャルロットの体を抱き上げた。
「……ディディエ……様?」
どこかぼんやりと放心状態のシャルロットを抱えて、濡れた体を拭くことなくディディエは寝室へと足を進めた。
そのままシャルロットの体を寝台に横たえると、天蓋の紗のカーテンを引く。僅かな光しか通さない空間で、ディディエはそのままシャルロットに覆いかぶさった。
「ん……ッ」
ちゅっと唇が重なって濡れた音を立てる。
ディディエの大きな舌がシャルロットの歯列をなぞり、シャルロットの舌を絡め取る。舌を擦り合わせて、擽られて、甘噛みされれば、「ふわぁ」っとシャルロットの口から甘い吐息が漏れた。
「今度はシャルロットを良くしてやる番だったな」
くすりと小さく笑いを零すと、ディディエはシャルロットの大腿に手をかけて大きく割り開いた。
「あぁ、既に十分綻んでいるな。甘そうな蜜に濡れて……うまそうだ」
そう呟くとディディエは顔を伏せた。熱く柔らかなものが、ぬるりと花芽を撫でる。その瞬間に、びりりと背骨に刺激が走る。
「……ッ」
ディディエの舌は何度も花芽を舐め上げ、舌先で擽り、そして小さな音を立てて啄ばんだ。その度に、甘い疼きがシャルロットを苛む。
何とかその刺激から逃れようともがくものの、力強い腕で固定された体はびくとも動かなかった。
ぴちゃりぴちゃりと濡れた音が響く。
「はぁ……ッ、あぁ……ッ……やっ」
つぷりとディディエの長い指が隘路に差し入れられる。いい場所を刺激されて、シャルロットの腰が自然と跳ねた。
「あ、ん……ッ。あ……あ……、やぁぁぁぁ……ッ!!」 -
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