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試し読み
リオンはセシリアを乱暴な腕で強く抱きしめると、
「俺が温めてやる」
怒ったようにその胸に顔を埋めた。両手で掴んで寄せた乳房に、キスの雨を降らせる。木目の細かい透き通るような肌の、滑らかさを慈しむ。端から隙間なく口づけで埋めていく。
「あ……、リオン……」
「セシリア……」
彼のキスが乳房の芽を摘んだ。背筋をぞくりと鋭い感覚が駆け抜ける。そのまま捕まって、口のなかで転がされる。尖らせた舌先で意地悪くつつかれ、くすぐられる。
「あ……、あ、いや……」
「嫌?」
「……やめて……」
「拒む言葉が本心でないのは、もう知っているぞ」
突然、何の前触れもなく秘花に潜り込んできたリオンの指に、思わず身を捩って顔を背けたセシリアは、
「──んっ」
喘ぎを呑み込み、耳まで赤く染めた。
「もっと快くしてやる」
リオンは、わざと派手な音をたてて乳房に口づけた。まるでセシリアに見せつけでもするように、硬くなった双子の芽を舌で舐めあげる。
「あ……んっ」
軽く掴まれると、今まで味わったことのない快感がじわりと広がる。たった今、濡れていることを知られてしまったその場所に、また熱いものが溢れてくるのがわかる。
「は……ぁ」
形が変わるほど乳房を揉まれた。
淡く色づく若芽の裾野を、舌で円くなぞられ責められる。
そうやってセシリアを悶えさせ思うさま啼かせて、秘花を蜜に塗れさせるリオンは、まるで無慈悲な暴君だ。だが、彼女の胸に顔を埋める時、王子は女神を求めて縋る、人の子になる。
大地の恵みのごとく豊かな、セシリアの乳房。リオンはその乳を貪ることで、自分の肉体にどんな険しい山も谷も乗り越えていけるだけの新しい力を蓄えようとしている。
「セシリア……!」
リオンは、この身の内を生き物のように暴れ回る衝動をどうしようもないのだと言った。鎮められるのはお前だけだと、セシリアを抱きしめた。
「リオン……」
セシリアも彼の頭を抱いた。リオンのすべてを受け止めることのできる女神の強くて優しい腕を、精いっぱい心に描きながら。
リオンの身体は、セシリアを欲しがる欲望だけで暴走しているとは思えなかった。
──きっとあなたは心の奥に、王になりたいという野望を秘めてきたのね。
セシリアが何を言わなくても、本人にもわかっていたことだろう。弟のダイスより自分の方が国を愛している自負が、民人のために善く働くことができる自信があったはずだ。だが、母の教えを尊ぶ気持ちと、おそらくは母親同様敬愛している父王の心を煩わせ、悲しませることはしたくないという優しい思い。何よりダイスとの争いで国政を乱したくないという願いが、彼を長く縛り続けてきたのではないだろうか。
だからこそ、その野望を解き放った今、リオンは心と身体をどうしようもなく昂らせている。
──私に鎮める力なんかないの。
リオンが平和で穏やかな自分を取り戻せる日がくるとしたら、それは彼が王座に就いた時だけ。
──それなのにリオンは、こうして私を求めてくれている。
セシリアは、今この瞬間、初めて夫の心の近くに行けた気がした。妻という名にふさわしく、リオンに寄り添い支えることを許されたような……、そんな気持ちになった。
奢りかもしないとも思う。だが、セシリアが彼を受け止めたいという祈りにも似た思いで胸をいっぱいにしているのは、嘘ではなかった。
「私……、どうすれば……」
リオンが顔を上げた。
「セシリア?」
「私はどうすればいいの?」
この前みたいにすればいいのですか? そうすればあなたは嬉しいの? と、今にも消え入りそうな声でセシリアは尋ねると、意を決したように両手を足に掛けた。膝を少しずつゆっくりと立てる。
──自分で開いて彼を誘うのよ。そうすれば……。
セシリアは懸命に自分に言い聞かせては努力するけれど、やはり思うようにはいかなくて……。
「セシリア……」
セシリアの思いもかけない行動にリオンは驚いていたが、やがて苦しげに眉をひそめた。小さく喘ぎながらも必死に羞恥と戦う彼女に、心をすっかり奪われてしまった顔になる。
「馬鹿だな、お前は」
セシリアを抱きしめるリオンは、
「俺を煽ってどうする」
そう言って、束の間、口元を歪めた。
「ただでさえ追いつめられているんだ。それをお前は……」と、リオンは独り言めいて熱く吐き出した。
「時間をかけて苛めてやりたいのに、お前のせいだぞ。せっかくかき集めた余裕も吹き飛びそうだ」
「え……? あっ」
セシリアは声を上げた。リオンの手に、またも濡れた花を探られたからだった。しかし、今度はすぐに解放されなかった。その場に留まった指が、さらに深い場所へと潜り込んできた。
「は、あぁ」
「セシリア、今すぐにでもお前のなかに入りたい。だから……」
男を迎え入れる路を俺がこうして開いてやると、セシリアの花芯に隠された蕾に指が当てられた。
「怖がるな」
「でも……」
「お前は俺の好きにさせていればいいんだ」
傲慢な言い方だった。それでもセシリアが素直に頷いてしまったのは、蕾を侵し入ってくる彼の愛撫に、言葉とは裏腹な気遣いを感じたからだった。
彼の指が、蜜を溜めたセシリアの襞を分ける。狭い路を少しずつ拡げようと、何度も行き来をする。
「ん……っ」
「苦しいか?」
「……あ」
「力を抜け」
息をしろと、リオンは固く結ばれていたセシリアの唇をキスで解く。
初夜の夜。リオンは駆け引きめいた台詞を口にし、セシリアを最後まで抱かなかった。もちろん、そうした関係を楽しもうという思惑からだろうが、もしかしたらその一方に別の気持ちもあったのかもしれないと、セシリアはふとそんなことを思った。初めての自分を気遣う、リオンの優しい心だ。
だからこそ、二度目の時もリオンはセシリアが苦痛を訴えると、無理に押し切ろうとはしなかった。
「……っ」
突然、強い圧迫感に襲われ、セシリアの足がひくりと跳ねた。彼女を侵して奪う指が、増やされたのだ。路はその分、広くなり、さっきより滑らかに動くようになった。
快感が急に膨らんだ。セシリアは、声を抑えられなくなっていた。
「あ……ん」
「快いのだろう、セシリア」
苦しくて堪らなくて、セシリアは首を振る。
彼の指に擦られると、甘ったるく腰にまとわりつく疼きが重たくなった。
リオンは愛撫する手はそのままに、セシリアに何度も口づけた。
「いや……」
「嫌じゃない。快い、だ」
「や……ぁ、リオン……」
「感じていると言え。そうすればもっと快くなる」
そう囁いてセシリアの額や頬にキスするリオンの息も、微かに弾んでいる。
愛撫の指が引かれ、リオンは分身をセシリアに押し当てた。そのままセシリアの秘花の上を滑らせ、雌しべを突くように動かし始める。
溢れてくる蜜の感覚。
今、確かに彼に求められ、愛されている甘い……甘い感覚。
「……あ……んっ」 -
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