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あらすじ
もっと恥じらう姿が見たくなる
帝国皇帝と政略結婚したユフィは相手のディーことディートハルトに一目ぼれ。ディーは「あなたを傷つけたくない」と小柄なユフィを気遣い、まだ初夜を迎えられていない。そんな時、大きな鳥かごを発見! いったい何に使うの!? 鳥かご越しに胸の頂を嬲られれば身体の奥が蕩けてしまう。倒錯的で甘美だけれど、やっぱりきちんと結ばれたくて…!!
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キャラクター紹介
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ユーフェミア(ユフィ)
ミレスティア王国の王女。政略結婚した旦那さまと仲良くしたいと思っている。 -
ディートハルト(ディー)
ベルンシュタイン帝国皇帝。初恋のユフィをずっと思い続けた。実はこじれた性格。
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試し読み
「あなたを傷つけたくないから、だ」
「何故? 私は陶器のような壊れ物ではないですよ」
「私にとっては壊れ物と同じだよ。あなたを抱きしめたら、力加減を忘れて苦しめてしまうかもしれない。一度触れてしまったら欲望のまま襲ってしまうかもしれない。華奢な身体を傷つけてしまうことを恐れているんだ」
ディートハルトの言葉を聞いて、ユフィは腑に落ちた。
彼は今まで自分に嘘をついたことがない。今のもきっと本心に違いない。
もっと早く聞いておけばよかった。そうしたら、悶々と悩むことなく歩み寄りができたかもしれない。
「それなら陛下は、他に好きな女性がいたり、愛人もいるわけではないのですね?」
「なに? 誰がそんな根も葉もないことを……。私の妻は今までもこれからもあなただけだ」
「別の女性が好きなわけでも? てっきり私に触れてくださらないのは、他の女性がいるのではと思ったのですが」
「断じて違う。あなたにも、ミレスティアの女王にも誓おう。私が求めて止まないのはユーフェミアだけだと」
ユフィにとってミレスティアの女王にも誓うという言葉は大きな意味を持つ。
生涯の伴侶を大事にする国において、夫が妻を裏切る行為は制裁が下ってもおかしくない。その国の女王に誓ってでも、ユフィを裏切っていないという証になる。
――そこまで言うのなら、本当なんだわ。
「ごめんなさい、疑ったりして。そんなに私のことを想っていてくださったなんて、嬉しいわ」
「いや、私の方こそ誤解されるようなことをした。すまない、もっときちんと話し合うべきだった」
誰だって自分の不安を打ち明けることは勇気がいる。きっとディートハルトは、ユフィとの体格差に悩んでいたのだろう。
――私が陛下の立場だったら、確かに触ることに躊躇いが生まれるかも……。
力加減を誤って傷つけることを避けたい。しかし、だからと言って触らないという選択肢はおかしい。
ユフィはか弱い小鳥なんかではない。帝国の女性と比べたら華奢ではあるが、今まで骨折もしたことないのだ。風邪をひいたことも数えるほどしかなく、王家の女性は皆丈夫で健康に育っている。
誤解が解けた今、二人の間にわだかまりはないはずだ。
けれど、ディートハルトはいきなりユフィに触れてこようとはしないだろう。
それならば……と、ユフィは思いついたことを提案する。
「陛下が私を気遣ってくださっていたことを理解しました。私に触れることに自信がないのであれば、この鳥かごを利用したらいいのではないでしょうか」
「鳥かごを利用? 一体どういうことだろう」
「暴走する恐れを消して、少しずつ慣れていくための檻として活用するのです。陛下ならこの細い格子を捻じ曲げることも容易いでしょうが、緊急時にしかしないでしょう?」
「もちろんだ、そのようなことはよほどのことがない限り絶対にしない」
どちらかが鍵を失くしてしまい、出られなくなってしまったときしか力づくで鳥かごを壊すことはしないだろう。
ユフィはディートハルトを手招きし、鳥かご越しに触れられる距離まで接近した。
思った通り、一本ずつの間隔は彼の腕が通るほど。ユフィは少し緊張して冷たくなっているディートハルトの手を握り、己の方へと引き寄せた。
「ユーフェミア……!」
ディートハルトの手を胸に触れさせる。
わかりやすく動揺した声が響くが、ユフィはにっこり笑いかけた。
「こうして鳥かご越しに触れるなら、暴走できないですよね。徐々に慣れていくために、鳥かご越しに触れてくださいませ」
「なんて倒錯的な……」
ディートハルトの顔がじわじわと赤くなっていく。ユフィの柔らかな胸の感触も彼に伝わっていることだろう。
ユフィが優しく自分の胸に押し付けているが、ディートハルトが抵抗しようとしたらすぐに手を離せる力加減だ。
嫌なら抵抗したらいいだけだが、彼の指はユフィの胸に吸い付いたまま動かない。
「手が、放せん……」
熱い息を吐きだしながら、ディートハルトが呟きを落とした。
ユフィは胸に押し付けている彼の手を放してみるが、ディートハルトの手は胸に触れたまま。
にんまりした気持ちを隠しつつ、ユフィは甘えるような声で呼びかけた。
「陛下……もっと私に触れてください」
「ユ……フェミア」
ディートハルトの手がぎこちなく動きだす。
指が胸の谷間をなぞるように滑り、一瞬僅かに手が離れた。が、すぐにまた戻ってくる。
「恐ろしい魅力だ……抗いきれない」
「抗う必要がどこに?」
ユフィが小首を傾げて彼を見上げた。
ディートハルトの喉が、ぐう……、と奇妙な唸り声を出す。
「鳥かごの中にいたら、私は安全なのでしょう? それなら遠慮せずに、好きに触れてくださいませ。決して壊れませんから」
少し前まで手を繋ぐのが精いっぱいだったことを考えると、胸に触れる行為はすごい進歩だ。このまま最後まで致すことは叶わなくても、お互いの距離をグッと縮められるはず。
――そうだわ、お姉様たちにもらった媚薬や精力剤は有効期限が三ヶ月ほどだから、あと二ヶ月程度しか期限がないんだった。
それまでに初夜を迎えられるだろうか。
ディートハルトが今の行為を悔やまなければ、恐らくひと月以内に初夜の契りが交わせるはずだ。
「ユーフェミア……」
「私のことは、ユフィと呼んでくださいませ」
「ユフィ……では、私のことも名前で呼んでほしい」
「ディートハルト様、ですか?」
「いや、ディーでいい」
「ディー様……」
愛称で呼ぶ許可を得られた。それだけで心の距離がグッと縮まった気がする。
――すごいわ! 今日だけですごく陛下と……ディー様と親しくなれている!
嬉しさがこみ上げてくる。愛称のユフィと呼ばれることもくすぐったい。
もっと二人の距離を縮めたい。今を逃したら、次はいつディートハルトと二人きりの時間を過ごせるのかわからない。
ユフィは意を決して、ドレスの釦を外していく。
ひとつ、二つと釦が外れると、なんだか気持ちが大胆になってきた。今日のドレスはひとりで脱げるものでよかった。
「ユフィ……?」
ディートハルトの戸惑う声が耳に届くが、ユフィの手は止まらない。
上半身をはだけさせて、上はビスチェ姿になった。
いきなり裸になることには抵抗があるが、下着までならなんとか……という気持ちを込めてディートハルトを見つめる。
彼の顔はわかりやすく赤かった。
「ユフィ、なんて大胆な……」
「大胆な私はお嫌いですか?」
「あなたを嫌うなど、そんなはずがないだろう。どんな姿も魅力的で困るくらいだ」
はあ、と息を吐いた彼の身体に視線が吸い寄せられる。
今のディートハルトはジャケットを纏っていない。汗を流した後の簡素な姿であるため、肉体がくっきり布越しに確認できる。
彼の筋肉質な胸板にもドキドキするが、視線を下にずらすと彼の急所がこんもり盛り上がっていた。
――あれは殿方が欲情されている証だわ……っ! 欲情以外に生理現象でもなるって聞いたことがあるけれど、今は私を見て大きくされているのよね? 顔も赤いのだし。
きっとそうに違いない。ディートハルトの熱っぽい吐息はまさしく欲情そのものだ。
――布越しだからわからないけど、あれが普通なのかしら。
当たり前だが、男性の生理現象などはじめて目のあたりにした。比較対象がいないため、普通がわからない。
が、ちらりと見えた彼の大事な場所は、随分大きく盛り上がっていた。
少しの好奇心と羞恥心が混ざり合う。凝視するのは淑女としていかがなものかと思い、そっと視線を逸らした。
「もっと私に触れてください……私はそう簡単に壊れないんだって、確かめてほしいです。鳥かごの中にいるときだけでも少しずつ触れることに慣れていったら、もっと二人の距離も縮められるでしょう?」
ユフィは懇願するようにディートハルトを見つめた。
彼の目には隠しきれない情欲の焔が浮かんでいる。
「ユフィ……嫌だったら、ダメだと言ってほしい」
そう前置きをして、ディートハルトは一歩鳥かごに近づいた。
寝台に座るユフィとの目線が同じくらいの高さになる。
彼の両腕が差し込まれて、ユフィの両胸に触れた。
ビスチェの上から胸の感触を確かめるように、ゆっくり力が込められる。もどかしいような動きが少しずつユフィの官能を高めていく。
――さっきよりももっと、心臓がドキドキしている……鼓動が速いのに気づかれそう。
彼の武骨で大きな手が自分の肌に触れているのだと思うだけで、胸の鼓動が忙しない。逞しく大きな手で触ってもらいたいと思っていたのだ。
「魅力的すぎて抗いきれない……なんだ、この感触は。柔らかすぎるだろう。力加減がわからない……痛くないか?」
前半はディートハルトの独白らしい。気に入ってくれたようでなによりだ。
「あ……大丈夫です」
ユフィの口から小さく声が漏れた。彼の指が胸の頂を掠ったのだ。
一瞬手の動きが止まったが、すぐに再開される。
「くすぐったいか?」
「わからない……です。でも、さっきからずっと胸がドキドキしてて、ディー様に気づかれちゃうのではと思うと少し恥ずかしい」
「このような大胆なことをしておいて、鼓動が速いことの方が恥ずかしいのか」
ディートハルトがくすりと笑った。
その柔らかな微笑が、いつか見た光景と重なりそうになった。
――あれ、なんで今懐かしい気持ちになったのかしら……?
彼の微笑みなど何度か目にしたことがあったが、そのときはゆっくり観察できなかったから、このような不思議な気持ちになっているのかもしれない。
なにかが脳裏をよぎったのに、それを掴み損ねたようだ。
だが、一瞬現れた感情はすぐに霧散した。直接的に与えられる刺激によって。
「可愛いな、ユフィ……もっと恥じらう姿が見たくなる」
ディートハルトの指先が大胆にユフィの胸を弄ってくる。
ビスチェと肌の境目に不埒な指が入り込んで、ふるりと豊かな双丘が零れ出た。慎ましい先端も彼の視界に入ってしまった。
「あぁ……っ」
「なんて可愛い実だ……私に食べてほしそうにしている」
ディートハルトに見られているというだけで、胸の頂がぷっくりと存在を主張してきた。淫らな赤い果実のように、彼を誘っている。
自分の胸を淫らだと思ったことはないのに、彼の目前に晒していると羞恥心がこみ上げてきた。
「あ……ディー様」
「ユフィ、もう少しこちらへ」
ディートハルトの方へ抱き寄せられた。膝と胸が格子に当たる。
なにをするのだろうと思った直後、彼の顔がユフィの胸元に近づき、露わになった果実を食べられてしまった。
「きゃあ……ッ」
ぬるりとした肉厚ななにかがユフィの胸に触れている。温かなもので舐められている。
それが彼の舌なのだと遅れて気づいた。
一拍後、背筋に言いようのない震えが走った。
――陛下……ディー様が、私の胸を舐めて……!
ちゅぱちゅぱとした唾液音まで聞こえてくる。
彼の口内に胸の頂が閉じ込められてしまい、視覚と聴覚まで犯されそうだ。
「ンン……」
強く吸われて、とっさに声が漏れた。
今まで自分がこんな甘い声を出せるなど、気づかなかったことにまで気づいてしまった。
優しく歯を当てられて、舌先で転がされる。まるで本物の果実をおいしく食べているようだ。
――なんか、よくわからないけど身体がジンジンする……。
ようやく離してもらえたと思ったときには、ユフィの慎ましかった実が淫らに赤く熟れていた。唾液に濡れていやらしく映る。 -
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