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あらすじ
彼の指でカラダまで変えられちゃう…!?
「運命の恋」だと思ったのに――勇気を出して告白するも玉砕してしまった雪奈。しかもその現場を、久しぶりに再会した幼馴染みの巧に見られてしまう。二重に落ち込む雪奈に、巧は恋を成就させるための特訓を提案してくる。メイクやファッションだけでなく、なんとHな行為まで! 巧の指に感じて乱されてしまうけれど、安心感も覚えてしまい……。
(ヴァニラ文庫ミエル)
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試し読み
ふうっと耳朶に熱い息がかかり、雪奈はびくんと肩をすくめた。声にならない吐息のはずなのに、どこか低い声のように聞こえてくる。そして僅かに上がった肩を戻す暇もなく、生温かい物がゆっくりと耳の縁を這う感触がした。
(舌で、舐めてる……?)
どうしてそんなことを、と問いかける必要はなかった。身体をびくびくと震えさせながらも、巧の舌が這うのが気持ちいいと感じてしまっていたからだ。
「ん…………っ」
唇を引き結んでいても、喉の奥から押さえきれずに声が漏れる。ソファに押さえつけられていた両腕はとっくに解放されていたが、もう抵抗はできない。
最初はゆっくりと耳の周りを舐めていたのが、段々中心へと舌が近づいていく。ぴちゃりと水音がすぐ近くに聞こえたかと思うと、耳の中にぬるりと舌が差し込まれていた。
「あ、あ、ああ……」
堪え切れず声を上げ、首を仰け反らせる。雪奈の反応を見て、巧はさらに執拗に耳を舐め続けた。
――耳って、舐められたら、こんなに気持ちがいい場所だったの……?
そんなことを考えながら、巧の服をぎゅっと握りしめる。そうでもしないと、巧の舌が蠢くたびに反応してしまう身体を、抑えきれなくなりそうに思えたから。
「ん、ん……っ、あ、ん……」
雪奈の声の反応を探り、巧は微妙に舌先で触れるところを変えてくる。そうしてより多くの快楽を与えようとされてるなんてわかるわけもなくて、いつの間にか声はさらに大きく甘くなっていた。
「雪奈……」
たまりかねたように、巧が小さく名前を呟いた。途端に頭に一気に血が上り、心臓がどくどくと早鐘を打つ。たくさんの疑問が渦巻いたままだったけれど、それが薄れていくと同時に身体の力はどんどん抜けていった。
幼い頃は安心しきって全てを委ねていた人の腕の中で、こんな風に乱れさせられる日がくるなんて。
雪奈の耳をひとしきり舐めた舌は、今度はゆっくりと首筋をたどって下がり始めた。柔らかくて温かい舌だけじゃなくて、時折吐息も吹きかけられる。首の根元まで下がり鎖骨に近づくと、今度はちゅくっと音がして唇が押し当てられた。
何度も音を立て鎖骨に吸い付かれ、今度は腰の辺りがもぞもぞとしてくる。自然と首が仰け反り横を向いてしまうと、巧がふっと笑った気配を感じた。
「気持ちいい? 雪奈」
喉の奥から出る声が耐えきれなかったり、身体をびくびくと反応させてしまうのは、気持ちがいいせいなんだと唐突に理解した。だから、意識していなくても巧がもっと触れやすいようにと身体を差し出すような仕草をしてしまうようだ。
「気持ち、よく……」
ない、と言いかけたところで巧はひときわつよく雪奈の鎖骨に吸い付いた。ちくっと刺すような痛みを一瞬感じ、雪奈は慌てて首を振った。
「ない! 気持ちよくなんて、ないから……っ!」
「相変わらず、素直じゃないな」
巧は先ほど刺激を与えた場所を、ペロペロと猫のように舐めだした。
「な、なにしてるの?」
「ん? いやー……お前色白だから、結構目立つなと思って」
言っている意味がわからない。何度も繰り返し舐められ、それが次第にまた気持ち良さへと繫がっていく。いつの間にか巧の手が雪奈のブラウスへと伸びていて、ぷつんとボタンをひとつ外されたのがわかった。いきなりのことに凍り付いている間に、さらに二個目と三個目のボタンもはずされてしまった。
「た、巧、やだ、ダメだよ」
「どうして?」
どうしてもこうしてもないはずなのに、低く掠れた声でそう囁かれると続きの言葉が出てこない。顔を真っ赤にして口をパクパクさせていると、身体を僅かに起こし巧がブラウスをはだけさせた。
「ピンク……」
その呟きが意味するものは、雪奈が今日つけている下着の色だ。
「ばっ、バカ! なんでわざわざ言うの!?」
焦ってブラウスのボタンをはめ直そうとしたが、すぐに手を絡め取られてしまう。
「可愛い。雪奈に似合ってる」
下着の色を誉められたって、どんな反応をしたらいいのだ。手を握られたままブンブンと首を振ると、巧を握った手を自分の口元に持っていった。そして、小刻みに震える雪奈の指に唇を付けたかと思うと、そのままぱくりと口に含んでしまった。
「ええっ」
そして驚愕して目が離せないでいる雪奈を妖しく見下ろすと、口の中で舌を動かし人差し指をちろちろと舐め始めたのだ。
「う……や、巧、なんか変な感じがする……っ」
指をこんな風に舐められたことだって、今まで一度もない。舌が指先をくるんだりツツッと上下したりする感触は、むず痒いような身体から力が抜けていくような不思議な感覚だ。
何度か舌を往復させ指を離すと、今度は指から手の平にかけて唇をちゅっちゅっと押し当てる。その間も巧の目はじっと雪奈を見下ろしていて、雪奈もまた吸い込まれるように彼の顔を見ていた。
そこにいるのは昔から知っている幼なじみに巧じゃなくて、もうすっかり大人になってしまった一人の男だ。ひゅっと眇められた目で見つめられると、雪奈はなんだか胸がどきどきして身体が溶けてしまいそうに感じていた。
逃がさないと言われているようで、もっと欲しいと言われているようで。
「雪奈……そんな顔して、俺にもっとしてほしい?」 -
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