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あらすじ
今すぐきみが欲しくてたまらない
大国の有能イケメン皇子×息を吹き返し拾われた王女毒による仮死状態から息を吹き返したところを帝国の皇子キーランに拾われたのは、実は彼の見合い相手の王女エヴェリーナで!? 記憶を取り戻した彼女は、熱烈に求婚してくるキーランと婚約する。「愛してるよ、僕のかわいい人」熱い腕に抱かれ、甘くほとばしる愛を惜しみなく注がれて幸せなエヴェリーナ。でも、毒を盛った犯人は諦めていなくて――!?
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キャラクター紹介
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エヴェリーナ
ルドニア王国の第一王女。仮死状態になって埋葬のため離宮に安置されていたが息を吹き返す。 -

キーラン
ヴェリクタニア帝国の第二皇子。人当たりが良い策士。
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試し読み
「きみが誰でもなかったこの数日……僕自身も同じように誰でもなかった。きみは僕を知らなかった。ヴェリクタニアの第二皇子と聞いても、全然ぴんときてない顔つきだった。それが僕には嬉しかった……。きみは僕を不思議そうに見ていた。僕がどんな人間なのか、無心に知ろうとしてた。僕の立場じゃなく、僕自身を。そんな人は初めてだった。本当に嬉しくて……いつまでもずっとそんなふうに僕自身を見てほしいと、思ったんだ……」
「キーラン様……」
「だけど、きみが記憶を取り戻して、王女に戻って僕を見たら、僕は最初から『ヴェリクタニア帝国の第二皇子キーラン』で……。そういうふうに、きみは僕を見る。そんなのいやだ。絶対耐えられない。壊れる」
「……だから指輪を隠したの? わたしの記憶が戻らないほうがいいって」
「怖かったんだ。僕は……これほど何かが怖いと感じたことはない。怖いという感覚が、初めて心底理解できた気がする。──正直に言うよ。きみをこのままの状態で連れ帰れないかと考えていた。だけど、それじゃきみに対してすごく不誠実だって気付いたんだ。自分が誰なのか、きみには知る権利がある。当たり前だ、自分自身のことなんだから。それを、きみが好きだからって僕が妨害するのはどう考えても筋違いだ。きみには嘘をつきたくない。いつでも最大限に、誠実でありたいんだよ」
シェーネは微笑んで彼を抱きしめた。
「そんなふうに考えられるあなたが大好き。わたしもあなたに対して能う限り誠実でいたい。……だから、ごめんなさい。約束はできないわ。絶対にあなたを忘れたくないけど、記憶と引き替えに忘れてしまうかもしれない。記憶が戻ればどうなるか、わからないの」
キーランは泣き笑いのように顔をゆがめた。
「……そういうきみが、好きなんだよ」
シェーネは彼の頬に手を添え、ゆっくりと顔を近づけて唇を重ねた。神聖な誓いを立てるように。息を止めて唇を震わせ、額を合わせて囁いた。
「約束できたら、どんなにかいいのに……。でも、あなたに嘘はつきたくない。いいかげんな安請け合いは、あなたをないがしろにするだけだから」
「ああ、僕もそうだ」
抱き合って目を閉じ、互いの鼓動に耳を傾ける。
ひとつ脈打つたび、夜が更ける。そして夜明けが少しずつ近づいてくる。
こんなふうに互いを支え合うように抱き合って、しんしんと深まる夜に耳を傾けたことも忘れてしまうのかと思うと、とても怖かった。
約束できないのに、証が欲しいと身勝手にも願ってしまう。
けっして消えない証を、この身に刻むことができたら──。
ふと思い浮かんだ考えにうろたえ、彼の背に回した指先に力がこもる。
キーランが気づかわしげに顔を覗き込んだ。
「どうした?」
「怖いってあなたが言ったのが、今すごくよくわかった気がしたの……」
「シェーネ」
「もしも……もしもよ? わたしがルドニアの王女でなかったらどうするつもり?」
「そのときは見合いを蹴って、きみをヴェリクタニアへ連れて行くだけさ。結婚に反対されたら領地に引きこもってそこで暮らせばいい。宮廷なんか未練はないし、田舎でのんびり暮らすのもいい。きみはいや?」
「そのほうが性に合ってる気がするわ。……きっとそうしてくれる? ごめんなさい、約束できないって言いながら約束してほしいなんて、すごく勝手なのはわかってるけど」
キーランは真剣にシェーネの瞳を見つめた。
「約束するよ。きみが僕を忘れてしまっても、必ずきみを妻にする。たとえ嫌がられたとしてもね」
最後は冗談めかした口調になったが、シェーネは笑わなかった。
「……そうしてほしいの」
「シェーネ?」
「あなたを忘れてしまうのが怖い。怖くてたまらない。だから、忘れてしまうかもしれない言葉ではなく、けっして忘れられない、確かな約束を……してほしい」
面食らった顔になったキーランは、ハッと目を瞬いた。
「それって──」
かぁっと頬が熱くなり、顔をそむける。
「は、はしたないと思われても仕方ないけど……っ、約束の、代わりに……っ」
狼狽と羞恥で真っ赤になり、顔を覆って肩をすぼめると、勢いよく抱きすくめられてシェーネは目を見開いた。
キーランは震える声音で囁いた。
「嬉しいよ、シェーネ。そんなにまで、真摯に僕を想ってくれるなんて……。感激って言葉が安っぽく思えるほど、僕は感激してる。本当に、言葉にならないって……こういうことなんだな」
身を起こし、微笑んでシェーネを見つめた皇子の目は、みずみずしく潤んでいた。頬を撫で、そっと唇を合わせる。その優しくやわらかな感触に、泣きたいような心地になる。
「……おいで」
キーランはシェーネの手を取って立ち上がった。手を引かれるまま、並んでベッドに腰を下ろす。彼は思いやりのこもったまなざしでシェーネを見つめ、髪を撫でた。
「本当にいいの? 無理しなくていいんだよ」
ふるっ、とシェーネはかぶりを振った。
「言い出したのはわたしだから。……本当言うと少し……ううん、すごく怖い。ものすごく怖いわ。だけど、あなたを忘れてしまうほうが、ずっと怖い。だから、これがよすがとなるなら……いいの」
キーランはシェーネを抱擁し、その背をそっと撫でた。
「約束するよ。きみを大切にする。これからずっと、一生大事にする。何があろうと、どんなことが起きようとも」
こくんと頷き、彼を抱きしめる。
キーランはシェーネの頬を撫で、優しく微笑みかけた。
顎を取られ、唇が重なる。キーランは花びらを慈しむように唇をやわらかく食み、舌先で裏側の粘膜をくすぐるように探った。
ずくん、と身体の奥深くで未知の疼きが生まれ、シェーネはうろたえた。無意識に離れようとするのをしっかりと抱き留め、キーランはさらに舌を深く差し入れた。
「んっ……」
思わず彼の胸板に手を突っ張って押し戻そうとすると、なだめるように背を撫でられて我に返り、なんとか緊張を解こうと努めた。
そんなシェーネをあやすように、キーランは甘い接吻を繰り返す。しばらくそうしているうちに、やっと親密な接触にも慣れてきて、シェーネはおずおずと応え始めた。
それに気付いたキーランは歓喜もあらわに、情熱的なくちづけで際限なく甘やかした。
絡めた舌をこすり合わせ、甘噛みし、吸いねぶる。息をすることも忘れ、心ゆくまで互いの唇をむさぼり合って、ようやくキーランは身を起こした。
軽く息を弾ませ、じっとシェーネを見つめる。その白い頬は上気して薔薇色に染まり、目はとろけたように潤んでいた。唾液で濡れた半開きの唇が、ぞくぞくするほど官能的だ。
キーランは無我夢中でシェーネを押し倒し、夜着を剥ぎ取り組み敷いた。
「シェーネ……っ」
熱い吐息で囁き、ふたたび唇をふさぐ。
たまらない愛しさと激しい欲情に翻弄され、自ら名付けた名を呼びながらなめらかな肌を探り、豊かな胸のふくらみを掌に包んで捏ね回した。
シェーネもまた、嵐のような激情に翻弄されていた。あれほど怖かったのに、そんな恐怖もどこかに吹き飛んでしまった。逞しい背にすがりつき、息を弾ませる。
彼の手がほっそりした腰を撫で、尻朶の丸みを辿って太腿の内側を撫で上げると、ぞくぞくするような快感を覚えてシェーネは唇を噛んだ。
茂みをかいくぐって指を秘処にもぐり込ませ、キーランが囁く。
「濡れてるね」
狼狽して口ごもると、皇子はなだめるようにキスして微笑んだ。
「嬉しいよ」
そう言って指を前後させ、蜜をなじませるように塗り広げてゆく。
下腹部にわだかまる熱が圧力を増し、シェーネはその疼きをどうにか散らそうと腰をくねらせた。指の動きにつれて蜜はますます豊潤にあふれ、かき回されるたびにくちゅくちゅと淫らな音を奏でる。
羞恥と狼狽で、もうどうしていいかわからなくなってシェーネは両手で顔を覆った。
それを見たキーランが、ふふっと笑って手の甲にキスを落とす。
「かわいいな」
存分に秘裂を蜜まみれにすると、キーランはぷっくりふくらんだ花芽を摘まんでしごき始めた。
「ひぁあッ……!」
強烈な刺激に襲われ、シェーネは反射的に顎を反らした。背をしならせて潤んだ瞳を見開く。
キーランは身を乗り出してその様子を見守りながら、さらに媚蕾への刺激を強めた。
「気持ちいい?」
「ん、んッ……」
激しくかぶりを振ったのは、肯定なのか否定なのか、自分でもわからない。絶え間なく喘ぎが洩れ、口を閉じていられなかった。
熱い吐息を洩らすその唇を、キーランが強引にふさぐ。
同時に指が蜜孔に滑り込み、関節の硬い感触が隘路を押し通っていくのをまざまざと感じてシェーネは目を見開いた。
「……付け根まで入った。シェーネのなか、すごくやわらかくて、熱い……」
熱に浮かされたように呟き、キーランは挿入した指をせわしなく前後させ始めた。
ぐちゅ、ぬぷ、と蜜をかき混ぜる淫靡な音が上がり、強烈な羞恥にますます快感が深まる。
見開いた視界に映る光景が意味をなさなくなり、下腹部の疼きが耐えがたいほど高まって──。ついに意識が真っ白く爆ぜた。
びくびくと腿をふるわせて喘ぐシェーネに寄り添って、嬉しそうにキーランが囁いた。
「達ったね。ああ、なんてかわいいんだ」
挿入した指をゆっくりと引き抜き、小刻みに震える花芽を褒めるように優しく撫で回す。
弛緩したシェーネの脚を広げ、ゆるやかに痙攣を続ける秘処を魅入られたように彼は見つめた。
「こんなにかわいらしい花園は見たことないよ……。ふふ、気持ち良さそうにぴくぴくしてるね。たくさん蜜が出てる」
キーランは身をかがめ、舌先で花芽を根元からべろりと舐め上げた。
「ひッ!?」
焦って上体を起こすと、すでに彼は鼻先を埋めるようにしてシェーネの蜜を啜っていた。
「やっ……! だ、だめ……」
肩を揺すっても、キーランはかまわず局部を舐め続けた。
尖らせた舌を蜜孔に差し込み、ちろちろと隘路を刺激しながらふくらんだ花芯をじゅっと吸う。脳天を貫かれるような刺激が背筋を駆け上がり、たちまちシェーネはふたたび達してしまった。
「あ……ぁ……」
わけがわからないまま、生理的な涙がほろほろとこぼれ落ちる。
キーランはあふれる淫蜜をたんねんに舐めとると、身を起こして濡れた唇をぬぐい、淫靡に微笑んだ。
その官能的な表情に、シェーネは声もなくただぞくぞくと身を震わせることしかできない。
まるで自分がちっぽけな獲物になって、強大な獣にむさぼり食われているような、危うい空想に襲われた。
キーランは目を細め、シェーネを見つめて甘く囁いた。
「愛してるよ、僕のかわいい人」
彼は膝立ちになり、シェーネの手を優しく取って導いた。
「触って」
均整のとれた体躯の中心で太棹が揚々と頭をもたげている。促されるまま、シェーネは屹立を握らされた。
彼は上から手を重ね、シェーネの指ごとゆっくりと動かした。心地よさげな溜め息が洩れる。固く締まった剛直は弾力があり、表面は天鵞絨のようになめらかだ。
先端から滴る透明な雫が指を濡らした。彼が自分と同じように愉悦と昂奮を覚えているのだと思うと、胸の奥から感動が湧き上がってくる。
キーランはゆっくりと腰を揺らしながら囁いた。
「怖がらないで。僕のこれ、けっこう大きくて凶暴そうに見えるけど意外と甘えん坊なんだ。きみのなかに入りたがってる。いい子にするから入れてもいいかな……?」
シェーネは魅せられたように頷いていた。
彼はシェーネの腰を抱え直し、肉棒の先端を愛撫でやわらかくほぐれた蜜孔に差し入れた。ゆっくりと腰を入れると、ひときわ太い部分がずるんと沈む。
「……ごめん」
彼は小声で囁くと、ぐっと一気に欲望を押し込んだ。
激痛を感じたときには、すでに彼の雄茎によって貫かれていた。
悲鳴を押し殺して歯を食いしばっていると、そっと頬を撫でられ、何度もキスされた。
「痛かった? ごめんね。最初だけ、無理にこじ開けないと入れなかったんだ。でももうこれで扉は開いたから。これからは僕を受け入れても痛くないよ」
シェーネは彼に抱きつき、肩口で何度も頷いた。
ずきずきと痛む入り口の内側に、彼がしっかりと自身を埋めている感覚がある。繋がっていることが、身体的な感覚として実感できた。
しるしが刻まれたのだ。約束のしるし。愛のしるし。
忘れてしまっても、きっと思い出させるよすが。
すがりつくシェーネを抱きしめ、キーランはその顔中にくちづけし、髪を撫で、真摯な声音で愛を囁いた。
そのいちいちに頷き、キスを返しながらシェーネは心からの愛を籠めて彼を見つめた。
破瓜の痛みが落ち着くと、キーランはゆっくりと腰を前後させてふたたびシェーネの快楽を呼び起こした。
「……約束するよ。僕の生涯の伴侶はきみだけだ」 -
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