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あらすじ
悪いが、君を逃がさない
記憶喪失を逆手に取った彼の甘い策略にはめられて!?転んで意識不明になったベルは、意地悪なエドガーとの婚約を解消するため記憶喪失のフリをすることに。だがエドガーはなぜか「俺たちは親密な関係だったんだ」と嘘をついて、以前と違い甘く密着してくる。「君以外と結婚するつもりはない」と大人のキスをされ肌に触れられ、快楽まで知ってしまい――。混乱しつつも、彼への想いが溢れてきて……!?
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キャラクター紹介
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ベル
シャルロ伯爵の長女でエドガーの婚約者。妄想しがちでやや考えに幼いところが。 -

エドガー
ヴァンロード公爵家の嫡男、財務省の若き幹部。実は婚約者のベルが好きすぎる。
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試し読み
「きゃっ」
唐突に足が浮いて驚いた。エドガーがベルを両腕で抱き上げ、祭壇に座らせる。
「こ、こんなところに座るなんて神様に失礼だわっ――ン」
後頭部と背に手を回し、彼が素早くベルの唇を奪った。
「ん、んぅっ?」
なぜ、急にキスをされているのか分からない。
突っぱねようとしたが、絡みついてくる舌がすがるように求めてきて、ベルの胸が甘く締め付けられた。
力を抜くと彼の熱は咥内を探り、ベルの歯列をなぞり、口蓋をくすぐった。
「んんっ、ン、ふ……っ」
口の上をいやらしく撫でられると、背筋が甘く震える。
(これ、だめ)
これまでのキスと何かが違う。何がどう違うのかと言われれば難しいが、身体の芯がきゅんきゅんしてエドガーにすべて委ねたくなる感じだ。
自分たちを取り巻く神聖な環境を再認識して、どうにか拒むことを意識する。
手を動かすと、エドガーがすぐにそれを掴んでさらに深く咥内を探り、彼のキスは激しくなった。
「んっ、んぅ……っ、んんっ」
エドガーに祭壇へと押し倒される。
いやらしく舌を絡められ、倒れ込んだ勢いでドレスをまさぐる大きな手の動きにも動揺する。
するとその手が、とうとうベルの胸を包む。
(あ、だめ)
キスだけでは終わらない恋人同士の触れ合いがベルの頭に浮かんだ。結婚する相手なら婚前行為も珍しくないとはいえ、相手はエドガーだ。
両手で彼の胸板を強く押し返したら、唇を離すことに成功した。
だが、見つめ返したそこには、ハッと息を呑んでしまうほど熱っぽい彼の眼差しがあって動けなくなる。
「ベル」
かすれた声で名を呼ばれ、ベルの全身が甘く粟立つ。
拒絶しなければならないのに、彼に持ち上げられる自分の手をじっと見守ってしまった。エドガーはベルを見据えたまま指先にキスをする。
彼は手の甲、手のひら、そして手首にも唇を押し付けた。
「んっ」
徐々にキスはベルの身体へと移動してきて、とうとうドレスから覗く胸元の肌へと到達する。
「あっ……ん……」
ちゅっと吸い付かれ、舐められるごとに身体の芯が甘く痺れる感覚がした。
もっと感じていたくなる恍惚感に浸っていると、ぐいっとドレスの胸元を引き下げられた。
ふるんっと飛び出した乳房に、ベルの顔がぶわっと熱くなる。
「だ、だめ、ひゃんっ」
エドガーに胸を優しく包まれて恥ずかしい声が口から出た。
「こんなにも柔らかいのか……」
胸を回すように揉まれ、変な感覚がお腹の奥から込み上げてくる。
「エドガー、だめ、だめなの。変な吐息がもれて、恥ずかしい」
彼が乳輪を指の腹で絶妙な加減でこすった。甘い痺れがピリピリッと身体の奥深くまで走り抜けていく。
「あ、あぁ、待ってそれ、変になるから……っ」
次第に甘くじんじんとした痺れに変わっていく感覚に怖くなり、胸から手を離してと訴える。
するとエドガーが敏感になった先端部分を弄り、ベルの身体がはねた。
「あっ、ぁ……やぁ」
エドガーが少し身を起こして熱く見下ろしてきた。見られて恥ずかしいのに、それを気にかける余裕もないほど身体が変だ。
「いい反応だ。ここも尖ってきた、気持ちいいんだな?」
「気持ち、いい……?」
これがそうなのかと確認すべく問い返すと、彼の端正な顔に笑みが浮かぶ。
「そうだよ、これが快感だ。ほら」
左右の乳首を強くつままれた。
「ひゃうぅっ」
じんじんとした明確な快感を覚えたベルは、続いて引っ張られ、全身をぶるっと震わせた。
じゅっと恥ずかしい感触が足の間でもれる。
ベルは彼が口にした『気持ちいい』の意味を理解して、真っ赤になった。
「恥ずかしがらないでいい」
「あんっ」
エドガーが乳房を揉みながら、もう片方の頂を咥えた。
「はぅ、ああぁ、あ……っ……だめ……」
「そんな気持ちよさそうな声で言われても、説得力はないな。君が本気で殴ってもこないとすると、少しは気持ちが俺に――」
何か話しているようだが、彼の低い声が胸でくぐもってより感じてしまう。
舌先で先端部分をつつかれ、転がされる。
ちゅうちゅうと吸い付かれると、ベルは耐えがたいほどの甘い感覚が全身を走り抜けて背を弓にした。身悶えする身体に彼がのしかかって押さえつける。
「あ、ぁ、気持ちいい……やぁ」
自覚すると、一層ベルの中で官能の熱は明確になった。
気持ちよすぎて抵抗の意思が湧かない。彼をどかさないといけないのに、手がいうことを聞かない。
(――これは偽りの関係なのに)
そう頭では理解しているのに胸は甘くときめき、ベルの目に涙の膜がかかる。
「あ、待って」
エドガーの手が腰へ滑り下りてハッと身を強張らせた。
彼はベルのスカートをあっという間にたくし上げた。太腿まで晒された素足に、ベルは頬を染める。
「記憶がある君なら、拒まなかったよ?」
エドガーの手がドロワーズにかかる。
これはだめだ。本当にだめ。心臓がばくばくと音を立てたベルは、最終手段を使うことに決めた。
「……き、記憶なら、あるわっ。だから止まって」
思わず白状した。そういえば彼は止まってくれるだろうと思っていたのに、ドロワーズ越しに秘所を撫で上げられた。
「ひぅっ、え、なんで止まらないの? 待って、あっ、そこ……っ」
優しくこすられて、蕩けそうな甘い感覚に背が震える。
彼はまるでどんな加減で触れればベルが気持ちいいのか察知しているみたいに、割れ目に沿って引っかき、押し付けて小刻みに揺らす。
「あっ、ぁ、ああ、だめぇ」
「腰が揺れてる。少し触れるだけで何度も反応して……可愛いな、ベルは」
「あ、あぁ、もうふりは、しなくていいから」
「ふりとは?」
「だ、だから私、記憶喪失になっていないの、んんっ」
話をしている最中も彼は手を止めてくれなくて、うまく言葉がまとまらない。
「ベルに記憶があるのは知ってる」
――え。
驚きのあまりベルは止まった。
「君が記憶喪失なんてことを思いついたのは、君の好きな出版社の新刊のテーマだったからだろう?」
「嘘っ、もしかしてエドガーも読んだのっ?」
「ベルが読む本は毎月すべて購入している。いつでも、君と感想を交わせるようにね。君は俺が嫌々ながら君の部屋にある本を読んでいると思っていただろう? 俺は、君の趣味ならなんでも共有したかったから読んでいたんだ」
ベルの心臓が早鐘を打った。
(そうだとしたら、エドガーってもしかして本当に私に興味が……?)
どきどきして動けないでいたら、エドガーがドロワーズに手をかけ、下へ素早く引っ張って脱がせてしまう。
「ちょ、ちょっと!? 今、脱がせるところじゃなかったでしょうっ?」
「遅かれ早かれ脱がせるんだから、今がいいかなと」
「し、信じられないっ」
左右に両手をついて覗き込んできたエドガーは真顔で、ベルは彼がいったい何を考えているのか分からなかった。
「……あの、いつ気付いたの?」
「駆けつけたその日だよ」
「えっ、嘘よっ」
さすがにそれはない、また彼の『嘘』だとベルは思った。
「ここで嘘を吐いても、メリットはないだろう?」
「これまでだってなかったわっ」
「いや、あったよ」
「どこに? ――あっ」
彼が膝を掴んでベルの足を大きく開かせた。びっくりして反射的に閉じようとしたら、彼が覆いかぶさって閉じられなくする。
「エドガーっ」
「何?」
「な、何じゃなくて、だから、なんで止まらないのっ」
「実家くらいだと想定していたら、まさか教会のことが浮かぶなんてな――悪いが、誰にも君を渡せない」
彼が腰を密着したまま少しずり上がる。
そこに、不意に衣服とは違う硬さを感じてベルは頬がみるみるうちに赤らんだ。
「……エ、エドガー、それって」
「君相手にはこうならないと思ってた? 想像したこともない?」
ベルは恥ずかしくてこくりとうなずく。
「でも、残念。君となら俺はいつだって夫婦の営みができる。少しこするだけで、こうだ」
彼が少し上下に動く。
(か、彼は何をして……!?)
恥じらいに顔から火が出そうになったが、やめてほしいと思った矢先、それがむくむくと大きくなっていることを感じてハッとした。
嫁ぐための勉強で、知識として頭には入っている。
「……わ、私のこと、いつも子供扱いだし、小バカにしていたじゃない」
それなのにエドガーが、ベルに〝興奮〟しているのか。頭がパンクしそうだ。
「子供扱いはしていない。うっかり触れたくなるから、はぐらかしていた」
「ふ、触れたくなる?」
聞き返したら、彼が真面目な顔のままうなずいてくる。
(どうしよう、可愛く見えるわ……)
素直な様子は大変珍しい。次の言葉を待っているエドガーの姿を見ていると、ベルは胸がきゅんきゅんして唇をきゅっとする。
「あ、の……聞いてもいい?」
「なんでも答えよう」
「本の話もそうだけど……よく私のそばにいたじゃない? もしかしてそれも、好意があったから、とか?」
「そうだが?」
彼はさも当然そうに片眉を上げて答えてきた。
「……ぜ、全然気付かなかったわ」
「それでこそ成功だ」
「は……?」
「君に意識されて逃げられでもしたら、せっかく一緒に過ごせる時間を勝ち取ってももったいないだろう?」
いったい彼が何を言っているのか分からない。
「ベル、俺が王宮の仕事を始めたあとも、君の屋敷に週一以上俺の両親が来ていたことにも疑問を覚えたことはあるか?」
「いいえ? 毎週食べにくるなぁ、くらい……?」
「俺がベルと一緒にいられるきっかけを、一つでも多く作りたいと両親に頼み込んだからだ。そうすれば俺が帰りに立ち寄って夕食を一緒にしても、半休が取れた午後に俺が単身訪問して夜まで君の部屋で休んでも、自然だろう?」
言われてみれば、そうかもしれない。
「どうしてそんなこと……」
「意識されて君に避けられたくなかった。君と過ごす時間は、仕事で疲れた俺の癒やしだ」
だった、ではなく彼が言い切ったことにベルの胸が甘く騒ぐ。 -
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