書籍紹介
実は国王の娘ですが、甘党侯爵さまに仕えたらカラダごと濃密に食べられました
実は国王の娘ですが、甘党侯爵さまに仕えたらカラダごと濃密に食べられました
ISBN:978-4-596-54035-5
ページ数:322
発売日:2024年4月18日
定価:760円+税
  • あらすじ

    君はどこもかしこも甘い
    お菓子より甘いご主人さまの溺愛に蕩かされて

    国王の落とし胤であるライラは出自を隠し暮らしていたが、侯爵家の甘党当主・リクハルドにお菓子作りの腕を買われ、雇われることに。実はライラを初恋の女の子と信じているリクハルドから甘く激しく迫られて!? 「世界で一番おいしいデザートは君だ」初めて与えられる甘い口づけと蕩けるような愛撫の溺愛に、心も体も食べつくされてしまい――。

  • キャラクター紹介
    • ライラ
      天涯孤独ながら、明るい性格。お菓子作りが得意。実は国王の娘という出自を隠している。

    • リクハルド
      若くして父の後を継いだ侯爵家当主。無類の甘味好きで、初恋の女の子が忘れられない。

  • 試し読み

    「このクリームが美味しくないのかい? ちょっと、味見をさせてもらおうか」
     リクハルドは持ったままだったスプーンをライラの手ごと掴んで、クリームをすくい取ろうとする。自然と身体が密着し、ライラは慌てた。
    「リ、リクハルドさま! 近い、です!」
     リクハルドは目を瞠って自分たちの距離感を測り、大きく嘆息した。
    「……ああ、またやってしまった……ごめん」
    「どうして私にだけこうなんでしょうか……? 他の女性にはそんなことないようなのに」
     少々気まずそうにリクハルドが目を逸らす。
    「……ライラから、いつも甘くて美味しい香りがするからかもしれない」
     思わず腕を上げて、自分の匂いを確認してしまう。特に美味しい香りはしないのだが。
    「ライラを食べてみたら、とても甘くて美味しいのかもしれないね」
     いつの間にかリクハルドが傍に寄り添って、首元の匂いを嗅いでいる。ライラは驚いて慌てて飛び退こうとし、体勢を崩した。
    「……ライラ!」
     作業台の角に頭を打ちつけそうになったライラの後頭部を、リクハルドが右手で包み込む。
    気づけばライラは背中を作業台に乗せて仰向けになっていた。リクハルドの長い足と自分の足が絡み合い、彼の左腕が腰に絡んで引き寄せられている。
     彼の膝頭がスカート越しに恥丘に押しつけられ、ビクリと震えた。
    「大丈夫か!?」
     いつもの優しく柔らかな口調からは想像しづらいほど、険しい声だ。ずいぶん心配してくれているのだとわかる。
     ライラはなるべくリクハルドに触れないよう身を強張らせたまま、コクコクと何度も頷く。リクハルドが安堵の息を深く吐いた。
    「……よかった……」
     また距離感がおかしいことになっている。そう指摘したいのに、何も言えない。
     リクハルドはじっとライラを見下ろしたままだ。見つめ合ったまま、わずかも動けない。
     リクハルドの瞳の奥に、ちらちらと見え隠れしている焔に気づき、ライラは息を呑んだ。
    (私の期待がそう見せているの? リクハルドさまが私を欲しがっている、なんて……)
     クリームをかき混ぜていたスプーンは、もつれ合った際に作業台の奥に飛んでいってしまった。そのときにクリームが飛び散ったのだろう。リクハルドが呟く。
    「……頬に、クリームがついてる」
     慌てて指で拭い取ろうとするより早く、リクハルドが覆いかぶさってきた。えっ、と思う間もなく、彼の舌がぺろりとクリームを舐め取っている。
     舌の熱と柔らかな動きに、思わず肩を竦めてきつく目を閉じてしまう。リクハルドが少し寂しげに言った。
    「……僕にこうされるのは、嫌、かな」
     目を開けられなかったが、すぐに首を左右に打ち振った。リクハルドが嬉しそうに笑う小
    さな声が聞こえ、額を軽く啄まれる。
     ひゃっ、と妙な声が出てしまった直後、唇に彼の唇が触れた。驚きに大きく目を見開く。
     唇が、柔らかく触れ合う。薄く理知的な唇が、優しい熱を伝えてくる。
     目が合った。互いの瞳に、互いの顔が映っている。リクハルドは一瞬も目を逸らさない。
    リクハルドがわずかに唇を離し、呟いた。
    「……嫌では……ない、かな……?」
     触れた熱に、嫌悪感は一切抱かなかった。ライラも目を逸らせないまま、答えている。
    「嫌……ではない、です……」
    「……なら、もう少ししても……いい、かな……?」
    今度はすぐに答えられなかった。このあとにするくちづけは、きっと――間違いなく、互いを求めるものになってしまう。
     ライラを欲しがってくれるリクハルドの熱情を拒める自信は、ない。
     ここは笑ってやり過ごそう。そう決める。
    「これ以上は、駄目、で……」
     冗談だったと済ませられるよう、軽い口調で言う。だが言い切る前にリクハルドの唇がぶつけるように押しつけられた。
     直後、ライラの唇を開かせてくる。驚いて身を硬くすると、唇の隙間から彼の舌が入り込んできた。
     唾液で濡れた熱い肉厚な感触に、ビクッ、と震える。反射的に逃げようとすると、リクハルドがすかさず上体を強く押しつけつつ、くちづけを深くしてきた。
    「……ん……んんぅ、ん……っ」
     首を左右に振っても、逃げられない。それどころか腰に絡んだ腕に力がこもり、強く引き寄せられる。女の自分とはまったく違う硬い身体が密着し、鼓動が跳ねた。
     リクハルドの舌が、ライラのそれに触れた。
     今度はリクハルドが震える。何かに気づいたように大きく目を瞠ったが、何を思ったのかは濃青の瞳からは読み取れない。
     一度ゆっくりと瞬きしたあと、リクハルドの舌が改めて動いた。ライラの歯列をなぞり、上顎のざらつきを舐め、舌の裏まで味わってくる。
     口中を蹂躙するかのように舐めくすぐってくる舌の動きは淫猥で、官能的だった。反射的に逃げる舌を搦め捕られ、互いの唾液が混じり合い、どちらのものともつかなくなるほど味わわれてしまう。
    「ふ……ん、ん……っ」
     息が苦しくなり、本能的にリクハルドの胸を押しのける。気づいて止まってくれたのは、一瞬だけだ。すぐに煽られたかのように舌の根が痺れるほどに強く吸われてしまう。
    「……んぅ……っ」
     次には舌先を甘噛みされ、ライラは本能的な涙を滲ませてしまう。
     こんな濃密な触れ合いを他人とするのは初めてだ。どうしたらいいのかわからない。いや、何よりも――どうしてそれを、蕩けるほど気持ちいいと感じるのか。
     身体の奥深くに甘い疼きが生まれ、もっと深いつながりが欲しいと願ってしまう。
    「……は……っ、ライラ、もっと……もっと君と、深く……繋がり、たい……っ」
     リクハルドも上手く息ができておらず息苦しそうにしているのに、くちづけを止める様子がない。それどころかライラをさらに強く抱き締め、舌を奥深くまで差し入れてくる。喉奥まで味わわれてしまうのではないか。
     ああでも、とライラの身体から力が緩やかに抜けていく。
     彼もまた、自分と同じ気持ちになっているのだ。繋がり合いたい、と。
     やがて、息苦しさから頭がぼうっとしてきた。ライラは知らずリクハルドの頬に指を伸ばす。
     唇を離さないままで、その手を受け止められた。指を絡めるように握り締められ、ぴったりと重なる掌から伝わる熱が気持ちいい。
    「……ライラ……」
     息継ぎの合間にかすかな声で呼びかけられる。その声の甘さも、思わず小さく震えてしまうほどに気持ちがいい。
    「リク……ハルド、さま……」
     くちづけの合間に返す呼び声が、本当に自分のものなのかと疑うほどに甘い。ライラ自身も彼を求めているのだと、その声音が教えてしまっている。
     リクハルドが嬉しそうに微笑んだ。こんなに優しく甘い微笑を見るのは初めてだ。
    「ライラ、君が……好きだ。だから、君が欲しい……」
     え、と大きく目を見開く。熱に浮かされたような告白はあまりにも予想外で、思考が止まってしまった。
     リクハルドは愛おしげに目を細めた。
    「君が好きだ。君が僕を助けてくれたあの子だろうとそうでなかろうと、もうどうでもいいんだ。僕は今の君がいい。僕の菓子好きなところを可愛いなんて言ってくれるのは、君くらいだよ。僕のことをただの男として見てくれていることが、嬉しいんだ」
     リクハルドの唇は、愛の告白を紡ぎながら情熱的なくちづけを何度も繰り返す。一度溢れ出した気持ちはすぐには引かないようだ。
     そしてライラも真っ直ぐに想いをぶつけられて、嬉しくなる。彼の情熱に流されてしまい
    たくなる。
    「ここで君と一緒に過ごして……君の傍がとても居心地がいいと知ったんだ。だからライラ、
    ずっと僕の傍にいて欲しい」
    (一緒に、いるだけならば……)
     ライラの厄介な出自が外部に漏れないようにすれば――傍にいるだけならば許されるのではないか。自分に都合のいいことを狡く考えてしまう。
    (結婚、とかではないのだから……)
     だが次の瞬間、ライラは冷水を浴びせられたような気持ちになる。
    「――ライラ、こんなところで君に伝えるのはどうかと思うけれど、我慢できないから言うよ。僕の、妻になって欲しい」
    (それは、駄目……!)
     唯一無二の人として求められて嬉しい。だが、それは絶対に受け入れてはならない。
     ライラの出自が明らかになれば、リクハルドに迷惑がかかる。下手に動けば彼の立場も悪くなるのだ。
     そしておそらく彼は、ライラの事情を知っても簡単に手放さないだろう。そういう人だろうとは、これまでのやり取りで何となく予想できる。
     喜びの涙が、一粒零れ落ちた。リクハルドがすぐに唇で優しく吸い取ってくれる。
     抱きしめてくれる腕にすべてを委ねたい。だがそれは駄目だと甘える心を叱咤し、ライラは微笑んだ。
    「ありがとうございます。そんなふうに思っていただけて、とても嬉しいです。本当に……申し訳ないのですが、私はリクハルドさまにそのような気持ちは持っていません。おこがましいとは思いますが、優しく頼りになる友人以上、には……んぅ……っ?」
     噛みつくように唇が重ねられ、先ほどよりも激しく貪られた。欲望のままに舌を搦め捕られ、吸われる。いやらしい淫らな水音とともに舌をたっぷりと味わわれ、再び下腹部の奥が疼き始めた。
    「……んぅ……ん……っ」
     顔を左右に振ってくちづけから逃れようとすると、舌を甘噛みされた。びくん、と反射的に腰が跳ねてしまう。
     リクハルドの両手が、ふいに耳を押さえてきた。外の音が消え、代わりに舌を絡め合う淫らな水音がはっきりとわかるようになる。
    「……んぅ……っ」
     だんだん息が苦しくなり、ライラは本能的に大きく口を開いた。それすらも許さないとでもいうのか、リクハルドの舌が喉奥まで侵入してくる。
     頭がくらくらして、意識が薄れそうだ。自然と涙が滲み、視界がぼやける。その霞みの中で、リクハルドの端整な顔が見える。
     彼もまた息苦しそうに眉を寄せている。目は薄く開かれていて、ライラの反応を確認するかのように、じっと食い入るように見つめている。
     濃青の瞳の奥に、息を呑むほどの欲情があった。言葉よりもはっきりと、ライラを欲しいと訴えている。
     ほんのわずか、リクハルドが唇を離して囁いた。
    「僕はこれまでそれなりに色々なやり取りをしてきていてね。人の真意というものをそこそこ読み取れるようになっている。そうしないと生き延びてこられなかったからだけれど……今の君の言葉は、嘘だと感じてしまう。本当に友人としてしか僕のことを思っていないのならば、こんなことをするべきではないと君なら僕を叱りつけるだろう? ……君を助けた僕を、やりすぎだと叱った君ならば」
     反論しようとした唇をまた深く官能的なくちづけで塞がれてしまう。
     どうしよう、とライラは混乱する。拒まなければいけないのに、できない。リクハルドの唇が心地よくて、できない。
     リクハルドが唇を重ねたまま、身体に触れてきた。大きな掌は熱い。けれどその熱が心地よい。
     彼の手は形を確かめるように身体を撫で回してくる。背中を滑り落ちた手に腰を優しく撫でられると、無意識に甘い吐息が零れた。
    「……あ……っ」
     リクハルドが驚いたのか、軽く目を瞠る。慌てて両手で口を押さえるが、遅い。これでは彼の愛撫に――気持ちに、応えているのと同じことだ。
     リクハルドがすぐに嬉しげに目を細め、ライラの反応を窺いながら腰を片腕で抱き、反対の手でそっと胸の膨らみを包み込んだ。
     びくりと震えたのは、一瞬だ。口中に留まっているリクハルドの舌が、宥めるように動く。そうしながら、優しく胸を撫でてくる。
     恐いことはしない、と優しい愛撫が教えてくれる。
    (……あ、あ……どうし、よう……恐く、ないの……それよりも、気持ちいい……)
    「……ライラ……好きだよ、愛してる。君が欲しい……君にずっと触れたかった。だから気づくと君に近づいていて、触れようとしていたんだろうな……」
     リクハルドがブラウスのボタンを外す。露わになった喉元に彼が唇を押しつけた。そのまま鎖骨まで下り、窪みに優しく吸いついてくる。

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