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あらすじ
愛しすぎて……何度も欲しくなる
新妻は初恋の旦那様に深く愛されて♥王女ヴェロニカは、初恋相手のサリアナ国王、ニコラスに求婚される。国益のための結婚だと思い込んだヴェロニカは、彼に好きになってもらうために扇情的な衣装で色仕掛けを試みたものの……。「では――きみのすべてを貰うとしよう」予想外に愛でられ、熱く淫らな逆襲に遭ってしまい!? 甘い夫婦生活が始まったが、意地悪な妹が突然訪ねて来て…?
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キャラクター紹介
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ヴェロニカ
クルネ国の第一王女。紅い髪を理由に妹やそのとりまきに苛められていた。 -
ニコラス
実直で有能で完璧と噂のサリアナ国王。同級生の妹であるヴェロニカに求婚する。
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試し読み
彼が寝室の扉を閉めるのを見届けたヴェロニカは、大きく息を吸い込む。
「あ、あの……抱きついても、いいですか?」
挙式の日にもそんな衝動に駆られたが、実行はできなかった。彼とくっつきたくてたまらなくなる。
彼とは同じベッドで眠っているものの、髪や頬を撫でられるだけで、体を密着させることはなかった。
先ほどからニコラスの表情はどこか浮かない。心と心に距離が空いてしまっている気がして不安なせいもあって、ぴたりと抱きつけば距離が縮まる気がした。
「……ああ」と、ニコラスは抑揚のない声で答える。
彼の背にそっと腕をまわす。隙間のないように体を寄せる。柑橘系の、爽やかで甘い香りがした。彼の胸は広く、温かく、そして硬い。
抱き返してもらいたかったわけではない。ただ、抱きつきたかった。ヴェロニカはすっかり満足して彼から離れようとする。
ところが急にぎゅっと腰を抱かれた。
彼の勢いに押されるようにして、背中が扉に当たる。
ニコラスは片手を扉にあてがい、ヴェロニカを囲い込む。
見上げれば、壁掛けランプの光の加減で彼の顔に影が落ちていた。だからなのか、どこか憤然としているように見える。
恐ろしくはないものの、蛇に睨まれた蛙のように動けなくなる。
ヴェロニカが動揺していることに気がついたのか、ニコラスは小さく眉根を寄せた。物憂げな雰囲気を纏った麗しい顔が近づいてくる。
「きみは私に心を許しているか?」
白金の髪がさらりと揺れる。間近に迫った至上のアメジストに、ひたすら魅入る。
「も、もちろんでございます」
美しさに気圧されて、上ずった返事になってしまった。
彼の紫眼から目が離せない。深く囚われて、瞬きすらできなかった。
「では――きみのすべてを貰うとしよう」
低い声にぞくりとした直後、視界がぼやけた。唇に柔らかなものを押し当てられる。
「んっ、ふ……!」
焦点が合わなくなったのは、彼の顔がすぐそばにあるから。
キスされているのだと遅れて気がつき目を瞑ると、唇と唇がいっそう深く重なった。
くちづけの角度が変わるたびに胸の鼓動が大きくなるようだった。体が、なにかに期待している。全身が甘やかに焦れてくる。
「んく、うぅ」
ほんの少しだけ唇が離れたすきに息が漏れた。恥ずかしいと思うのに、彼が背や脇腹のあたりを撫で上げるものだからどんどん艶かしい声が溢れる。
くすぐったさの向こうに心地よさがあった。大きな手のひらで何度も撫でられると、しだいに心地よさのほうが際立つようになってくる。
――ニコラス様の手、好きだわ。
大きくてがっしりとした彼の両手が首筋と肩を這う。素肌に触れられたからか震えが走る。それは悪寒とは真逆で、むしろ快い震えだった。
もっと触ってほしい、ドレスで隠れているところもすべて――と、そんなことを考えてしまったあとでまた羞恥心が膨れ上がる。
もうずいぶんと長い時間、飽くことなくキスを交わしている。彼の唇の柔らかさと熱が、口だけでなく胸にも響いてきて、温かさに包まれる。
「あ……」
互いの唇を深く食み合うくちづけが終わって彼を見上げれば、強烈に求めてくるような熱っぽい視線を受けて、心も体も焦がれたように切なくなった。
ニコラスは赤い舌を覗かせてヴェロニカの唇をぺろりと舐め上げる。
「ひゃ、あ」
突然のことに驚いていると、彼の舌は鎖骨を通って胸のほうへと下りていった。
手で肌をなぞられるだけでも気持ちがよかった。それなのに舌で辿られて、ますますのぼせる。
肉厚な舌のざらつきを感じながら、ヴェロニカはふと気がつく。
「あ、あの……ニコラス様。わたし、湯浴みがまだ……です。清めなくては」
するとニコラスは舌を引っ込めて、ヴェロニカの耳元に顔を寄せる。
「きみはいつも清らかだし、こんなに芳しい」
吐息とともに伝わってきた低い囁き声に、全身が悦ぶようにぞくっと反応した。ふたたび素肌を舐められる。
剥きだしの谷間に舌を挿し入れられた。柔肉を押し広げるように、ニコラスは舌を右へ左へと蛇行させる。
「ふぁ、あっ……あぅ」
獰猛な舌はしだいに乳房の中心へと近づいていく。薄桃色の部分はドレスとコルセットに隠されているが、ニコラスは無理やり舌を潜り込ませる。
「やっ……ぁっ……? あ、そこ……うぅ、ふぅっ……」
乳輪を、まるで抉るように舌で強く辿られる。胸の先端が張り詰めるのがわかった。
――気持ちいい……!
いまだかつて出会ったことのない感情と感覚が次々と込み上げてくる。
王妃の振る舞いについて本に書かれていたことはすべて頭から抜けて、目の前のことで手いっぱいになった。
彼の舌で乳輪を擦られるのがたまらなく気持ちがよくて、自分でも聞いたことのない声がひっきりなしに溢れる。
「んっ……あぁ、あっ」
じっとしていることができずに肩を揺らす。足元がおぼつかなくなってくる。
ニコラスは顔を上げ、ヴェロニカの体を横向きに抱きかかえてベッドに運んだ。
――すごくドキドキする。
背に腕をまわされた。ドレスとコルセットの編み上げ紐を緩められる。彼は次になにをするのだろうと見つめていれば、胸に大きな両手をあてがわれた。
乳房をドレスの外へと引っ張りだされたヴェロニカは「あっ……」と声を上げる。
肩や腕にはきちんと袖を通したままだというのに、乳房だけがドレス生地に乗っかる卑猥な恰好になった。
「やぁ、う……っ」
曝けだされてしまった胸を両手で隠そうとするも、彼はそれを許してくれない。ニコラスはヴェロニカの手を阻むように、乳房に顔を埋めた。
「ん、んっ……!」
ちゅう、ちゅうっと音を立てて胸元を吸い上げられる。乳輪の真上を、そうして何度も執拗に吸われた。
ヴェロニカの胸元に散った赤い花びらを満足げに見おろし、ニコラスは胸の先端を弄りはじめる。
「……こんなに尖らせて」
彼が見つめる先には、言葉のとおり尖りきった胸の蕾があった。触れられるのを待つように、ぴんっと身を硬くしている。
「あ、う……わ、わたし……その、気持ちがよくて……」
ヴェロニカは言いわけを口にして視線をさまよわせる。いっぽうニコラスは、豊満な乳房の先端をいっそう際立たせるようにぎゅっと掴んだ。
「ふぁあ、あっ……や、あぁ」
彼の指が乳房に食い込んでいる。そのままぐるぐると円を描かれ、乳房の形が次々と変化する。
そのようすが楽しいのか、ニコラスは艶めかしく息をつきながらヴェロニカの胸を揉みくちゃにした。
「もっと……ニコラス様……」
ついそんなことを口走ってしまう。
「いえ、その」
これでは痴女のようだと自覚して申し開きをしようとした。ところが、勢いよく唇を塞がれてしまい言葉を紡げない。
「んんっ……!」
彼の手の動きが激しさを増し、指が乳輪の際を擦る。舌が口腔へ入り込んできて、縦横無尽に暴れまわった。
ニコラスはヴェロニカの要望どおり『もっと』責め立てている。
彼の指が胸の尖りを捉え、ぎゅうぎゅうと締め上げる。
「んむぅ、ん、ん」
乳首を指のあいだに挟まれて左右に揺らされると、どうしてか足の付け根がぴくぴくと動く。それはいまに始まったことではなく、もうずっと下腹部が熱を持っていた。
しかしこれは然るべきことだと、いまならわかる。
恐れる必要はないのだと、ヴェロニカは学んでいた。
それは王妃の振るまいについての本を読んだのもあるし、ニコラスへの信頼もある。
――ニコラス様はいつだってわたしを慈しんでくださる。
舌の動きは依然として激しいものの、乱雑なのとは違う。
彼の手にしてもそうだ。胸の蕾を締め上げる指は忙しく動くものの、痛めつけるようなものではない。
ただひたすら官能を引きだされ、こらえきれない喘ぎ声が寝室じゅうに響く。
「いい、な……きみが啼く声は」
ヴェロニカの口腔を舌で探るのをやめて、ニコラスはすうっと目を細める。恍惚を帯びた表情を目の当たりにして、ますます鼓動が速くなる。
彼に「いい」と言ってもらえた。それだけで胸がいっぱいになる。
「よかった、です……その……気に入って、いただけて」
絶え絶えに言えば、彼は眉根を寄せて乳房を掴みなおした。親指と人差し指で胸の頂をつまむ。
「ひぁっ」
短く叫ぶと、その声までも慈しむように唇をちゅっと啄まれた。
胸の蕾をふたつとも、指の腹でじっくりと捏ねられる。
「あぁあ、ぁっ……そんな、捏ねちゃ……やぁっ……!」
つい否定的な言葉が出る。あまりに刺激的で、おかしくなりそうだった。ところが先ほどと同じで、もっとしてほしい気持ちもある。
ニコラスはヴェロニカに真剣な眼差しを向けながら指を動かす。こちらが嫌がっているのか単純によがっているのか見極められているようだった。
「捏ねられるのは、嫌?」
甘い声で問われ、首を横に振る。
「では激しく捏ねられるのが、嫌ということか」
ヴェロニカはまた、首を振って否定した。言動に一貫性がないと自覚しながらも、頭の中は快感で蕩けきって、まともに働いてくれない。
「気持ち、よすぎて……だめ、なのです」
快感が涙腺を刺激する。ヴェロニカは浅く息をしていた。
「……だめ、か」
彼は切なげに呟き、すぐに言葉を足す。
「だめではない愛で方は、なんだろう」
本気なのか冗談なのか、問いかけているのか独り言なのかわからない調子でニコラスはぼやき、胸の蕾をきゅっと引っ張り上げる。
「ふぁあっ……!」
透き通ったアメジストの瞳が光を帯びた気がした。ニコラスが息を吸う。
「快楽に耽るきみの姿を見せてほしい。私だけに」
ほかのだれにも見せるわけがない。
――ニコラス様にだって、見られるのは恥ずかしいくらいなのに。
目を瞑っていてほしいとすら思ったが、紫眼は好奇心に満ちたように爛々としている。見ないでと言っても、きっと聞き入れてもらえないだろう。
ヴェロニカは観念して頷く。彼に愛されるため、痴態も含めてすべてを捧げようと、あらためて決意する。
ニコラスは満足げに口角を上げた。
「ヴェロニカがどんな表情をするのか、目に焼きつける」
「……っ! や、焼きつける、のですか」
恥ずかしい姿を見られる覚悟はしたはずなのに、さっそく怯んでしまう。
ニコラスは宣言どおりヴェロニカの顔をまじまじと見つめる。
つままれたままになっていた胸の蕾を押し込められて「あぁっ!」と声を上げても、彼はちらりと手元を見るだけで、ヴェロニカの顔から視線を逸らさなかった。
彼は有言実行の人だと、ヴェロニカはよく知っている。
完全無欠のニコラスに、できないことなどないのだ。
羞恥で涙目になりながらヴェロニカは問う。
「わたし……おかしな顔に、なっていませんか?」
瞳を揺らすヴェロニカを見て、ニコラスは口元を緩める。
「愛らしいのに、煽情的だ。私はずっと、きみに誘惑されている」
「誘惑……? ご、ごめんなさい」
ヴェロニカにとって『誘惑』は悪だった。
――オリヴィアの言っていることは気にしないって決めていたのに。
ところが心の奥底には残っていたらしい。そうして不安になる。わたしは『不埒な誘惑の証』を持っているのかもしれない――と。
ニコラスは、ヴェロニカの心情を悟ったように小さく眉根を寄せた。
「いや、私の言い方が悪かったな。責めているわけではない。ヴェロニカは、魅力的だ。虜になって、まわりが見えなくなる」
目元にキスを落とされ、唇を食まれる。もうずっと凝り固まったままになっている胸の蕾を、ほぐすように指の腹で擦り合わされた。
「は、んっ……ふ、あ……っ、ん、んぅ」
胸の尖りは彼の指でほぐされているはずなのに、それまでよりももっと硬くなっていく。
乳首の弾力を愉しむようにニコラスは口角を上げ、硬い薄桃色を軽く押しながら、指先でこりこりと揺さぶる。
「気持ちいい?」
専ら国王然とした話し方をする彼なのに、ときおりこうして、幼い子どもに言うような口ぶりをする。しかも耳元で囁かれるものだからたまらない。
胸がきゅうっと締めつけられ、下腹部の疼きがますます大きくなる。
「ヴェロニカ……」
答えを催促するように名前を呼ばれて、とっさに何度も頷いた。
彼が笑みを深める。探究心に満ちた顔をしている。
ニコラスは谷間に顔を埋めると、片手をヴェロニカの背にまわした。ドレスとコルセットの、緩んでいた編み上げの紐を片手で器用に解いていく。
彼にはもう胸を見られている。それなのに、紐解かれて無防備になっていくとどうしても落ち着かない。
「あ、う……うぅ」
とうとうドレスとコルセットの紐をすべて解かれ、シュミーズのボタンも外されて脚のほうへと引き下ろされた。
上半身が裸になったことで羞恥心が込み上げ、身を捩らずにはいられなくなる。そんなヴェロニカを見て、ニコラスはうっとりとしたようすで「きれいだ」と囁いた。
――ニコラス様はいつもわたしを褒めてくださる。でもいまのお言葉は、ふだんと少し意味が違うような気がする。
きっと性的な意味合いが強い。それでも――いや、なおさら――彼の言葉はヴェロニカの自己肯定感を引き上げる。
同時に、ニコラスへの強烈な思慕を生む。自分を認めてくれる存在であるニコラスが、これまでよりもいっそう好きで好きでたまらなくなる。
「お慕い、しております……ニコラス様」 -
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