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あらすじ
君がいない日常なんて、もう考えられない
結婚してみたら、妻が可愛すぎました「よろしく奥さん。うまくやろう」ある目的のために一ヶ月だけ「初夜あり」の結婚をすることになった優希と賢人。新婚夫婦を演じるうち、賢人は女嫌いなのに、優希への可愛がりがどんどん濃厚になり!? 抱きしめる彼の手からは求められているのが伝わってきて、優希の胸を甘く疼かせる。だけどこの結婚の目的が達成され、ゴールが見えてきてーー!?
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キャラクター紹介
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布施優希(ふせ ゆうき)
ファミレス勤務。ワケありで、一ヶ月だけの結婚相手を探して賢人と出会う。 -
御園賢人(みその けんと)
大病院の後継ぎで、優秀な外科医。数多の婚約者候補のせいで女嫌いに。
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試し読み
「優希……」
「そっ、そんな顔しないでください」
「そう言われても、俺はこういう顔なんだが」
「なんか……大人っぽいっていうか、色っぽいっていうか……カッコよくて、困ります……。恥ずかしいよ……」
顔を見られてこんなに恥ずかしいなんて。仕事で接客中にじろじろ見られるのはスルーできるのに、賢人の視線はスルーできない。
むしろ、意識してしまう……。
手に持っていたアイスココアのグラスが賢人に取られる。彼は自分のグラスと一緒にソファ前のガラステーブルに置いた。
「困るのは俺だ。そんなに逃げ腰でいられたら、せっかくの新婚初夜が台なしになる」
数秒言葉の意味を考え……。
「初っ……や……」
意味に気づいて反射的に顔を上げる。賢人と目が合い、身体が固まる。
「あの……なんとおっしゃいました……?」
「新婚初夜のことか? 入籍したんだから新婚だ。今夜は初夜だろう?」
理屈的にはそうかもしれないが、そこまで本物の夫婦らしくしなくてもいいのではないか。
と、思った矢先に抱き寄せられた。それも賢人の腕のなかに抱きこまれてしまっている。ドキンと大きく心臓が高鳴った。
「一ヶ月でも夫婦は夫婦だ。結構気持ちも盛り上がってるんで俺はいい感じなんだが、優希は違うのか?」
「実を言えば考えていなかったので……、盛り上がるもなにもないです」
鼓動が速く大きくなってくる。こんなに近くにいたら、心臓の音が聞こえてしまいそう。
「すぐ赤くなるし、カッコいいとか言ってくれるから、てっきり意識しているものだとばかり思っていたが」
「すみません……」
「新婚初夜、楽しみじゃなかった? 普通、ドキドキするけど楽しみなものなんだろう?」
「それは……」
普通はそうなのかもしれない。そこまでするなんて考えていなかったから意識するはずもない。まさか賢人がそんなことを考えていたなんて。
(もしかして、この人……『性欲が滾った』のだろうか)
賢人の行動を見ていて、とあることに気づく。しかし確証がなく言葉にできないでいるときゅっと抱きしめられた。
「やっぱり。ドキドキしているのがわかる。少し意識した?」
「こんなにくっついていたら……意識します……」
「じゃあ、もっとくっついていいか?」
甘い囁き声が耳朶を撫でる。ビクビクッと、自分でも驚くくらい身体が震えた。
「そんなに震えるな。……かわいいな」
「で、でも……ンッ」
耳に賢人の唇が触れる。輪郭を食まれ擦り動かされて、ゾクゾクッとした痺れが背筋から尾てい骨の下まで落ちていった。
「ハァッ……、ぁ」
思わず背筋が伸びて腰が反る。この反応はなんだろう。ゾクゾクしたといっても寒いわけじゃなく、むしろそこから熱が広がっていく。
「優希はずいぶんと……初心な反応をする」
「だって、こんな、のっ……」
背中にある賢人の手が服の上から背筋をなぞる。たった今おかしな痺れに見舞われたばかりなのに、追い打ちをかけられて優希は上半身を左右にくねらせた。
「やっ、ぁ……御、園、さっ……ぁ」
「賢人だ」
聞いたことのないような甘い声が耳朶をくすぐる。その言葉が、声が、トーンが、耳に感じた吐息が、鼓膜にまで伝わってきて三半規管が犯される。
「優希、俺を呼んでみろ。――賢人だ」
頭がぐらっとした。同じくして体温が上がってくる。まるで発熱したときのように、意識がふわふわする。
――――呼んでほしいなら、呼んであげてもいいのではないか。恥ずかしいけど……呼びたい。
「賢人……さん」
口にすると胸の奥がきゅうっと絞られる。速くなっている鼓動とは違うなにかが、とくん……と跳ねた。
「賢人、さん……」
「ちゃんと呼べるじゃないか。偉いな」
「でも、恥ずか、し……ハァ……」
背中を撫でる手の感触がリアルだ。もしかしたら服の上からではなく、賢人の手が肌に触れているのではないか。
恥ずかしさとおかしな感覚で頭がほわっとして、よくわからない。
羞恥が強すぎて、わかろうとしていないのかもしれない。
「男の人……名前で呼んだの、初めてで……、ドキドキする……」
「それは嬉しいな」
カットソーがたくし上げられている。服が引っ張られる気配に合わせて腕が上がると、スルッと服を脱がされてしまった。
「優希の〝ハジメテ〟ひとつもらった」
抵抗する間もなく、ぱふんっとソファに身体が倒れる。覆いかぶさった賢人の唇が首筋に吸いついてきた。
「あの……賢人さ、ん、ンッぅ……」
「安心しろ。初夜とは言ったが最後まではシない。昨日怪我をしたばかりなのに、いきなり無理なことをさせるのは医者としてナシだ」
「それは……ちょっとホッとします。心の準備が……できてな、ぁっ、ハァ、ぁ」
首筋を下りてきた唇が鎖骨の上で歯を立てる。カリカリと掻かれてじれったい感覚が広がっていく。
「心の準備?」
ブラジャーのストラップが落とされる気配がして、思わず賢人の両肩に手を置く。
抵抗を企てたわけではないのだが、そのせいでストラップは二の腕で止まる。しかし賢人は、代わりにブラジャーのカップを下げてしまった。
胸のふくらみがまろび出たのを焦る間もなく、ひとつは頂を唇で覆われ、もうひとつは揉み上げながらトップを指で擦り動かされる。
「あっ、はっ、ぁ……あぁんっ」
刺激に負けて予想外すぎる声が出る。こんな甘ったるい声を出す自分を、優希は知らない。
胸に未知の刺激を与えながらも、もう片方の手はスカートをたくし上げていく。座っている状態から上半身だけソファに倒れたので、両足は床に落ちていた。
なにも知らない身体に刺激がひとつ走るたびに腿がゆるみ、両腿に無防備な間隔ができていた。
いよいよ内腿に大きな手が滑りこんできて、優希は腰を震わせながら声を絞り出す。
「賢人さ、んっ、わたし、あのっ……!」
「やっぱり、処女か」
息を呑むように言葉が止まる。言わなくてはいけないけれど、恥ずかしさのせいで口に出しづらかった言葉を賢人が言ってくれたので、心の裡でホッと安堵する。
「感じて震えているにしても反応しすぎだ。感じてくれるのは嬉しいが、戸惑いすぎてわけがわからなくなっていないか? 処女なら『処女です』とはっきり言わないと。怪我をしたのが昨日じゃなかったら、ベッドに引っ張りこんで初夜を満喫していたところだ」
「け、けんとさんっ、えっちですねっ」
「男として普通だと思うが?」
そうなのだろうか。経験がないぶん、そのあたりの基準もまったくわからない。
「……ったく、残念すぎる」
困ったように微笑み、優希の頭を撫でる。その表情に、不意打ちで胸がキュンッとした。
「優希、キスは?」
「キス……ですか? ほっぺとかの?」
控えめに答えた優希の唇を、賢人は親指ですうっとなぞる。それだけなのに電流を流されたかのようにゾクゾクした。
「こっち」
「……ない、です」
「そうか、それなら、優希のハジメテをもうひとつもらおう」
すぐに賢人の唇が重なってきた。触れた瞬間こそ身体が震え力が入ったが、やわらかな唇がついたり離れたりするうちに抜けていく。
「さわられることに慣れておけ。俺は朝から煽られてばかりでソノ気になりすぎているんだから、このままですむと思うなよ」
「怖いこと言わないでください~」
クスリと笑った唇が、今までとはまったく違う力で吸いついてくる。しかしそれは、いやな感触ではなかった。
唇の表面に刺激が発生することで、なぜか口腔内が痺れてくる。熱を持ったように熱くなって、もどかしさでいっぱいになってくる。
「ん……ふぅ」
吐息が切なげに震える。それに応えるように、厚ぼったい舌が潜りこんできた。
賢人の舌は頬の内側や下顎を強弱をつけてなぞっていく。自分のものではない舌が口の中で動いているなんて焦るべきことなのに、マイナスの感情は湧いてこない。
それどころか、彼のキスが――心地よい。
「ハァ……ぁ、うんん……」
そう思うと、自然と媚びた甘ったるい吐息が漏れる。
それが賢人の行動をエスカレートさせた。片手で胸のふくらみを覆い、大きく揉み回される。
「ンッ……あっ」
強い力ではない。ゆっくりと揉み動かされていくうちに、胸に熱いものが広がっていく。ときどき頂を親指の腹でこすられ、もどかしい痺れに襲われて腰が揺れた。
「ぁ、あっ、ハァ、ん……」
賢人の舌は丹念に口腔内を愛撫する。舌を搦め捕り、ゆるやかに吸いついた。
「んっ、ん……ぁぁンッ……」
甘い吐息が止まらなくなる。キスで口を半分ふさがれているのでこんなものですんでいるが、もしふさがれていなかったらどんな声が出てしまっていたのだろう。
内腿に彼の手を感じたが抵抗する気が起こらない。それどころか、脚の付け根が重くてじんじんする。
「……ごめんな。すぐ、着替えさせてやるから」
彼のささやきの意味がわからないまま、ショーツの横から指が挿しこまれてくる。それは躊躇なく秘裂に潜りこみぐるぐると回りだした。
「ふぁっ……あっ!」
今までで一番の刺激。キスや胸をさわられることで発生していたもどかしさや疼きが、そこで一気にかき混ぜられているかのようだった。
身体の中でもっとも恥ずかしい部分で、自分のものではない指が我がもの顔で暴れている。
屈辱的な行為のはずなのに、まったくそんな気持ちにならない。それどころか、そこを刺激されることで発生するなんともいえない快感がたまらなくて、いけないことのような気もするのにもっとしてほしいとこっそり思う。
「ふぅっ、ンッ、ハァ……!」
「こんなにべちゃべちゃにして……。かわいいな、優希」
賢人が少し上ずった声を出したような気がする。しかし脚のあいだで発生する感覚に意識が集中しすぎて、彼の言葉まで聞きとれない。
そこから突き上がってきそうななにかのせいで身体が切ない。助けを求めるように賢人に抱きついた。
彼なら助けてくれる。そう思えたのだ。
「わかった。イかせてやるから。泣くな」 -
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