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本当に久し振りにラウル様と二人きりの時間。
部屋を談話室に移して、彼はワインを、私はお茶をいただきながらやっとゆっくり語らうことができた。
「放っておいて申し訳なかったですね」
「いいえ、お仕事ですもの」
「奥様は勉強に励んでいるとムルトンから聞きました」
「はい。足りないところを埋めたいと思いまして。ダンスも少し上手くなりましたし、ラウル様のお仕事についても少しだけ学びました」
「頑張り屋さんですね」
褒められてちょっと嬉しい。
「親しく行き来するお友達もできたとか」
「はい。フレリア伯爵夫人のマグダレーナ様によくしていただいております」
「マグダレーナは随分とあなたとは違うタイプだと思いますが?」
「はい。でもとてもよくしてくれます。私の先生ですわ」
ずっと、ラウル様とお話をしたかった。
二人でゆっくり話をする時間が本当に少なかったから。
結婚しているのに、お式と王城のパーティからずっと距離があった。でもお仕事だから我慢しなくてはと思っていた。
こうして二人になるとわかる。
勉強やマグダレーナ様で埋めていたけれど、私は寂しかったのだ。
一人でいることが、好きな人と会えないことが、とても寂しかったのだ。
だから、いっぱい話をした。
お友達のお茶会に行ったこと、領地のことも勉強し領地を管理することの大変さを知ったこと。マグダレーナ様とお芝居に行ったこと。
ダンスは大分上手くなったので、お暇になったらまたパーティに連れていってもらいたい、忙しいのなら、家ででもいいから上達したところを見て欲しい。
ムルトンが、そろそろ休んだ方がいいと言いにくるまで、一人で延々と話し続けた。
「明日から、なるべく夜には戻るようにしましょう」
「でもお仕事は……?」
「事情を理解したようですから説明しますが、今の担当は第三騎士団なので、時間が取れると思います」
「まあ、それじゃ、毎日会えるのですね?」
「ええ」
「でも絶対にご無理はなさらないで。ラウル様のお身体が一番ですから」
「軍人ですから、身体は丈夫ですよ。奥様こそ、根を詰めすぎないように」
「私も丈夫です」
ムン、と胸を張ったら笑われてしまった。
「仲睦まじいのはよろしゅうございますが、どうぞお二人ともお休みくださいませ」
もう一度ムルトンに言われ、私達は顔を見合わせ、立ち上がった。
「それでは、おやすみなさい。奥様」
「おやすみなさいませ」
一緒に談話室を出てそれぞれの部屋へ。
部屋の中ではナナが待っていて、着替えを手伝ってくれた。
「旦那様がお戻りになって、ようございましたね。お顔がいつもと全然違いますわ」
「そ……そんなには変わらないわ」
浮かれていたことを指摘され、恥ずかしくなる。
でも、ナナはからかったわけではなく、本当に喜んでくれているのがわかった。
髪を解き、部屋着に着替え、ナナ達におやすみを言って寝室に入る。
さあ、セレスティア、今晩よ。
今夜こそ、本当の夫婦になるのよ。
夫婦ならば女性から求めてもはしたないことではないとマグダレーナ様も言っていた。
そのための言葉も教えてもらった。
ラウル様はお疲れではないようだったし、お仕事は少し楽になったようだから、お邪魔にもならないだろう。
もしかしたら、ラウル様からいらしてくださるかも、と少しだけベッドに座って待っていたが、彼の寝室に続く扉は開かなかった。
やっぱり私が『夜這い』に行かなくては。
深呼吸し、覚悟を決めて、彼の寝室へ続く扉をノックする。
「はい?」
奥から聞こえる彼の声。
よかった起きていたわ。
「入ってよろしいですか?」
返事の代わりに、扉が開く。
ラウル様は、まだ髪を上げたままだったが、着替え中だったのか上半身は裸だった。
もう見たことがあるというのに、やっぱり気恥ずかしくて目を逸らす。
「これは失礼」
彼は今脱いだばかりらしいシャツに袖を通した。
「どうしました?」
言うのよ、セレスティア。
勇気を出して言わなくちゃ。
「『今晩、お情けをいただきたいと思って参りました』」
マグダレーナ様から教えられた言葉を口にする。
これなら私に口にできるだろうと、彼女が考えてくれた言葉だ。
勇気を出して言ったのに、ラウル様は声を上げて笑った。
「ラウル様……!」
「ああ、いや、失礼。それがどんな意味なのがご存じで?」
「わかっています。私は妻ですもの、『夜這い』にきたのです」
笑われたことにちょっと腹を立て言うと、彼はまた笑った。
「なるほど、マグダレーナか。何と言われたのです?」
彼は私の肩を抱いてベッドに並んで座った。
私の部屋のベッドよりも更に大きながっしりとしたベッド。お部屋もぐっと落ち着いた雰囲気だわ。
「何も言われてません。私の望みです」
心臓はまだバクバクしていた。
「……やっぱりはしたないでしょうか。マグダレーナ様は夫婦ならば当然だから大丈夫と言っていましたが」
「はしたないとは思いませんが、あなたの望みというのは俄に信じ難いですね」
「どうしてです? 私、本当に自分の気持ちでここへ来たのです」
「あなたの気持ち?」
「私……、ラウル様が好きなので、ラウル様と本当の夫婦になりたいのです」
「……結婚式は挙げましたし、誓約書にサインもしましたよね?」
「でも『繋がって』ませんわ。本物の夫婦ならば繋がらないといけないのでしょう? 私が子供だからそうなさらないのではないかと……」
「マグダレーナが? 挿入れなかったことを話したのですか?」
「挿入れる? あ、いえ 彼女が痛かっただろうと……、それで何の意味かわからなかったら、言い当てられてしまって」
一瞬彼の言っている意味がわからなかったが、すぐに理解し顔が熱くなる。
そう、繋がることは男の人にとっては『挿入れる』ことなのね、
「……もしかして、私が痛がるから我慢なさったのですか? もしそうなら、私我慢できます」
「……まあ、痛くないように努力はできますが……」
彼は困った顔で顎を撫でた。
「どのような恥ずかしいことでも、我慢できますか?」
「できます!」
きっぱりと答えたのに、彼はまだ困った顔をしていた。
「では今夜、もう一度試してみましょうか?」
「では『お情けをいただける』のですね?」
「そのセリフはマグダレーナでしょう。あなたらしくない」
「……はい。彼女が私でも恥ずかしがらずに口に出せる言葉を考えてくれたのです」
「最初は何と言え、と?」
彼の指先が私の髪を絡ませる。
「だ……『抱いて』の一言でいいのよと」
「それもあなたらしくないですね」
話しながら顔が近づいてくるから、更に心臓が高鳴る。
「本当にあなたが望むというのなら、あなたの言葉で求めてみてください」
意地悪っぽい顔に見えるのは気のせいね。ラウル様が意地悪だったことなどないもの。
でも何と云えばいいのかしら?
私の本当の気持ち。
こんなに恥ずかしい想いをしてもこの部屋を訪れたのは、たった一つの理由しかない。
「ラウル様の本当の奥様にしてください……?」
「繋がらなくても、本当の奥様ですよ?」
「でも私、ラウル様の全てが欲しいんです。私は初めてだけれど、ラウル様は初めてではないのでしょう?」
「……それは、まあ。いい歳ですから」
「私の知らないラウル様を知っている女性がいるのは嫌です。繋がって、ちゃんと私があなたの妻です、と胸を張りたいです」
彼が唇を重ねる。
「欲望じゃないところが、あなたらしい」
彼は、もう困った顔はしていななかった。
「欲の塊です。ラウル様が欲しいのですもの」
笑っていた。
いつものように穏やかに。
でもその手は、もう穏やかとは言い難かった。
「あ」
ベッドに私を押し倒し、包みを開くように部屋着の前を開ける。
初めての時は手で触れてからだったのに、いきなり胸に顔を埋めた。
「奥様はこれに弱いようですから」
胸の先、乳首を舌で転がされる。
あっという間に、全身がこの間と同じ痺れに包まれる。
身体が、覚えているのだ。
あの時の快感を。
触れられることの悦びを。
全身にキスしながら、彼の指が下腹部に伸びる。
下着を外し、繋がる場所へと伸びてゆく。
入り口の一番敏感な部分を探り当て、グリグリと弄った。
「あぁ……っ」
気持ちがいい、と思ってもいいのよね?
ラウル様に触られることが気持ちいいと感じるのは正しいことよね?
気持ちを高め合って、繋がることができれば、私達は本当の夫婦になれるのよね?
私が子供だから最後までしなかったわけでも、私が気に入らないからしなかったわけでもないと、信じさせてくれるのよね?
全身をなで回し、キスの雨を降らせた後、ラウル様は、私の脚を開いてその間に身体を移した。
ああ、いよいよ繋がるのだわ、と思ったのだが……。
「ラウル様……っ!」
彼は身体を折って、私の下肢に顔を埋めた。
胸の先を転がしたように一番敏感な部分を舌で転がす。
「あ……、だめ……っ」
自分の中から、とろりとしたものが溢れててゆく。
「どんな恥ずかしいことも耐えると言ったでしょう?」
少し掠れた声。
「まだまだですよ」
脚を大きく開かされ、私の秘部が完全に彼の目の前に晒された。
ラウル様は溢れた蜜を舌で舐めとり、そこへ指を差し入れた。
「んん……っ」
じゅくじゅくと、音がする。
前を舐められながら指を動かされて、目眩がする。
気持ちいい、を通り越した快感。
「ひ……あ……っ。あ……」
差し入れられた指が、自由に動けるほど蜜が溢れると、急に指が太くなった。
いいえ、そうではないわ。
指を増やしたのだわ。
ぎっちりと、肉を押し広げながら指は奥へ。
中に止まって別々の動きでかき回す。
「ひ……ふ、あ……ぁ……」
だめ……。
だめ……。
中に指を入れた後は違う手が身体を這いながら上ってきて胸に触れた。
三カ所。
胸と、敏感な部分と奥と。
裸を見られている恥ずかしさ、相手がラウル様だという喜び。三カ所を同時に愛撫され、責め続けられる。
私には、刺激が強すぎる。
「だ……、だめぇ……」
自分の意志と関係なく全身がビクビクと痙攣し、きゅっと力が入る。
タイミングを合わせたように、指が奥に擦れられたから、私は声を上げた。
「あぁ……っ!」 -
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