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試し読み
「そ……んな、ぁ……っ」
無礼にあたるのではないかと不安を覚えながらも、リヴェットは足をばたつかせる。両手が固定されているのはロイも同じこと。先刻と同じ行為はできまいと思っていたが、彼女の考えは甘かった。
「それにね、もしリヴィが胸に劣等感を持っているなら、余計に僕が賞賛したい。ほら、きみの愛らしい胸はこんなにきれいなかたちで、空気に触れるだけですぐに感じてしまうんだよ。今まで誰にもさわられたことがないのにね?」
「……っ、ち、ちが……っ」
歯と唇で、ロイは器用に彼女の下着を左右にくつろげる。あらわになった素肌に、夜の冷たい空気がかすめていくと、彼の言うとおり胸の先が凝るのがわかった。
――どうして……? わたしの体は、どこかおかしいの? だって、そうでなければこんなに恥ずかしいのに、体が反応するはずがないわ。
「手……、は、離してくださ……」
「それは聞けないな。ごめんね」
寝台に縫いつけられてから二度目の謝罪だったが、ロイは相変わらず余裕と愉悦を兼ね備えた笑みを浮かべている。
「こんな格好、恥ずかしいです……」
だが、彼が言ったとおりなのだ。感じやすい体は、まだ触れられてもいないのに乳首をきゅぅと尖らせる。さらには白肌が胸近くまでうっすらと赤く染まり始めていた。
「いいんだよ。夫婦になるということはね、ほかの誰にも見せられない恥ずかしいところを見せ合うことなんだ」
「でも、ほんとうに恥ずかしいんです。恥ずかしくて、死んでしまいそうなくらい……っ」
細腕に力を込めて、リヴェットはなんとか彼の拘束から逃げようとする。しかしその程度では、ロイの手は緩まない。
「それは困る! きみが死んでしまったら、僕との約束は果たせないよ。ねえ、リヴィ。きみは姉君の代わりに僕のものになってくれるのでしょう?」
彼が冗談めかした口調で言っただけなのに、どうしてだろう。ただ一言で、リヴェットの心臓は針を刺されたような痛みに襲われる。
最初から知っていた、身代わりでしかないのだと。
「…………わたしには、それくらいしかできることがありません……」
分をわきまえて生きていける、と彼女は信じていた。同じ両親から生まれても、自分には姉たちのような華やかな美貌も知性も強さもない。
――殿下はわたしを娶ってくださるとおっしゃっている。それだけでも身の丈にあまるお申し出なのに、どうしてわたしは悲しくなるの?
彼は優しい。その優しさが胸に痛い。初恋の人と婚約したというのに、幸福なのは自分だけ。ロイには別に愛する人がいる。
「きみはこうして僕の謝罪を受け入れてくれればいい。その代わり、何度も間違ってきみを困らせるけれど、毎回僕を許して。繰り返していけば、きっときみも僕を――」
ロイらしくもない、歯切れの悪い物言いだった。言葉尻は小さくなり、リヴェットは彼のいう結末が聞き取れない。
「さあ、かわいいリヴィ。先ほどよりももっと愛らしい声で囀って。僕だけに、きみの声を聞かせてほしいんだ」
「……っ、やぁ……っ!」
小さくつぶらな胸の先端に、彼の唇が触れる。かすめただけのあえかな刺激でも、リヴェットは甘えた声をあげていた。
「ふむ、これだけではいやなんだね。だったらもっとたっぷり……」
形の良い唇が薄くひらき、彼女の敏感な乳首がロイの口腔に含まれる。すると、意思に反して腰が勝手に跳ね上がった。
「んん……っ、ぅ、殿下……っ」
その感覚は、指で触れられるのとも、くちづけされるのともまったく違う。違いすぎて、同じ部位で感じているとは思えないほどだ。
熱い舌が絡みつくと、濡れた乳首がせつなく震える。吸われた瞬間には、小さく尖った先端から目に見えない快楽の糸が引き出されたような気がした。
「いや……、こんな、お願いです、殿下……っ」
長い髪が敷布の上で波を打つ。その波間に溺れてしまいそうなほど、耐えがたい甘い快楽。リヴェットは何度も腰を跳ね上げて、泣き声に似たか細い悲鳴をあげる。
「ん……、きみのここ、とってもかわいらしいな。僕を感じて硬く尖ってしまったんだよ」
彼が唇を離すと、唾液に濡れた乳首は今まで見たことのある自分の体とは思えないほど、ひどく淫靡にリヴェットの瞳に映った。
しゃぶられ、舐られ、吸い上げられ、それまで誰にも触れられたことのなかった無垢な果実が熟していく。
「も……、ゆ、許してくださ……」
「許してもらうのは僕のほう。ロッドウィン公爵の屋敷にいたときから、ずっと我慢してきたけれど、そろそろ限界みたいだ」
それまで両手でおさえこんでいた彼女の手首を、片手でまとめてつかみなおし、ロイは右手だけで器用にトラウザーズの前釦をはずした。ふたりの体に挟み込まれた下着は、すでにリヴェットの体にまとわりつく布程度になっている。絹の靴下はたゆみ、腰を覆う最後の一枚すら、ロイの手が引き剥がす。
「……あ、っ! いや、イヤです、お願い……っ。それだけは、どうか、ああ……っ」
「お互いのいちばん恥ずかしい部分を見せなくては、夫婦にはなれないんだよ」
足の間に彼が膝をついているため、乙女の秘めた部分を隠す術もない。
――こんなことになるなんて、わたしは……。いいえ、殿下はわたしをどうされるおつもりなの……?
抵抗する声も出せなくなる。いっそ、貪られるままの生贄だと思うべきかもしれない。
「ああ……、できるなら今すぐ、きみのなかに入りたい」
かすれた声で囁くと、ロイは右手で何かをつかんだ。それはトラウザーズからはみ出したものであり、リヴェットが生まれてこのかた一度として目にしたことのない異物だった。
「……そ、それ、は……?」
右手に握られたそれは、先端から透明な液体をにじませている。赤黒くぬめる猛りは、麗しの王太子と呼ばれる美貌のロイとはかけ離れて、信じられないほどに逞しい。
「きみをほしがって泣いてるんだ。だけど、きっとリヴィも同じように濡れていると思うよ。……ここ」
「ひ……っ」
柔畝を割って、彼の劣情がリヴェットの秘密をあばこうとする。彼女自身も知らない、その場所に焼けるような熱が押し当てられた。
「良かった。感じてくれていたんだね」
ロイが軽く腰を揺らすと、甘く濡れた音がふたりの間からこぼれてくる。
――なに、これ……? 殿下の手にしていたものから、滴っていた……?
けれど、こすれるたびにリヴェットにもわかってきた。濡れているのは、彼だけではない。むしろ自分の奥深い部分から、淫靡な蜜があふれでてきているのだと。
「や……、こんな、こんなのいけません……っ」
「どうして? リヴィもすごく濡れているのに。ああ、濡れてるだけではないね。このかわいらしいしこり……」
膨らんだ切っ先が、彼女の亀裂の先端をぐいぐいとこする。すると、何が起こったかもわからぬまま、リヴェットのしなやかな背が敷布から浮いた。
「い、イヤ……っ!」
もっとも感じる部分に、雄槍がつきつけられている。狂気にも似た強い快楽に、リヴェットは怯えて体を上に逃そうとした。
「殿下、もう、ほんとうにこれ以上は……」 -
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