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試し読み
「……お、お兄さま……っ……」
ヴィヴィアンはアンドリューの胸を押し返したが、いっそう強く抱き寄せられてしまった。寝間着一枚きりの胸の膨らみが押しつぶされる。アンドリューは上着を脱いだだけのようだが、ウエストコート越しにもその感触は伝わっているはずだ。
「や、やめて……離して――あっ……」
尻のあわいをすっと撫でられて、ヴィヴィアンは仰け反った。反らした顎をぺろりと舐められる。
「そんな言葉が通じると思うのか? 兄ではない男と承知で抱きついてきたんだろう?」
「ち……、違うわ。お兄さまこそ、以前のように私を守りに来てくれたのではないの?」
ヴィヴィアンが思いきり顔を背けても、アンドリューの唇と舌は追いかけてきた。そして手は尻から太腿へと、その弾力を確かめるようにして下がっていく。
「もちろんだ。大切な未来の妻を守るのは、男の使命だからな」
吐息が耳朶を掠める。耳に吹き込まれる声をいけないと思い、すぐにでも撥ね退けてげなければと、今一度両手を突っ張ろうとしたが、すぐそばで響いた雷鳴に、ヴィヴィアンは逆に アンドリューに抱きついてしまった。
低い笑いが密着したヴィヴィアンの頬を震わせる。
「離してほしくないんだろう?」
「違う、違うの……怖くて……」
「だから俺がついていれば安心だと言っている。それに、今に雷の音なんて気にならなくなるさ」
夜着が膝近くまで捲れ上がっていたせいで、アンドリューの手は難なくヴィヴィアンの素足に触れた。少し体温の低いさらりとした感触に、しかしヴィヴィアンは震え上がる。アンドリューの指先は太腿の内側を上り始めていた。
「だ、だめっ……やめて、お兄さま……本当にお願いっ……」
このままではすぐに下腹まで辿り着かれてしまう。結婚前の娘がそんな場所を男性に触れさせるなんて、兄だとか他人だとか以前の大問題だ。
「しっ。少し黙って集中していろ」
集中? なにを集中するというのか。すでにヴィヴィアンの全神経はアンドリューの指に捉われてしまって、どうすればこの状況から逃れられるか必死だというのに。
ひやりとなめらかな爪の感触に、ヴィヴィアンは息を詰めた。
「そう……そうやっておとなしくしておいで……」
ヴィヴィアンの頬に唇を押しつけたまま、アンドリュー低い声で呪文のように囁く。吐息が鼻先を掠め、否応なくその温かさを思い出す。
あのときはすぐに唇を奪われ、強引に歯列を割られて舌に侵入された。口中を掻き回され、とんでもないことだと慄きながらも、強く舌を吸われて意識まで奪われそうな眩暈に引き込まれて――。
「……あっ……」
指が花園に触れた。ぴくんと揺れた弾みに、花びらの合わせに爪の先が潜り込む。
「柔らかいな」
声も出ないヴィヴィアンの秘所を、アンドリューはゆっくりと撫でた。
「ずっと、こうしておまえに触れる日を待っていた。どんな触り心地なのだろう、おまえはどんなふうに反応するのだろう、と……」
……なんてことなの……お兄さまが、私に触れている……。
抗うことも忘れて思考停止に陥ったヴィヴィアンは、身体も指一本動かせなくなった。動いたら最後、自分が壊れてしまうような恐れに襲われていた。
指は花びらの隙間を広げるように行き来していたが、やがてそれに合わせて、くちくちとかすかな音が生じてきた。ふいにぐっと指が沈んだ瞬間、ぬるっと媚肉が捩れた。
「ヴィヴィアン――」
名を呼びながらアンドリューが唇を重ねてきて、硬直していたヴィヴィアンの全身から力が吸い取られていく。
だめ……だめよ……。
頭の隅でそう訴えてくる声がするのに、なにもできない。アンドリューの舌を迎え入れて、されるがままになってしまう。
下肢では花びらをまさぐる指がなめらかに動いて、先ほどよりも大きな水音を立てていた。それは内腿まで湿らせていて、自分が蜜を溢れさせていると思い知らせる。
「……んっ、あっ……」
強い衝撃を感じて、ヴィヴィアンはキスが解けるほど仰け反った。いったいなにが起きたのかと目を見開くと、眼前のアンドリューが口端を上げる。
「ここがいいか?」
「あ、あっ……」
また腰が震えるような刺激に襲われ、ヴィヴィアンは意図せずアンドリューにしがみつく。膝が勝手に跳ねて、その動きが意図せずにさらなる刺激を呼んだ。
「ずいぶんと敏感だな。自分で触れたことはないのか?」
どこに触られているのかも判然としないヴィヴィアンは、ただ喘ぐばかりだった。
「や、やめて……お兄さま……っ……変……どうにかなってしまうわ……あっ、あっ……」
滑稽なくらいに身体がビクついてしまって、触れられているところから痺れが広がっていくだけでなく、それが徐々に大きくなっていく。
「こんなに濡らして……感じているということは、俺を拒んでいない証拠だ」
違う。違うわ。おかしいのよ。どこかが変なの。なにかが起きそうで……。
このままでは絶対にいけないとわかっているのに、今すぐ逃げなければと思うのに、それどころかヴィヴィアンはアンドリューの手を押しのけることもできない。
指はヴィヴィアンの花園が抱く小さな真珠を弄んでいるようだとおぼろげながら察したころには、ヴィヴィアンはしどけなく身体を横たえて、アンドリューがもたらす愛撫に酔わされていた。
「おまえは可愛い真珠をいくつも持っているようだ。ほら、ここにも――」
薄い夜着を押し上げるようにして尖った乳首に、アンドリューの舌が這う。あっという間に唾液で濡れた布が、勃ち上がった乳首をぴったりと覆って、その感触に鳥肌立つほどなのに、舌はそれを撫で回し、布越しに吸い上げもした。
「いやっ……お兄さま、やめて……私……あっ、ああっ……」
指で玩弄されて痺れたようになった下肢に、なにか熱い塊のようなものが押し寄せてきた。一気にせり上がったそれが弾ける。
突風に舞い上げられたような浮遊感を味わった後、実際に身体がベッドの上で跳ねた。釣り上げられた魚のように身を震わせるヴィヴィアンを見下ろしていたアンドリューが、満足げな笑みを浮かべて、喘ぐ唇にキスをした。
「もう一度――」
そう言って下肢をまさぐり始めた指は、泥濘遊びをしているように派手な音を立てる。粘液にまみれた秘所は、どこを弄られても滑るように指が擦れて、膨張した真珠粒も挟まれてはつるりと逃げた。そのたびに脳天まで響くような痺れが走り抜け、ずきずきとした疼痛が腰の奥へ広がってく。
アンドリューは背後からヴィヴィアンを包むように抱きしめ、片手の指で花芽を捏ね回しながら、反対の手指を潜らせてきた。肉襞の隙間に指が分け入る。意図を察して、ヴィヴィアンはかぶりを振りながら身を丸めた。
「だめっ……そ、そこは……」
「よく濡れている。指くらいなら入るだろう。ほら――」
「うっ……んう……っ……」
指とは思えないほど硬い感触が、柔肉の隘路に蠢きながら潜り込んできた。必死に押し返そうとするのに、内壁は指に絡みつくようにうねってさざめく。
「ここに触れたのは俺が初めてだな。いや、最初で最後だ。誰にも触らせない……」
耳殻に吹き込まれる低い囁きは、ねっとりとした熱となって、ヴィヴィアンの頭の中にまで侵入した。 -
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