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あらすじ
お前に触れられるのは私だけだ
冷え切っていた夫婦の愛が熱く燃え上がり!?大国の王アレウスに嫁いだフィリーナは、毒殺されかけたことで意志の強かった前世の自分を思い出す。気持ちを改め、国や民のために行動していると、今まで冷たかったアレウスが彼女に興味を持ち始める。「震えているのか? あれだけ豪胆な行動を取りながら少女のようだな」熱い腕に流されるも真にわかり合えないうち、謎の男達に命を狙われ…!?
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キャラクター紹介
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フィリーナ
ラドラスの王女。大国レアリアに乞われてアレウスに嫁ぐ。 -
アレウス
レアリアの王。軍人として育てられる。女嫌い。
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試し読み
「さっきの話に戻すが、ここにクレインの名があるということは、ルーグではなくクレインを送った方がいいということか?」
「ええ。三人の中でクレインが一番私を警戒しているので、あなたも彼の言葉なら信じるだろうと思って」
「オリーワは?」
「オリーワでもかまいませんわ。彼は親しみ易い人柄ですから、人にものを訊くのにはいいかも知れません」
「そうか。このパーティ出席というのは?」
訊かれて、貴族と反目するところがあるのなら、余計に社交に重点を置いた方がいいこと。王家主催のパーティを開いて、国庫に資金があると思わせた方がいいこと。できれば私と一緒に出席した方が周囲の受け取り方はいいだろうというようなことを説明した。
アレウスは最初のうちこそ一々私の言葉に反論していたが、だんだんと無闇な反論はしなくなった。
的確な質問をし、説明も求めてくれた。
私からの質問にも、『そんなことは知らなくていい』と突っぱねることはなく、ざっくりとではあったけれど説明をくれた。
「国が金を稼ぐ方法は税だ。国力を増強させるにはどうしても税を徴収しなくてはならない。だがそれにも限界はある。貴族達の税を上げたいが反対が大きい」
「戦争が終わったのですから、軍を削減しては?」
「弱っている国が軍を縮小したら今度はこちらが攻められる。国を守るためにそこには手がつけられない」
静かに響く彼の声。
もう怒ったり蔑んだりしている様子はない。
「農業はまだ不作なのですか?」
「雨が少ない年が続いているからな。今年は飢饉というほどではないが、豊作ではない」
私と、ちゃんと話をしてくれている。
「それならば商業で外貨を稼ぐしかありませんわね」
「売る物もないのに?」
「街でも申しましたが、加工です。他の国にない加工を施すのです」
「どんな加工だ?」
興味を持って私を見る青い瞳。
「私は専門職ではありませんからはっきりは言えませんが、市中からアイデアを募集してはどうでしょう? よいアイデアは国が買い上げて、考えた者に責任ある立場を与えるといえば応募する者も多いでしょう」
「そんなによい考えが出る、と?」
「パッチワークキルトと一緒です。ある物も工夫をすれば珍しいものに変わります。それと観光」
「観光?」
「風光明媚な場所に立派な宿泊施設を作って外国の人に来てもらうとか」
真面目な顔をしたり、ちょっと不機嫌になったり。
「施設を作る金はない」
「では使われていない王家所有の建物を使うとか。ラドラスでも公爵家所有の庭園を公園として開放していましたわ」
それでも声を荒らげたりしない。そんな彼に益々好感を抱く。
「お前は王の持ち物に固執しないのか?」
「使われていなければ維持費がもったいないですわ」
「それもそうだな」
楽しかった。
彼と肩を並べて会話をすることが。
ずっと、こんな時間が欲しかった。
嫁ぐ前に望んでいた夫婦の姿が現実になったようで。
真剣なアレウスの視線を自分が受ける日が来るなんて、夢のようだった。諦めていたのに、『もしかしたら』という気持ちが湧いてきてしまう。
もしかしたら、全ての誤解が解けて私達はよい夫婦になれるのかも、と。
「フィリーナ」
私は彼に名前を呼ばれてハッと顔を上げた。
「急に黙ってどうした? 眠いのか?」
心配そうに向けられる瞳。
彼が、私を気遣ってくれている。何て喜ばしい。
「……いいえ。少し疲れたのかもしれません」
本当にそうだったのだろう。口にした途端目眩を感じてふらつき、身体が傾いて頭が彼の肩に触れた。
振り払われるかしら? 怒られるんじゃないのかしら? 近づくなと言われない?
慌てて離れて背もたれに寄りかかる。
「ごめんなさい、今日はもう……」
怒られるどころか、突然彼は私を抱き上げた。
「アレウス?」
「休んだ方がいい。今日は一日歩き詰めだったからな」
アレウスが、私を抱き上げてくれている。
「あの、大丈夫ですから……」
「遅くに来たし、疲れてもう眠いんだろう」
彼が私を気遣ってくれている。
彼が私を見てくれている。
心臓は早鐘のように鳴り響いていた。彼に聞こえてしまうのではないかと思うほど。
アレウスは私を寝室へ運ぶとベッドに下ろし、そっと髪を撫でてくれた。
「お前は……、私の知っている女とは違うのだな」
優しい眼差しを受けて、閉じ込めていた期待が膨らみ出す。もしかして……。
「ゆっくり休め」
立ち去ろうとする彼が名残惜しくて、思わずシャツの袖を掴む。
「あ、ごめんなさい……」
慌てて離したけれど、彼と離れがたいと思う気持ちは消えなかった。
今ここで別れてしまったら、明日にはもうこんなふうに接してくれないのではないか不安になる。
でもこんな時間に女性が男性を寝室に引き留めるなんて、はしたないことよ。
「私に、ここへ留まれと?」
皮肉っぽく笑う顔。
「そうだな。今夜のお前なら、抱いてもいい」
抱く、という言葉にピクリと震える。
「彼等が愛人ではなかったという真実を確かめる方法にもなる」
横たわった私に、覆いかぶさるように彼が顔を近づけ、キスをする。
……アレウスが私にキスをしてくれた。結婚式で軽く唇は合わせたけれど、これは全く違う。仕方がないから唇を押し付けたのではなく、求めるように開いた唇で私の唇を押し開けて舌を入れてくる。
生まれて初めて受ける濃厚なキスに、心臓の鼓動は更に激しくなった。
眠気は飛んだが疲労はまだ残る。その上に刺激的なキスを受けて目眩がする。私がぼうっとしている間に、彼は身体を起こし、シャツを脱ぎ捨てて私に重なった。
「あ……」
堅い手のひらが、薄い部屋着の上から私の胸の膨らみを掴む。
もう一度キスされて、部屋着のリボンが解かれ、ボタンが外される。
自分ではない者が、自分の身体に触れてくる感覚。着替えを手伝う侍女達のものとは違う、もっと粗野で異質な触感。
怖い。
生まれて初めて男の人に求められることが怖い。
でも……、やっと彼は私を妻と認めてくれた。心を向けてくれた。
「ん……っ」
そう思うと拒めない。
拒むどころか、して欲しいと望んでしまう。
今夜が、私達の初夜になるのだ。
部屋着のボタンを全て外してしまうと、彼はおもむろに前を開けた。
剥き出しの乳房が彼の目に晒される。
彼が自分を妻として閨で求めてくれている。そう思うとこの行為が恥じらいより喜びを強く与え、二年間の孤独が埋められてゆく。
彼に背を向けられてからずっと、いつかこちらを向いてくれるのではないかと祈る気持ちで待っていた。
たとえ周囲の人間に受け入れられなくても、いつかその態度も変えてくれるのではないかと思っていた。
疎まれることはせず、嫌われるようなこともせず、自分が公女として学んだ『よき令嬢』であることに務めた。
でも、彼は一度も私に歩み寄ってくれなかった。
政略結婚であっても、自分は彼を愛した。愛情を抱ける人が相手でよかったと喜んだ。
なのに結末は、私を疎む人が私の命を奪おうとし、彼はそんな私に冷たい言葉しか与えてくれなかった。
そんな悲しみを、彼が今埋めてくれるのだ。
アレウスの唇が首筋を這う。
手は下肢に伸び、裾をたくしあげて脚に触れた。
ゾクリとし、首の後ろ、うなじ辺りに鳥肌が立つ。
「震えているのか? あれだけ豪胆な行動を取りながら、少女のようだな。私に抱き着くこともしないのか」
少し不満げに聞こえる言葉。
そんな余裕などなかったけれど、何とか震える腕を伸ばして彼の肩に触れる。
しがみつこうとしたけれど、彼の手が更に脚の付け根に滑るから、ビクッとして腕を縮めてしまう。
「ああ、余裕がないのか」
なぜそんなに嬉しそうな声に変わるの? からかっているの?
「……あっ!」
突然、手が最奥に触れる。
「や……っ」
ゾクゾクとした感覚と羞恥に声が上がり身が縮む。
「……ひ…ぁっ」
手は指だけになり、そこに差し込まれた。
「あ……っ、だめ……っ」
制止の声は、聞き流された。
「や……っ」
長い指が深く入り、内側を探る。
もう全身に鳥肌が立ち、それが鳥肌なのかどうかもわからなくなる。ただ全身の肌が痺れるように過敏になっているのがわかるだけ。
アレウスの唇が再び胸を吸う。
反応してまた身が縮こまり、彼の指を締め付ける。
自分がどこにいるのかもわからなくなり、何かに縋ろうと再び彼の肩に手を伸ばすけれど、指が動く度にその行動が阻害されてしまう。
ビクビクと震える身体を、おかしいと思われないかしら?
他の女性達と比べて幼いと、拙いと思われないかしら?
途中で止めてしまったりしないかしら?
初めてだからちゃんと抱いて欲しいのに。
けれどそんな心配は不要だった。
彼は指を抜くと、私の脚を取り、開かせた。恥ずかしくて抵抗を試みたが、男の人の力に適うはずもなく、彼に居場所を作ってしまう。
脚の間に身体を移したアレウスは私の腰を抱いて引き寄せた。
「あ……」
広がっていた自分の長い髪の上に横たわっていたから、身体は彼に近づき内股に彼の膝が当たる。
でもそのままもう触れてはこなかったので、また不安に駆られて彼に視線を向けると、アレウスは前を開いて中から彼自身を引き出したところだった。
一瞬目に入っただけで顔が熱くなる。
婚姻の前に、国で閨の作法は教えられていた。
男性には女性とは違うものが付いているのだ、と。それが女性の身体に埋め込まれて事が成るのだと。
あれが、その違う部分なのだわ。
胸がドキドキする。
私にちゃんとできるだろうか。
「あ……」
彼の指を迎えた場所に、新たなものが当たる。それがあの巨大な肉塊であることはすぐにわかった。
「身体を固くするな」
「……は、……はい」
言われても、上手くできない。
怖くて、不安で、緊張して、 身体は強ばったままだった。
その強ばった身体に、彼が挑んでくる。
「ん……っ」 -
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