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あらすじ
怖がるな……っ、そのまま、感じていろ
二年も触れてくれなかったのに、急に身悶えするほど愛されて!?王太子クリフォードに望まれ結婚し二年になるのに夜伽のないリオノーラ。彼に愛人がいるとか? ある晩二人は初めて熱い時を過ごす。触れられると心地よさに身体が跳ね、突き上げられれば快楽で淫らな声を抑えきれない。でもクリフォードは彼女を『繁栄をもたらす竜の末裔姫』だと言う。愛されていないと思い離縁を申し出るが応じてもらえず……!?
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キャラクター紹介
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リオノーラ
侯爵の娘。クリフォードが初恋の相手。『繁栄をもたらす竜の末裔姫』と呼ばれる。 -
クリフォード
メルツ王国の王太子。表情に乏しく、『鉄の仮面を被った男』と言われることも。
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試し読み
東塔の三階――使い慣れた寝室に運ばれたリオノーラは、くったりと力なくベッドの上に横たわった。吐息は変わらず乱れ、涙ぐんだ状態の妻を見下ろしたクリフォードは、瞳に滲む獣の気配を押し隠して顔を覗き込む。
「……大丈夫か? 身体が熱すぎるなら、氷を用意させるが……」
シーツの感触が心地よく、ほっとする。だがクリフォードが熱を確かめるために喉元に触れた途端、リオノーラはびくりと震えた。触れられたところからぞくぞくと快感が走り抜け、身を捩る。
「……ん……っ」
堪えられず声を漏らしたリオノーラは、口を押さえた。
――嫌だ……酷くなってる……っ。
宴前とは雲泥の差で、全身が感じやすくなっているようだった。こんな淫らな反応を見せたら、クリフォードに嫌われてしまうかもしれない。
リオノーラは横たわったまま夫に背を向け、身を丸めた。
「……ご、ごめんなさい、クリフォード様……っ。私、熱があるみたいだから、今日はもう休みます」
これ以上変な反応は見せまいと、身体を抱き締めて退室を願うと、クリフォードはため息を吐く。
「……熱はないようだった。俺はこのまま其方を抱く」
鼓動が乱れ、常と違う己に動揺していたリオノーラは、何を言われたのかしばらく理解できなかった。衣擦れの音がして、ぎしっとベッドが軋む。首を巡らせると、鍛え上げた上半身を晒したクリフォードが自らに伸し掛かり、目を瞠った。
「え……っ、あ、ん……っ」
事態を把握する間もなく首筋に口づけられ、リオノーラは心地よさに身を震わせる。クリフォードは首筋を舐め、ちゅっちゅっと鎖骨にかけて口づけを落としながら、ため息交じりに呟いた。
「リオノーラ……ずっと其方を抱きたかった」
「――んぅ……っ」
間近で彼の声を聞くだけでもじんと身体の芯が熱くなり、身が竦んだ。彼は反応を確かめるようにリオノーラの顔に視線を注ぎながら、下腹を撫で上げる。ぞわわっと寒気に似た心地よさが駆け上り、じわっと下着が濡れたのを感じた。
――な、何……? 私今、粗相をしたの……!?
なぜ下肢が濡れたのかを知らぬリオノーラは、粗相だと思い、気づかれまいと上半身を起こして彼の胸を押し返す。
「ま……っ、待ってください……っ。今日はダメ……っ」
クリフォードはリオノーラの言葉を無視し、腕を掴んでリオノーラに背を向けさせる。背中のリボンを解いてドレスを腰までずり下げられ、コルセットは剥ぎ取られた。
あまりに素早く衣服を剥がれ、リオノーラは反応しきれなかった。気づけば乳房が露わになっていて、慌てて両手で覆い隠す。
「クリフォード様……っ、私、今日はなんだかおかしいから……っ、あ、ん……っ」
だが背を向けたリオノーラの首筋に、艶っぽいため息と共に彼がキスを落とし、リオノーラは逃れられないのだと悟った。肌に触れられると心地よく、吐息が震え、全身の力が抜ける。彼は背後からリオノーラの腹に手を回し、無垢な肌を撫で上げながら熱く囁いた。
「……リオノーラ……其方を永遠に愛すると誓ったあの言葉に、偽りはない。俺が愛するのは、永遠に其方一人だけだ」
「あ……、あ、あ……っ」
そのまま胸まで撫で上げられ、大きな掌に胸をくにゅっと揉まれた瞬間、腹の底が苦しいくらいに重たくなった。胸を隠していたはずの己の腕は、抵抗を忘れ力なく垂れ落ち、腰は淫らに反り返る。
クリフォードの手は、リオノーラの望み通りに淫猥に豊満な胸を揉みしだき、リオノーラは下肢がとろりとろりと熱い滴でまた濡れていくのを感じた。
愛する夫に嫌われたくはなく、粗相を隠したくて心は焦る。しかし身体は彼に触れられるのを喜び、もっともっとと快楽を望んで、思考は霞がかっていった。
「リオノーラ、こちらを見ろ」
命じられて背後を振り仰ぐと、獲物を追い詰めた獰猛な肉食獣の気配を漂わせた夫と目が合う。彼は逃しはしないとでも言いたげな視線を注ぎ、熱く唇を重ねた。
何度も唇を吸われ、情熱的なキスにリオノーラの胸は喜びに震える。はあ、と熱い息を零すと、口内に夫の舌が滑り込んだ。
「ん、んん、あ……っ、んぅ……っ」
にゅるにゅると舌が絡め合わされ、胸の奥が熱くなる。無意識に膝をすり合わせると、クリフォードの視線がちらりと下腹辺りに注がれ、彼はドレスの下に手を忍ばせた。
しっとりと太ももを撫で上げられ、このまま結ばれてしまいたい心地になる。でも彼の手が花芽に届こうという時、悲しくてたまらなかった記憶が蘇り、衝動的に尋ねた。
「……私を妻にしたのに……他の女性を抱いていらっしゃったのではないのですか……? ……街へ降りていらしたとも、聞いております」
『妻以外に逢瀬を交わす相手など作る気はない』と言ったプロポーズの時の言葉を翻し、遊んでいたのではないのか。快楽で目を潤ませながらも、嫉妬を隠せず恨めしく見ると、彼は手を止めた。リオノーラの瞳を見返し、面白そうに口角をつり上げる。
「……街へ降りる際は忍んでいたはずだが……俺の行動に詳しいな。……そう悋気を見せずともいい。街に降りていたのは、部下と酒を飲むためだ。其方を無理にも抱いてしまいたくなる夜は、王宮の外にでも出ないとどうにもならなかった」
「――え……?」
予想していなかったセリフに、リオノーラは目を丸くした。彼はまた唇を重ね、キスの合間に答える。
「其方と出会って以来、俺は誰も抱いていない。気づいていなかったのか? 俺は毎年社交シーズンの盛りに其方のもとを訪れていただろう。……其方の愛らしい笑顔を見る方がよほど日頃の疲れが取れると色恋もしていなかった。今も俺はあの頃から変わりない。其方以外の女に、興味はない」
体中の血潮が乱れ、まともに思考もできぬほどリオノーラは喜びに満たされた。歓喜のあまり瞳に涙が滲み、クリフォードに向き直り、首に抱きつく。
「……クリフォード様……私、ずっと貴方が好きなの……っ」
クリフォードは片腕でリオノーラを抱き留め、耳元で含み笑う。
「ああ、知っている。本当に、其方は昔も今も可愛くて仕方ない……」
彼の声が掠れ、ドキッとした瞬間、体重をかけられてベッドに押し倒された。すかさずドレスと下着を引き抜かれ、リオノーラは心細さに瞳を揺らす。
彼はつんと先の尖った白桃のような胸や平らな腹、薄い色の下生えまで視線を走らせ、満足そうに息を吐いた。
「……もとよりそのつもりはないが、ますます誰にもやる気にならんな……」
身を屈め、首筋から鎖骨にかけてキスを落とされていき、リオノーラの身体から力が抜ける。キス一つ一つに信じられないほどの快感が伴い、吐息が震えた。
「あ、あ……っ」
クリフォードは豊満に育った胸にねっとりと舌を這わし、そのいやらしい様にリオノーラは鼓動を乱す。舌の先で突起を転がされ、甘噛みされると、心地よすぎてびくびくと身体が跳ねた。
「ああっ、あ……!」
「……なんて感度だ……」
言いながら、もう一方の胸は大きな掌で揉まれ、触れられる場所全てが性感帯のように感じた。下肢はすっかり濡れそぼり、リオノーラは淫らな声を抑えられない。
「やあ……っ、ああんっ、あ、あ……!」
「リオノーラ……其方は、誰よりも美しい……」
クリフォードも次第に興奮した息遣いになり、胸から腹へとキスを降らし、ぐっと足を掴まれる。片足を持ち上げ、彼の視線が不浄の場に注がれるのに気づいたリオノーラは、はっと手で覆い隠した。
「み、見ちゃダメ……!」
感じすぎたリオノーラは、シーツまでしっとりと濡らしていた。汚いと思い見られないようにするも、クリフォードは問答無用で手を押しのけ、瞳を妖しい色に染める。
「……み、見ないで……っ。ごめんなさい、私、どうしてか粗相を……」
リオノーラは恥ずかしさのあまり、目に涙を滲ませた。彼に見られている状況に耐えられず、顔を背けて謝罪する。クリフォードは、ぼそっと低い声で応じた。
「……謝る必要はない。あの夜とは比べ物にならないな……。よくできたな、ノーラ」
褒められて驚き、目を向けたリオノーラは、クリフォードの造り物じみた顔が不浄の場に寄せられてぎょっとした。
「え、え……っ? あの、クリフォード様……あっ」
続けて与えられた快楽に、リオノーラは高い嬌声を上げる。
「ひゃああっ、んっ、んっ、それ、ダメ……っ、やぁ……っ」
クリフォードは花唇を口に含み、にゅるにゅると舐め転がした。尿意に似た悦楽が襲い、リオノーラは身もだえ、思わず彼の髪を掴む。
「クリフォード様……っ、お願い、やめて……っ、あっ、きゃぅ……!」
彼は舐め回すのをやめず、不意に絶妙な加減で花芽に歯を立てた。リオノーラは反射的に足を閉じたが、それはクリフォードの頭を挟むだけで快楽を逃がすことはできず、びくびくと内ももを痙攣させる。クリフォードはそのままきゅうっと花芽を吸い上げ、リオノーラは強すぎる快楽に目を瞠った。
「きゃああ……っ、あ、あ――っ」
下腹の奥がぎゅうっと収縮する感覚がして、また下肢がとろりと濡れる。また粗相をしてしまったと思い、リオノーラは狼狽した。
「ま、また……何か出ちゃ……っ」
クリフォードはやっと顔を上げ、混乱して泣きそうな顔をしている妻に気づく。下肢を濡らして恥じ入る様子に目を細め、頬に甘く口づけた。
「……ノーラ。大丈夫だ。濡れてくれた方が、俺は嬉しい」
リオノーラはどうして、とクリフォードを見返し、彼の指先がぬるりと蜜口を撫でて、びくっと肩を揺らした。
「これは其方が俺を受け入れようとしている証拠だ……ずっと、待ち続けた」
クリフォードはため息交じりに言うと、中指をずぷぷっと中に沈めていき、リオノーラはびくっと腰を反らす。座学で学んだ時、身体を繋げるそこは狭く、往々にして痛みを伴うと学んだ。それなのに、どういうわけか、今日のリオノーラの身体は指先が中に沈められる毎に心地よく、耐えられず声を漏らした。
「あ、あ……っ、ん――っ」
クリフォードは妻の様子を見つめ、ゆっくり抽挿を繰り返す。その度気持ちよくて、リオノーラは感じ切った嬌声を漏らした。
「あっ、あっ、ああんっ、ん……っ」
クリフォードは身を起こし、顔を覗き込む。
「……痛いわけではないんだな……?」
初めてなのに、痛くないなんておかしい。浮気を疑っていたくせに、自身が既に男を知っていたのかと疑われそうな事態に、リオノーラは顔色を悪くした。
「わ、私……不貞などしておりません……だけど、その……」
問われる通り、痛くない。むしろとても気持ちいい。
疑われても証明しようはなく、リオノーラは目を泳がせ、言葉に詰まった。
彼は目を眇め、無言で指を二本にして中に押し込む。ほぼ慣らされていない状態で、リオノーラの身体はすんなり彼の指を受け入れた。
じゅぷぷっと指を埋めていかれるだけで快感が襲い、リオノーラは声を上げる。
「あ……っ、はぁん……っ、ああっ、あ……!」
蜜口からは愛液がとろとろと溢れ、部屋には甘い花の香りが一層濃く充満した。リオノーラの嬌声を聞く毎に、クリフォードの目は興奮の色に染まっていく。
「……なるほどな……成熟するとは、全てを受け入れるために整うという意味か……」
日常的に聞きそうもない「成熟」という言葉に、リオノーラは快楽に思考を染められつつも微かな違和感を覚えた。どこで聞いたのか記憶を巡らせ、庭園でドミニクが叫んでいたのだと思い出す。 -
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