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試し読み
「ウィル、わたし……」
「いいのですよ。あなたが愛らしいだけではなく、これほどまで大人の女の顔を持ち合わせていたことに感動しているのです。さあ、もっと花開いてください。私の指で、あなたを解き放って──」
再度、彼がエルシーの胸にキスを落とした。だが、それだけには留まらない。ウィルバートの右手が、腰から太腿を行きつ戻りつ辿っていく。熱い指先に触れられると、肌が蕩けてしまいそうだ。
「あ、あっ……、そこ、気持ちいいの。胸、ウィルに吸われると……んん!」
「ここですか? よくばりでかわいい乳首ですね。もっと舐めてと言わんばかりに充血していますよ」
乳暈ごと口に含み、ウィルバートがじゅうっと強く吸い上げる。
先端に集結した快感の糸が、全身に甘い痺れを走らせた。
「あ! あ、あっ……やぁ……っ」
腰が浮くのを止められない。そう思った刹那、脚の間に彼の手が滑り込む。
蜜に濡れた柔肉が、ウィルバートの指を感じていた。肌に触れられたときには、彼の手を熱いと思ったのに、エルシーの秘所はそれよりさらに熱を帯びている。
「ここも、さわってほしいですか?」
吐息混じりの声が、唾液で濡れた乳首をかすめた。息がかかるだけのわずかな刺激にも、今のエルシーは体を震わせてしまう。
自分が、ただウィルバートを感じるためだけの存在になってしまったような気がして、嬉しくもあり恥ずかしくもあり、けれどひたすらに彼を愛しく思う。
──なんて幸せなのかしら。夫婦になるというのは、こんな秘めた悦びを共有することだったのね。
「エルシー? さわってほしいか教えてください。さあ、あなたの声で私を導いて」
「ウィル……」
涙膜で濡れた瞳に愛を込めて、エルシーは夫の名を口にした。
喉がゴクリと音を立てる。彼がほしい。ほしくてたまらない。その慾望が、体の内側で淫らに渦を巻いている。
「さわって……もっとウィルにさわってほしいの。わたしのすべては、ウィルのものなんですもの」
花が咲くに違いないタイミングだった。
初めて口にする淫らなおねだりに、エルシーの心はこのうえなく興奮している。
当然、これまでにないほど花が咲き乱れておかしくない、それなのに──
「……甘い、香りがします。花が咲くのではなく、まるであなた自身が咲いているような」
ウィルバートがクンと鼻を鳴らした。
たしかに、言われてみればふたりを取り巻く夜気が、どこか甘い香りを孕んでいる。
「ああ、ここから香ってきているのですね」
脚の間に差し入れていた手を引き抜くと、濡れた指先を彼はちろりと舐めた。
「っっ……! だ、駄目、そんなの舐めたら駄目だわ!」
これまで本能に負けを喫していた理性が、一瞬でエルシーを引き戻す。あふれた蜜に濡れた指先、そこを這うウィルバートの赤い舌は、ひどく艶かしくて。
「間違いない。エルシー、あなたの蜜はとても甘いのです。花の香りに似て、私を誘うだなんてさすがは我が王女ですね」
「そんな……し、知らない……」
真っ赤になった頰を両手で隠し、エルシーは体をよじろうとした。
「駄目ですよ」
けれど、動いた肩を敷布に押し戻し、ウィルバートがさらに先へ進むための行動を開始する。
エルシーの両膝を、左右に大きく割り開いたのだ。
「ウィル……!? そこは、あ、ああ……!」
夫を受け入れるためにあふれた蜜が、とろりと臀部にしたたっていく。それがウィルバートの目に映っていると考えると、羞恥に体が震えそうだった。
「あなたのいちばん感じるところを今から撫でていきます。怖がらないで。私は、エルシーに悦んでもらいたいだけなのです」
「だったら……お願い……」
キスをして。
消えそうな声で懇願すると、ウィルバートが隣に体を横たえる。そして、エルシーの下唇に舌先を躍らせると同時に、濡れた柔肉を亀裂に沿って指でなぞる。
「んぅ……、ん、はっ……」
腰から背骨を、せつなさとも喜悦とも判別できない感覚が、じわりじわりと上ってくる。それが項までたどり着くころ、腰では新たな快感の波が生まれているのだ。
「口を開いて、舌を……」
「こ、こう……?」
言われるまま、エルシーは口を開く。性急なキスが、彼女を貪るように唇を塞いだ。
「……っ、ん」
ちゅく、とふたりの唇が音を立てる。舌が何かを探るようにエルシーの口腔に入り込んできた。おずおずとこちらからも舌を動かし、ふたりのくちづけが触れるだけよりずっと深いものになるのを堪能する。舌と舌が触れ、蠢く。そのたびに、エルシーは自分が愛されていると感じた。 -
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