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試し読み
埋め込まれた指が内部でくちゅり……と動いた。未知なる刺激にベリータの全身がおののく。
最奥に隠されていた秘密の花孔は、まるで蜜でも生み出しているかのように、ちゅくちゅくと恥ずかしい水音ばかりをたてている。
いや、もしかしたらそれは感覚的なものかもしれないけれど、少なくともベリータにはそう聞こえた。自分の体が生み出した、自分にしか聞こえない淫らな音楽。
「いや、ぁッ……! あ、ああっ……!」
何度も指の出入りを繰り返されると、さらにおかしな気分になってくる。ベリータは無意識のうちにラフィームの腕をきつく掴んで、許して……と小さな懇願を口にしていた。けれど高慢なこの男は聞き入れてくれない。
「言ったはずだ、これはお前が選んだことだと」
耳朶(じだ)に直接注ぎ込むように、続けてこんなことを囁かれる。
「そもそも俺が拾ったものでもあるしな」
「……は……」
「だからこれは正当な権利と言える。──お前をもらうこととしよう」
意味がよく、わからない。
まともな反応も返せずにただ速い呼吸だけを繰り返していたら、ふ、と小さく笑われた。
ぼんやりとかすむ視界に、その笑顔を捉える。
微笑んで、くださっているの……?
そういう笑顔は好きだと思う。
厳しく引き締められた顔も悪くはないが、ふとした瞬間に見せるその優しさと華やかさは格別と感じられる。
「ラフィーム……」
目の前の美貌に指を伸ばそうとして、途中で挫折した。全身のどこにも力が入らない。少し体を起こしたラフィームが、邪魔だとばかりに強引にベリータのドレスをはぎ取る。そうしてあらわにされた乙女の白い裸体を割って、ラフィームがまっすぐに腰をあてがってきた。
「泣くなよ」
真顔でそんなことを言われても、どうしたらいいのかわからない。
「う……」
と本能で肌を強張らせた瞬間、恥ずかしい場所に指とは異なるなにかを感じた。
ふと、脳裏に蘇ったのは、一瞬といえどまともに目にしてしまったさっきのラフィームの逞しい裸体だ。女姉妹ばかりの環境で育ったベリータにとって、それはあまりにも未知すぎるものだったが、幸か不幸か、そう遠い未来のことでもない花嫁教育の一環として、多少は家庭教師から聞かされている。
男性が、その股間のものを逞しくして女を求めてくるのは、妻としての最大の喜びです、と。
けれどそれは、あくまでも正式な婚姻の上に成り立つものだ。
自分はラフィームの妻ではない。
なのに──。
(ああ……私ったら……)
きっとこれもまた、愚かな選択なのだろう。
ただここに残りたいからと意地を張った。
なぜそんなふうに思ってしまったのかはわからないけれど、気づけば強くそう望んでいた。
追い出されても、行きたいところはない。帰るべき場所もない。尼僧院とて仮の宿。とくに歓迎されているとも思えない。
あまつさえ、死んだとまで噂されている自分。
ならば──。
(素敵、と思えた相手なだけ、幸せなのではないかしら……)
ベリータはきゅっと目を閉じた。 -
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