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あらすじ
有能なイケメン上司は、“神さま”で“ストーカー”で“婚約者”!!?
幼い頃に美也子が出会った加賀智龍は、蛇神さまだった! 大人になり就職したけれど、龍は秘書室長になり上司として美也子の傍にい続けている。「おまえに触れるのは、俺だけだ」オフィスでも自宅でも、龍は隙あらば美也子に求愛し、淫らなイタズラや濃密な愛撫で執着をあらわにしてくる。当然のように愛されてしまうことに美也子は不安を覚えて!? (ヴァニラ文庫ミエル)
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試し読み
「あの、ふざけないでください。仕事の話じゃなかったんですか?」
わずかに声が震えるのは、龍の目が心の奥を見透かしてしまうせいだ。
「もちろん、仕事の話ですよ。水野さんが、いつまで経っても職務に集中できていないようなので、あなたの上司としてお仕置きをするんです」
嘘だ、と反射的に思う。
上司は部下を叱責することはあっても、ふたりきりでこんなに顔を寄せてお仕置きをしたりはしない。
「〜〜〜〜っっ、それでしたら、もっと場所を選んで話し合いを」
「駄目です」
ぐい、とスカートの間に龍の膝が割り込んだ。あっと思う間もなく、もう脚が閉じられなくなっている。
「セ、セクハラ……!」
「いいえ、これはお仕置きです。水野さんは秘書としての自分を省みて、何が足りないとお考えですか?」
顔を近づけてくる龍が、じっとこちらの目を覗き込んだ。そらす余裕もないまま、彼と目が合ったとたん、美也子は体が動かなくなるのを感じていた。
緊張によるものか。はたまた、龍が何か妖しい神通力でも使ったのか。
「足りないのは、冷泉さんのような落ち着きと……」
言いかけて、小さく息を呑む。
龍のスーツの膝が、じりじりと内腿を上がってきていた。
「そ、それと、雪原さんのような的確な判断力と!」
両手で彼の膝を押さえつけたい。
それなのに、美也子の体は指先ひとつ動かないのだ。口と目、おそらく顔の筋肉に関しては、いつもと変わらない。なのにどうして。
「そうですね。それから?」
膝丈のスカートが、龍の膝に押し上げられて太腿があらわになる。ストッキング越しに脚の付け根をこすられて、美也子はびくっと肩を震わせた。
「や……っ……、こ、これは仕事のお仕置きじゃないです……」
何より、仕事上でお仕置きなんて普通はしないものである。
「そうでしょうか? あなたに隙があるせいで、こうなっているんですよ。秘書として、隙だらけだというのも欠点なのではありませんか?」
背をもたせている棚が、作り付けのものでよかった。龍に刺激されるたび、腰から背、肩までビクンと大きく揺れてしまうので、もしあとから設置した棚だったら、置いているものが少ない分、不安定になっていたかもしれない。
「隙って……、仕事中にこんなことされるなんて、誰も思わないですよ!」
異性とふたりきりになるのを避けろと言うのなら、そもそも仕事なんてできない。
美也子は、特定の役員の秘書としての仕事はしていないけれど、それでも社外に同行する場合など、社用車の後部座席に異性とふたりで乗ることもある。
「龍、もういい加減、ふざけるのは……」
「室長、ですよ。上司を呼び捨てるだなんて、水野さんは生意気な新人ですね」
彼の口調から伝わってくるのは、まさに愉悦としか呼べない感情だ。軽くあしらうように、それでいて美也子を困らせようと、龍は言葉を選んでいる。
──こんなの、秘書としての職務じゃない。龍だってぜんぜん室長らしい表情じゃなくなってるくせに!
そう。
さっきまで涼しげな表情を浮かべていた龍が、仕事中とは違う顔を覗かせていた。細めた切れ長の目は、甘い情慾を滾らせている。薄く開いた唇が、キスを欲しているのが言葉にしなくてもわかってしまう。
「室長らしくないって、どういう表情のことだ、美也子?」
いつもと同じく、彼女の心を読んだらしい龍が問いかけてくる。右手が美也子の頬を撫で、そのまま首をたどってスーツのジャケット越しに胸の輪郭をなぞっていく。
「や、龍、駄目、何して……」
「何って、わからないのか? おまえの胸に触れている。ほら」
左胸が、ぐっと裾野から持ち上げられた。何枚もの布で遮られているはずなのに、ひどく彼の手の感触を身近に感じる。
「こ、こんなの仕事じゃない……っ」
「心配するな。俺は今、秘書室の自分の席で社長が明日使う資料をまとめているからな」
「えっ……」
美也子とこの部屋へ来たあと、彼は分身を秘書室に戻していたというのか。では、美也子ひとりが専務室の片付けをしていると周囲は思っているに違いない。
「だから、俺はこう見えても仕事中だ。美也子も──ある意味では仕事中と言っていいんじゃないか?」
ジャケットの内側に、彼の手が入り込む。ブラウスの上から弄られ、胸の先端がじんじんと切なく疼きはじめた。
経験は、ない。
それでも、年齢相応の知識はある。
自分の体の反応に、美也子はかあっと頬を赤らめた。龍に触れられて、感じていることを自覚させられる。
「仕事じゃない、こんな……、こんなこと……」
「そうだな。無理やりさわられても、美也子のここは感じているんだから、これじゃお仕置きでもなければ仕事でもなさそうだ」
彼がふふっと息だけで笑うと、美也子の上半身からジャケットとブラウスが床に落ちた。ボタンをはずしてもいなければ、袖から腕を抜いてもいないのに、まるでマジックのように一瞬で。
「〜〜〜〜っっ、龍!」
「おやおや、なんと不思議な現象でしょう。水野さんの洋服には、タネも仕掛けもなさそうに見えましたが」
龍は、またも室長口調に戻り、胡散臭い笑みを浮かべる。
世に怪奇現象と呼ばれるものが発生することがあったとして、この男がそばにいる場合に限っては、すべて龍のせいだと思っていい。美也子は本気でそう思っている。
「どうしました? 恥ずかしいのですか?」
「当たり前でしょ……っ」
キャミソールを着ていたおかげでブラジャー姿にならずに済んだものの、肩や胸の谷間がくっきり見えている状態で、平静でなんかいられない。
「水野さんは恥じらい深い女性ですね。淑女と申しますか、大和撫子と申しましょうか。ですが──」
彼の右手が、自由を謳歌するように美也子のキャミソールとブラジャーの肩紐を軽くつまんだ。
「もう、これで終わりにして。仕事、もっとがんばるから、ほんとうに……っ」
今もまだ体が言うことを聞かない。
そんな美也子の耳元に、龍が唇を寄せた。
「──俺は、そういうおまえを脱がせるのが楽しくてたまらないよ、美也子」
低く、耳朶を舐めるようなねっとりと絡みつく声。首筋が粟立ち、肩紐が肘まで引き下ろされた。
「っっ……、や、ぁ……」
ブラジャーのカップから、乳房の上半分がはみ出してしまう。当然ながら、中心の色づいた部分も。
「ああ、これはたしかに恥じらうのもわかるな。美也子、どうしておまえの乳首はこんなにいやらしく屹立しているんだ?」
レースの縁にちょこんと乗り上げた胸の先端を、龍が指先で弾いてみせた。
「やっ……! あ、さわんないで……っ」
「さわるなと言いながら、ずいぶん甘い声を出す」
人差し指の腹で下から上へ何度も弾いたあと、龍は敏感な部分をきゅっと根元から括る。
「〜〜〜〜っっ、ん、んーっ」
いじられているのは胸だけなのに、彼の膝を挟み込んだ内腿がぶるぶる震えた。腰の奥で甘い渦が巻き、何もかもが引きずり込まれそうな感覚に陥る。 -
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