書籍紹介
薄幸の王女は、二度目の人生で軍人皇子と初恋を叶える~愛され政略結婚~
薄幸の王女は、二度目の人生で軍人皇子と初恋を叶える~愛され政略結婚~
ISBN:978-4-596-77820-8
ページ数:290
発売日:2024年8月2日
定価:740円+税
  • あらすじ

    あなたを愛するためなら何でもする

    敵国の第一皇子に嫁いだイルマは夫に一度も愛されないまま非業の死を遂げた。目を覚ますと時は巻き戻っていて、イルマは今度は密かに想い合っていた第二皇子のアルフォンスと結婚。本当に愛する人に与えられる悦びは破瓜さえも甘く感じさせる。前生では味わえなかった、身も心も溶かすこの幸せを守ろうとするが、運命は簡単には変えられなくて!?

  • キャラクター紹介
    • イルマ
      時間を遡って生き返った王女。前生の失敗を繰り返さないために奮闘する。

    • アルフォンス
      ジェルマーニ帝国第二皇子。軍の最高司令官。イルマの頼みで戦の回避を画策し!?

  • 試し読み

     厳かな教会で祝砲の音を聞きながら、イルマは夫となったアルフォンスの唇を受けとめる。ふれ合うだけの口づけなのに、鼓動が高鳴って治まらない。
    (私が今どれほど幸せか、きっとアルフォンス様は想像もつかないでしょうね)
     夫は今日初めて会った妻が、初恋が成就して打ち震えているなど当然知る由もない。この口づけもただの儀礼の一環だとしか思っていないだろう。そう考えるとなんだか可笑しいような、少し淋しいような気がした。
     すると、口づけを終え顔を離したアルフォンスは、目をパチクリとさせた。そして目もとを和らげると素早く花嫁の唇にチュッともう一度キスをした。今度はイルマのほうが驚いて目をまん丸くしてしまう。
     アルフォンスは一瞬悪戯っぽい笑みを浮かべたあと、何事もなかったように澄ました顔で式の続きに臨んだ。イルマもドキドキ煩い鼓動を抱えながら、表情を引き締める。
     それからパレードや晩餐会など式典が続き多忙な一日を過ごしたが、ずっと隣にアルフォンスがいるだけでイルマの胸は幸せな高鳴りを響かせ続けたのだった。
     そうして一日目の結婚式典がようやく終わったのは夜の十一時。湯浴みを終え寝間着に着替えたイルマは、夫婦の寝室で夫が来るのを待った。
    (来て……くださるわよね?)
     こうしてベッドに腰かけて待っていると、クリスティアンに放ったらかされた初夜を思い出す。アルフォンスはそんなことをしないと信じながらも緊張して待っていると、ドアをノックする音が聞こえた。
    「やあ、待たせた」
     そう言って眉尻を下げて入室してきたアルフォンスの姿を見て、イルマはホッとする。
    「侍従に温かい飲み物を作らせていたら遅くなってしまってね」
     アルフォンスはカップがふたつ載ったトレイを持っていた。それをベッド脇のテーブルに置くと、ひとつをイルマに手渡す。カップの中身は温めたワインで、シナモンやナツメグなどの香辛料の香りがした。
     もうひとつのカップを持って、アルフォンスはイルマの隣に座った。アルフォンスはシャツと脚衣の上にガウンを着ており、髪も式典のときとは違いラフだ。心なしか表情も寛いでいる。
     アルフォンスはグリューワインをひと口飲むと、イルマのほうを向いて微笑みかけた。
    「改めてよろしく、イルマ妃」
     彼が寝室へ来るかどうかの心配ばかりしていたが、これから初めてベッドを共にするのだ。イルマは急にそのことを意識してしまい、頬を赤くさせた。
    「こちらこそ……よろしくお願いいたします。アルフォンス殿下」
     考えてみればまともな会話をするのもこれが初めてだ。式典中はずっと隣にいたものの人目にさらされ続け、私的な言葉を交わす暇もなかったのだから。
    (色々なことを考えてきたはずなのに、いざとなると言葉すらうまく出てこないなんて……)
     すっかり緊張してしまったイルマが下を向いてしまうと、大きな手がそっと髪を撫でてきた。
    「硬くならないで、少し話をしよう。それから俺のことは気軽に、アルフォンスと呼んで」
    「は……はい」
     イルマの蜂蜜色の髪を撫でる手は、とても優しい。少し遠慮がちにふれる指先から、もしかしたら彼も緊張しているのかもしれないと感じた。
    (私はアルフォンス様のことを多少は知っているけど、彼は正真正銘今日が初対面だものね、緊張していて当然だわ)
     それなのに新妻をこうして気遣ってくれる気持ちが嬉しくて、イルマの胸がジンと痺れる。
    「あの……私は九月生まれで、美しい庭を散策したり、薔薇の花を見るのが好きです」
     せっかく彼がお喋りの時間を設けてくれたのだ、自分からも交流を図ろうとイルマは話しだした。アルフォンスは口もとに弧を描いたままだが、唐突な話題を振られて不思議そうに「ん?」と小首を傾げる。
    「私のことを知っていただけたらと思って……」
     イルマが恥ずかしそうにそう付け加えると、アルフォンスは納得したように頷いて目を細めた。
    「教えてくれてありがとう。ちょうどよかった、この宮殿には大きな薔薇園があるんだ。今度案内するよ」
     そして少し考えるそぶりを見せてから、アルフォンスは口を開いた。
    「俺は……馬に乗るのが好きかな。じつは俺はすごく目がいいんだ。そのせいで戦場では敵の動向を読むのが得意だなんて言われてるけど。本当は名将なんて称えられるより、馬上から遠くの景色を眺めているほうが大好きなんだ。おかしいだろう? けど、陽の沈む稜線や雲ひとつない青空、山から見下ろす街の灯り……美しい風景に出会うと、この世界に生まれたことを感謝したくなるよ」
    「……素敵だと思います」
     とても彼らしいとイルマは思った。萌える若葉を閉じ込めたような瞳は、きっとたくさんの鮮烈な景色を映してきたのだろう。雄大な世界も、温かな人の営みも、そしてときには痛ましい戦禍も。そのすべてを糧にして生きているからこそ、アルフォンスはこんなにも優しいのに違いない。
    「イルマ。あなたは馬に乗れる?」
     尋ねられて、イルマは小さく首を横に振った。ロタール王国では女性が馬に乗る習慣はない。
     するとアルフォンスは「なら俺と一緒に相乗りしよう。色々な景色を見せてあげるよ」と身を乗り出した。それから「あなたが嫌じゃなければだけど」とはにかんで付け足した。
    「嫌ではありません。ぜひ、お願いします。アルフォンス様と共にたくさんの景色が見たいです」
     答えながら、なんて素晴らしい約束なんだろうとイルマは感激する。
     アルフォンスと共に見たい。平和な世界で美しい景色の数々を。
    「それはよかった。では約束だ、この先あなたにたくさんの景色を見せると」
     アルフォンスの言葉が嬉しくてイルマが「はい」と目を細めると、その隙をついて不意にチュッとキスをされた。
     驚いて瞬きを繰り返すイルマに、アルフォンスが頬を染めて微笑む。
    「あなたがあまりにも可愛く笑うから」
     それから手にしていたカップを置き、両手でイルマの頬を包んで唇を重ねる。ゆっくりと、柔らかに。
     熱い舌がイルマの瑞々しい唇を開いて入ってくる。小さな舌を見つけたアルフォンスはそこに二、三度自分の舌を押しつけてから離れた。互いのグリューワインの香りを分け合って去るように、まるで「これからよろしく」と挨拶をしにきたみたいだ。
     イルマは鼓動を高鳴らせ、閉じた瞼を開く。自分の頬が熱くなっていくのを感じた。
     アルフォンスはそんなイルマを見つめて、もう一度軽くキスを落とす。
    「その瞳……、結婚式のときもそうだった。あなたの潤んだ青い瞳に見つめられると、もっと口づけたくて我慢できなくなる」
     チュッ、チュッと唇を啄みながら、アルフォンスはイルマの体をベッドに優しく押し倒した。シーツの海にイルマの金色の髪が波打つ。
    「イルマ……。俺は両国の平和のためと思ってこの結婚を受け入れた。けど、今はあなたが妃になってくれてよかったと思っている。俺にはもったいないくらい、可愛い人だ」
     イルマの体を組み敷いたアルフォンスが、視線を絡ませて言う。口もとは弧を描いているが、瞳は真剣だ。ベッド脇のランプの灯りを映し込んで、ただイルマだけを見つめている。
     イルマは自分の顔立ちがキツいことを自覚している。長い睫毛を宿して目尻の上がった目と高い鼻は美人だとよく評されるが、可愛いとはあまり言われない。それなのにアルフォンスは今夜だけで二回も『可愛い』と言った。イルマは嬉しいよりも、なんだか恥ずかしくなってきてしまう。
    「か、可愛くなんて……」
     照れて顔を背けたイルマの頬にキスをし、アルフォンスは「ふふっ」と悪戯っぽく笑う。
    「あなたはとても可愛いよ」
     耳もとで吐息のような声で囁かれ、イルマの体がビクッと震える。
     おかしな反応をしてしまったとますます顔を赤くさせるイルマを見て、アルフォンスはそのまま小さな耳たぶを唇で食んだ。
    「あっ」
     イルマの体にゾクゾクとしたくすぐったさが走る。耳を食まれただけなのに、全身を羽根で撫でられたみたいだ。
     アルフォンスはイルマの耳を食んだり優しく舐めたりしながら、片手で寝間着のリボンをほどく。上質の薄絹でできた寝間着は、腰のリボンをほどくとガウンのように開く構造になっている。寝間着の前身頃を開いて捲れば、イルマの豊かな胸や細い腰が露わになった。
     染みひとつない白い肌も、くびれたウエストも、スラリとまっすぐに伸びた脚も、王女としての美しさと気品を徹底的に教育された賜物だ。この体型を維持するのは決して楽ではなかったけれど、アルフォンスに捧げられるなら本望だ。
    「綺麗だ……」
     体を起こし、イルマの体を見下ろしてアルフォンスが呟く。そしてウエストから腰にかけて優しく手のひらで撫でると眉尻を下げて笑った。
    「細いね。力を入れて抱きしめたら折れてしまいそうだ」
     そう言ってアルフォンスは自分のガウンとシャツを脱ぎ捨てた。彼は着痩せするタイプなのだろう、厚い胸板や太い二の腕は服を纏っているとき以上に逞しく見えた。イルマはつい彼の体に釘づけになってしまい、口もとを手で覆う。
    (すごい筋肉……。力いっぱい抱きしめられたら、私なんて本当にふたつに折れてしまいそう)
     男性の裸を見たのは初めてだ。しかしアルフォンスの体が人並み以上に男らしく逞しいことは、イルマにでもわかる。
    「俺ばかり触るんじゃ悪いから、ほら、あなたも触って」
     アルフォンスはそう言ってイルマの手を取り、自分の胸に押しあてる。きっと緊張をほぐそうとしてくれているのだろう。
     イルマはびっくりして一瞬手を引きそうになったが、温かい彼の肌の奥にトクトクと鼓動を感じ、そのまま手のひらをあて続けた。
    「心臓の音が聞こえます……」
    「うん。生きているからね」
     それはごく当然の、むしろロマンチックさのない返答だったのに、イルマの心に沁みた。一度死を経験しているからこそ、その重みがわかる。
    「私も……生きていますか?」
     そう言ってイルマはアルフォンスの手を取り自分の胸にそっとあてる。アルフォンスはしばらく真剣な顔で心音を窺っていたが、フッと小さく笑った。
    「あなたの胸は豊かだから、心臓の音が手のひらまで伝わらないみたいだ。けど、とても温かい」
     アルフォンスは手を引くと頭を屈めてイルマの胸の谷間に耳をあてた。
    「……これなら聞こえる。あなたの命も、ここで脈打っている」
     静かな声で告げて、アルフォンスは顔を傾けるとそのまま胸の柔肉に口づけた。強く吸い、赤い痕をひとつ残してからさらに愛撫を続ける。
    「ん……っ」
     くすぐったさにイルマは身悶える。彼の愛撫が胸の頂点に達するといっそう強いくすぐったさに襲われ、たまらず身を捩った。
    「逃げては駄目だ。逃げないで」
     アルフォンスはイルマの体を抱き竦めながら、乳頭に口づける。唇で食み、舌で舐め転がし、乳暈ごと吸った。イルマはくすぐったさの中になんとも言えない疼きを感じて、我知らず熱い息を零す。
     だんだんと体が熱を帯び、ほんのり桜色を帯びてくる。イルマのうぶな色をした乳頭は彼の唾液に濡れて勃ち上がり、白い双丘の美しさに淫靡さを添えている。
    「……ああ。とてもいい顔だ」
     頬を染め呼吸を乱すイルマを見つめて、アルフォンスがボソリと零す。自分は今いったいどんな顔をしているのだろうと、イルマの羞恥がますます募った。
     アルフォンスはイルマの体を優しく手で撫で、口づけていった。丁寧でとても優しいそれは、やがて彼の興奮を表すように貪欲なものに変わっていく。
    「んっ、んん……」
     柔らかな下腹に、太腿に、アルフォンスはたくさんの赤い痕を残した。イルマの白皙の肌に、薔薇の花びらが散りばめられるように。
     彼に腿を摑まれ脚を開かされ、イルマは体を強張らせた。乙女の純潔、秘めたる場所。女性として大切な恥ずべき場所であると共に、イルマにとっては祖国とこの国の未来を守るためにアルフォンスを受け入れる清らかな砦だ。
    「ああ、アルフォンス様……」
     脚を閉じたくなってしまう羞恥をこらえ、イルマは彼にすべてを委ねる。
     十八年間、他の誰もふれることを許されなかった秘所は、見るからに穢れのない色をしていた。薄桃色の花のようなそこは慎ましく閉じていて、けれどアルフォンスが舌を這わすと抵抗なく受け入れた。
    「あぁっ……! は、あぁっ」
     イルマの嬌声が変わった。今までくすぐったさをこらえるような声だったのが、上擦った高いものになる。それを聞いたアルフォンスの情欲が滾り、脚衣越しの雄が硬く上を向く。
     閉じた花弁は花開くように柔らかく舌を迎え入れ、彼の舌が硬い粒を見つけると蜜を滲ませた。イルマの肌はしっとりと汗ばみ、初めて知る快感を恐れるように手がシーツを握りしめている。
     アルフォンスは潤んできた孔に中指をゆっくり挿し入れる。異物が入ってきた感触に中がきつく締まったが、時間をかけて抽挿し淫芽に口づけると徐々に力が抜けてきた。
    「あ……あ……」
     吐息交じりの嬌声を零すイルマの中は、熱く潤んでいて指を柔らかく締めつける。その感触にたまらなくなったアルフォンスは指を引き抜くと、自分の脚衣を脱ぎ捨ててイルマの脚の間に体を収めた。
    「すまない。本当はもっと時間をかけて慣らしてあげたかったけど……俺は自分で思うより理性が脆いみたいだ」
     先端から雫を零す肉塊が、イルマの秘所に押しあてられる。

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