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あらすじ
今夜は夫婦として始まりの夜だ
王太子レナードの飼い猫を保護したことがきっかけで彼に縁談避けのニセの婚約者となるように頼まれたヴァイオレット。美しく聡明なレナードに優しくされ、どんどん彼を好きになってしまう。「今日の君は昨日の君よりずっと可愛い」最後の思い出に抱いてほしいと願う彼女を、レナードは優しく愛し本当の婚約者になってほしいとささやきかけるが!?
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キャラクター紹介
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ヴァイオレット
王女の侍女を務める伯爵令嬢。家族と縁が薄い。 -
レナード
フェイザー王国の王太子。二十四歳。
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試し読み
「ヴァイオレット、目を逸らさないで」
「……っ」
サファイアブルーとすみれ色の視線が宙で音もなく絡み合う。「ヴァイオレット、もう一度私を好きだと言ってくれるかい」
甘い囁きに促され、頬を更に赤くしながら、「……はい」とやっとの思いで頷く。
「で、殿下だけをお慕いしています……」
ヴァイオレットは二度目の愛の告白をした直後、レナードの双眸に欲望の炎が点ったのを確かに見た。
再び続けざまに二度深く口付けられ、肺が限界になったところで、低く艶やかな声がヴァイオレットの耳元を擽る。
「ヴァイオレット、先ほど君は私に抱いてほしいと言ったね。本当に構わないのかい?」
「……っ」
確かにレナードの態度を誤解し。「抱いてくれ」と訴えた。だが、気持ちを確かめ合い、不安が解消されると、途端になんとはしたない真似をしてしまったのかと恥ずかしくなる。
また、未知の世界への恐れもあった。慄いてしまった。口付けだけでも頭がくらくらししているのに、この上抱かれればどうなってしまうのか。
なんと答えたものかと戸惑っていたのだが、「私も君を抱きたい」と背を撫でられ、正直に「怖い」と打ち明けてしまえば、今度こそ嫌われるのではないかと怯えた。
「か、構いません……」
「本当に……?」
「ほ、本当です」
直後に、背と膝の下に手を回され、軽々と抱き上げられた。
「きゃっ……!」
バランスを取ろうとして、思わずレナードの首に手を回す。
レナードは部屋を横切り、ヴァイオレットをそっとベッドの上に下ろした。手首をシーツの上に縫い止め、すみれ色の瞳を覗き込む。
「私は君が思うほど紳士ではない。構わないと言われて、途中で止める気はない。……それでもいいかい?」
「い、いいです……」
今日を限りに純潔を失うよりも、レナードの愛情を失う方が怖くなっていた。ヴァイオレットはそれほど誰かと愛し合うことに飢えていた。覚悟を決めて小さく頷く。
「だ、抱いて、ください……。殿下でなければ嫌なんです」
サファイアブルーの双眸がふと細められる。
「ヴァイオレット、君は殺し文句がうまいね」
長い指がボタンに掛けられる。
室内用のドレスは寛ぐためのものなので簡素なもので、下着はコルセットで締め付けずにシュミーズのみである。
ドレスを脱がされ、シュミーズを剥ぎ取られ、放り投げられた二着が絨毯の上でパサリと音を立てる。それだけでも羞恥心で死にそうな気分だったのだが、生まれたままの姿になり、レナードの視線に晒されると、肌寒いはずなのに体が一気に熱くなるのを感じた。
(や、やだ。恥ずかしい……。怖い……)
ヴァイオレットは自分の体が異性から見て、どう映るのかを知らなかった。醜くはないかと不安になる。
まだ男を知らない汚れのないその肉体は白く滑らかで、まっさらな新雪に足を踏み入れたくなるような、支配欲をかき立てるものなのだとは知るはずもなかった。
柔らかな曲線が首筋から爪先まで続いている。華奢な肢体に似合わぬ大きく実った二つの乳房は、横たわっても弾力を維持し扇情的にふるふると揺れ、頂には唇と同じく可愛らしい紅水晶色の蕾があった。腰はコルセットなどなくてもくっきりと括れ、まろやかな臀部からすらりと伸びた足は細く長い。
胸を、腹を、腰を、足を、レナードの視線が余すところなく辿る。
「ヴァイオレット、女神のように綺麗だ」
「……っ」
ヴァイオレットは涙目で目を逸らした。
「そ、そんなに見ないでください……」
「悪いが、そのお願いは聞けないな」
顎を摘ままれ上向かされ口付けられる。
「んっ……」
舌を絡め取られまたもや呼吸困難に陥りそうになる。更に乳房の片側をやわやわと揉み込まれ、ビクリと身を震わせたのだが、伸し掛かられたことで、それ以上動けなくなってしまった。
「ん……ぅ。……っ」
乳房を中心に体に熱が広まっていく。蕾を指先で摘ままれ、軽く捻られると、喉の奥から声にならない声が上がりそうになった。
だが、唇を塞がれているのでどうにもならない。
「……っ。……っ。……ぅ」
それからどれだけの時が過ぎたのだろうか。長い口付けからようやく解放され、大きく息を吸い込んだのだが、間もなく「ひゃっ」と上ずった声を上げてしまった。
レナードが胸の谷間に顔を埋めてきたからだ。夜の空気に冷やされたさらさらした金髪の感触に、白く滑らかな肌がざっと粟立った。
「で、殿下、何をっ……」
レナードは何も答えずに乳房を貪った。
歯で軽く噛み跡をつけられたかと思うと、続いて舌で味わうように舐められる。雪山のように白かった乳房の一つが、続けざまの刺激に徐々に薄紅色に染まり、その上強く吸われて口付けの跡を刻み込まれていった。
「あっ……んんっ……やっ」
このまま食べられてしまうのではないか――そう慄いた頃に右の頂を口に含まれ、赤ん坊さながらに音を立てて吸われて、背筋に繰り返し震えが走る。
「あっ……殿下……」
思わず二の腕を掴み、押し返そうとしたのだが、力で叶うはずもない。必死の抵抗も呆気なく両手首をシーツに今一度縫い止められた。
「やっ……そんな……。ひゃあっ……あっ」
熱が吸われる乳房に集中し、レナードに吸い出されるような感覚を覚える。吸う音がしっかり耳に聞こえるのも、ヴァイオレットの羞恥心を更に刺激した。
右の乳房を繰り返し吸われ、左の乳房の頂を指先で嬲られ、与えられる強烈な刺激に、ろくにものを考えられなくなってしまう。なのに、喘ぎ声は勝手に出てしまうのだ。
「あっ……やっ……で、殿下ぁ……」
(こんなの……こんなの……知らない……こんなの……)
「あっ……やんっ……ひゃあっ」
レナードがようやく顔を上げた時には、ヴァイオレットはすでにぐったりとしていた。
所有の証が無数に散り、頂がぬらぬら光る乳房を擦りながら、レナードが「君は随分と敏感なんだね」と笑う。
「まだ胸だけなのにこんなに乱れて……」
「……っ」
いやらしい女だと言われた気がして、それ以上レナードの目を見ていられず、目を背けるしかなかった。
「ヴァイオレット、気持ちいいからと言って恥ずかしがることないんだよ。ごく自然なことなのだから」
「……」
レナードは何も言わぬヴァイオレットを見下ろしながら、上着のボタンを片手で外し、続いてシャツを脱ぎ捨てた。
厚い胸板と鍛え抜かれた二の腕、引き締まって割れた腹部が露わになる。男性の体を見るのは初めてだったヴァイオレットは、自分とはあまりに違う骨格と筋肉、そして逞しさに目を見張り、再び羞恥心に真っ赤になって目を逸らした。
自分の裸身を見られるのも恥ずかしいが、レナードの一糸纏わぬ姿を見るのは、もっと恥ずかしくて瞼をかたく閉じる。
「……とは言っても、照れ屋の君には難しいのかも知れないね。なら、恥ずかしいことすら忘れさせてあげよう。それまでそうして目を閉じているといい」
ベッドがぎしりと軋む音が聞こえ、レナードが再び伸し掛かるのを感じる。肌と肌での生身での触れ合いが、まだ目覚めきっていないヴァイオレットの官能に、小さな火を灯した。
「あ……」
レナードの手が胸から腹へ、腹から腿へと辿り、すらりと白い足の狭間へと滑り込む。
「……っ」
思わず足に力を込めて閉じようとしたが、レナードはそれを許さなかった。
「あんっ……」
二本の指が淡い茂みを掻き分け、ヴァイオレットの花園へ辿り着く。
花唇を下から上へ繰り返し撫で上げられ、次いで円を描くように愛撫されると、紅水晶色の唇から「あっ」と羞恥心からではない声が漏れ出た。
(な、何、これ……。足の間とお腹の奥が……熱い……)
腹の奥がきゅっと締まるような感覚がして、熱が蜜となってじわりと滲み出す。続いて花芽をぐっと押され、軽く摘まんで揺すぶられると、声にならない喘ぎ声とともに、更なる蜜がレナードの指を濡らした。
「あっ……あっ……やぁん」
嫌々と首を横に振ってしまう。
「少しも嫌には聞こえないよ、ヴァイオレット」
言葉とともに指の一本が、緩み始めた蜜口に入り込んだ。
「あっ……!」
今までとは比べものにならない衝撃に、官能でほのかな薄紅色に染まった肢体が一気に引き攣る。
圧迫感に背を仰け反らせ、爪先がピンと伸びた。
「ヴァイオレット、辛いのかい? ほら、体の力を抜いて」
「……っ」
と言われも、もう自分で自分の体が思い通りにならなくなっている。荒い息を吐き出しながらただ感じることしかできない。
「ごめ……なさ……い。無理、ですぅ……」
喋るのもやっとだった。
「……そうか。無理なら仕方がないね」
レナードの声はこんな時にもかかわらず、どこか楽しげな色を帯びていた。
「なら、私に任せておくといい」
骨張った指が更にヴァイオレットの中に深く侵入する。何を探っているのか内壁のあちらこちらを弄っている。
「あ、あ、あ……」
蜜に濡れ、刺激に蠢く内壁のある箇所を指先で優しく撫で、軽く掻くと細い体がベッドの上で跳ねた。
「やんっ……」
「ああ、君が感じるところはここか」
その箇所を執拗に押され、体がビクビクと跳ねる。蜜口から腹の奥まで、雷が走ったのかと思った。
「あんっ……あっ……あっ……殿下ぁ……」
朝露のように澄んだ涙が、白い頬に跡をつけて零れ落ちる。唇の端からは涎が滲み出たが、汚いと思う余裕などもうなかった。
腹の奥が再びきゅっと締まり、蜜が滾々と湧き出てくるのを感じる。その熱で腰が焼け焦げてしまいそうだった。
「指だけでこんなに感じるなんて、ヴァイオレット、これから先に君は耐えられるだろうか?」
「……」
全身の感覚が足の狭間に集中して、レナードの声も耳に届かない。だから、指がずるりと引き抜かれ、続いて灼熱の欲望が宛がわれた時にも、押し入られるまで何が起こったのか理解できなかった。
「えっ……?」
指よりも遙かに大きく、質量が桁違いの何かが、ゆっくりと隘路を押し広げていく。
「あっ……」
指の圧迫感などもはや思い出せなかった。
「ああっ……」
内壁の抵抗が大きかったのだろうか。レナードは息を吐き出し、ヴァイオレットの両脇に手を突くと、ぐっと力を込めて腰を突き出した。
「……っ!」
同時に何かがぶつりと引き千切られた感覚がした。
「……はっ」
体を熱せられた杭で貫かれたのではないか――鈍い痛みと激しい圧迫感に目を見開く。
「……あ」
腹の奥にまでレナードの灼熱が満ち満ちている。その生々しさにようやく純潔を失ったのだと思い知った。
「あ、あ……」
(い、痛い……)
覆い被さるレナードを見上げながら、しばし呆然としていたのだが、やがて痛みだけからではない、涙が頬に零れ落ちるのを感じた。なんの涙なのかはヴァイオレット自身にもわからなかった。
「ヴァイオレット……」
「……あっ」
「痛いかい?」
「……」
涙目で小さくこくこくと頷く。
「そうか……」
レナードは白い頬に零れ落ちた涙を吸うと、紅水晶色の唇に優しく口付けた。
「だが、済まない。止めてやれそうにははない。……君は可愛すぎる」
衝撃に震える細腰を掴んで体を軽く揺すぶる。
「あっ……」
繋がる箇所からぐちゅぐちゅと嫌らしい音がした。耳でだけではなく体の中でも感じるその響きに、快感で吹っ飛んだはずの羞恥心が舞い戻ってくる。
「あっ……あっ……あっ……殿下ぁ……」 -
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