書籍紹介
あなたに囚われて~海運王の花嫁~
あなたに囚われて~海運王の花嫁~
ISBN:978-4-596-58059-7
ページ:290
発売日:2017年7月15日
定価:本体590円+税
  • あらすじ

    傲慢な海運王×傷心女子

    「私が買った花嫁の身体を見せてもらおうか」身に覚えのない醜聞から世間の晒し者にされた愛里は、実家で引きこもるように暮らしていたが、〈二十一世紀の海運王〉と呼ばれる宇佐美漣から名指しで求婚され、受けることに。怪我の療養のため所有する島で暮らす漣は相当な人嫌いで、初夜の褥で蔑むような言葉で妻としての義務を果たすよう命じられ……。(ヴァニラ文庫ミエル)

  • キャラクター紹介
    • heroine_VBL109

      二階堂愛里

      没落した家を救うため、漣の元へ嫁ぐことに。学生時代の出来事がきっかけで、男性不信になっている。

    • hero_VBL109

      宇佐美 漣

      宇佐美海運のCEO。数年前に事故で大怪我を負い歩行困難に。人嫌いで所有する島で隠遁生活を送る。

  • 試し読み

    「キス? それはどこにして欲しいんだ?」
    「あの……こ、ここ、に?」
    「ここ?」
     漣は、彼女の返事を繰り返すように呟く。そして、胸に触れていた手をゆっくりと下に向かわせたのだった。
     ウエスト付近にたわんだベビードールを通り過ぎ、もう一枚の下着にたどり着く。腰の辺りで彼の手がひらひらと動き、タンガの結び目をスルッとほどいた。
    「まっ……待って、あ……っ」
     もともと生地が少なく、かろうじて前を隠す程度だった。片方の紐がほどかれてしまったら、下着としての用途は何も果たせないことになる。
     加えて、今の愛里の格好は、彼に体重をかけないように、と少し脚を開いていた。
     それはまるで、触れてくれと言わんばかりの無防備さだ。
     愛里は腰をくねらせ、せめて脚を閉じようとしたが、それより早く、漣の手が腰に回され……彼の膝の上に乗せられたのである。
     車椅子に座ったまま、愛里をひょいと抱え上げるのだから、いったいどれほどの腕力をしているのだろう。
     向かい合っていたはずが、あっという間に、彼に背中を向けた格好になっていた。
    「漣さ、ん……上に、乗ったままじゃ、重いか、ら……ぁっ」
     外れかけたタンガの隙間から、漣の手が滑り込む。
    「別に重くはないが……ああ、脚は開いたままだ」
     機先を制して命令され、閉じることができなくなった。
     彼は愛里の耳たぶを食むように咥えたあと、
    「私が目にしたのと、同じシチュエーションだな。あのときと同じ、甘い声で啼いてみなさい」
     動画の中にこんなシーンはあっただろうか?
     必死に考えるが……この五年間、忘れようとしていたものを、簡単に思い出せるはずがなかった。
     愛里は無意識のまま首を左右に振る。
    「もう、ダメ、こんなの……恥ずかしい」
     降参の意味も込めて、口にした言葉だった。
     ところが、漣は愉快そうに声を立てて笑い出す。
    「ほう、よく覚えているじゃないか。昔の動画は白々しいまでのセリフ回しだったが、この五年でさらに学んだようだ。今の君は、本当に恥ずかしそうに聞こえる」
     彼の言葉で、“愛里”も『恥ずかしい』と口にしたことがわかった。
    (違う、のに。でも、これで、わたしと“愛里”は……彼の中で同一人物になってしまったんだわ)
     “愛里”のフリをしているのだから、喜ぶべき偶然だろう。
     だが、後悔で胸が痛い。思わず泣きそうになり、愛里は唇を噛みしめた。
     彼の左手は荒々しい仕草で茂みを掻き分けていく。愛里が誰にも許したことのない場所へと突き進み、そうと知らずに激しくまさぐり始めた。
     乱暴なまでの愛撫で、彼は奥に潜む無垢な宝石を露わにしていく。
     そして、剥き出しになった淫芽を抓まれたとき、愛里は悲鳴を上げそうになった。
    「……んん……くぅ」
     ここで叫び声を上げるわけにはいかない。
     必死に声を殺し、口元を手で覆った。
    「どうした? 私の触れ方では気持ちよくないか?」
     彼の声は愛里の反応に不満そうだ。
     言うなり、腰を支えていた右手を離した。そのまま胸を鷲掴みにして、さっきとは打って変わって、激しく揉みしだく。
     苛立ちをぶつけるように、彼女の秘所もまさぐり続け――。
     漣の長い指先は誰も入り込んだことのない秘窟を探り当てるなり、奥へと侵入を果たしたのだった。
    「あ……ぁぅっ!」
     胎内に異物を感じ、息を止めて涙を堪える。
     こんなはずではなかった。こんなつもりでもなかった。この島に来るまでは、怪我を負った年配の男性を介護するつもりで、妻になることを承諾しただけだった。
     何度もよぎったその思いに、胸がいっぱいになる。
     直後、躰から漣の指が引き抜かれた。
    「芝居も過ぎると興ざめだ」

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