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試し読み
「まって、だめ、……ゃ、やあ、もっ……」
なにかくる。
もう彼の指を濡らしているのは、彼の唾液じゃなくアレーナが零す蜜だった。
ひっかかりもなく滑るその指先に入り口を擽られて、アレーナはその心地よさに半泣きになっていた。
「痛い?」
「ちが――」
「では、やめろ、と?」
「あ、……」
アレーナはそれに、迷った。
涙を散らしながら見開いた瞳に、ローデリックが映る。彼は思ったよりずっと間近からアレーナを見つめていた。
(あ、ぁ……)
こわい。
その黒い瞳の奥にちらついた興奮の影に、少女としての本能が怯える。
彼の目には確かに、アレーナの目が涙に濡れ、唇が怯えるように震えていたのが映ったはずだ。
だけど、アレーナが口を開く前に、彼はその指を前に滑らせた。
「ああッ! ……あ、んっんんッ!」
まるく膨らんだ陰核の上を、指が滑る。それまでのじくじくとした、焦らしと紙一重の心地よさと違い、その感覚はまっすぐ快感となって広がった。
触れるか、触れないか。
彼の指先で簡単に押しつぶせる、それくらいの大きさしかない。そこを執拗にしごかれる。撫でるというより擦られて、アレーナは無理矢押しつけられるような快感から逃れようと身体を丸めた。
でも、駄目だ。
「だめ、あ、そこ、あぁ! や、いや」
仰け反って、腰を振って。少しでも指先から逃れたかった。
上に逃げようと頑張ったけれど、肘を立てようにも、彼の指先一つでじん、と響くその快感に負けて崩れてしまう。
身を捩れば指先はほんの少し乱暴になった。
(ああ、違う。そうじゃなくて)
怖いと思ったけど、逃げ出すつもりはなかった。だって今、最後までしておかなければ、きっとお互いにタイミングが掴めなくなってしまう。
「ローデ……ッ、ひ、――んんっ!」
前の膨らみを擦られながら、ひくつく入り口を弄られている。
敏感な入り口を掻き回し、解しきった指先が奥に潜り込んでいく。ぞくん、と腰が震えた。期待にだ。だって、ずっと奥が疼いて仕方なかった。
(だめ、だめ……)
変な声が零れそうで、両手で口を押さえたけど。
「ひゃ、あ、まっ……ひん、あ、ぁ、――ッ」
「随分、善さそうだ」
その彼の声に耳が痺れる。
指が探るように奥を掻くたび、いやらしい水音が響いた。くち、ぐじゅ、その微かな音を聞きたくなくて、アレーナは顔を伏せる。
膨らみを転がす指は止まらなくて、もう堪えきれない。
ぞくぞくとした感覚が甘く腰を重たくして、そのまま流されてしまえと囁くようだった。だけどそれはいやだ。
でも。
アレーナの中を押し広げるように滑る指が、そこ触れた瞬間。
まず声が零れて、その甘さに驚いて腰を退こうとして、でも心得たようにローデリックの指先は離れてくれなくて。
駄目だ、と思って顔を上げたのに、ローデリックの目を見てわかった。彼は許してくれない。
「だ、め……――」
「何故?」
彼の指が、もう戻れないところまでアレーナの身体を追い詰める。心地よくて、気持ち良くて、果てが見えない。
「だめ、がまんできな……、ぁ、ん! んん、ぁ……あぁッ」
びくん、びくん、と身体が跳ねる。
初めての絶頂なのに、その間も身体はローデリックが与える刺激を喜んで味わうのがわかった。彼の指にすがりついて震えている。
その指が引き抜かれる。
「あ……」
脱力した身体を抱き上げられて、すべて脱がされた。
見ないで欲しい。その視線が滑るだけで、身体が肌を辿られる感触を思い出してしまう。
ふ、とローデリックが笑う。
「可愛いな」
アレーナは驚いて目を瞬いた。そんなことを今、言われるとは思わなくて。
ガウンを床の上に落としたローデリックが伸し掛かってくる。
「アレーナ」
耳に囁きが触れる。
身を竦めれば含み笑いと、また。
「君は可愛い」
「や……ぅ」
「ここを弄られて、気持ち良かった?」
彼の指がつーと肌を滑って、囁くと同時に陰部に触れた。
少し痺れたみたいに腫れぼったい、熱を含むそこをまた弄られて、弄られながら囁かれて、間近から覗き込んでくる瞳にどう言葉を返せば良いかわからない。
「や。ローデリック、様」
「俺の指は好きじゃない、と?」
「違、なに――」
「教えてくれないと、決められない」
何をだろう。
どうして彼はこんなに熱っぽい目で、でもどこか苦しそうにアレーナを見ているのだろう。
指先で表面を軽く撫でるような、そんな刺激じゃもう足りない。
もっと奥を弄って欲しくて、はしたなく脚を開いてしまいそうになる。さっき嫌だと言っても止めてくれなかった敏感な尖りに指を当てて欲しい。
もっと気持ち良くなりたい。
それは、たぶん目の前のローデリックも同じだった。
(好きにしていいのに……)
だってアレーナは、ローデリックの妻なのだ。
もう全部彼の物だ。ふ、と頭に落ちてきた事実。その当たり前の理屈を自覚した途端、アレーナの身体は燃えるように熱くなった。
「ローデリック、さま。あの、もっと――」
触れて欲しい。
感情の高ぶりに涙が浮かぶ。自尊心がくしゃりと丸められるみたいだ。荒れ狂う羞恥の嵐に今にも死んでしまいそうだった。
でも、今までで一番下肢が疼いていた。
身体を起こしたローデリックに脚を割られる。
「濡れて、ひくついてる。いやらしいね」
「や、だって」
そこに、彼の先端が当てられる。
滑りを纏わせるように擦りつけられるそれが、入り口にかかるたび、ぞくぞくと背筋をなにかが駆け上がった。先に進んで欲しい。気持ちが限界だからか、そうアレーナの身体が囁いているのか、わからないアレーナの唇に彼が触れた。
軽く口付けられる。
は、と解けた唇から息が漏れた。
間近で見つめ合えば、感情がせり上がってくる。
「あ、……ぁ」
胸の先端から、じん、と甘い刺激が走った。
彼がそこを指先で弄りながら、アレーナを見ていた。その瞬間、どうしてそう思ったかわからない。
「やだ、やめないで。最後までして」 -
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