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あらすじ
茶道家元の苦くて甘い独占欲
編集者の穂波は、茶道の取材を通して知り合った家元候補の片岡と接するうち、その人柄に惹かれてしまう。ダメもとで告白するも返事はNO。ところが、取引先の人に口説かれていた穂波の前に片岡が現れ、そのままホテルに! 「邪魔してしまいましたか?」彼の淫らな指先や口で、初めての快感を与えられるが、彼の気持ちがわからない穂波は……!?
(ヴァニラ文庫ミエル)
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試し読み
片岡は、穂波のシャツの釦を外し始めた。まだ日が高く、室内は煌々と明るい。そんな時間から求められることに、歓びよりも羞恥が勝った。
「まっ、待って……」
「待てません」
頑なな返事をどうにかしようと、穂波は頭を働かせた。
「あ、あの……。ご家族の方がいらっしゃるでしょう? そんなときにとてもじゃないですけど……」
「母なら今は外出しています」
にべもなく言い返されたときには、既に下着を外されて、穂波の上半身は裸になっていた。裸の胸に、片岡の手が触れる。文机に腰掛けているせいで、ちょうど胸元に彼の顔がくるのが、いたたまれないほど恥ずかしかった。
「あ……あんまり見ないで」
「それは無理な相談でしょう」
さらりと言い放たれたときには、スカートのホックを外されていた。その後も、穂波は何か言うたびに打ち負かされて、気づいたときには一糸まとわぬ姿になっていた。
「……け、恵一さん。この格好で机の上にいるのは……ちょっと……」
「全く問題ありません」
答える片岡の方は、着衣に乱れひとつない。その澄ました顔が、なぜだか無性に腹立たしく感じられた。穂波はせめて身体を隠そうと、身を縮め、胸を覆う。その様を見た彼が笑う。
「この距離で隠したって仕様がないでしょうに……」
片岡は穂波の両腕を取ると、再び口づけてきた。まるであやすように触れるだけのキスを落とされて、強張っていた身体から力が抜ける。
「あっ……」
片岡の掌が、穂波の胸を包み込んだ。そのままやわやわと捏ねられて、先端がほんのりと色づく。そこをどうされると気持ちがいいのか、穂波はもう知っていた。
片岡は、色づいた蕾を口に含んだ。舌で舐め転がされると、堪らない喜悦が背筋を這い上る。もう片方の膨らみも、掌で転がされて自在に形を変えた。
やだ……気持ちいい……。
覚えたばかりの官能が、瞬く間に身体に火をつけていく。身体の芯が疼くまで、時間はそうかからなかった。気がつくと、片岡の頭を胸に抱いていた。さらりとした髪を思うさま掻き回して、悦楽に耐える。
「あっ……うっ……」
声を押し殺していると、顎を掴まれた。聴かせろ、ということらしい。顎から離れた手は、鎖骨を滑り、下へ下へと身体の線を撫で下ろしていく。その先にあるのは、すっかり潤った蜜壺だ。そんな場所が濡れていることを知られるのは、いつまで経っても慣れない。
くちゅり……。と湿った音がして、穂波は羞恥から身を捩る。
「やっ……恵一さん、恥ずかし……」
「穂波はこんなことまで覚えが早いんですね」
まるで教室のときのように平静に言うと、片岡は蜜壺に指を滑り込ませた。いきなり二本突き入れられても、穂波の胎内は貪欲に蠕動し、快楽を得ようとする。
「あっ……んっ……いや……」
「嫌? ではないでしょう。私の指をこんなにも喰い締めて離さない」
穂波はまだ、全身を包み込む快楽を制御する術を持たない。片岡の指が弱い部分を掠めるたびに、口からはひっきりなしに甘い声が漏れた。
「そろそろ頃合いでしょうか」
片岡はそう言うと、穂波の両腿を開いた。閉じようと思っても、しっかり抑え込まれていて、動かない。彼はそのまま、秘部に顔を近づけた。数瞬後、視界に飛び込んできたのは、目を覆いたくなるような光景だった。
ぴちゃり……。
蜜源に、彼の舌が触れている。溢れる蜜を啜るように舐められて、穂波は卒倒しそうになった。
「あっ……恵一さん……そんな……」
穂波は衝撃のあまり、嫌々と首を振る。そんな場所に口をつけられていることが、にわかには信じ難かった。たまらず目を閉じたが、腿に当たるしなやかな髪の感触が、そこに片岡の顔があることを如実に物語る。
「ん……穂波は、こんなところまで甘い……」
「甘くなんかない……。い、意地悪……」
片岡は、花弁の表面を辿るばかりか、花筒の中にまで舌を差し入れた。ざらりとした感触に、肌が粟立つ。
「んひゃっ……あっ……んんぅっ……」
粘膜を擦られる感触に、敏感な内壁が収縮するのが、自分でもわかった。片岡は穂波の身体から力が抜けたのを見て取ると、片手を腿から外し、膨らみきった花芯を爪弾いた。鮮烈すぎる刺激に、身体が浮き上がるような快楽が押し寄せる。
「あ……ぁあっ! ぁっ!」
どくどくと鼓動が跳ねて、額には汗が浮いた。絶頂を迎えたばかりの身体は、ふわふわと軽くもあり、土くれのように重たくもある。たった今、走り終えたばかりのような浅い呼吸を繰り返していると、奥から溢れた蜜を舐められた。
「上手にイけましたね」
片岡はそう言いながらも、秘部から顔を上げなかった。丹念に舐めつくされた花園はすっかり解れて、彼を迎え入れる準備ができているのに、まるで甘露を味わうように執拗な愛撫は続く。
「け……恵一さん。も、もう……」
それ以上は、言えなかった。言わずとも察してほしいと、穂波は顔を赤らめる。下腹からは、片岡が薄く笑う気配がした。彼は、手早く着衣を脱ぐと、身支度を整えた。いつもながら、まるでこうと決めた所作があるかのように無駄のない動きだ。
片岡は胡坐をかくと、穂波を文机から降ろし、向かい合わせに座る形で自身を飲み込ませた。圧倒的な質量が、まだ狭隘な蜜道を穿っていく。
「ひぁっ……あ……」
十分に慣らされていたとはいえ、最奥まで貫かれる感触に、思わず身震いした。
「……奥まで、届きましたよ」
片岡はそう言ってからも、自身が穂波に馴染むまで、十分な時間を取ってくれた。彼もまた息を詰めているところをみると、気持ちがいいのかもしれない。
「恵一さん……ちゃんと、気持ちいい?」
思わず訊いてしまったのは、自信がなかったからかもしれない。穂波が片岡の顔色を覗っていると、彼は静かに口を開いた。
「そうでなかったら、あなたにこんなことはしませんよ」
片岡の声は心なしか掠れていて、彼もまた感じていることを物語っていた。その答えに安堵すると、身体からも余計な力が抜けた。それが合図だったかのように、片岡が動き出す。規則的な動きを繰り返されると、身体の奥から、新たな快感が湧いてきた。
「あっ……んっ……気持ち……いい……」
穂波の言葉に、片岡が喉の奥で笑う。
「中でも、感じるようになってきましたね。いい傾向です」
どのくらいそうしていただろうか。まるで心地いい波の中で、揺蕩っているようだった。
幸せ……。
月並みな言葉かもしれないが、素直にそう思う。片岡は、穂波がまだ奥で感じにくいことを考えて、浅いところを刺激してくれる。その優しさが胸に沁みた。
「恵一さん……来て……?」
穂波が言うと、片岡が微かに息を飲む気配がした。
「……仕様のない人ですね、あなたは」
やがて、片岡が腰遣いを早めると、二人は同時に果てを迎えたのだった。 -
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