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あらすじ
逃がすものか。お前は今から、抱かれるんだ
憧れの公爵様は、前世の推しキャラ激似でときめいて!?侯爵令嬢ナディアは過去の推しに激似の美貌の公爵、ライナルトを目にして前世を思い出し、彼を今世の推しとして観察し楽しんでいた。ある日街で変装していたライナルトを見つけた彼女は、面白がった彼に諜報活動に協力させられ求婚されてしまう。「煽るな。手加減してやれなくなる」からかいつつ溺愛してくるライナルトに翻弄されるナディアは!?
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キャラクター紹介
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ナディア
前世で乙女ゲームや少女漫画を嗜んでいた記憶を持つ。人の顔の特徴や匂いを覚えておく能力があり、絵がうまい。 -
ライナルト
シュバルツアール公爵。“おもしれー女”であるナディアに惚れる。王命を受けて暗躍する家系の人間。
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試し読み
「お前……泣いてるのか? 何で?」
気配だけでわかったのか、ライナルトは慌てたように急いで距離を詰めてきた。逃げる間もなく、寝台に腰を下ろされてしまう。
「婚約が嬉しくて泣いてる……わけじゃ、ないんだよな」
「違うってわかってるから来たのでしょう? ……そんなことしなくても逃げないから、私に触らないでください。あなたの策略通り結婚してあなたの手駒になる。それでいいでしょ?」
「……っ」
薄暗がりの中、ライナルトが傷ついたのがわかった。なぜ彼が傷つくのかわからなくて、ナディアは苛立つ。
「……お前は、私のことが好きなのだと思っていたんだが」
たっぷりとした沈黙のあと、絞り出すみたいにライナルトは言う。それを聞いて、ナディアの目からまた涙が溢れた。
「自分のことを好きな女には、何をしてもいいと思っていたんですか? でも残念ですが、私の好きはそういった類のものではありません。あなたのことを見ていたかっただけです」
これがいわゆるガチ恋だったらもっと楽だったのかもしれないなと、言いながら思った。推しのことが好きで、推しと付き合いたいと思っていたならば、承認されただけできっと舞い上がってしまうし、婚約なんて、結婚なんて、夢が叶ったみたいなものだろう。
だが、ナディアは違う。少なくとも、こんなことになるのを望んでなんかいなかった。悲しくなるくらいなら、一生遠くで見ていたかったと思っている。
「それは俗に私たちが言う恋愛感情とは何が違うんだ? お前のご両親も、お前は部屋に肖像画を飾るほど私のことが好きだったと言っていたが……」
「見ているだけでよかったの! そういう感情があるんです……あなたにはわからないでしょうけれど」
ライナルトがなぜ傷ついた物言いをするのかがわからなくて、ナディアは一層泣けてきた。自分も騙してくれたならよかったのにと思ったが、きっとうまく騙されることもできないだろうと気づいてしまい、嫌で、悔しくて、胸が苦しくなった。
「私は、お前を知るたびどんどん、お前が欲しくなったがな」
胸の内を吐露するように発せられた言葉に、ナディアはすぐに返事ができなかった。それでも、ライナルトは続ける。
「怪しげな小娘だと思って調べてみたら、私のことが好きらしいとわかった。私をモデルにした小説や絵を描き、それを友人たちと共有しているという。そのくせ、私と知り合っても舞い上がらない。他人に言い触らして優越感に浸ることもない。それどころか、私から逃げようとした。……逃したくなくてこんな強硬手段に出たが、私の自惚れだったみたいだな」
ライナルトはまるでナディアのことが好きで、気持ちを弄ばれたかのようなことを言う。
騙されないぞと思うのに、それを聞いて胸が高鳴ってしまっていた。あの仮面舞踏会の夜に傷ついたときに気づくべきだったのだが、どうやらナディアは彼のことが好きらしい。
推しではなく、ひとりの男性として。
その好きな男性が今、目の前で愛の告白じみたことをしてきている。
騙されれば幸せになれるのだろうかと考えて、やはりまだそれは怖かった。
「そんなふうに騙さなくても、私はあなたの言うことを聞きますよ。だって、秘密をバラされたら困るもの。……倶楽部の仲間たちまで不幸にはしたくありませんから」
「騙すだなんて……お前は、私のことが好きじゃないのか? お前こそ私を騙したんじゃないか!」
ナディアからの拒絶に、ついにライナルトが怒り始めた。だが、怒られるなんて理不尽だとナディアの心にも怒りが湧く。
「騙してなんかないわ! ただ、私は手に入らないものだと弁えていただけ」
「欲しいものが手に入らないと勝手に決めつけるのは愚かなことだ。私はこうしてお前のものにできる。夢でも幻でもなくね」
「きゃっ」
ライナルトが乱暴に、その腕の中にナディアを抱きしめた。そうされると、力の差を感じてしまう。逃げられないのだとわかっているのに、ナディアはジタバタと無駄な抵抗をする。
「逃がすものか。お前は今から、私に抱かれるんだ」
耳元で囁かれ、ナディアの体は奥から熱くなる。だが同時に、仮面舞踏会の夜に触れられたのを思い出し、恐ろしくもなった。
好きでなくとも、男は女を抱けるのだ。好いた人にそんな触れられ方はされたくなくて、ナディアは逃げ出そうとする。
「……だめです、そんな……嫌なの」
呼吸を荒らげながらいくら嫌だと言っても、説得力がないのはわかっていた。それはライナルトにも伝わっているらしく、彼に退く気配はない。
「ナディア、お前が好きで、こんなにお前が欲しくて、私の胸は高鳴っているんだ。拒むなら、せめてこの鼓動に耳を傾けてからにしてくれ」
「……っ」
荒々しく抱きすくめられ、ナディアはライナルトの胸に頬を寄せる格好となる。すると、彼の言葉通り心臓が激しく鼓動を打っているのが伝わってきた。
そしてその音に負けないくらい、自分の胸も鳴っているのがわかった。二つの音が合わさると、それはとても騒がしい。
「……私のことを、どうしてしまうつもりですか?」
「手に入れたい。そして私だけのものにしたい」
少し掠れた余裕のない声で言われると、ナディアの理性は飛んでいってしまいそうになる。
この力強い腕に身を委ねたい。この人のものになってしまいたい。そんな気持ちに抗えなくなった。
「……まだ結婚したわけでもないのにこんなの……いけないことだわ」
「私のものになるのだから関係ない。それが少し早まるだけだ」
「んっ……」
最後の抵抗をしてみるものの、それも虚しく、口づけられてしまった。
視界が働かない中での触れ合いは、残された感覚が敏感になる。柔らかな唇を重ね合わせながら、ナディアはライナルトの匂いや息遣いにまで神経を高ぶらせていた。
彼はナディアの唇を貪るように、角度を変え、深さを変え、何度も何度も口づけてくる。不慣れなナディアは溺れないように、唇が離れた隙に必死で呼吸をするしかなかった。
そのうちに、口内にぬるりと彼の舌が入り込んでくる。温かで柔らかなものが、まるで意思を持った生き物のようにナディアの歯を舐め、舌に絡みつく。
荒い呼吸を繰り返しながら、送り込まれる唾液を零さぬように必死に飲み下す。
そうしているうちに、ナディアは自分の体が熱を持ち、下腹部が甘く疼いてくるのを感じていた。
「んんぅ……」
思わず鼻から声が漏れると、彼が嬉しそうに笑うのが気配でわかった。はしたないと思われただろうかと不安がよぎったが、これから何もかも暴かれてしまうのだと思って、快感に身を任せる。
「可愛いな……これから、もっと気持ちよくしてやるから」
そう言うとライナルトは、ナディアの着ていたものを脱がせて、生まれたままの姿にする。体を締めつける下着の類はつけていないから、簡単に剥ぎとられてしまった。
「真っ白で瑞々しくて美しいな……これからこの肌に、私のものだという証を刻んでいく」
「ライナルト様……」
いつの間にか月明かりが部屋に射し込んできていて、二人をほの青く照らしていた。
ライナルトの慈しむような眼差しのその奥に、荒々しい情欲の炎を見い出し、ナディアは身震いする。その彼の瞳に自分のありのままの姿が映っていることも、何だか恐ろしい。
だが、当然怖いだけではない。期待もしている。
彼の手によってこれから与えられる快感に。その快感によって自らが作り変えられていくことに。
「はぁ……んぅ」
ライナルトが首筋に唇を寄せてそこを舐め上げたことで、ナディアの口からは甘い溜め息が溢れる。ただ舐められただけなのに、たまらなく気持ちがいい。
やがて彼の舌は首筋を下って鎖骨を滑っていき、控えめな胸の膨らみに到達した。ライナルトはその片方を手のひらの中に収めながら、もう片方の頂を舌先で愛撫する。
するとその瞬間、ナディアの体には痺れるような快感が走り、思わず小さく悲鳴を上げて背中を仰け反らせていた。
「そうか、ここがいいのか。たっぷり可愛がってやろうな」
「んんっ、あ、あぁっ……」
ライナルトは胸の頂のひとつを口に含み、舌先で転がすような愛撫した。もうひとつは指先で摘み上げ、カリカリと爪で引っかくような刺激を与える。
異なる二つの刺激に、ナディアはなすすべなく嬌声を上げるしかない。身を捩り、「いや」「だめ」と荒い呼吸とともに訴えるものの、それはライナルトをやる気にさせるだけだった。
「……そんなに可愛い声で啼いてくれるな。一晩中でもお前を苛みたくなるだろう?」
「んんぅ……やっ、あぁっ……」
どれほど気持ちが良くても、胸だけの刺激では到底達することはできない。物足りなさに、自然とナディアの腰は浮いた。
両膝を擦り合わせ、腰を揺らすナディアの姿に、ライナルトはうっとりと微笑んだ。
「ここが寂しくなってきたな。……見せてごらん」
「きゃ……」
両膝を抱え、それを左右に開かせる。そうされると、恥ずかしい部分があらわになって、ナディアは羞恥に震えた。
「口づけと愛撫でこんなになってしまったのか。……素直で良い子だ」
「んっ……」
ライナルトが秘処に指を這わせれば、そこはくちゅりと湿った音をさせた。知識だけはあったナディアは、自分が快感に濡れていることを知らされ、さらに恥ずかしくなる。
だが、脚を閉じようにも彼にしっかりと開かされていて、どうすることもできなかった。
「怖がらなくていい、ナディア。これからうんと気持ちよくしてやるからな。ここを、ほら……」
「あぁっ!」
ライナルトはナディアのうっすらとした茂みに指をやると、その奥に隠れていた花芽に触れた。そこはとても敏感で、少し触れられただけで先ほどまでの何倍もの快感が走る。
その小さな花芽を、ライナルトは親指でゆっくりと擦り上げる。それだけで、ナディアの腰は切なく揺れた。
「ふ、ぅん……ライナルト、さまぁ……あっ、んん……」
花芽を撫でられながらその下で蜜を零す中心へも指を這わせられ、ナディアは甘えるように腰をくねらせた。蜜口を擦られるだけでは足りない。奥に入ってきてほしい。だから、ねだる腰つきになる。
「ああ……可愛いな。私の指が欲しいのか? 焦らなくても挿れてやるから」
「ん、あぁんっ」
「指一本でもこの狭さか……解れるまでか大変だな」
ライナルトがぬるりと指を突き立てると、ナディアの蜜壺はそれを激しく締めつけた。切なく肉襞を絡みつかせ、奥へ奥へと誘い込もうとする。
彼はそこを解そうというように、浅いところで何度も指を抜き挿しした。
「あ……あぁんっ……う、ぅんっ」
「ここか……ナディアは、ここが好きなんだな」
「やっ、んんっ」
ナディアが最も反応する場所を見つけて、ライナルトはそこばかり擦るようになった。感じているせいで、奥からはどんどん蜜が溢れてくる。くちゅくちゅと音を立てて泡立てられた蜜は、やがて滴ってシーツまで濡らしていく。
「指を、増やすからな。痛くないように、こっちも擦ってやる」
「んんんっ……!」
ライナルトは指を二本に増やし、親指を花芽に押し当てた。内側と外側の両方から愛撫され、ナディアの体には強烈な快感が走る。
腰を揺らし、甘い悲鳴を上げながら、ナディアは自分の奥からせり上がって来るような強烈な気持ちよさに怯えていた。
「ライナルトさまっ……あぁっ……やだ……なんか、きちゃうっ……」
「いい。そのまま、上手に気をやってごらん。快楽に身を任せて――さぁ」
怯えるナディアをなだめながら、ライナルトは親指にぐっと力を込めた。すると、花芽の中心の快楽の核が剥き出しとなり、強烈な気持ちよさに押し流される。
「ああぁ、んんぁっ……!」
大きく背を仰け反らせ、ライナルトの指をきつく締めつけ、ナディアは果てた。
初めての感覚に慄いているのか、それとも生理的な現象なのか、目の端から涙を溢している。その涙を唇で掬い、ライナルトはナディアの頭を撫でた。
「……よくできた。与えた快感すべてに余さず反応して、ナディアは本当に良い子だな」
「んん……」
蜜壺から指をゆっくりと抜きながら、ライナルトは優しく微笑む。
だが、彼の瞳の奥には獣じみた欲望が浮かんでいるのがわかる。
果てても終わりではなく、これがむしろ始まりなのだ。それがわかって、ナディアは少し恐ろしく思いつつも、期待に体の奥が疼いた。
「これからここで、私のものを受け止めるんだ」
「あ……」
ライナルトが自身の身につけていたものを取り去り、一糸纏わぬ姿になった。ゆっくりと覆いかぶさってくる彼の中心には、雄々しいものが屹立していた。 -
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