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試し読み
「そうですね……わたしの負けです。どうぞ、お好きになさってください」
皮肉の意味を込めて、彼女は両手を伸ばして手のひらを上に向けた。
院長の罰を待つ時のように。
ヴィクトワールは笑ってその肩を引き寄せた。
「……っ」
ディアーヌはたちまち彼の腕に囚われ、力強く抱きしめられる。
「私の本気を見くびっていたね、ディアーヌ? さあ、どうやってきみの動揺する表情を見られるかな」
彼はディアーヌを自分のものにするつもりなのだろう。
「平気です。結婚の『契約書』にサインした時から覚悟していました。動揺なんかしません。院長の鞭だって恐れたことなんかありませんし、問題はあなたが鞭を振り下ろす勇気があるかどうかですね」
「……なんて生意気な口を叩くんだろう」
そして彼はディアーヌに顔を寄せ、唇を塞いだ。
柔らかくついばむような口づけに、彼女の頭はくらくらした。男性に好ましく思われるというのはこういうことなのか、と思う。
こんなふうに触れられ、求められることは修道院ではあり得なかったし、それはディアーヌの心身に変化をもたらした。
足が震えて力が入らなくなり、心臓がドキドキする。息が苦しく、気が遠くなる。
体はまるで病のように弱々しくなっているのに心は重い枷を外されたみたいだ。
ヴィクトワールは何度も唇を重ねてきた。
罪深いような気がしたが、極秘とはいえ婚儀はすませているから、間違った行為ではないはずだ。
「美しいディアーヌ……私の妻。もう逃がさない」
それは自由を奪われることだろうか。だが、賭けに負けて自由を手放したのだから仕方ない——やがてそんな思考もとぎれとぎれになってしまう。
ヴィクトワールの舌がディアーヌの口を開けさせて侵入してきたからだ。
「……ん……っ」
舌と舌が触れた瞬間、背筋がぞくりとした。
驚いて抗おうとしたが、彼の力は強くてどうにもできなかったし、もがくことでよけいに彼の熱情を煽っているみたいだった。
彼の舌はディアーヌの舌を舐め、それからもっと奥の方へと忍び込んできた。粘膜が触れあう感触に、ディアーヌの体はぴくりと震えた。
彼は、まるで果実をむさぼるようにディアーヌの口中を味わい、唇を食む。
ディアーヌの体の内側から熱くなってきて、溶けそうになる。
「ん……ぁあ……」
頭の中がぐらぐらして、ベッドの天蓋や幕がかすんでくる。
「息が……できな……」
むさぼるような口づけの合間にようやくディアーヌが訴えると、ヴィクトワールは小さく笑った。
「ごめん。夢中になってた」
彼はそう言い、今度は軽く触れるだけのキスをし、それからその唇を顎から喉へと滑らせていった。
「あ……っ」
ディアーヌはくすぐったくて思わず身をすくめた。
「吸いつくような肌だ……すばらしいね」
夜着の衿を飾っていたレースをそっと開いて、彼はディアーヌの白い肌に口づけていく。彼の息が肌にかかるのもくすぐったくて、ディアーヌは何度も身をよじらせた。
「とても感じやすいんだな。くすぐったいのを我慢してごらん」
そう言われてディアーヌは、彼が鎖骨や喉元、肩を濡らしていくのをじっと耐えた。彼の手が夜着のボタンを外した時だけはディアーヌは彼の言うことを聞けなかった。
胸を開かれそうになって慌てて抵抗する。
「だめだ、きみ自身をもらうという約束だったろ?」
彼は息の混じった声でそう言うと、あがくディアーヌの手首を掴んで枕に押しつけた。
無抵抗に開かれた夜着から丸い乳房が覗いてしまうのが恥ずかしい。ヴィクトワールは両手でディアーヌの自由を奪い、顔を夜着の中に埋めてきた。
「……や……っ」
熱い息が乳房にふりかかっただけでディアーヌの体が震えてしまった。
——彼は何をするの? まさか……そんな……!
「あ……やめ……ぁっ」
誰にも触れられたことのない乳房に顔を埋められ、ディアーヌは悲鳴を上げた。そればかりか、彼は右の乳房に唇を当て、その頂に舌先を滑らせたのだ。ひどく敏感な一点に濡れた舌が触れた瞬間、むずがゆいような感覚が走った。
「……っ、あ……ぁああ」
両手を頭の上で捉えられたディアーヌの背が軽くのけぞって跳ねる。
ディアーヌの乳頭は完全に彼の口中に含まれた。
そして彼の舌で転がされるたびに、奇妙な快感に体を跳ね飛ばされてしまう。これはきっと、罪深いことだ。
「あ……やめ……おやめ……くださ——っ」
そう懇願する間も、ヴィクトワールは湿った音を立ててディアーヌの乳房を食み、舌で先端を舐め、それがこりこりと硬く勃ち上がるのを楽しむように味わっている。
ディアーヌは喘ぎながらそれに耐えていた。彼がチュッと吸った時、ディアーヌの全身が一瞬硬直し、病のようにぶるぶる震えた。
「——あ……っ……、ひ……っ」
頭の中が白くなり、意識が飛びそうになった。いったい何が起こったのかわからない。
息苦しいほど喘ぎながら、ヴィクトワールの下で胸を上下させていると、ふと彼女の両手が緩められた。ヴィクトワールは彼女の手首を放し、その腕を背中に回してやさしく抱きしめたのだ。いとおしげにキスをして言った。
「ディアーヌ、きみがこんなに感じてくれて嬉しいよ」
「感じ、て……?」
「もっと乱れていい……私がきみを乱してやろう」
そして彼はぐったりしたディアーヌの夜着を剥がしにかかった。少し急いた手つきで夜着の袖からディアーヌの腕を抜き、彼女をうつぶせにした。背中や尻がむき出しになってしまった恥ずかしさに、彼女は枕に顔を伏せた。
衣擦れの音から、ヴィクトワールも衣を脱いだのがわかる。これから何をされるのだろうと怖気づいていると、背後に熱い肌が触れた。
「素敵だよ」
耳元でささやく彼の声は、まるで悪魔の誘惑のように魅力的で艶めかしい。
「あ……っ」
彼は背後からディアーヌの背中を抱きしめ、首筋に口づけた。
少し汗ばんだ肌が背中にかぶさっている。そうしてディアーヌの背後から回された彼の左手は、乳房を弄り、もう一方の手は臍の辺りに当てられた。男性はもちろん、女性でも他人とこれほど肌を密着させたことなどなく、これが結婚ということかとディアーヌは奇妙な感慨を覚えた。
その後になにがあるかなんて、何も知らなかった。
うなじに熱い息がかかるたびに背筋を震わせるディアーヌの体——その形や感触を確かめるように、ヴィクトワールの手が柔肌をさすっていく。
彼に触れられるだけで、なぜかディアーヌの乳房が熱っぽく重くなり、張ってきた。それが彼の手のひらに収められ、ゆっくりと捏ね回される。
彼の指の間に挟まれた胸の尖りがベッドシーツに擦れると、そこから疼くような痛みと不思議な心地よさが生まれ、体が熱くなっていく。
「ん……ぁ……は、ぁん」
胸から下腹部へと走る淫らな快感に、ディアーヌは悩ましい呻き声を漏らしながら悶えた。自然に内腿を擦りあわせ、尻が揺れてしまう。
ヴィクトワールの右手がその疼きを追いかけるように下腹部へと滑り降りてきた。
「……っ、だめ……!」
ディアーヌははっとして身を捩った。ヴィクトワールの指先が恥部へと這い、柔らかい花びらに潜り込んできたのだ。
「だ……め、いや——いや……」
「さっきの威勢はどうしたんだ? まだ始まったばかりなのに怖気づいたのかい? きみは賭けには負けたけれど、きみの欲しがっていた自由のひとつを与えてやろう。院長による呪縛からきみを解き放つ。さあ、私の指を感じて心地よさに酔いしれればいい……体を緩めて——そうだ、いい子だ」
そう言って、彼の指がディアーヌの花芯に触れた時。
「——ぁあっ」
激しい快感に背筋を貫かれ、彼女は悲鳴を上げた。これまで感じたことのない感覚に鳥肌が立ち、眩暈に見舞われる。無意識に背中を反り返らせ、唇から熱い息を溢した。
——な、に……? これ……
一瞬の戦慄きに体力を消耗し、ぐったりと脱力したディアーヌの肩を甘噛みし、ヴィクトワールが囁いた。
「達ったんだ、かわいいディアーヌ。体が震えてるね……だが、怖くなどなかったろう? ほら、少し濡れてきた」
彼の指はさらに深い場所へと進んできたが、ディアーヌにはどうにもできなかった。湿った音が耳に飛び込んできたが、何が起こっているのか理解できなかった。ただ、体の奥に何か異物がねじ込まれている感覚があり、そこが濡れていることしかわからない。
「や……ううん……ん」
完全に動きを封じられ、恥ずかしい場所を蹂躙されたディアーヌは泣きたくなったが、許しを乞う気にはならなかった。異物感でしかなかった彼の指が、ディアーヌの中で次第に潤いをまとい、滑らかに動き始めたのだ。
「あ、……っあ、いぁ……っ」
自分でも触れたことのない肉洞を二本の指が侵し、何かを探すようにうごめいている。そしてディアーヌ自身の体はといえば、それに抗うどころか、おもねるように蜜襞をうねらせて甘露を滴らせているのだ。
——いや……恥ずかしい……!
くちゅ、くちゅと響く淫靡な音に耳を塞ぎたくなる。
「随分濡れて、私の指に絡みついてきた。ほら、見てごらん」
ヴィクトワールはそう言うと、ディアーヌの媚肉から指をそっと抜き出した。
「——あ……」
抉られるような触感に絞り出すような悲鳴が零れてしまった。解放されて安堵しているのに、物寂しいような心地がするのは不思議だ。
「きみの蜜だ」
ディアーヌは体を反転させられ、目の前に差し出されたヴィクトワールの指は濡れていて、その『蜜』は人差し指と中指の間で糸を引いていた。その指をディアーヌの口にそっと挿し入れて、彼女の舌に絡め取らせる。沐浴の湯に浮かべていた花の香りと、ヴィクトワールが身にまとう艶めかしい芳香が混じって口の中に広がった。
「もうこんなに滴らせて——いやらしい子だね。だが、もっとほぐさないと痛い思いをさせてしまう。ここが柔らかくなるまで私の理性が保つかな——」
そして再び向き合った格好になると、彼は覆いかぶさって口づけをした。
さっきよりも激しく唇を重ね、舌を絡め、溢れた唾液を啜り上げる。ディアーヌの小さな唇から溢れて顎を伝っていく滴りを舐め、果実のような唇を噛む。
野獣のようにむさぼられ、一方で丸い乳房を揉みしだかれてしまう。
「あ、ああ、……ふぁ……っ」
背中をベッドシーツに押しつけてもがき、次々に襲いかかる愉悦の波を散らそうとしても無駄だった。彼はディアーヌの全身を愛でるように口づけ、吸いついて味わい、最も敏感なあの場所に狙いを定めてきたのだ。
下腹部の柔らかな部分に彼が顔を伏せた時、ディアーヌは必死に足を閉じたが、力強い手でたやすく下肢を開かれてしまった。
「や——あ——いや、いや……!」
露わに広げられた足の間で、ディアーヌの恥部がひくひくと震え、既に淫らな滴りを零していた。そこに、濡れた柔らかいものが触れ、甘露を掬い上げる。
「ひ……っ」
びくんとディアーヌの背中が硬直した。
ヴィクトワールが花芯のあわいを舌でつっとなぞったのだ。
「や、め…………いやっ」
彼女は両手で虚しい抵抗をしたが、ヴィクトワールは肘で彼女の膝を抑え、その手首を掴んで完全に動きを封じてしまった。そして、花弁を舌で弄び、溢れる蜜を啜るのだ。
屈辱以外の何物でもないのに、ディアーヌはか細い悲鳴を上げて震えることしかできなかった。今こそ悪魔を祓うべきだったのかもしれないが、ヴィクトワールの与える刺激があまりにも強烈で、そして甘美な感覚をもたらしたからだ。
じゅるじゅると音を立て、彼の舌が蜜襞の奥まで侵入してきて、襞を味わうようにうごめいた。ディアーヌは何度も痙攣し、快感に震えた。
「もうこらえられない……ディアーヌ」
そう言ってヴィクトワールが体を起こした時、ディアーヌはぐったりしていた。淫らに投げ出した体を閉じようと思うのに、力が入らず、胸で喘ぐばかりだ。
ヴィクトワールは彼女の唇にキスをすると、その肩を掴む。
それから体を重ねてきた。びしょびしょになったあわいに何か熱いものが触れた。
——なに……?
朦朧とした頭で、ぼんやりとそう思った。
「あ……っ」
それが足の間に押し付けられた時、ディアーヌは小さく叫んだ。 -
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