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試し読み
「あ……やめて……」
小さい声で抗議したものの、聞き入れられない。というより、エリンも本気で止めてはいなかった。
ナイトドレスを引き下ろされたら、全裸になってしまう。だが、それが嫌だとは思えない。彼には前にも見られているし、今のエリンは彼の目に自分の身体を晒すことを考えると、何故だかドキドキしてくるのだ。
カイルはエリンからナイトドレスを剥して、全身を見つめてきた。これほど熱を帯びた視線を見たことがない。エリンは寒くもないのに、身体が震えた。
「なんて……美しいんだ……」
「美しいなんて……そんなこと……」
「いいや、こんなに美しいものを、僕は見たことがないよ」
彼にそう囁かれると、うっとりしてくる。自分を喜ばせるためにそう言っているのかと一瞬思ったが、彼の目つきは嘘をついていない。本気なのだ。
エリンは嬉しかった。どんな人に褒められるより、彼に褒められたかったからだ。そして、こうして生まれたままの姿を見せる相手は、エリンにとって彼しかいなかった。
もちろん、彼と結婚できるなどと考えているわけではなかった。ただ、愛した相手にすべてを捧げたい。その気持ちしか、エリンにはなかった。
カイルはエリンの身体に手を這わせた。胸から細くくびれた胴、そして、ほっそりした腰へと掌が滑っていく。
「君の肌は本当に滑らかで……シルクみたいだ」
彼は頭を下げて、エリンのお腹にキスをした。すべてを捧げると決めていても、ドキッとする。彼はこれから何をするつもりなのだろう。熱く疼く秘部にも、また触れてくれるだろうか。
彼はエリンの腰を抱くようにして、お腹に何度もキスをした。けれども、そのキスが次第に移動していって……。
腰から太腿へと唇を這わされて、エリンは脚をもぞもぞと動かした。期待する気持ちと恥じらう気持ちが同時に存在している。それを彼にも見抜かれているのではないかと思い、動揺していた。
彼はしっかり閉じていた内腿に手を差し入れた。
「あ……っ」
「楽にして。大丈夫だから」
彼はその手ですでに潤んでいる秘部に触れてくる。
ビクンと腰が震えた。指先が少し触れただけでも、たまらない気持ちになってくる。
「ああ……君も待っていたんだね」
指先で花弁をかき分けられて、エリンは蜜が溢れてくるのを感じた。まさしく、彼に触れられるのを待っていたとしか考えようがないだろう。
「恥ずかしいわ……」
「いや、僕は嬉しいよ」
「……本当に?」
「もちろん。こんなときに嘘なんかつかない。僕と同じ気持ちを君が持っていたということが重要なんだから」
果たして同じ気持ちと言えるだろうか。確かに、エリンは触れてほしかった。だが、それは、大事なところを触られて、指を挿入されるという行為が、彼のものになる手前の行為ではないかと思ったからだ。
彼はまるで焦らすかのように、ゆっくりと花弁に沿って指を動かしていく。エリンは思わず身震いをした。背筋はゾクゾクしているのに、身体の内も外も熱くてたまらない。
ああ、早く……続きをして!
エリンの気持ちが判ったのか、カイルはふっと笑った。しかし、手を引っ込めたかと思うと、エリンの両脚に手をかけて、いきなり大きく広げた。
「い……いやあぁっ……」
まさか、そんなことをされるとは思わなかったのだ。いや、今日カイルがすることは、まさかと思うことだらけだったが、その中でもこの行為は衝撃的だった。
彼の前に何もかもが晒されている。しかも、ランプの明かりはまだちゃんとついていた。昼間ほどではなくても、明るいのだ。
「落ち着いて。僕は……君の何もかもが見たいんだ……」
彼の声には切羽詰まったような響きがあり、脚をばたつかせようとしていたエリンは動きを止めた。
「でも……」
彼は言葉で説得をするのをやめ、太腿にキスをしてきた。はっとして、息を吸い込む。彼はそのまま唇を這わせていった。
「ダメ……ああ、ダメ……っ」
エリンは首を左右に振った。しかし、カイルはやめるつもりはないようだった。両脚をぐいっと押し上げると、彼は秘部にキスをしてきた。
「やぁ……ぁぁっ……」
自分の大事なところに彼の唇や舌を感じた。エリンは羞恥にまみれて、どうかなってしまいそうだった。
そんなところにキス、なんて……。
だが、両脚をがっちり?まれて、抵抗するすべはなかった。彼は指の代わりに柔らかい舌を這わせてきた。
「ぁぁっ……はぁ…あんっ……」
身体どころか頭から脚の先まで、炎に包まれているような感じがした。全身の血が沸騰しているような気さえする。
恥ずかしいのに、感じてしまう。
彼の舌に秘所が抉られていく。濡れた音がエリンの耳に響いた。もう、羞恥心はどこかに追いやられていて、身体の奥から溢れ出る快感のことしか考えられなかった。
さっきから、痙攣するように身体が震えている。彼は特に感じる場所を重点的に舐めていた。同時に、秘裂に指を挿入していく。
内部を広げるように、彼の指が入ってくる。エリンはギュッと目を瞑った。
そうよ。もう一度、こうしてもらいたかったの……。
エリンはこれが自分の望んだことだったのだと思った。決して、してはならないことだった。それでも、求めずにはいられなかった。
カイルとこんなふうにまた触れ合いたかった。彼のものになりたかったのだ。
このひと時だけのことだというのは判っている。エリンは男女間のことについて世間知らずなところもあるが、それでも侯爵と自分が結ばれるなどということは、あり得ないと判っていたのだ。そもそも、エリンは雇われた婚約者だ。
だから、今だけでいいの……。
いや、本当はよくないが、今しかないのなら、彼を存分に味わいたかった。
もう、若い娘は身を慎むべきという規範が、エリンの中ですでに消えていた。行き着くところまで行かなくては、元に戻れない。彼のものにならなくては、生きていけなかった。
「ああ……カイル……カイル!」
自分の内部にある彼の指が、行き来していた。
欲望がふくれ上がり、エリンはもうそれに身を任せることにした。不意に、身体の芯から激しい快感が生まれて、それが全身を突き抜けていく。
「やあぁぁっ……っ」
エリンはぐっと背を反らしてから、身体を弛緩させた。激しい鼓動と荒い呼吸だけが残り、エリンはその余韻に身を委ねる。
カイルは指を引き抜くと、己のズボンとボタンを外し始めた。それを見て、エリンはドキッとする。
彼はズボンと下穿きをずらして、股間のものを露出した。それを見たのは、もちろん初めてで、エリンは頬を赤らめて視線を逸らした。興味はあるものの、じろじろ見つめるのは恥ずかしかったからだ。
「あ、あなたは……脱がないの?」
自分が裸で、しかも大きく脚を広げられているというのに、それに比べると、彼の露出は少ない。
「僕は脱がないほうがいいんだ」
カイルはエリンの脚を両腕で抱え上げるようにして、股間を密着させてきた。
「えっ……」
エリンは驚いて、カイルの顔を見つめる。彼の硬くなっている股間のものが、自分の秘部にあてがわれている。それに気づいたとき、エリンは彼が何をしようとしているのかに気がついた。
「やっ……そんな……」 -
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