書籍紹介
敏腕ドクターと政略結婚!?~元彼の愛は南国より熱くて激しい!~
敏腕ドクターと政略結婚!?~元彼の愛は南国より熱くて激しい!~
ISBN:978-4-596-33313-1
ページ数:290
発売日:2022年3月3日
定価:640円+税
  • あらすじ

    お見合い相手の御曹司は、憧れのお医者様だった!?

    父の会社を援助してくれた企業の御曹司とのお見合いにのぞむ碧衣。忘れられない面影を胸に秘めつつ諦め気味の彼女の前に現れたのは、その思い出の救命救急医、久澄海里だった。すれ違った事情を知らず御曹司となら結婚するのかと冷たい目で見てくる久澄。「碧衣…触れたい、もっと」誤解が解けぬまま彼に嫁ぎ、狂おしく求められ揺れ惑う碧衣は!?

  • キャラクター紹介
    • 交野碧衣(かたのあおい)
      医療資材を扱う小さな会社の社長令嬢。家族思いの頑張り屋。

    • 久澄海里(くずみかいり)
      エリート救命救急医。正義感が強く、感情的に見せかけて実は結構頭を使っている。

  • 試し読み

    「大人だろうが子どもだろうが関係あるか。碧衣だぞ。……相手が碧衣だから嬉しいんだろう。碧衣が俺の手や指に反応するから、それが可愛いと思ってしまうんだろう」
    分かれ、とつぶやき、久澄は先ほどより少し強く歯を首筋に当てる。
    「あっ!」
    久澄の言葉を理解して目を見張るのと、甘噛みされた肌が疼いたのは同時だった。
    噛まれたのは首と鎖骨の間なのに、なぜか胸や腰の裏にくすぐったいような感覚が走りうろたえる。
    その上、碧衣だから嬉しく、碧衣だから可愛いと思うのだと言われ、恐ろしく心が舞い上がり、思考が上手くまとまらない。
    まるで碧衣だからいいのだ。碧衣だから欲しいのだと言わんばかりの台詞と、行動に、臆病な自分が疑問を呈す。
    「でも、三年前にッ……んんっ、ッ」
    井口凜々花と付き合っていた。彼女のほうが美人だった。なにより彼女は大人の女として久澄と対等であったのではないか。それに比べれば自分など――と言いかけるも、久澄が不満を述べるほうが早かった。
    「挙げ句に、〝浮気しても大丈夫そう〟だから、碧衣と結婚するだと。……大した名誉毀損だな。誰が浮気だ」
    拗ねた声で吐き捨て、久澄は碧衣の肌にある己の歯形を舌先でつぅっとなぞる。
    濡れた舌に肌を辿られた途端、体がそわそわしだす。
    くすぐったさに似ているが、それとは違う。もっと身体が焦れ、もどかしくなるような――日常と馴染まない感覚に碧衣は身震いしつつ首をすくめる。
    なのに久澄はお構いなしに、先を続けた。
    「その上、こんな格好で〝もう、行きます〟だと? 冗談じゃない」
    言うなり、久澄は丸襟をさらに強く指で引っ張り、そこを覗き込むようにしつつ、碧衣の肌に息を吹きかける。
    鋭く熱い熱風が、鎖骨の間から乳房の狭間を抜け、腹のあたりで拡散する。
    男の吐息に撫でられた肌は、異性の熱にわななくように、産毛がわっと立ち震えだす。
    身体の中では心臓が激しく脈動しだし、喘ぐように息を紡ぐと、まるで触れてくれといわんばかりに胸の双丘までもが大きく膨らむ。
    「は、あ……」
    たまらず喘ぐと、久澄はしたり顔で目を細め、碧衣の耳朶にそっと唇を触れさせ告げた。
    「襟元から胸が丸見えどころか、先も色づいて勃ちはじめているが?」
    「やぁ……、見、ない……で」
    初めて異性の目に胸を覗かれた羞恥で、碧衣の頭に血が上る。
    潤んだ目で男を見上げ、声なき懇願を捧げれば、彼はふっと小さな笑いを落とす。
    「まあいいさ」
    そっけなく告げ、久澄は碧衣が来ているTシャツの丸襟から指を外す。
    途端、離れて居た布が肌の上へと戻り、生地の柔らかな感触に息を吐いた刹那。
    「直接見なくても、服の上からわかることだし」
    言うなり、襟元から膨らみの頂点へと移動させた指で、頭をもたげだしていた花蕾を弾く。
    「ああっ……!」
    ぴんとした鋭い疼きが乳首から膨らみへと走り、碧衣はたまらず背を反らす。
    「白い乳房が膨らんで、服の上からもわかるほど、先が色づき勃ちあがって。……これでどこに行くだと? 外に出た瞬間、痴漢のいい餌食になるだけだ」
    なにが腹立たしいのか、口をわずかに尖らせ久澄が言うが、碧衣はもうそれどころではない。
    単語ごとに、責めるように胸の尖端を爪で弾かれ、そのたびに走るビリビリとした刺激に身を捩る。
    前を久澄の身体で遮られ、横だって逃げられないよう、壁についた膝と手で阻まれ、碧衣はごく狭い範囲で悶えるしかできない。
    その上、大した運動をしたわけでもないのに、息が上がり、どんどんと身体に熱と衝動がわだかまりだす。
    触れる面積が少なくなればと、肩を狭めて首をすくめてみれば、今度は、無防備に晒された耳へと歯を立てられた。
    じくりとした疼きが耳殻からうなじへと走り、そこから背骨伝いに腰へと落ちる。
    走り抜けた不可解な疼きは尾てい骨あたりで突然重みを増し、腰や腹の奥にひどく響く。
    じっとしていられない衝動に襲われ、その余韻に煽られるようにして息をこぼせば、久澄が休ませないと言わんばかりに、耳殻を噛み、しゃぶる。
    ぐちゅぐちゅ、ちゅぐりという濡れ音が、鼓膜から直接脳に響く。
    卑猥でいけないことをしているのだと、嫌でも自覚させられる音は、いたたまれなさと同時に、妖しい興奮を呼び起こす。
    ――触れないでほしい。いや、もっと触れてほしい。
    相反する情動が渦巻き、碧衣はどうしていいかわからない。
    ただ、頭の後ろを壁に押しつけながら、自分の身体が、久澄が与えるものを少しずつ受け入れ、変化していく様に喘ぎ、身悶えるしかできない。
    そのうち、息を絞り声をころせば、疼きが少しだけましになることに気づき、碧衣は唇を引き結ぶ。
    「んっ……ンンッ、ふ……ぅ」
    息を継げないのは苦しいが、くねくねと勝手に動く身体が動くことはない。
    そうして、久澄が気の済むまでやり過ごそうとした時だ。
    それでは面白くないと言いたげに、太股から腰を緩やかに撫でていた男の手が、強い力で臀部を掴む。
    「ひぁあああっ……あ! あ!」
    まるでパン生地を捏ねるように、柔らかく小さなまろみを揉みしだかれ、碧衣はたまらず口を解き、大きな声で喘いでしまう。
    「は、……いい声」
    相手に聞かせるというより、己の中にある感情を放つように久澄が呟く。
    同時に、それまで距離を置いていた下半身を力強く碧衣の腹に押しつける。
    スラックスの上からでもそれとわかるほど、硬く兆したものでへそあたりをくじられ、碧衣は鋭く息を呑む。
    ――久澄が、欲情している。
    未知の感覚に竦んでいた心に、ぽっと温かいものが灯る。
    久澄が、碧衣の痴態に煽られ欲情している。雄として求めだそうとしている。
    理解した瞬間、怯えがちだった心の中に、嬉しさとも、歓びともつかないものが芽吹き、硬く怖がりがちだった肩や腕から力が抜ける。
    「ぁ……は、あ」
    足りなかった酸素を補うように唇が大きく開き、わずかに舌を覗かせつつ、呼気を取り込む。
    すると胸郭がいままでになく大きく膨らんで、上にある乳房がふるりと揺れた。
    震える身体に呼応して、着ているTシャツの布がするすると滑る。
    踏んだなら取るに足らない、どころか、意識もしない摩擦なのに、どうしてか酷く肌に響く。
    「ああ、あ……ッ」
    たまらず身を捩れば、皺寄り硬くなった部分が乳首の側面を擦りあげ、碧衣は勢いよく首をのけぞらす。
    壁にぶつかり、痛みを生み出すはずだったそれは、けれど一瞬の間もおかずに、男の手により塞がれる。
    大きな久澄の手が、柔らかに碧衣の後頭部を受け止める。
    男の手の節にある骨が壁に当たる、コツリとした音がかすかに聞こえた瞬間、庇われたことに気づき、碧衣は久澄の顔を窺い――息を呑んだ。
    確かに痛みを感じたはずなのに、久澄は眉一つ潜めず、どころか碧衣を咎めるような目で見ることもなく、ただ――ひたむきに目を潤まし自分を見上げる女を見つめていた。
    「碧衣」
    掠れた声が鼓膜に届いた途端、腰の辺りがぶるりと震え、一瞬、呼吸も鼓動も止まる。
    久澄が、目を細めながら碧衣を見つめていた。
    まぶしいものを見るように。否、視線で射貫いて、己の手中に収めようとするように。
    まるで太陽を欲しがる子どもだ。無謀だとわかりながらも求めて手を伸ばす。
    馬鹿みたいにシンプルに、真っ直ぐに、なによりも己を疑わず。
    怖いほど研ぎ澄まされた男の視線に宿るのは、純粋すぎる劣情だった。
    「……ッ」
    なにか言おうと考えるも、相手の情動に押されて声がでない。
    欲しいと訴える視線の強さに、心が射貫かれてしまったのがわかる。
    肉食獣に仕留められた獲物と同じだ。圧倒され、組み伏せられ――やがて、命を繋ぐ一つの血肉になりはてる。
    「怖い?」
    尋ねられ、頭を振った碧衣は、壁を押すように下ろしていた手で、久澄のスーツの上着を掴む。
    露骨に欲情した男の視線が恥ずかしくて、碧衣は少しずつ、うつむきがちになるが、完全に首が下がりきる前に、久澄の指が顎に添えられ、そうっと優しく掬いあげられた。
    再び視線が交わり合う。
    灼けるような劣情の光は同じだが、それ以上にひたむきで一途な眼差しが注がれる。
    「俺は、三年前も、今も、ずっと、碧衣にキスしたいと思っていた。抱きたいとも考えていた。……君は?」
    思いも寄らぬ告白に、歓喜と困惑が入り交じり、碧衣はめまぐるしい思いを落ち着きかせられない。
    衝動が勝ちすぎている。
    キスしたい、抱きたいと思っていたなら、どうして三年前、久澄は碧衣に手をださなかったのか。
    確かに碧衣は学生ではあったが、成人していた。だから法に触れるわけではない。
    (だとしたら、どんな理由があったのだろう)
    確かめるべきだ。尋ねるべきだと理性が訴えてくるけれど、それより、今は、久澄が碧衣を求めているということがすべてに勝っていた。
    「……久澄先生なら」
    「駄目だな。そんな曖昧な答えじゃ同意にならない」
    自分から、お見合いをして縁談を進めるから婚約者と言い切ったくせに、碧衣が浮気者となじったからか、それとも、単純に困る様子を見てみたいのか、久澄が意地悪に笑いながら要求する。
    「……ッ」
    初めてで、男の誘いかたも分からないのにと、心の中で久澄をなじりながら、碧衣は思いきり彼の胸元に顔を伏せ、声を震わせつつ告げた。
    「抱いて、ください」
    自分の言葉が耳に入った途端、体温が急上昇し頭の芯までのぼせてしまう。
    平凡な碧衣の、平凡で終わるだろう人生で、こんな大胆な台詞を吐くなど、まるで考えもしなかった。
    けれど、久澄ならいいと思う。
    たとえ、この夜だけの戯れだとしても、勢いとか、売り言葉に買い言葉だとしても。
    ――ここまで久澄に欲しがられて、碧衣に断るすべはない。
    勇気を振り絞り、相手を誘う言葉を口にしたのに、久澄は碧衣を腕に抱きしめたまま、まるで子どもをあやすように、頭や背中を撫でては頬ずりするばかりで、先に進む気配がない。
    けれど、愛撫に焦らされた女体は時間が経てば経つほど疼いて、碧衣は恥ずかしさと、腹立たしさをない交ぜにしつつ声を上げる。
    「い、嫌なら……も、もう、いいでっ……ンンぅ!」
    キスしたいのではなかったのか、抱きたいのではなかったのかとの抗議を込めて叫んだが、けれど最後まで行きつかないまま唇を塞がれる。
    そのまま、ひとしきり舌を絡め、碧衣の口を隅々まで味わった久澄は、わずかに頬を上気させ、はにかみながら謝った。
    「……ごめん。赤くなって、一生懸命になっている碧衣が、あまりにも可愛いすぎて、抱くのがなんだかもったいなくなってきた」
    そういわれ、また子ども扱いして投げ出されるのかと目を潤ませれば、すかさず久澄がまぶたにキスしてきて、濡れたまつげを唇でそうっと食んで笑う。
    「だからといって、やめたりはしないけれど」
    言うなり、碧衣の前で腰を折り、あっという間に腕にかかえて抱き上げる。
    「きゃっ……ッ」
    昼間と合わせて二回目だ。それでも、姫君のように久澄に抱かれることには慣れない。
    不安定なわけではないが、高すぎる視線が怖くて抱きつけば、甘える仕草で、久澄が碧衣の耳や首筋にキスし、それから顔を傾け唇を奪う。
    隙間なく互いの口を重ね、息を奪うほど激しく碧衣の舌を吸い、己の口へと誘い込み、容赦ない激しさで舌を絡め擦り付ける。
    呑み込みきれない唾液が口端から滴り落ちるが、気にする余裕などない。
    奥歯の付け根を舌先で丹念に舐められるともうだめだ。
    顎に力が入らなくなり、碧衣は慎みもなく、ただ求められるままに口を開いて、久澄の熱い舌を受け入れる。
    柔らかい頬裏をねっとりと舐め溶かすようにして舌を添わされ、ざらりとした表面を口蓋にあててくすぐられる。
    舌の動きが変わるたびに感じ方も変わり、蕩け痺れ、疼くさざ波が、全身を走り抜ける。
    含んだものを呑み込むことも、押し出すこともできずにいると、くちゅぬちゅという唾液の音が激しくなり、淫靡な空気が高まっていく。
    そうやって互いにキスに耽溺しつつ、久澄はベッドルームへ碧衣を運ぶ。
    互いを貪ることに夢中となるあまり、途中で、毛足の長い絨毯に靴先をひっかけたり、家具に膝をぶつけたりしたようだが、その無骨ささえ、碧衣が欲しくてたまらないという主張に思えて、ただただ嬉しく愛おしい。
    やっとベッドへ辿り着くも、その頃には碧衣は酸欠気味となっており、下ろされた姿勢のままぐにゃりとシーツへ倒れ込む。
    久澄は、そんな碧衣を嬉しげに見つめつつ、もどかしげな手つきでスーツを脱ぎ捨て、ネクタイもベストも一緒くたにベッドの下へ放り投げ、荒っぽい手つきでシャツのボタンを外しだす。
    けれど最後にはそれさえ面倒になったのか、ボタンを引きちぎるようにして肌から引き剥ぎ、裸身を晒す。
    一切の無駄がない、ギリシャ彫刻さながらに引き締まった上体に目を奪われる。
    服を着ている時もスタイルがいい人だなと常々思って居たが、裸身はそれ以上に素晴らしく、肉体として完成されていた。
    すっきりとした耳から肩へのライン。そこからバランスよく盛り上がる上腕の筋肉は、硬くすっきりとした形の肘で絞れ、真っ直ぐと手首まで伸びていく。
    脇から腰へ絞れていく筋肉は、しなやかな輪郭と陰影をみせつけながら、腹を包む逞しい腹筋へと至る。
    なにより、ぴんと張った肌の上に、汗が一筋、二筋と浮いて身体を伝う様子が艶めかしく、碧衣は思わず唾を呑んで、久澄の裸身に見入っていた。
    だからだろう。気付かぬうちに腰下に手を入れられ、背が浮いたと思った時にはもう、着ていたロングTシャツの裾をつかまれ、あっという間に頭から抜き捨てられてしまう。
    「あっ……!」
    服が脱げた勢いでまた仰向けに倒れた碧衣は、自分の胸の上でふるんと双丘が揺れるのを見て目を大きくする。
    あまりに素早く服を奪われ、裸になったことに気付くのが遅れてしまった。
    急ぎ、自分の腕で隠そうとするも、それより早く久澄が覆い被さってきて、碧衣の頭の横に両肘をついて、笑う。
    「……好きだな。碧衣の、そのびっくりした顔」

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