書籍紹介
不遇の薬師令嬢は女嫌いの冷徹侯爵に甘く奪い尽くされる
不遇の薬師令嬢は女嫌いの冷徹侯爵に甘く奪い尽くされる
ISBN:978-4-302-12715-3
ページ数:306
発売日:2026年9月3日
定価:800円+税

イラストちら見せ!

  • あらすじ

    虐げられた令嬢の愛され逆転劇!
    薬草で助けた相手は超絶美貌の侯爵様!?

    叔母達に虐げられている薬草好きのフェリシアは、舞踏会で侯爵サージェスに突然濃厚なキスをされてしまう! どうやら媚薬を盛られている彼を薬草で助けたら、彼の祖母の専属薬師として家に招かれることに。「今度は私が、あなたの力になりたい」女嫌いと噂の彼は、思いの外誠実で惹かれていく。ついには甘く触れられ女としての悦びを教えられて……!?

  • キャラクター紹介
    • フェリシア
      伯爵令嬢。叔母と従妹にいびられる不遇な令嬢。

    • サージェス
      侯爵にして王国騎士。女嫌いで冷徹侯爵と呼ばれている。

  • 試し読み

    しっかりしないと。フェリシアは気持ちを切り替えるためにグラスをぐいっと仰いだ。
    「……ッ!?」
    途端に視界がぐらりとゆがんで、フェリシアは危うくふらつきそうになる。ジュースだと思ったそれは、どうやら白ワインだったようだ。
    (くぅ……っ。お、お酒って、こんなに強いものだったのね)
    初めて飲んだ……とフェリシアはクラクラしながら、グラスを給仕に返す。せっかくの音楽も一気飲みしたワインのおかげでゆがんで聞こえた。
    これはまずい、壁の花どころではないと思ったフェリシアは、大きく取られた掃き出し窓が外へ向けて開けられているのを見つける。
    どうやらそこから庭に出られるようだ。夜風に当たれば少しはマシになるかと思い、フェリシアはそそくさと庭へと退散した。
    「まぁ……庭も素敵ね」
    たくさんの木々や木立、花壇がある庭は、奥へ奥へと進んでいけるようだ。
    あちこちにランタンが置かれているので快適に進める。フェリシアはこれ幸いと奥へ進み、少し開けたところにあったベンチに腰掛けた。
    「ふぅ」
    夜風がさわさわと首元を撫でていく。広間ではゆがんで聞こえた音楽も、風に乗って聞いているぶんには軽やかで美しかった。
    ここで少し休憩して、酔いが覚めたら帰ろう。そう思うとほっと一息つけて、フェリシアは首のあたりを扇いだ。
    「それにしても、本当に胸がきついわね……。脱げたらもっと楽になるのに」
    胴回りは細くなったのに、胸だけ大きくなった三年間の成長が今は憎い。
    ワインで火照った身体にはこのきつさが窮屈で、フェリシアはどうにか緩められないかと胸元に手をやった。
    そのときだ。どこからかこちらへ向かう足音が聞こえて、近くの茂みがガサッ! と大きく揺れた。
    同時に背の高い人影がぬっと出てきて、フェリシアは「ひっ!?」と悲鳴を上げる。
    「だ、誰!?」
    思わず声を上げるが、背の高い誰かは、はぁはぁと息を荒らげながらフェリシアに近寄ってきた。
    「な、な、なに……っ?」
    フェリシアも慌てて立ち上がって逃げようとする。
    だがワインのせいで足下がおぼつかず、大きくふらついてしまった。
    「きゃあっ……!」
    倒れる、と思ったが、急に現れた誰かががっしりとフェリシアの腰を掴んだ。ぐいっと引き起こされて、フェリシアは目を白黒させる。
    「あ、ありがとう、ございます……」
    そろそろと見上げてみれば、青い瞳とバッチリ目が合った。
    (わっ……)
    フェリシアはそこでようやく、相手がかなり美麗な容姿をした青年であることに気づく。
    青い瞳がのぞく前髪は夜空の下でも輝くような金色で、絹糸のようにさらさらしていた。長い睫毛も金色。おまけに潤んだ瞳がこちらをまっすぐ見つめている。
    「気をつけろ」
    倒れかけたフェリシアをどう思ってか、彼は低くうなるような声でつぶやく。
    思わず彼に見とれかけていたフェリシアはハッと我に返った。
    「す、すいません。助かりました……」
    ――危うく転ぶところだったせいか、あるいは彼の声もまた耳に心地良い響きであったことに驚いたせいか、心臓が勝手にドキドキしてくる。
    急いで離れようとするが、思いがけず、彼の手はフェリシアの腰に回ったまま離れていこうとしない。
    「あ、あの……?」
    不思議に思って声をかけてみるが、彼は動かずフェリシアをジッと見つめている。熱を帯びた目に見つめられるだけで心拍数が上がって、フェリシアは慌てて視線を落とした。
    と、彼が着ている服が黒の詰め襟であることに気づく。この服は……確か王国騎士団の制服だ。マントを身につけている上、勲章も見えるから、きっとそれなりの地位にある騎士なのだろう。背に回された腕もがっしりとして安定感がある。鍛えている証拠だ。
    だが、やっぱり、いつになってもその腕が外される気配がない。フェリシアは両足でしっかり踏ん張って、彼の胸をそれとなく押し出してみた。
    「あの、もう立てますので、離していただいて大丈夫……」
    しかし、彼は肩で大きく息をして苦しげにうめいた。挙げ句の果てにフェリシアの後頭部をぐいっと引き寄せ、ぶつかるようにくちびるを重ねてくる。
    「んむ……っ!?」
    突然のキスに、フェリシアの頭の中は真っ白になった。
    キスだけではない。空いた手で腰を引き寄せられて、お互いの身体が密着する。
    衣服越しとはいえ、鍛え上げられた騎士の硬い身体を感じて、フェリシアは驚きのあまり硬直してしまった。
    (え、えっ! こ、これ、キス? どうして……!?)
    おまけに、ただくちびるをぶつけるだけならいざ知らず――そのまま舌まで差し入れられて、フェリシアは大混乱に陥る。
    「ん、ぁっ」
    思わず抗議しようと口を開くが、より深くまで彼を迎え入れる形になってしまう。彼の舌はなんとも執拗に、引っ込んでいたフェリシアの舌に絡みついてきた。
    「んんっ……!」
    ぬるつく舌同士が、口内で逃げたり追いかけたりを繰り返す。逃げようにもすぐにからめ取られて、フェリシアはビクビクッと全身を震わせた。
    「ふ、ぅ……っ、んあ」
    粘膜同士がぴちゃりと音を立ててこすり合わされる。なんだか背筋がゾクゾクして、身体の奥底に火が入れられたようだ。
    理解が追いつかない頭に反し、身体のほうはむずむずと熱くなっていく。角度を変えて何度も口づけられ、舌を絡められると、頭の中までぼうっと靄がかかったようになった。
    「ふ、ぅ……っ」
    ぬちゅくちゅという音が自分の口内から絶えず立ち上る。恥ずかしいのに、同時にドキドキして、フェリシアはそんな自分に大いに戸惑った。
    ――いったいどうして、初対面の騎士とこんなことになっているのか。
    そして、突然のことに間違いなく驚いているのに――彼に舌をからめ取られるのも、髪を掻き上げられ後頭部に直にふれられるのも、腰をぎゅっと抱き寄せられるのも、怖い以上にドキドキと胸が高鳴って仕方がない。
    「ん、ぁ……ふぁ……っ」
    ――長いこと他人とふれ合う機会がなかったから、驚きより先に喜びのほうがきてしまっているの……?
    そうだとしても、初めて顔を合わせた相手とこんな濃厚なキスを交わすなど――そしてそれに感じるなど、本当にどうかしている。
    回らない頭でもそれくらいは考えられるのに、身体のほうはどんどん熱くなってたまらない。きついドレスに締め付けられた胸の先が、ツキツキと痛むほど敏感になっていた。
    彼が一度くちびるを離し、また別の角度で口づけてきたときに胸がこすれて、ピリッとする快感が身体を走る。腹部の奥が熱く疼いて、彼にもっと自分の身体をこすり付けたいような欲求まで生まれてきた。
    「あ、っはぁ、……んんっ……」
    キスの合間に自分のくちびるから漏れる言葉も、艶っぽくてうろたえてしまう。はしたないとか、淫らだとか責められても仕方ないような反応だ。
    騎士のほうもはぁはぁと息を荒げていて、フェリシアの身体のラインを大きな手でたどってくる。脇腹を撫でられたときはくすぐったくて、思わず身体がビクンッと跳ねた。
    彼の手が、今度は臀部の丸みを掴んでくる。性的なものを感じさせる明確な動きには、さすがに驚いてしまって、フェリシアは「ひゃっ」と声を漏らした。
    「や、ぁっ」
    かろうじて声を上げるが、彼の舌は止まらない。歯列の裏をなぞり、頬の内側をくすぐるように撫でてきて、フェリシアは身体の奥がさらに熱く揺らぐのを感じた。
    「あ、んぅ……っ」
    ぬちゅ、と口元から水音が立ち上って、恥ずかしさに真っ赤になって目をつむる。
    彼は角度を変えて何度もフェリシアに口づけ、やがて「はぁっ」と大きく息を吐いた。
    「……くっそ、収まるどころか、どんどんひどくなる……っ」
    忌々しげにそうつぶやかれ、熱に浮かされていたフェリシアは少し正気を取り戻す。
    だが再び口づけられ……さらには腹部あたりに硬いなにかを押し当てられて、全身がビクッと跳ね上がるほど驚いてしまった。
    (こ、これって、その……アレよね?)
    男性の股間にある、アレ……。が、こんなに硬く張り詰めている、ということは。
    (か、かなり興奮していて……歯止めが利かなくなっている感じよね!?)
    どうしよう。くちびるは奪われたとはいえ、その先の貞操まで、よそ様の庭園で捧げることはしたくない。
    だが彼の舌遣いはなんとも巧みだ。舌先をちゅうっときつく吸い上げられ、フェリシアは「んん!」と全身をびくつかせてしまった。
    「ゃ、あ……っ」
    「……はぁ、はぁ……! このわたしが、女性相手にこんなふうになるなんて……っ」
    フェリシアが喘ぐ中、騎士が忌々しそうにつぶやいていた。
    「なのに、なぜだ、突き放そうとできないのは……!」
    苦しげな騎士の声に焦燥や絶望が滲んでいることに、いっぱいいっぱいになりながらも、フェリシアはかろうじて気づく。
    ――もしかしてこの状況は、騎士にとっても不本意なものなのだろうか?
    とはいえ、彼の手もまた理性に反して欲望のまま動くようで、今度はフェリシアの胸元にふれてくる。
    「んあっ!」
    ドレス越しとは言え、敏感になった乳首のあたりを彼の指がかすめて、身体がビクッと勝手に跳ね上がる。
    そして、その反応を見た彼は、苦痛を感じているように顔をゆがめながらも、フェリシアの胸の膨らみを大きな手で包み込んだ。
    「は、あぁ、あ」
    きついドレスだけに、少しいじられたくらいでは着崩れしないのは不幸中の幸いか。
    とはいえ、自分にとっても彼にとっても不本意なこの状況からは、一刻も早く抜け出さなければならない。
    「んんっ……!」
    だが再びキスされると頭の中は真っ白になってしまって、気持ちいい感覚だけが身体を支配していく。騎士はもちろん、フェリシアも身体に異変が起きているとしか思えない。
    「はぁ、くそ、なんでこんなに甘いんだ……っ。身体になにか仕込んでいるんじゃないだろうな?」
    くちびるをふれ合わせたまま、騎士がかすれた声で問いかける。
    それはこちらの台詞だと思いながら、フェリシアは首を横に振った。
    「な、にも……っ。お酒を、少し飲んだくらい」
    こちらもはぁはぁと喘ぎながら答えるが、フェリシアは(そうだわ、お酒)と少しだけ正気を取り戻した。
    キスされてふわふわするのは、酔いが回っていつもと違う感覚になっているからかもしれない。人間、お酒が入ると気が大きくなると言うし。普段からは考えられないような失態や失言もするという。
    「あ、なたも……お酒を……?」
    すると、彼のほうもハッと青い瞳を大きく見張る。どうやら図星のようだ。
    フェリシアは思い切って、自分から彼にくちびるを重ねに行く。それまでがっつくようだった彼が大いにうろたえるのがわかったが、そのくちびるを大きく開かせて、フェリシアは思い切り息を吸い込んだ。
    (――! この香りは)
    注意深く探ると、彼の呼気から酒ではない、特徴的な甘ったるい匂いが漂ってくることにフェリシアは気づく。
    だがフェリシアのキスのせいで、彼のほうは欲望がぐんと高まってしまったのか。フェリシアの胸元に手をかけて、襟をぐいっと引き下ろそうとしてきた。
    「だ、だめ……!」

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