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あらすじ
思い出した? 俺に抱かれたときのこと
箱入りお嬢さま×やり手御曹司の甘すぎる再燃愛顔も知らない婚約者がいる結月と樹。ふとしたことからつきあい始めたが、家同士が決めた結婚に逆らえず、結月は真実を話し別れを告げる。しかし樹こそが結月の婚約者で…! 再会したものの互いに素性を隠していたことに不信感がつのり、素直になれない。やり直そうと迫ってくる樹に、結月は2人で過ごした甘く濃密に溺愛された日々を思い出して――。
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キャラクター紹介
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和倉結月(わくら ゆづき)
社長令嬢ということを隠して父親の会社に勤めている24歳。6年前から婚約が決められ、恋愛経験もないまま過ごしている。 -
東堂 樹(とうどう いつき)
東堂ホールディングスCEOの次男、31歳。数年前まで仕事で世界各地を回っていた。人当たりがよく、料理が得意。
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試し読み
「緊張してる?」
「は、はい」
「これまで男とつきあった経験がないんだから、当たり前か。さっきも言ったけど、俺は店の客に手を出したことは一度もないし、この家に異性を連れ込んだこともない。結月さんが初めてだ」
人目を引く容姿をしていて物腰が柔らかく、しかもこんな高級マンションに住んでいる樹が、そこまで身持ちが堅いなどありえるのだろうか。
そんな疑問が心に浮かんだものの、結月はすぐにそれを打ち消す。
(わたしは覚悟を決めてここまで来たんだから、もう迷わない。……だって樹さんが好きなんだもの)
そう自分に言い聞かせ、結月は身体を反転させて彼に向き直る。そして頭ひとつ分高い樹を見上げて告げた。
「信じます。樹さんが、わたしだから特別扱いをしてくれるんだって」
すると彼がふっと微笑み、わずかに身を屈めて唇を重ねてくる。
その感触は思いのほか柔らかく、軽く押しつけられただけで離れたそれを名残惜しく思った。結月がうっすら目を開けた瞬間、樹が再びキスをしてきて、濡れた舌に合わせをなぞられた結月は小さく声を漏らす。
「ん……っ」
ぬめる感触は淫靡で、じわりと体温が上がった。
こちらを怖がらせないようにという配慮なのか、彼は少しずつキスを深くしてきて、結月は受け止めるだけで精一杯になる。やがてようやく唇が離れたときには、すっかり息が乱れていた。
「はぁっ……」
初めてのキスは強烈で、結月は目が潤んでいた。
するとそんな目元に唇を押しつけ、樹が吐息交じりの声でささやく。
「――可愛い」
「ぁっ……」
目元と頬についばむようにキスをしたあと、彼の唇が耳朶に触れる。
輪郭をなぞるように舌で舐められ、かすかな吐息を感じた結月は思わず首をすくめた。ゾクゾクとした感覚が背すじを駆け上がり、身の置き所がない気持ちを味わう。
樹が耳孔に舌を入れてきて、濡れた感触と水音に結月はビクッと身体を揺らした。
「ん……っ」
くちゅりという音がダイレクトに脳内に響き、肌が粟立つ。
腰砕けになりかけた身体を彼の腕が抱き止め、小さく笑って言った。
「顔、真っ赤だ。……本当に経験がないんだな」
「……っ」
「このままベッドに連れていっていい?」
甘い問いかけにドキドキしつつ「……はい」と答えると、樹が手を引いて寝室へと向かう。
寝室は十二畳ほどの広さで、クイーンサイズのベッドには落ち着いた色のリネンが掛けられ、壁に掛けられた絵画や大きめの観葉植物がくつろげる雰囲気を醸し出していた。
緊張は依然としてあるものの、ふいに「このまま受け身でいたら、樹はつまらないと思うかもしれない」という考えが頭に浮かび、結月は唇を引き結ぶ。
繋いだ手に力を込めて軽く引くと、彼が「ん?」と言って振り返った。結月は軽く背伸びをし、その唇にキスをした。
「――……」
樹が驚きに目を見開き、こちらを見下ろす。
結月はじんわりと頬を染めてささやいた。
「わたしも樹さんに触れたいと思ったから、したんです。……駄目ですか?」
すると彼が小さく噴き出し、楽しそうに答える。
「駄目なわけないよ。好きな子にそんなことをされて、うれしくない男はいない」
樹が再び唇を塞いできて、そのままベッドに押し倒される。
彼の大きな手が胸のふくらみに触れて、結月は息を乱した。さほど大きくないそこは密かなコンプレックスだが、執拗に揉まれると次第に淫靡な気持ちがこみ上げてくる。
シフォンブラウスのボタンが外されていき、ブラに包まれた胸元があらわになった。ささやかな谷間に唇を落とした樹が視線を向けてきて、結月はじわりと気恥ずかしさを感じる。
そして彼の肩に触れ、「あの」と小さく切り出した。
「すみません、わたし、胸があんまり大きくなくて……」
「何で謝るの? 可愛いよ」
ちゅっと音を立てて肌を吸われ、結月は「あっ」と声を漏らす。
ブラのカップを指で引き下げた樹が、胸の先端に舌を這わせてきた。乳暈をなぞり、みるみる硬くなったそこを吸い上げられて、濡れて柔らかい感触に頭が煮えそうになる。
彼の触れ方には強引さがなく、気遣いを感じるため、抵抗感がなかった。ただ恥ずかしさだけが強くあり、所在なく足先を動かすと、ふいに樹が問いかけてくる。
「――ここまでは嫌じゃない?」
突然の質問にどぎまぎしながら、結月は上擦った声で答える。
「は、はい」
「怖がらせる気はないから、嫌なことは嫌ってはっきり言ってほしい。別に俺は、今日最後までできなくても構わないし」
その言葉が意外で、結月は思わずまじまじと彼の顔を見つめる。
すると樹がチラリと笑い、補足して言った。
「したくないわけじゃなくて、あくまでも結月さんの気持ちを尊重するっていう意味だよ。気持ちを確かめ合ったばかりなのに、いきなりこういうことをするのに抵抗があるかもしれないし、俺は君より年上だからそのくらいの分別はあるつもりだ」
樹は「それに」とつぶやいて結月の手を取り、指先に口づけて言葉を続けた。
「俺は結月さんを、大事にしたい。こんなふうに心惹かれた存在は他にいないから」
甘さをにじませた眼差しでそんなことを言われ、結月の頬がじんわり熱くなる。彼から目をそらせなくなりながら、小さく問いかけた。
「どうして……わたしなんですか? お店の客なら、他にもたくさんいるのに」
「きれいな顔立ちや姿勢のよさはもちろんだけど、俺の料理を食べたときにパッと目を輝かせるところが可愛いと思った。それに結月さん、前に店で具合が悪くなった女性客がいたとき、介抱してやってただろう。ああいうのはなかなかできることじゃないし、『優しい子なんだな』って思った」
確かにcieloに通い始めて間もない頃、比較的遅い時間に店を訪れた際、女性客の一人が化粧室に行って戻ってこないことがあった。
そのときの店内はひどく混んでいて、カウンターの中で忙しくしていた樹はそれに気づいておらず、女性の連れの三人ほどの男女が「もしかして、吐いてるんじゃない?」と話しているのが結月の耳に飛び込んできた。
しかし彼らは世話をするのが嫌なのか、様子を見に行くのを押しつけ合っていてなかなか動かず、それを聞いて心配になった結月は、席を立って化粧室まで行った。
すると女性客は吐いてぐったりしており、結月は急いで樹におしぼり数本をもらって彼女を介抱した。それを思い出し、彼を見つめて答える。
「あれは……あのお客さんの連れの人たちが様子を見に行くのを押しつけ合っていて、聞いてて腹が立ったんです。具合が悪い人を放っておけませんでしたし」
「人の吐瀉物って、普通は触るのを躊躇うよ。でも結月さんは女性客の服をできるだけきれいにしてあげてたし、本来俺がやるべきトイレ掃除も手伝ってくれようとした。たぶんあのときから、君が来店するたびに意識するようになったんだと思う」
樹が自分の見た目だけではなく、内面も見てくれていたのだと思うと、結月の胸がじんとする。
それと同時に、未経験のこちらを慮って「今日は最後までしなくてもいい」と言ってくれる気遣いがうれしかった。
目の前の彼の端整な顔を見つめ、結月は想いを込めて告げる。
「わたしも樹さんが、好きです。初めてお店を訪れたときに『恰好いい人だな』って思って、でもこんなに素敵な人だからきっと他につきあっている女性がいるはずだって考えてました。気持ちを伝えられなくてもいい、ただ自分の中で想うのは自由だって折り合いをつけていたら……思いがけずこんなふうになって」
すると樹が眉を上げ、意外そうに言う。
「そんなふうに想ってくれてたなんて、知らなかった。たぶん嫌われてはいないだろうと思ってたけど」
「お互いさまですね」
結月が笑うと、それを見た彼がふと目を瞠り、何ともいえない顔でボソリとつぶやく。
「――駄目だ。さっきは余裕があるようなことを言ったけど、我慢できない」
「えっ?」
「そんな可愛い顔で笑われたら、理性的でいるのなんて無理だよ」
樹が覆い被さりながら唇を塞いできて、結月はそれを受け止める。
口腔に舌が押し入り、そのぬるりとした感触に体温が上がった。先ほどより少し余裕のない口づけは、普段は穏やかな彼の男っぽさを感じさせ、官能を煽る。
キスを続けながら樹の手が結月の太ももを撫で、スカートをたくし上げて脚の間に触れてきた。
ストッキング越しにぐっと押され、結月は喉奥からくぐもった声を漏らす。落ち着かず太ももに力を入れたものの、彼は脚の間をなぞるのをやめない。
やがてキスを解いた樹が身体を起こし、結月のストッキングを脱がせてきた。そして下着越しに花弁の上部にある尖りを引っ掻いてきて、ビクッと腰が跳ねる。
「ぁっ……」
甘い愉悦がじんと広がり、結月は目を見開く。
彼は繰り返しそこばかり弄ってきて、敏感な花芽を刺激された結月は息を乱した。やがて指は割れ目をなぞるように行き来し、結月はやるせなく足先を動かす。
「はっ……ぁっ……」
下着越しの愛撫をもどかしく感じ始めた頃、樹の指がクロッチ部分の横から中に入ってきた。
硬い指先が花弁に触れた瞬間、かすかな水音が立つ。それが愛液のせいだと理解した結月は、かあっと顔を赤らめた。
(やだ……こんな……)
彼は愛液を塗り広げるように指を動かし、ときおり花芽も押し潰してくる。
既に尖っていたそこを直に触られる感触は強烈で、結月は喘ぎを我慢できなくなった。甘ったるい快感が身体の内から湧き起こり、それに呼応して蜜口が潤む。
「ぁっ……樹、さん……」
「濡れてきた。指、挿れるよ」
蜜口からゆっくりと指を埋められ、結月は小さく呻く。
ゴツゴツとした感触が身体の内側をなぞる感触に肌が粟立ち、思わずきつく締めつけてしまった。それを物ともせずに樹が指を動かしてきて、水音が次第に大きくなる。
「はぁっ……ぁ……っ……」
痛みはなく、ただ異物感だけがあって、結月は手元のシーツを握りしめた。
声が出るのが恥ずかしくてぐっと唇を噛むと、それに気づいた彼が問いかけてくる。
「痛い?」
「い、いえ……」
「声、我慢しなくていいよ。ここには俺以外誰もいないんだから」
「ぁ、でも……っ」
中に挿れる指を増やされ、結月は圧迫感に息をのむ。
柔襞を捏ねながらの抽送に声を我慢できず、ひっきりなしに喘ぎが漏れた。すると樹が熱っぽい眼差しを向けつつ、ささやいてくる。
「初めてだから、いっぱい慣らさないとな。一旦指を抜くよ」
ズルリと指を引き抜かれてホッと息を吐いたのも束の間、彼が結月の下着を脱がせ、脚を大きく開かせてくる。
身を屈めた樹が秘所に舌を這わせてきて、結月は慌てて彼の頭に触れた。
「樹さん、待ってください、それは……っ」
熱い舌が花弁を舐め上げ、溢れ出た蜜を啜る。
熱くぬめる舌が這い回る感触は強烈で、結月は羞恥で頭が煮えそうになった。何とか樹の身体を押しのけようとするものの、彼はまったく動かない。
それどころか、ますますいやらしく舌を動かしてきて、経験のない結月はすぐにグズグズになる。
「あっ……はぁっ……ぁ……っ」
花芽を舐めながら指を挿れられ、隘路が蠢きつつそれを締めつける。
樹が脚の間に顔を埋めたまま視線だけをこちらに向けてきて、かあっと体温が上がった。いつも穏やかな彼だが、今は瞳の奥に欲情をにじませており、そのギャップにドキドキする。
やがてさんざん結月を喘がせた樹が身体を起こし、手の甲で口元を拭った。そして自身が着ていたシャツのボタンを外し、それを脱ぎ捨てる。 -
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