「まずは服を脱ごうか。着たまま入浴する趣味はないだろう？」
「ちょ、やめ……んっ」
　無理やりにキスをされ、強引に舌を絡められると、途端に体の力が抜けてしまった。
　ミレイユの意思とは裏腹に、肉体はひどく従順だ。彼から与えられる快楽を期待して、甘く震え始めるのだから。
「いやだな、そんなに身構えなくてもいいんだよ。疲れている君を労わって、ここでのんびりと休んでいこうと提案しているだけじゃないか」
　口ではもっともらしいことを言いながら、エドゥアールはくつくつと喉を震わせる。その思わせぶりな笑い方に、この後の展開が──淫らな戯れが垣間見えるようだ。
　唇と唇を擦り合わせ、舌と舌をいやらしく絡め合わせて。エドゥアールは手早くミレイユのブラウスを脱がせ、コルセットの紐を緩めていく。スカートもドロワーズもあっという間に脱がされて、気付けばシュミーズ一枚を残すだけになってしまった。
「ふふ、可愛いよ。これだけ明るいと、君の姿がよく見える」
「へ、変なこと言わないでよ。恥ずかしい……」
　エドゥアールは体を離し、ミレイユの頭からつま先までをじっくりと眺めている。
　それがあまりにも恥ずかしくて、ミレイユはたまらず両手でシュミーズだけを残された体を覆った。
「それじゃ、僕の服も脱がせてもらおうかな」
「なっ、どうして私が、そんなこと……」
「君の服は僕が脱がせたんだ。これで等価交換だろう？」
「そんな、無茶苦茶な……」
　ミレイユは困り顔でため息をついた。どうしてこう、次から次にどうしようもないことを思いつくのだ、この幼馴染みは。
「それとも、僕は服をずぶ濡れにしながら入浴しなきゃいけないのかい？　後で風邪をひいたら、君のせいだけど」
「……わかったわよ」
　これ以上の口論は無意味というか、敗色濃厚だ。ミレイユはあきらめたように、エドゥアールの胸元に手を伸ばしたが──不意に、その動きが止まった。
「ミレイユ、どうかした？」
「な、なんでもないわ」
　嘘だ。エドゥアールに触れるとなると、急に胸がどきどきしてきて、どうすればいいかわからなくなったのだ。
「もしかして、脱がせ方がわからないとか？」
「……そ、そうよ！　当然でしょ!?」
　わずかな思案の末、ミレイユはエドゥアールの言葉に乗ることにした。
「初心だね。まあ、そういう君に、ひとつずつ教えるのも楽しくはあるけれど」
　エドゥアールはミレイユの手を取ると、胸元のクラヴァットを抜き取らせた。
　続けて上衣を脱がせ、シャツのボタンをひとつずつ外していく。
　エドゥアールに見守られながらの作業は、妙な背徳感があった。
　まだ何もしていないし、されてもいないのに、頭の中がふわふわしていくのを感じる。
「あ……」
　シャツのボタンをすべて外すと、エドゥアールの裸の胸元が現れる。その鍛えられた肉体を目にして、ミレイユは無意識のうちに感嘆のため息を零した。
「どうしたの？　ほら、次は下も脱がせてよ」
　そんなミレイユの様子をどう思っているのか、エドゥアールが意地悪そうに笑う。
「し、下も!?　なんでそんな恥ずかしいこと、私が……」
「でも、僕は君のスカートを脱がせたけど？」
「それは、あなたが好きでやってることでしょう!?」
「はいはい。まったく、そこまで嫌がるのなら、仕方ない」
　エドゥアールはシュミーズ姿のミレイユを抱き上げると、トラウザーズを履いたまま浴槽へと歩き出し、ざぶんと湯に浸かってしまう。
「あーあ、おかげでびしょびしょだ」
「なっ……」
　予想もしなかった行動に、ミレイユは言葉を失った。
「僕が風邪をひいたら君のせいだよ。これは、きついお仕置きをしなきゃいけないな」
　エドゥアールはミレイユを背中から抱きしめると、大きな手で胸の膨らみを掬うように持ち上げた。そのまま、ゆっくりと揉みしだき始める。
「やっ……」
　声を堪えるように、唇を噛んで俯く。濡れたシュミーズ越しに、薄紅に透けた胸の蕾が勃ち上がるのが見えた。
「ははっ、もうこんなになってる。……僕の服を脱がせるのは、そんなに興奮した？」
「だ、誰がっ……っ、ああ……っ」
　きゅうっと胸の頂を摘ままれて、ミレイユはあられもなく身もだえした。体を揺らすたび、少しぬるめのお湯がちゃぷちゃぷと音を立てて揺れている。
「いつもより敏感になってるね。ほら、こうするだけで……」
　胸の先端を指で撫でさすりながら、エドゥアールが吐息のように囁きかけた。布越しに与えられる刺激がもどかしくて、自然と体が震えてしまう。
「だめ……っ、触っちゃ、やだぁ……」
「そんなこと言って、今止められたら苦しいのは君だろう？　……ほら」
　エドゥアールは空いている方の手で濡れたシュミーズをまくり上げると、その下の茂みへと指を這わせた。
「ああっ……」
　和毛を指先で弄ぶようにした後、秘裂へ指を差し入れる。
「濡れてるのは、お湯のせいじゃないよね？」
　くちり、と粘着質な音が、秘められた場所から響いた。
「あ、や、やだ……っ、んんっ、あ、ああっ……」
　熟れた秘肉を、たっぷりの愛蜜が濡らしている。エドゥアールの指が往復するたびに、ぞくぞくと腰が震えるのを抑えられない。
　けれど、彼の指は、ある一点だけを巧妙に避けていた。敏感な花芯へ触れられることによる快楽への期待と、それが与えられないことによるもどかしさが、ミレイユをますます煽り立てるようだ。
　ミレイユがもじもじと腰を揺らしていることに気付いたのか、エドゥアールが耳元に唇を寄せた。軽く耳朶を噛んだ後、熱い吐息と共に囁かれる。
「……どこを触ってほしいの？　ほら、言ってごらん」
「べ、別に、私は……っ、あ……っ」
「答えないならそれでもいい。このまま、ゆっくりとお湯に浸かるだけさ」
　エドゥアールは緩やかな動きで秘肉をなぞり上げる。同時に、胸の頂を優しく摘ままれた。焦れるような刺激から逃れようと身を捩っても、彼の腕はしっかりとミレイユを抱き込んで放してくれない。
　昂りそうなのに、寸前で引き留められる。その繰り返しに、ミレイユの瞳に自然と涙が浮かんだ。
「やだ、や……も、してぇ……」
「何を？　はっきり言わないと、ずっとこのままだよ」
　そんなの耐えられない、とミレイユは首を横に振る。快楽を覚え込まされた体が、心が、悲鳴を上げていた。
「……さわっ、て」
「どこを？」
「下、の……きもちいい、ところ……っ！」
　途端、ぐり、と肉芽を指の腹で潰された。その刺激に、敏感になっていたミレイユの体は一息で達してしまう。
　痙攣する細い体を、しかし、エドゥアールの腕はがっちりと押さえ込んだまま、充血した花芯を指で捏ね回し始める。滴るような愛蜜による滑らかな愛撫は、達したばかりのミレイユをますます責め立てていった。
「やだっ、も、イッてるの……っ、敏感だから、ぁ……っ！」
「触ってほしいと頼んできたのは君だろう？」
「やだ、やだやだ……っ、あっ、あああっ！」
　悦楽の波に追い立てられるようにして、ミレイユは再度の絶頂を迎えた。その間も、エドゥアールの愛撫は休まることがない。
　幾度も極めさせられた後、ミレイユはようやくエドゥアールの腕から解放された。
　けれど、その頃には全身から力が抜けてしまい、ぐったりと背後のエドゥアールにもたれかかることしかできなかった。
「たくさんイケたね。……でも、僕もそろそろ限界だ」
　エドゥアールが、ミレイユの尻にぐっと腰を押し付けた。濡れたトラウザーズ越しに、硬い感触が伝わる。
「やっ、なに……？」
　困惑したミレイユの問いに、エドゥアールは答えない。ミレイユの体を浴槽の淵に座らせると、彼はトラウザーズを下ろした。
「っ……」
　ミレイユの視線は、初めて目にするエドゥアールの下腹部に釘付けになってしまった。引き締まった腹筋の下で、赤黒い怒張が、天を向いて反り返っている。
「……なに、そんなに珍しい？」
　愉快げな声に慌てて目を逸らすも、もう遅い。
　エドゥアールはミレイユの隣に座ると、おもむろに彼女の手を取った。そのまま、自らの下腹部へと導く。
「あ……」
　触れるかどうかという距離でもわかった。
　とても熱くて、どくどくと脈打っていて──手のひら越しに伝わるそれが、エドゥアールの興奮なのだ、と。
「……触って、ミレイユ」
　耳朶に響く声には、いつもと少しだけ違う響きがあった。
　導かれるように、彼の怒張へ指を這わせる。どこか淫靡で、昏い欲情。それを感じているのは、ミレイユなのか、それともエドゥアールなのか。
　気付けば、ミレイユは夢中で彼の欲望を愛撫していた。
「エドゥアール……こうすると、気持ちいい……？」
「ふっ……ああ、快いよ。すごく……」
　エドゥアールは感極まったように瞼を閉じて、ミレイユの手の動きに身を任せていた。
　ため息交じりに漏れるその声に、ミレイユの興奮もまた高まっていく。彼をもっと気持ちよくしたい。自分の手で、自分だけのものにしてしまいたい──。
　けれど、愛撫を続けていたミレイユの手を、エドゥアールがそっと押し留める。
「これ以上続けられると、僕の方が限界を迎えそうだ」
　そう言うと、エドゥアールはミレイユを浴室の床へ押し倒し、大きく足を開かせた。
「やぁ……っ」
　のしかかる体躯の逞しさに、本能的な怯えを感じる。
　エドゥアールはミレイユを安心させるように額へキスを落とした。
「大丈夫、挿れないよ。……ただ、一緒に気持ちよくなりたいだけだから」
　エドゥアールの欲望がミレイユの濡れた花弁に触れる。溢れんばかりの愛蜜が潤滑剤となり、張り詰めた肉杭は滑らかな往復運動を始めた。
　肉と肉が擦り合わされ、ぬちゅぬちゅと淫靡な音が室内に響いた。花芯を硬い欲望で愛撫される感覚は、指とはまた違った刺激がある。
　間近で感じるエドゥアールの吐息も、その体温も、ミレイユを興奮に追い立てるばかりだ。
「っ……あああっ、やっ、私、もう……っ！」
　ミレイユは押し寄せる強烈な快楽の予感に震え、悲鳴にも似た声を上げる。
「一緒にイこう、ミレイユ……っ！」
　エドゥアールは腰の動きをますます速め、ミレイユの快感をさらに押し上げた。
「あ、ああっ……っ、やぁ、ああーっ！」
「……っ、ミレイユ……っ！」

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