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あらすじ
世界を救う前に、君が欲しい
イケメン騎士と恋をしたら、顔を知らない夫でした!公女プリシラは国王フェルナンドの元に嫁ぐも暗闇の中で初夜を済ませたきり夫は一年も帰ってこず顔も知らないまま。怒った彼女は離縁しようと城を出て前世の記憶にあった肉ジャガ作りにまい進することに。ある日、倒れていた騎士を助け農作業を手伝わせる内に恋が芽生える。「俺、プリシラが欲しくてたまらないんだ」だが彼の意外な正体が発覚し!?
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キャラクター紹介
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プリシラ
ランカステル公国の大公の長女で、前世を思い出し、肉ジャガを作ることばかり考えている。 -
フェルナンド
オラーノ王国、国王。国を安定させるために、結婚相手にプリシラを選んだが…。
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試し読み
プリシラはアローの隣に座る。暖炉の炎は暖かいが、躰が芯から冷えていてなかなか温まりそうにない。
「今日は……ありがとう」
「やけに素直じゃないか」
「それはそうよ。私ひとりだったら死んでいたかもしれないし、こんなことに巻き込んでしまって申し訳なく思っているわ」
彼の手が頬に伸びてきて、プリシラはびくっとした。
「なら、その命、一生、俺に預けてみたら……ん?」
「ん?」
アローが真顔で、もう片方の手も出してきて、プリシラの額や首まで触ってくるものだから、プリシラは体中をぞわぞわさせてしまう。
「プリシラ、熱があるぞ?」
「え? さっきからぞわぞわするのって……もしかして?」
「やましい心がないとは言わない……だが、俺の膝に乗れ。温めてやる」
――やましい心があるっていうこと?
プリシラが躊躇していると、ひょいっと持ち上げられ、膝に座らされた。
――夫と躰の大きさが近いような?
自分が知っている男性が夫しかいないから、そう感じるだけだと、プリシラは思い直す。
だが、すぐにそんな比較などできなくなる。アローが背後からぎゅっと抱きしめてきたからだ。
――心臓が転がり落ちるかと思ったじゃないの!
だが、温かい。温度だけではなく、気持ちも温かくなる。
「プリシラ……」
掠れた声が耳にかかったと思ったら、そのまま耳を甘噛みされ、プリシラはびくっと肩をすくめた。このまま彼に抱かれたら、夫のことが忘れられるだろうか。
――いえ、そういうわけにはいかないわ。
プリシラはランカステル公女にしてオラーノ王妃なのだから。
「アロー、私ね。前も言ったように最悪な夫のもとから逃げてきたの。あなたとそういう仲になって、その人にばれると、アローもどんな目に遭うかわからないわ」
「もしその夫が、実はプリシラのことが好きで、追ってきたらどうする?」
「それはないわ。それに、もし追ってきたとしても、また逃げるだけよ」
「プリシラは可愛いから、金目当てじゃなかったかもしれないぞ?」
「そんなこと言ってくれるの……アローだけよ? 家同士の結婚で私がどんな人間かも知らずに結婚したし、結婚一年経っても私の顔を見ようともしないし、自分の顔を見せようともしないのよ。興味があるない以前に、失礼だと思わない?」
「確かに……ひどい夫だな」
「それなのに、周りの人たちはなぜ子が生まれないんだとか非難してくるわけよ」
「それは……すごい心労だったな」
「そうなの。妻にそういう負荷をかけていることに考えが回らないってことは、よほどのあほでしょう? 部下の気持ちだってわからないだろうから、そのうち反乱とか起こされるに違いないわ」
「反乱……?」
「そう、そう。弟あたりがやりかねないわね」
「なんでそう思うんだ?」
「だって、夫の弟は、私が醤油を作っているだけで魔女扱いしてきたもの」
「なんだと!?」
アローが、ものすごく怖い顔になった。プリシラの気持ちに寄りそい、ひどい夫だと思ってくれたようだ。
「ね、ひどい夫でしょう?」と、プリシラは彼を振りあおぐ。
「は?」
アローが何を言い出すんだ、みたいな表情になった。プリシラの気持ちを汲んでくれたのかと思いきや勘違いだったようだ。
「ひどいのは弟のほうだろう?」
「弟をのさばらせたのは、家に寄りつかない夫よ。元凶は夫!」
「なら、こうして近くにいて、たくさんしゃべって、抱き合っている俺のことは、好きになってもおかしくないってことだな」
――これは熱だから不可抗力よ!
「もう、とっくの昔に好きになってる」
言ってから、プリシラは気づいた。口に出した言葉と、心の声が逆になっている!
アローがプリシラの肩に顎をのせ、流し目を送ってくる。
「なら、熱のせいにして、俺に抱かれたらいい」
「え? いえ? えっと、これは失言って言うか……間違って心の声が……」
――っていよいよ、好きって認めたも同然じゃない!
「わかる。俺も、最近心の声がだだ漏れで困ってるんだ。プリシラのこと以外、考えられない」
背後から抱きしめる腕に力がこもり、唇を重ねられた。
――ファーストキス!
クズ夫に処女を捧げてしまったが、まだ自分には初めてが残されていた。心の奥底から喜びがあふれ出す。
「アロー、もっとキスして」
「俺も、もっとしたいと思っていた」
プリシラは顔だけでなく、上半身をアローのほうに向け、片手を彼の背に回す。彼が背を屈め、くちづけしてきた。
「小さな唇、食べてしまいたい」
冗談めかして、アローが唇全体をぱくっと咥え、べろりと舌で舐め上げる。
「アローになら、食べられたいわ」
「貪り合おう」
アローが厚く大きな舌をプリシラの口内にねじ込んできた。
――あ……アローが入ってくる。
そう意識しただけで、ぞくぞくと快感に侵食されていくというのに、アローが口内で、舌に舌をからめてくるではないか。
夢中でからめあっていくうちに、プリシラの舌がアローの口内に引き込まれ、気づけば互いの口内を舌でまさぐり合っていた。
キスを交わしながら、アローがプリシラの脇下を支えて持ち上げ、彼と向かい合うようにして下ろす。このほうが深くくちづけられる。しかも彼の胸は温かい。
だが、それより何より、向かい合って密着したことで、乳房が胸板に圧され、彼が少し動くだけで、胸の芯から全身に快感が飛び火していく。身悶えていると、臀部の谷間に何か硬いものが当たる。
「あっ」
思わず、プリシラは驚きの声を上げてしまい、唇が外れた。
「わかるだろう? 俺、もうプリシラが欲しくてたまらないんだ。いいな?」
好きな男に、こんなにストレートに求められ、断れる女などいようか。
プリシラは彼の胸板に頬を押しつけてぎゅっと抱きしめる。
「私も……アローが欲しい」
頬をつけたままプリシラが見上げると、アローの両目がカッと見開いた。
アローはプリシラを敷布にそっと下ろすと、「少しここで待っていろ」と、立ち上がる。部屋の端に置いてあるベッドから毛布二枚を取ってくると、一枚は敷布の上に広げ、そこにプリシラを横にさせた。その上に毛布を掛けると、中に入ってくる。
ふたりは裸で毛布に包まれ、横寝で向かい合うことになった。
「温かいか?」
「心があったかい」
「俺もだ……」と、アローが額に額を着けてくる。
「熱っぽいが、大丈夫か」
「うん。私が熱でアローを温めてあげるんだから」
プリシラはアローに抱きつく。
「そうか……温めてもらうのは俺のほうだな」
アローが横寝で下になったほうの腕でプリシラを抱きしめ、彼女の両脚の下に大腿を差し入れる。床に毛布だけでは固いので、自身の躰をクッションにしようとしてくれているようだ。
「アロー、優しい」
不思議なことに今日は心の声がそのまま口からあふれ出す。
「優しさには下心もある」
アローがもう片方の脚を彼女の両脚の間に突っ込んできた。硬いものが太ももに当たり、プリシラはびくっと腰を退く。それを逃さないかのように、アローが彼女の臀部を手で押さえ、大腿を前後させて脚の付け根をこすってくる。
「あ……」
プリシラは口を開けっぱなしにして身をよじった。
「この動き……たまらないな……しかも、濡れてる……」
「そんな恥ずかしいこと……言わないで」
「いや、言う。いかに君が俺にとって素晴らしい存在なのかを言い続ける。プリシラも言ってほしい。……でも今日は……しんどくなったら、それを真っ先に伝えてほしい」
――クズ夫に聞かせてやりたい。
そう思ってから、プリシラは頭の中から夫のことを消そう、いや、完全に消し去りたいと心から願った。今はアローのことだけを感じていたい。
「アローの気持ち、うれしい」
プリシラが見上げると、アローが目を見開いた。何かスイッチでも入ったようだ。
アローがプリシラを抱きしめたまま、上掛けの中で頭の位置を下げる。彼は胸の先を愛撫するように咥え、舐め上げ、先端を吸ってきた。
「あぁ……そんな……とこ……」
プリシラは、喉を仰け反らせ、彼の背に回した指先に力をこめる。
「何も口にしなくてもわかる。プリシラはここにくちづけられると、気持ちいいみたいだ」
濡れた乳暈に彼の息がかかり、プリシラは答えるどころか、体中をびくびくと震わせた。
「話すどころじゃなくなってる」
アローがもう片方の乳首を甘噛みしてくる。
「んんっ」
今までの優しい愛撫とは違い、強い刺激にプリシラは声を上げた。
今度はアローが乳暈を口に含み、ちゅうっと吸い込む。
彼の唇によって乳房全体が引っ張られると、プリシラはじっとしていられなくなり、自身の股に挟まれた彼の大腿に太ももをすりつけてしまう。秘所に彼の大腿が当たって、余計に快感が強くなる。
「くっ」
アローが呻いた。
彼の言う通りだ。口にしなくてもわかる。
「爆ぜてしまうところだったじゃないか」
文句を言っているくせに、その声には喜色が含まれていた。
「いいのよ。……爆ぜて?」
「そんなこと……言われたら……!」
プリシラは仰向けにされ、アローに組み敷かれる。
横から暖炉の炎に照らされた彼の眼差しは、いつになく野性的で、噛みつくようにくちづけられる。
プリシラの口内を舌で蹂躙しながら、ふたつの乳房を揉みしだく。その手の動きは荒々しかったが情熱的で、彼の長い指が乳首に当たるたびに、プリシラは喘ぎ、彼の肩に回した手に力が入った。
「そうだ……。そうやって俺につかまっていろ」
アローは片手を胸から下腹へ移し、下生えの中へ分け入ると、そこにある芽のようなものを指でくりくりとしてくる。
「え? あ? ……ぁあ!」
未知の愉悦を与えられ、プリシラは腰を浮かせて全身を痙攣させた。
アローが耳朶を口に含んで舐め、尖り始めた秘芽を指先で摘まむようにいじってくる。
プリシラは涙を浮かべて、水から出された魚のように躰をびくびくさせるしかなかった。
「あっ」
そのとき、手が股の間にすべり落ち、アローが脚の付け根をぬるぬると前後させてくる。真ん中の指がだんだん秘裂に食い込んでくるものだから、たまらない。
「アロー……もう、だめぇ……楽に……させてぇ」
「俺も……そろそろ……限界だ」
言い終わるか終わらないかというときに、ぐちゅりと彼の指がプリシラの中に沈んだ。
「ぁあん……アロー……」
「プリシラ……ここ、こうされたら気持ちいい?」
聞きながら、指先で、腹の奥にある壁をこすってくる。
「そんなのっ……アローになら、どこをどうされても気持ちいいに決まって……るぅ」
「うれしいよ」 -
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