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試し読み
「もう明るくなってきた。少しでも寝ておこう」
レアンドルが上掛けをめくって、リゼットを片腕で抱き寄せた。
リゼットは上掛けの中で、脱げかけたネグリジェ姿のまま彼に身を預ける。
「いつ……帰ってくるの?」
「早くて……一週間、手こずったら……わからない」
「わからない?」
リゼットは顔を上げた。暗闇の中、ぼんやりとした輪郭を確認するかのように彼の頬に片手を置く。その手に、レアンドルが手を添えた。大きな、どっしりとした手だ。
「戦いとはそういうものだよ」
「……そう」
彼の顔が小さく揺れた。笑ったようだ。
「まるで本当の夫婦みたいだな」
――笑っちゃうようなことなの?
「ちゃかさないで」
「ちゃかしているのは姫だろう?」
レアンドルの声から急に甘さが消えた。
「え?」
「子作りはいやだと言いながら、寝ている俺にキスをして、今、無防備に俺を受け入れて……この俺を、からかっているのか」
「え、いえ、それより……キ……キス……。寝たふりをしていたなんてひどいわ」
――恥ずかしくて死にそう!
「キスで起こされたんだ。あのくらいで起きないようでは、俺はとっくに殺されているよ」
「キスのあとは、寝ているふりをしていたんでしょう?」
少し間が空いた。
「……対処に困ってのことだ。それより……なぜ俺を欲しがらない?」
「ほ、欲し……そんな、はしたないわ」
「はしたない? こんなに濡らしておいて?」
「あっ」
彼の手がリゼットの太ももの間に沈み、蜜が滴る花弁を音が立つようにくちゅくちゅと掻き回してくる。
「ふぁ……あっ」
「しかもこんなに欲しそうな顔をして……。いいだろう。いつまでもつかな?」
――もつわけない!
「いや、やめて」
リゼットは慌てて、彼の上体を手のひらで押した。だが、頑丈な彼の体はびくともしない。
「やめてほしいときは、本当にやめてほしそうな顔をしないと、効かない」
レアンドルが諭すようにそう告げてくる。
リゼットが顔を見られまいと、くるりと彼に背を向けたので、秘所から手が外れた。
だが、今度は臀部の谷間から手が侵入してくる。蜜源にたどり着くと、指を曲げて浅瀬をくちゅくちゅといじってきた。
リゼットは自分でもよだれのように太ももに蜜が伝わっていくのがわかった。しかも、腋下からするりと入り込んだ手が、彼女のふくらみを掬い上げるように掴み、指先で乳首をつまんで乳房全体を揺さぶってくる。
「は……くぅ……ぁ」
リゼットはこめかみをシーツにこすりつける。
――頭がおかしくなりそう……。
「奥まで指、挿れてほしい?」
そうだ。さっき達したら楽になった。また指を出し入れしてもらえたら、きっと楽になる。
「おねが……」
レアンドルが背後から耳全体を口に含み、ちゅばっと吸った。濡れた耳に熱い息がかかる。
「いいだろう。子作りをしない本当の理由を白状したら、願いを叶えてやる」
尋問のような内容なのに声には甘さと艶っぽさが同居していた。
レアンドルが胸と秘所を手で愛撫しながら、舐めるようなキスを次々と背中に落としてくるものだから、リゼットは息も絶え絶えに問う。
「どうして……そんな、こと……?」
――国王様の命だと吐かせたいの?
もし、それが本当の理由なら、リゼットは今ごろとっくに白状していたろう。
だが、今、リゼットが彼を拒む理由は変わってしまっている。自分の子が国王の血を受け継いでいると思われることが恐ろしい、それに尽きる。
それがばれたとき、レアンドルは嘲笑の的になるだろう。
顎を取られて顔を横に向けられる。目の前にある彼の眼差しは真剣そのものだった。
「その理由が言えたとき、俺たちは本当の夫婦になれるんだ」
――本当の夫婦。
そうなれたら、どれだけ幸せか。だが、さすがに自分が偽者であると告げたら、この婚姻は終わる。
リゼットはジョスリーヌの娘だから殺されはしないだろうが、だからこそ、レアンドルの足を引っ張るわけにはいかない。亡き母にも顔向けができなくなる。
「んっ」
唇に唇で蓋をされた。初めてのときのような攻め入るキスとは全く違う。ゆっくりと舌を差し入れ、リゼットの舌にねっとりとからませてくる。
その間も、花弁を指でこね回され、酩酊したような眼差しを向けられ、覚えたての官能が体内で急速に昂っていく。
――なんなのこれ。気持ちいいような、辛いような……。
ちゅぱっと唇が離れた。ふたりの間を透明な糸が繋ぐ。離れがたい彼女の気持ちを代弁するかのようだ。
「姫は表情が出やすいな」
リゼットは恥ずかしくなると同時に、ちゃんとブランシュのふりができているのかと心配になってくる。だが、すぐに心配する余裕すらなくなる。
「俺のことを欲しそうな顔をして……なぜだ? 拒む理由を言わないと、楽になれないよ?」
彼の瞳は劣情を帯びていた。
背に震えが奔るが、それが恐怖なのか悦びなのか、リゼットにはわからない。
リゼットは彼に腕を引っ張られ、仰向けになった。レアンドルが彼女の腰を膝で挟んで馬乗りになり、中央のリボンをほどいていく。腹までほどくと、肩口を掴んで無造作に下ろした。リゼットの上半身がむき出しになる。
レアンドルがまぶしそうに目を細めた。
「……きれいだ」
リゼットは慌てて両腕で胸を隠す。
「え、そんな……見ないで」
朝方とはいえ、カーテンが閉まっているおかげで、うす暗いのがせめてもの救いだ。
「白状したら見るのをやめるよ」
一転して、レアンドルがいたずらっぽい瞳を向けてくる。
――ちょっと、おもしろがってない?
「白状するようなことなんて、何もないわ」
できるだけブランシュのように、つんとお高く答えた。
「……そうかな?」
両手を取られてシーツに留め置かれる。レアンドルが指と指をからませてくる。彼の指はリゼットの指と違い、長くがっしりとした指だ。
「小さな、可愛らしい手だ」
――レオからしたら、そう思え……。
「ふぁ……」
乳暈を咥えられ、口内で舌を使って舐られる。
「んっあぁ……んっ」
リゼットの手から力が抜けると、レアンドルは手を離して、舌で愛撫していないほうの乳房を揉みしだく。その先端はすでに敏感になっていて、指が触れるたびに、リゼットはとてつもない快楽に襲われた。
彼がもう片方の手で彼女の太ももを掴み上げ、脚と脚の間で両膝を突く。濡れた股が外気に触れて、リゼットの中で淫らな気持ちがじわじわと広がっていった。
彼女の太ももを掴んでいた手が柔肌を這い上がっていき、下生えの中にある一点を探し出した。その芽のようなところを指でこりこりとされる。
「ふぁ……やめ……なぁに……これ……やぁ」 -
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