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あらすじ
どれだけ抱いても、君が足りない
新妻の初仕事は旦那様の絶倫抑制!?性欲が暴走するという軍神の力を持つ美貌の侯爵ユリアン。その性を鎮めるため、身代わりの花嫁となったイーリアは、夜ごと彼を体で受け止めることに。「君を抱かずにはいられない」。冷酷無比と言われていたユリアンの情熱的で不器用な優しさに触れ、しだいに惹かれていくイーリア。しかし、期間限定の甘い身代わり新婚生活は終わりを迎え――!?
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キャラクター紹介
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イーリア
冤罪で勘当された伯爵令嬢。クラウディアの侍女となり、身代わりで嫁ぐ。 -
ユリアン
ガトレイヤ帝国将軍で侯爵。軍神ティトカから神力を受ける代わりに、性欲が暴走してしまう。
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試し読み
「君は綺麗だな」
「あなたの方がずっと綺麗です」
こそばゆい羞恥に頬を赤らめると、ユリアンがくすりと笑って囁いた。
「可愛い」
猛獣を手懐けるとこんな感じなのだろうか。これも神力の暴走のせいだとわかっているのに、心は揺れた。
雨が地面を打つ音が、イーリアとユリアン以外の存在を世界から消し去れば、この世に二人だけしかいないみたいな錯覚に陥る。
「あの……ユリアン。もう降ろしてくださって大丈夫です」
おずおずと申し出るも、イーリアを抱きかかえる彼の腕の力は緩まない。
ぐる……と彼の喉が鳴った。
「……ユリアン」
「無理、だ」
掠れ声で告げられ、ユリアンがイーリアを抱えたまま物陰に身を潜めた。
「何を……あ、っ」
石橋の石柱に背中を押しつけられ、ぶつかるように口づけられた。
股の間に彼の脚が入り込み、そこに腰掛ける格好になると、大きな手で臀部を揉みほぐされる。太股でぐいぐいと秘部を押される鈍い刺激が、じりじりと下腹部を疼かせる。
左脚に当たる熱い塊にイーリアが目を剥いた。
はっとしてユリアンを見上げれば、緑色の目が欲望で染まっている。甘えるように彼が喉を鳴らす。
「限界、だ」
絞り出す情熱的な声が、鼓膜に響く。
「は……い」
こうなってしまったら、一刻の猶予もない。
ユリアンはジャケットを被せ直すと、イーリアを抱えて、雨の中を走り出した。
怖いくらいの土砂降りの雨だ。
ぎゅっとユリアンの首にしがみつくと、ユリアンも抱き返してくれる。彼の鼓動の速さと熱いくらいの体温は、不思議とイーリアに安堵を与えてくれた。
この腕の中は安全だと、錯覚してしまうほどに。
馬車を止めている停車場へ辿り着けば、馬の世話をしていた御者が驚いた顔をして急いで扉を開けた。
「出せ」
「は、はい!!」
扉が閉まると同時に、ユリアンに濡れそぼったジャケットを剥ぎ取られる。
荒々しい息遣いは、雨の中を走り抜けたせいだけではないのだろう。イーリアを見つめる情熱的なまなざしが、彼の理性が飛びかけていることを伝えてくる。
待って。
そう制止する間もなく、口づけられた。
口腔を貪る仕草に、先ほど首をもたげた官能が覚醒する。
「イーリア……欲しい」
切ない声で呼ばれると、拒めるはずがなかった。
彼の事情を承知で、この役を引き受けたのだ。
「どう……すれ、ば?」
イーリアがすべきことは、彼の性欲を鎮めること。
鼻先が触れるほどの近さで見つめ合う。その間も、ユリアンが忙しなくトラウザーズの前を寛げていた。
「ドレスを」
身体を引き起こされ、ユリアンの身体を跨ぐように向かい合わせに座らされた。たくし上げたドレスを胸の前で抱えさせられる。
「ひ……っ」
下着が破られる音がして、直に蜜穴に欲望の先端があてがわれた。
「腰を……下ろせるか? 無理ならこするだけでもいい」
そう言いながら、ユリアンが先端を押しつけてくる。すぐ近くで聞こえる荒い息遣いにイーリアの官能も呼び覚まされる。滲み出した蜜が彼の欲望に絡まる音がし始めた。
イーリアの気持ちに関係なく、身体は彼を迎え入れる準備を始めている。
「いいえ。でき、ます」
声を震わせながら、覚悟を決めた。腰を持つユリアンの手に誘導されながら、慎重に身を沈めていく。
「ふ……」
ずぶり、と先端が蜜穴に入り込んでくる感覚に、ふるりと背中が震えた。
(よかった、ちゃんと入ってる)
痛みはないが、身体を支えている脚がガクガクする。力が抜けるほど、自然と腰も下へと下がっていった。
「ひっ、あ……ぁ」
一息に奥まで導いてしまったせいで、鮮烈な刺激が脳天を衝いた。けれど、まだすべてではない。
(ユリアン様のものは、もっと奥まで入る……から)
腹の奥に感じる圧迫感が苦しい。けれど、これが生む快感の味も身体は覚えてしまっていた。
イーリアは過ぎる悦楽に顎を反らし、声が零れないよう唇を噛んだ。
「あ……ぁ、いい――」
満足そうに呟いたユリアンが、イーリアに顔をすり寄せてくる。その甘えた仕草に、きゅうっと咥え込んだ欲望を締めつけてしまった。
「ん……っ」
ユリアンの感じている声に、ぞくぞくする。官能が刺激され、興奮が高まる。
今、彼はどんな顔をしているのだろう。
見てみたくて身体を動かすと、ユリアンが息を呑んだ。
「はぁ……っ、動く、な。理性が……飛ぶ」
ぎゅうっと身体を抱きしめられ、行動を制限される。
「気持ち……いいの、ですか?」
動くなと言われるほどのことはしていない。
こんなわずかな仕草すら、気持ちいいのか。
神力の暴走が、ユリアンの性感帯を過敏にしているのかもしれない。
けれど、イーリアが積極的に動くことでユリアンが快感を得るのなら、性欲もいくらか満足させられるのではないだろうか。
「……こうですか?」
ユリアンの肩に片手をついて、ゆるりと腰を前後に揺さぶった。
「は……ん、ぁっ」
身体の中心を摩擦される刺激に、粘膜がひっきりなしに蠕動している。腰を動かすたびに花芯が刺激される。イーリアの中で彼の欲望がびくびくと蠢いていた。
(これ……気持ち、いいっ)
イーリアが理性を保てるくらいの緩い律動でも、ユリアンの綺麗な顔は赤らみ、眉間には深い皺が刻まれていた。
「イーリア……っ、駄目……だっ」
「気持ち……よく、ないです……か? 私、間違って……る?」
イーリアは、これだけでも十分気持ちいいのに。
(どうすれば?)
ユリアンはどんなふうに動いて、快感を得ていただろう。
思い出せ。
(もっと激しくした方が)
今度は、腰を上下に揺さぶる。
ずるり、ずるりと亀頭のくびれが内壁をこすってくる。
「ん……ぁあっ」
ユリアンに感じてもらいたいのに、自分が快楽に呑まれてどうする。
ちらりとユリアンを見る。
先ほどより眉間の皺が深い。紅潮した顔が必死に何かに耐えているようにも見えた。
「まだ……駄目、ですか? 気持ちよ、く……ない?」
彼の膝の上に座り込むようにして腰を下ろせば、自分の重さでずっぷりと欲望が根元まで収まってしまう。
「ひ――っ」
最奥を抉(えぐ)られる感覚に、目の奥でチカチカと銀色の光がまたたく。 -
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