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試し読み
「ミレーヌ」
エルベールが甘い声で、ミレーヌの名前を呼んだ。それだけで、体がとろけてしまいそうになる。
…こんなのずるい。
「キスしよう」
エルベールの唇が近づいてきて、ミレーヌのを覆った。ちゅう、と強く吸い上げられる。最初のただ重ねるだけとは大違いだ。
ミレーヌはうっとりと目を閉じる。
キスなら、いくらしたっていい。
キスの最中、ポン、と何かが弾けたような感覚がした。弾けたというか…なんだか楽になったような不思議な感じ。でも、これには覚えがある。
いったい、なんだろう。
もしかして、好きな人とのキスには、昔の感覚を呼び覚ます効果もあるのかしら。だったら、これからキスするたびに、いろんなことを思い出せるのかもしれない。
ミレーヌの胸が、ほわん、と温かくなる。エルベールが唇を離して、ミレーヌを見つめた。
「ミレーヌのおっぱい、ちょうどいい大きさだな。俺はあまり大きすぎるのよりも、このぐらいのほうが好きだ。それに、形がすごくいい。つん、と上を向いていて、すごくきれいなお椀型だ。乳首も淡いピンクで、想像どおりだ」
何を言ってるんだろう?
ミレーヌはまったく理解ができない。
なんで、わたしのおっぱいのこと…。
「あーっ!」
そこで気づいた。さっきの、弾けたような、楽になったような、あの感覚。
覚えなんてあるに決まってる。
ブラを外したときだ!
ミレーヌはゆっくりと下を見た。
「きゃあああああっ…!」
ミレーヌの下着が上にずらされて、おっぱいが、ぷるん、と顔を出している。
ミレーヌは慌てて、おっぱいを両手で隠した。
エルベールに触られた感触なんてなかったのに、よくもまあ、ミレーヌに気づかれないまま、下着を上に引っ張れたものだわ。ゴムの部分に手をかけて、そのまま、すばやく上にまくりあげたのだろうか。
ちょっと、そのテクニックだけは感心してしまう。
「だめよ! 見ないで!」
「もう見ちゃった。きれいなおっぱいだ」
…そんなの嬉しくない…わけじゃないけど…でも、やっぱり恥ずかしい…。
「あと、何度も言うけど、これはミレーヌからのごほうびなんだからさ。終わるまで帰さないよ。ミレーヌが遅くなったら、家族みんな、心配するんじゃないか」
…ずるい。家族を出されたら、ミレーヌが逆らえないことを知っている。
ううん、ずるいのはミレーヌだ。約束したことを守っていない。
「じゃあ、さっさと終わらせてくれる?」
家族を盾にされたから。
そうやって理由づけることにしよう。ミレーヌだって、正直、エルベールがこうやって何度も求めてくれることは嬉しい。
「いやだね」
エルベールは、にやりと笑った。
「ゆっくり、じっくり、いじってやる。けど、安心しろ。今日は俺の手じゃなくて、この羽ペンだ」
エルベールは、さっきまで問題を解くのに使っていた羽ペンを持ちあげた。羽の部分は大きくて硬そうだ。
ミレーヌは羽ペンなんて高価なものを持っていないので、あの羽の感触がどんなふうなのかわからない。
ぞわり。
背筋が震えた。
この感情は、なんなんだろう…。
「ほら、手をどけて」
エルベールがそっとミレーヌの手をはがした。またもや、おっぱいがあらわになる。
だけど、ミレーヌはもう抵抗しようとしなかった。だって、隠したところで、またおんなじことになる。何度も恥ずかしい思いをしたくない。
「早くっ…」
じっと、おっぱいを見つめているエルベールにミレーヌはささやく。ずっとこの格好なんて耐えられない。
「ああ、本当にきれいなおっぱいだな。俺の手にすっぽり収まるぐらいで、やわらかくて気持ちいい、理想のおっぱいだ」
なのに、エルベールは意地悪く、そんなことを告げてくる。
「やっ…言わないでぇ…」
恥ずかしい。すっごくすっごく、恥ずかしい。
でも、なぜだか、体が熱くなってきた。
「乳首はどうかな?」
エルベールが、羽ペンを指で触った。羽を震わせながら、撫で上げる。その動きを見ると、羽はミレーヌが想像していたよりも細い毛が集まっているようだ。
あれで乳首を撫でられる。
ぞくん、ぞくん。
また背筋が震えた。
ああ…もう…本当に焦らさないで…。こんなのだったら…早く終わってほしい…。
「このきれいなピンクがどんなふうに色づくのか、ちょこん、とまだ小さな乳首がどんなふうに変化するのか、楽しみでたまらない」
どうして、こんないやらしいことを言いつづけるのだろう。ミレーヌが恥ずかしがっているのを楽しんでるんだろうか。
…だとしたら。
「お願いだからっ…もっ…羽ペンでいじって…っ…」
ミレーヌはそう言ってしまってから、はっと我に返る。
わたし、いま、とんでもないこと口にしなかった…?
「そうか」
エルベールは目を細めた。
「そんなに乳首をいじってほしかったんだな。気づかなくて申し訳ない」
「ちがっ…ちがうのっ…そ…じゃなくてぇ…」
どんなに言い訳をしても、言葉にしたことは消えてなくならない。エルベールはもう一度、羽の部分を指で撫でた。羽がしなって、すばやくもとの位置へ戻ろうとする。その動きを、ミレーヌは凝視してしまった。
だって、あの羽がわたしの乳首に当てられる…。
「じゃあ、いくぞ」
エルベールが羽ペンを乳首に近づけようとする。無意識にミレーヌは体を引いた。
「こら」
エルベールが左手でミレーヌの肩をつかむ。
「やっ…」
そこはまだワンピースで覆われていて、素手で触られているわけでもないのに、エルベールの体温を感じて、ぴくっ、と体が震えた。
「じっとするんだ」
動こうにも、エルベールがぐっと力をこめてミレーヌの体を固定したのでどうにもならない。
やだ…あの羽ペンがわたしの乳首に…やっ…。
「あぁぁぁぁぁっ…!」
羽ペンの先が、ちょん、とミレーヌの乳首に当たった瞬間、ミレーヌはそんなあられもない声をあげてしまった。
「どうした」
エルベールがにやっと笑って、ミレーヌをのぞき込む。
「羽ペンでいじるって決めてからもずっと先延ばししてたから、感覚が鋭敏になったのんだろ」
その言葉で、はっと気づいた。
そうだ。焦らされてる間中、わたしはこれからどうなるんだろう、乳首を羽ペンでいじられるなんて、とか考えてたから、その分、実際に触れられたときに過敏に反応してしまったのだ。
これは、きっと。
「わざとっ…なのね…っ…!?」
「当然」 -
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