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あらすじ
ただ純粋にお前が欲しい
隣国の王子に森で拾われ求婚されて!?ファンザム国の十番目の姫、ロザリナは森で出会った男性を庇って毒矢に倒れるも、なんと彼は隣国の王太子フォーンハルトで!? 気づけば彼の国に連れ帰られていた。素性を明かせないまま彼に気に入られ&結婚を迫られ戸惑ってしまう。しかも成り行きで彼の婚約者のフリをすることに。甘く愛してくれる彼に次第に惹かれて胸が高鳴っていくけれど!?
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キャラクター紹介
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ロザリナ
ファンザム国の十番目の姫。国境沿いの城で暮らす。 -
フォーンハルト
隣国クレスタの第一王子。森で雨に降られたロザリナを保護する。
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試し読み
「やり過ぎたな、すまない」
本当だわ。
でも咎める言葉すら、今は出て来ない。
身体を起こすと、フォーンハルトが自分が口を付けた水の入ったコップを渡してくれた。間接キスになるけれどありがたくいただく。
喉が湿ると少し楽になった。
けれどほっとする間もなく、フォーンハルトは私を抱き上げた。
「きゃっ」
驚く私をそのままベッドへ運び、そっと下ろす。
「フォーンハルト様?」
「俺は自分が思っていたよりずっと、我慢の利かない男だったようだ」
彼がベッドの上に乗って来る。
私には触れなかったけれど、顔を挟むように両側に手をつき、脚も身体を挟むように両側に膝をつくと、捕らえるような格好で上から見下ろした。
「他の男には嫁げないように、自分のものにしたいという欲望が止まらない」
真剣なだけでなく、眼差しに熱が籠もる。
「私は他の殿方なんて……」
選んだりしない、と続ける前に彼が語る。
「お前が選ばなくても、親が選ぶかもしれない。今ここで手放して国に戻ればそういうこともあるだろう」
それは……、あるかもしれない。私に知らせがないだけで、既に誰かとの婚約が進んでいる可能性もある。
「ここに置いていても、どっかのバカがお前の正体に気づいて手に入れようとするかもしれないし、誰かが懸想するかもしれない」
どっかのバカってベオハルトのことね。
「それを想像するといてもたってもいられない。俺が触れる前に誰かがお前に触れることを、俺は許せない。だから今ここで、お前の全てを手に入れてしまいたい」
上から降るキス。
「意味はわかるな? 許されないのなら、俺をベッドから叩き出せ」
彼はそのままの格好でじっと私の反応を待った。
もちろん、意味はわかる。それがいけないことだということも。
でも彼が口にしたように、お父様が私の嫁ぎ先を勝手に決めるかもれない。今の状態のクレスタには、たとえ王子といえど結婚を許されない可能性もある。
人を殺すことも平気でできる人達だもの、自分達に有益であると知れば私を誘拐してどうこうしようと考えることもあるかもしれない。
王族の結婚は国策。自由な恋愛なんて望めることは無いと言ってもいい。今まではそれが当たり前だと思っていた。そのために、自分は贅沢な暮らしができるのだから、と。
でも今、私はフォーンハルト以外の人と結婚できるかしら?
じっと私を見つめる青い瞳。
これではない瞳の中に自分を映して、彼ではない腕に抱かれて口づけをすることが、できるかしら?
考えた途端、胸が苦しくなって涙が出た。
「ロザリナ?」
慌てた様子で私の頬に触れる大きな手。
呼んでくれたのは『私』の名前。
「泣かせるつもりはなかった。安心しろ。拒むならおとなしく出て行ける程度の理性は残っている」
離れようとする手に自分の手を重ねる。
「私……、あなたの言う通り本当にバカだわ」
きっと、このことが知られたら、自由過ぎる、ふしだらな娘と言われるだろう。それでも、心が叫んでいた。
この人以外の手を取りたくない、と。
「だって、この部屋からあなたを追い出すことが考えられないのだもの」
私の気持ちが伝わって、彼は泣きそうな顔で笑った。
「ああ、お前はバカだ。だからこそ、愛しくてたまらない」
それは胸が苦しくなるほど切ない笑顔だった。私は十七人目の王の子供で、十番目の王女だった。
だから、王位継承権とか、政治向きの話からは縁遠かった。
けれど、後見人の真面目なグラハム侯爵から、王というもの、王家に生まれるという意味はしっかりと教えられていた。
王の贅は国民からの信頼。
権力に溺れて、自分は何をしても許されるなどという思い上がりは間違いだ。そんな王は家臣に裏切られても、国民に背を向けられても仕方がない。
自分が治める国が健やかで平和であるように努めるのが王の義務。
その王を支えるために王室はあるのだ。
家臣に言えぬ言葉を聞き、その力を維持するために血を繋ぎ、国のために縁を繋ぐ。
自分の役割はよくわかっていた。そのための覚悟もできていた。
彼を受け入れるということは、その責務を捨てることになるのかも知れない。
いいえ、そんなことにはさせないわ。
フォーンハルトは絶対に王になる。
私は絶対に祝福される結婚をする。
この世の中に『絶対』なんて言葉はないのかもしれない。でも『絶対』はないものを『絶対』にする努力はできものだと信じている。
純潔を失えば他の人との結婚はできなくなるだろう。婚姻前にふしだらな行為をした娘となじられ、王女としての地位も奪われるかもしれない。
わかっていて彼を受け入れるのは、『絶対』を信じているから。
これはその誓い。
だから、彼の口づけを受けることは怖くない。
遠慮がちにガウンの紐を解き、前を開かれることも、恥ずかしいけれど怖くはない。
手が時々止まるのは、本当に私が嫌がっていないかを確かめるためだろう。だってその目はずっと私の表情を窺っているから。
決して肉欲のためだけに手を出しているのではないと、それだけでもわかる。
ガウンを開かれても、寝間着の上から胸に触れられても、私が嫌がるそぶりを見せずにいると、手はだんだんと大胆に動き始めた。
寝間着のボタンが外され、中に滑り込む。
下着など付けていなかったから、硬い手のひらは直接肌に触れた。
「あ……」
初めての感触に声を漏らすと、ふっと笑われる。
「柔らかい」
と言いながら手が胸を包む。
もうそれだけで、心臓が破裂しそうなほどドキドキしていた。このドキドキは彼の手に伝わってしまうかしら?
「ん……っ」
指が胸の先を摘まむ。
ツキン、と何かが身体を駆け抜ける。
その何かは甘く、痺れるような感覚で、一瞬にして私の身体を『女』にした。
手はいったん引き抜かれ、寝間着の胸元を大きく開いた。
「あっ」
思わず露になった胸を手で隠すと、彼の手がそれをゆっくりと引き剥がした。
「……見ないで」
「見たい」
「恥ずかしいわ……」
「綺麗だ」
視線を受けているだけで身が縮む。
触れられていないのに胸の先がツンと立ってしまっているのが自分にも見えた。
その先端に、キスされる。
「……っ」
ビクン、と震える身体。
「ここからは、もうお前を気遣ってやることはできないだろう。俺の望みを叶えてもいいか?」
「……何を言っても、私の望みはあなたと一緒よ。私は……、あなたの妻になるの」
満足げに頷く顔。
「では我が妻を存分に求めることにしよう」
我が妻、と呼ばれたことに単純に喜んでしまう。
彼の唇がもう一度胸の先に触れる。
今度はそのまま口に含む。
さっき私の口腔を荒らした舌がころころと先を嬲る。
「あ……っ、あっ」
そこがこんなに敏感な場所だと知らなかった。
舌が先を弾き、吸われる度、じわりと何かが溢れてゆく。
ずっと捕らわれていた手が自由になる。ということは彼の手も自由になったということだ。自由になった彼の手は、残っていた寝間着のボタンを全て外した。
更に下にも伸び、下半身を包んでいた下着の紐を解いた。
「……あ」
これでもう、私を守るものは何もなくなってしまった。身体に纏わりつく布はあっても、彼の手を阻む壁は無いのだ。
先だけを嬲っていた口が大きく開いて乳房を食む。
何度も、何度も、歯を立てず肉に噛み付く。
吸われて、小さな痛みが走る。痛いと声を上げるほどではないけれど、噛まれたのとも違う痛みに目をやると、彼の唇が通った後に赤い小さな点が残されていた。
まるで所有印を残すように、痕が刻まれている。
けれどそんなものを見ていられる余裕があったのはそこまでだった。
「あ……ッ!」
手が、下着の解かれた下腹部へ滑る。
「あ、あの……」
下生えの中に指が入る。
「そこは……ぁ……」
「閨の花嫁教育は?」
「少しは……。あ、だめ……」
話しながら指が更に下へ伸びる。
お風呂には入っていたけれど、そんな場所に他人が触れるなんて。でも閨では殿方のすることを咎めてはいけないと教えられていたし。最後に何をするのかを考えると、下肢への愛撫は必要なことなのかも。
「ん……っ」
下生えの中から、彼が私の敏感な場所を探り当てる。
自分でも直接触れたことのない場所にある小さな突起が指の腹でグリグリと押される。
「あ……っ、や……、だめ」
感じたことのない未知の感覚が走る。
ゾクゾクして、焦れったくて、膝を擦り合わせる。
脚を閉じているのに、指を阻むことはできなかった。指先だけでこんなに感じてしまうなんて。
「あ……ん、や……ぁ。あぁ……っ、あ……」
はしたない声が漏れて止まらない。
声を出していないと、頭がおかしくなってしまいそうなのだもの。
それでも、内側から湧いてくるものを抑えることができずに身悶える。
「やめ……、もう……」
これ以上そこを弄らないで。
私は手を伸ばし、彼の腕を掴んだ。けれどひ弱な私の力では彼を止めることなどできなかった。
胸と下と両方を責められて、もう何も考えられなくなった時、彼が手を離し、身体を起こした。
「フォーン……」
嫌がったと思われた?
これで終わりにするの?
それが正しいことだとは思うのに、彼の体温が無くなったことに寂しさを感じて思わず名前を呼んでしまうと、彼は優しく笑ってキスした。
「服を脱ぐ」
目の前で、彼がシャツを脱いでベッドの外へ脱ぎ捨てる。
続いてズボンにも手をかけ、前を開けた。
仰向けに横たわったままの私には、彼の全ては見えなかった。頭を起こせば見られたのかもしれないけれど、もうそんな余力もない。
でも見えなくてよかったのかもしれない。
裸の上半身を見ただけでも、恥ずかしくて直視できなかったのだから。
再び、彼が私に添う。
「ロザリナ」
彼は私の右足首を掴んだ。
「脚、開いて」
「いや……」
「いや?」
「そんな恥ずかしいこと……、できないわ……」
呆れたようなため息をつかれても、男の人の前で自ら脚を開くなんてできないわ。
「俺が嫌なわけではないな?」
「……ええ」
それは覚悟をしてるわ。
でも羞恥心は別よ。
「よろしい。では俺がしよう」 -
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