書籍紹介
箱庭の初恋
箱庭の初恋
ISBN:978-4-596-74520-0
ページ:290
発売日:2016年8月17日
定価:本体390円+税
  • あらすじ

    逃げられない、逃がさない……愛執の檻

    公女ヘレナは乱心した国王に、長い間城内で幽閉されていた。美しく成長した彼女は王の妃になることを拒み、王の代わりにある寵臣と初夜を迎えることに。その相手とは、ヘレナの信頼を裏切り、弟を手にかけた憎むべき男ユーリだった――。「貴女に選択肢はない」彼に組み伏せられ、暴かれていく身体。冷たい言葉とは裏腹にその手つきは優しくて、ヘレナは戸惑いながらも反応してしまい……!?

  • キャラクター紹介
    • heroine_VBL70

      ヘレナ

      フリント公爵家の令嬢。弟想いで気丈な少女。

    • hero_VBL70

      ユーリ

      王の寵臣。自分に厳しく規律を重んじる性格。

  • 試し読み

    「あなたなんか最低!」
    「それで気がすむなら、いくらでも言えばいい」
     そう言いながらも聞くに堪えなかったのか、ユーリは三度ヘレナの口を封じた。
     足掻いたために彼女の夜着はほとんど脱げてしまい、金色の髪はベッドに広がり乱れていた。口を塞がれ、ヘレナはユーリの胸をげんこつで叩いたが、胸板はびくとも動かない。
     そして、彼の衣だけは乱れていないし、飾り帯も肩から腰へと優美な曲線を描いている。彼には人間の心はもうないのだ。
    「ん……く、む……!」
     捉われた口の中で悪魔と叫ぶと、彼は噛みつくように、さらに深くヘレナを食んだ。
     かたや、長い指は彼女の奥までは入らず、谷の入り口でもぞもぞと動いている。
     気持悪い、やめてほしい。
     ぴたりと胸を合わされ、動きを封じられている中で抗って腰をよじったが、逃げられない。
     ユーリの指が秘所の花びらをつつっと撫でた。
    「……んっ」
     びくん、と体が痙攣した。
     頭が痺れる感覚に見舞われ、体の奥が熱くなる。
    「ん、……ゃ、うぅ」
     次第に彼の指の滑りがよくなってきた。
     花蕾を指先で捏ね回された時、ヘレナの瞼に火花が散り、体が弓なりに反りかえった。大きな波にさらわれるような感覚に我を失う。
     王が見ていることも、憎い男に凌辱されようとしていることも一瞬頭から消えた。
     別の生き物のように、ヘレナの意に反して体がびくびくと震える。
     足の間に温かいものが溢れてきた。
    『憎い男が相手でも達するのじゃな、女とは恐ろしいものよ』
    「ですが、まだ――」
    『わかっておる』
     ユーリはどんな命を受けたのか、ぐったりと力尽きたヘレナの下腹部に顔を埋めた。
    「……ぁ、いや」
     おぞましさを感じたが、彼女の体は疲労困憊して微塵も動かせなかった。
     彼はどんな施術を行ったのか、心ばかりが憎いと思っても、指一本、自分の思うようにならないのだ。
     熱い息があわいにかかる。
     次に、濡れた舌が入ってきた。
    「ふ……ぁああ」
     痛みはなく、ヘレナの隘路はたやすく彼の舌を受け入れた。
     ぞわりと背筋が粟立つと同時に、味わったことのない感覚が下肢の中心に広がる。
     ぬるぬると、それはヘレナの内部をしごき始めた。
     肉襞を擦られ、子宮がギュッと収縮するのを感じた。
    「あ、……、ううん、やめ――っ」
     ユーリの舌は蜜壺を丹念に広げるようにうごめいたかと思うと、胎内から出ていき、敏感な粒をれろれろと弄ぶ。
     そのたびにびくびくと体をのけ反らせ、鼻にかかった甘えた声をあげてしまう。
     感じてなんかないのに、悦んではいけないのに――。
    「ひっ、ああぁ――!」
     ピチョピチョという淫靡な音は、垂れ幕の向こうの王の耳にまで届きそうだ。
     ヘレナの内腿はもうびしょ濡れになっていた。
     尻の下で皺くちゃになっている夜着も濡れて冷たい。
    「ん、ぁ、ああ、や、もう、やああ」
    『随分楽しんでおるようだな、そろそろか』
    「はい。成し遂げてみせます」
     体の中を何度も嵐が吹き抜け、屍のようになったヘレナを、さらなる屈辱が襲う。
    「や……、それだけはいや! わたしを殺して……、汚さないで殺して!」
    「陛下の命令しか聞けない」
     ユーリは非情な声で答え、力ないヘレナの膝裏を掴んだ。
     ゆっくりと開く。
     ――お母さま……! それでも生きなくてはだめなの?
     ヘレナの目から涙が溢れた。
     どんなに惨めでも――。
     足の間が無防備に曝され、そこに何かがあてがわれた。
    「少し我慢するんだ。そうすれば早く終わる」
     ぴくりと体を硬直させたヘレナの体をそっと抱き、ユーリが耳元で言った。
    「俺のいうとおりに――力を抜いて」
     いつもの憎らしいほど冷徹なユーリとは違い、その声には温もりを感じて、ヘレナは素直にふと肩の力を抜いた。
    「――そう、いい子だ」
     その声音に、ヘレナはふと懐かしさを感じた。
     人間らしい情のある、温かい少年だった時のユーリの声だ。
     彼女は驚いて彼を見上げた。
    思いがけないやさしい口づけがおりてくる。
     ――いったいこれは誰なの?
     ついばむように軽いキスをし、ゆっくりと唇を触れ合わせ、それから愛おしむかのような丁寧な口づけ。
     彼の大きな手がヘレナの頬に触れた。
     指先で涙を拭い、乱れた髪を静かに撫でつける。
     まるで子供をあやすように抱きしめ、頭を撫でて――十年前のあの日のよう。
     溺れたヘレナを裸で温めてくれたユーリ。
     やさしいユーリ。
     あの時の彼は正しかった。
     王の行いを咎める正義感を持っていた。
     貧しい人々に仕事を与え、弱い者を保護すると、目を輝かせていたあの少年は……。
     もしかしたら、今もユーリの中に生きていて、王の権力を借りて、秘かに夢をかなえているのではないだろうか。
     ――あなたはあの時のユーリなの……?
     人情のある、弱い者にやさしい美しいユーリは、今も変わっていない?
     もしそうなら、彼は非道はしない。
     ヘレナを傷つけたりしない。
     信じてもいいの――?

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