-
試し読み
「ギル……っ、あ、あ、そんな……ぁ……」
フィアナが思わずギルバートの頭をどけようとすれば、彼のさらさらと流れる黒髪の中に包帯の存在を感じ、びくりと手を引いた。
――だめ……っ。
何をされようとも、ギルバートの眼だけは守らなければ。
大体、何をされるというのだろう。恥ずかしさで逃げ出したいばかりで、躰も心も気持ちが好い。快感とは恐ろしいものだと思う。好きな人が相手だから、心まで快楽の海へと掠われていってしまうのだろう。
性交は人を堕落させると言われているが、その通りかもしれない。
――でも、想いがいっぱい溢れてきたら、こうするのが一番いいのね……。
実感する。抱きしめられて、抱きしめたい。たとえこれが泡沫と消えようとも、今だけは想いを解放できる。
フィアナは両手を口元へもってゆき、せめて恥ずかしい声が外に出ないようにと、そこを押さえるようにした。ところが、身を起こしたギルバートは彼女の手を退けてしまう。
「声を聞かせて。そうでないと、分からない。……君が、気持ちよくなっているかどうかを、僕に教えて」
「……ギルバート、さま……でも、恥ずかしい……」
喘ぎの合間での、消え入りそうな声だ。
「ギルだ。ちゃんと呼ばないと、ひどくするかも」
「ひどく? ……どんな、ふうに……?」
喉の奥で笑われたようだ。途端に、足がもっと大きく広げられ、その間に体を入れたギルバートが、彼女の両足をひざ裏から抱え上げるようにした。すると、臀部が浮き、下肢の前面が彼の方へ向かって曝け出される。
包帯があって見えていないというのは、フィアナが大きく声を出して制止しなかった、ただ一つの理由だ。
そうして、信じられないことに、内股から足の付け根、さらにはもっと深くになる肉裂までも舌が這う。拡げられた脚、拡げられた陰部、その奥に埋まるギルバートの舌で舐められる。
「あっ、あぁっ……止め、やめて……ギル――……」
恥ずかしい。でも、襲ってくるのは大きな快楽の波だ。
このときばかりは、彼の視界が塞がれているのにほっとするフィアナだが、ギルバートの情熱は包帯などでは少しも遮られないようだった。
フィアナの片足を肩にかけたギルバートは、右手の指で女陰をかなり広げたようだ。ストーブは赤く燃えているが、気温は下がっていると思う。そうした空気が、普段は完全に隠されている部分をそっと包んでゆく。
彼女はふるんっと胴震いをした。寒いからではない。拡げられたそこを、目を塞いだ彼が眺めているからだ。
見られているわけではないのに、羞恥が彼女を追い詰める。しかも、彼の指は広げた陰唇の端から、ふくりと膨らんで顔を出した陰核を指で、そして舌で、捏ね始めた。
「あ、あ、……ギル、っ……あ、あぁ……っ、おやめ、下さい、おねが……ぁい」
「フィアナ……。もっと啼いてくれ。もっと……好くなってくれ……すべて、忘れてしまうくらいに――」
――忘れる……? なにを……?
疑問を口にするようなゆとりはなく、口を開ければ出てゆくのは嬌声だ。
「あ、あ、……あぁ――…っ……」
ぐりぐりと淫なる豆を舌で嬲られ、指は奥に潜る。腰が跳ねながら快感を享受してゆくが、声もひっきりなしに出た。フィアナは口を押さえたかった。けれどギルバートは、それでは彼女の状態が分からないと言うのだ。
これほど乱れてしまうような部分が、自分にあるとは思ってもみなかった。暴かれるとはまさにこのことだ。
「あぁ――……っ、あん…………っく、ぅ」
「見、たい……っ」
陰核を舌で捏ね、唇で挟んで、吸われる。その狭間でギルバートは言う。
「君の、ここを、……見たい」
たまらないようにして施される愛撫は、本当に激しいものだった。フィアナの肉体に明確な愉悦を引き寄せながら、ギルバートは小さな粒のようなそれをひたすら愛する。
「ひぁ……っ、あ、ギルぅ……っ」
ぴちゃりぴちゃりと水音がするのは、彼の唾液のせいというよりは、滴り落ちている彼女の愛液のせいではないだろうか。溢れ出ているということを自分でも感じる。
「こんなに濡れて……――どんな色をしているんだ……膨れて、こんなに……」
「いやぁ、言わないでぇ……っ」
頭をいやいやと振る。ストロベリーブロンドがベッドの上で広がり、裸のフィアナを豪奢に飾っている。彼女の肌は上気してほのかな桜色に染まり、乳房の先端や、ギルバートが舐めている陰唇、そして陰核は赤く色づいていた。フィアナにも、ギルバートにも見えないそれは、恥じらいの華を満開に咲かせている。
指で奥を拓かれ突かれ、唇で陰毛と恥丘、そして陰核を責められる。フィアナは、快感をとても我慢できなかった。
抑えようとした声は激しい息遣いとともに外に出て、肉体は悦んで彼の愛撫を受け止める。やがて伸び上がるようにして、フィアナは快感に果てていった。
「ア――……っ、アァ……っ……」 -
関連作品