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試し読み
「気持ちいいんだね?」
ミュリエルは、自分の頬が羞恥に染まったのを感じた。
ギルフォードが気付いていなければいい。暖炉の暗く赤い光の中に、頬の赤みは紛れて見えなかったと、そう思いたい。
そんなふうに羞恥に耐えていたのに、ギルフォードは不意にミュリエルの夜着をたくし上げ、胸を露わにしてしまう。ミュリエルはとっさに胸を手で隠そうとしたけれど、両手首を掴まれ、ベッドに押しつけられてしまう。貪るような目で胸の膨らみから平らな腹部、くびれた腰まで見つめられる。ミュリエルは耐えられなくなって横を向き、目をきつく閉じた。
「殿下、見ないでください……!」
「──私には見せたくないということか?」
え?
ギルフォードの悔しげな声を聞き、ミュリエルは驚いて彼に目を向ける。目に映ったのは、苦しそうに眉を顰め、ミュリエルの胸元に顔を近づけるギルフォードの姿だった。
「ひぁ……んっ」
彼の熱い口腔に胸の頂を含まれ、驚きと強い快感に、ミュリエルは思わず声を上げてしまう。
恥ずかしくて口を押さえたかったけれど、ギルフォードに両手を解放してもらえず、ミュリエルは歯を食いしばってこらえるしかなかった。
「んっ、ふっ……く、んんっ、ん……ッ」
ミュリエルが声を我慢するからか、ギルフォードの胸への攻めは容赦なくなっていく。大きく口に含んでたっぷりと唾液をまぶして舐め回されたり、先端を吸い上げられたり。強い刺激と時折聞こえるちゅくっという湿った音に、際限なく羞恥を煽られる。
唇を噛みしめて快感に耐えていると、不意に唇をなぞられて我に返った。いつの間にかギルフォードは胸から唇を離し、ミュリエルの顔をのぞき込んでいる。頬に手を当て親指で再び唇をなぞる。
「そんなに嫌なのか?」
嫌? 何のこと?
疑問を口にする前に、彼に唇をふさがれてしまう。唇にすっぽりと覆われ、噛みしめていた唇を舌先で舐められて。
キスに気をとられている間に、下履きを脱がされ、足の間に彼の手が入り込んでくる。
「──ッ」
ギルフォードの指先が足の付け根に触れ、ミュリエルは思わず息を詰めて顔をしかめた。
昨夜は快感のおかげで平気だったけれど、今は彼の男性の部分に押し開かれたそこが痛い。ぴりっとした鋭い痛みに、さらに痛むかもしれないという恐怖心が芽生える。
ミュリエルが身を強ばらせたのに気付いたのか、ギルフォードはぎらつく目でミュリエルを見据え、声を押し殺して言った。
「君はもう私のものだ。拒むことは許さない」
所有欲をむき出しにした言葉を耳にし、ミュリエルの胸がどくんと跳ねる。ギルフォードらしくないせっぱ詰まった様子からも、どれだけミュリエルを欲しがっているかが感じられる。ミュリエルはどきどきしながら言った。
「違うんです。その……ちょっと痛くて。でも、大──!」
大丈夫ですからと言おうとしたその時、ギルフォードはミュリエルの両膝の裏に手を入れて、大きく左右に開きながらミュリエルの身体を折り畳む。秘部をギルフォードにさらしたあられもない格好に、ミュリエルの気は動転した。
「殿下……! やめてください! 嫌──あっああ……ッ」
ギルフォードはミュリエルの足の間に顔を埋め、先ほど痛んだ部分に舌を這わせる。彼の口の潤いに助けられて痛くはなかったけれど、彼に見られているという羞恥のあまり、ミュリエルの身体は逃げを打つ。
「あッ、いっ、や──あンッ」
身を捩ったけれど、腰に回された手にがっちりと固定されて逃れられない。
ギルフォードの舌は、やがて秘部を覆う縮毛をかき分け、その奥にある快楽の芽を嬲り始めた。
「んぁっ! あっ、やっ、あぁ……っ」
身体の芯へと突き抜ける快感に身体が跳ねる。声を押さえることもできない。ミュリエルは解放されていた手でシーツをきつく握りしめ、快感に身悶えながら泣き出していた。
「やぁ! 嫌っ、嫌です殿下ッ──あぁ!」
ギルフォードは、ミュリエルの秘部に顔を埋めたまま皮肉げな口調で言った。
「昨夜も同じことをしたというのに、何をいまさら」
わたし、こんな格好をしていたの?
昨夜は窓から差し込む月明かりだけで薄暗かったし、毛布にほとんどが隠れて見えなかった。けれど今は、隠してくれる毛布もなく、暖炉で赤々と燃える火が、陽の光ほどではないにしろ、明るく照らし出している。
ギルフォードにじっくり見られてしまっているかと思うと、全身が熱くなるのを感じた。
羞恥に苛まれているミュリエルをさらに嬲るように、ギルフォードはほくそ笑む。
「それに、嫌ではないだろう? ほら」
ギルフォードが入り口に触れてきたのでミュリエルは思わず身を竦めたが、今度は痛みを感じなかった。ギルフォードの指が入り口をかき回すと、くちゅくちゅという粘ついた水音が、暖炉の薪がぱちぱちと爆ぜる音に混じって聞こえた。
「聞こえるかい? ほら、蜜がこんなにも溢れてきている。君の身体が悦んでいる証拠だよ」
「そ、そんな──」
そんなの嘘と言い掛けて、口をつぐむ。ギルフォードの言うとおりだ。ミュリエルの身体は悦んでいる。それに気付くと、身体の奥深くからじわっと溢れるものを感じた。それが、ギルフォードの言う蜜なのだろう。身体が悦んでいると気づかされただけで溢れてきたことに、ミュリエルは驚きと羞恥を覚える。
動揺している間に、ギルフォードは再びミュリエルの秘部に舌を這わせる。
彼を受け入れた場所から快楽の芽まで丹念に舐められる。与えられる快感に翻弄され、ミュリエルは声を抑えることも忘れた。
「アッ……、んっ、はぁ……ン、あっ、あっ、あっ、あぁっ、ひぁ……!」
ギルフォードの舌が入り込んできて、広げようとするかのように内壁をぐるりとなぞる。そうされると何故かぞくぞくとした快感がわき上がってきて、体奥からじわっとまた蜜があふれ出るのを感じた。彼の舌はそれを誘い出そうとするかのように、奥へと差し入れて路をつける。その路を通って蜜が溢れるのを感じて、ミュリエルの頬は熱くなった。
ぬめりが増し、そのせいか快感がより強くなる。
「んぁ……っ、あっあんっ、はぁ……んっ」
恥ずかしい声が、後から後からあふれ出る。ぴちゃぴちゃという水音が足の間から絶え間なく聞こえて羞恥を煽る。
散々喘がされて息も絶え絶えになった頃、ギルフォードの指が胎内に沈む。その頃には、入り口の傷みも、体奥にあった鈍い痛みも消え失せていた。本数を増やされ奥深くまで埋められた指に中をかき回され、快楽の芽を舌で刺激され、ミュリエルは我を忘れていく。
「ふぁっ、あっ、あ……っ、んっ、あぁ……んっ」
身体の奥深くで膨らみ続けた快楽が、出口を求めて荒れ狂い出す。そのタイミングを見計らうように、ギルフォードは快楽の芽を口に含んで吸い上げた。
その強烈な刺激に、瞼の裏に火花が飛び散る。
「ひぁあっあああ──!」
絶叫を上げ、四肢を強ばらせて、ミュリエルは達した。 -
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